●リプレイ本文
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南米大陸北方にある大熱帯雨林。
人とバグアが争うこの大地を今、8人の男女が歩いていた。
彼らの名は‥‥
朧 幸乃(
ga3078)!
木場・純平(
ga3277)!
冥姫=虚鐘=黒呂亜守(
ga4859)!
ブレイズ・S・イーグル(
ga7498)!
絶斗(
ga9337)!
御門 砕斗(
gb1876)!
ヴィンセント・ライザス(
gb2625)!
エリザ(
gb3560)!
彼らが向かうは名も無き小さな村。
そこは待ち受けるのは赤、青、緑、黄の格闘を得意とする4体のキメラ
8人と4体はそれぞれ、向かい合い‥‥そして2対1に分かれて戦いだした!
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「お前は俺達と一緒に来て貰うぞ‥‥! ドラゴンダッシュ!」
最初に動いたのは絶斗。
巨大化した右腕で黄色のゴリラ型キメラを掴むと一気に前方に押し込む。
ヴィンセントもそれに追随し、黄色のキメラを追っていく。
虚を突かれ押されていくキメラ、しかし体勢を立て直し、今度は自分から組み伏せに掛かる。
対抗する絶斗、だが体格ではるかに上回る黄色はその体重を活かし彼を圧倒する。
「遅い‥‥下ががら空きだ!」
戦友を助けるため、スライディングで脚を蹴るヴィンセント。突然の奇襲に膝をつくキメラ。その腹を目掛けて銃弾を発射した。
銃声を聞き、右腕を振り払おうとする絶斗。ヴィンセントのフェイントからの近距離射撃に繋げるため、義手に取り付けた激熱をキメラの顔面目掛けて叩き込もうと考えた。
だがその拳をキメラの呪縛から逃すことは叶わない。
『何っ!?』
驚愕の声を上げる、絶斗とヴィンセント。
ヴィンセントの銃弾は確かにキメラに命中していた。しかし使用すべきスキルを用意しなかった故、その技は本来の威力を発揮できない。
結果、銃弾は厚い筋肉の層に阻まれ、さしたるダメージにならず。戦友の拘束を解くこともできない。
義手を掴んだまま、その腕を持ち上げるキメラ。腕を掴まれ引き上げられる絶斗。キメラはその腕を頂点まで持ち上げると足元に居るヴィンセント目掛けて叩き付ける。
キメラの直接の攻撃ではないため、強力な破壊力はないがそれでもその勢いは彼らの動きを止めるには充分。
そしてキメラは二人を無理やり引き起こすと、太い両腕を使い纏めて締め上げた。
次に動いたのは木場と砕斗だった。
マキナと名づけた蒼いAU−KVを装着した砕斗が青猿を挑発し、木場と一緒に竜の翼で移動する。
青猿もそれに習い、彼らを追いかける。竜の翼を使った砕斗ほどではないがキメラも速く動くことができるようだ。
2人と1体は人外の速度で村を駆け抜け、広い場所へ移動すると、相手の方へ向き直る。
「己の四肢のみを駆使して戦うキメラか」
腰を落とし、低い重心で構える木場
「実に分かりやすいし組しやすい相手だ」
格闘家としての血が騒ぐのか、その顔には笑みが浮かぶ。傍らでは砕斗が二本の刀、夕凪と夜刀神を抜く。
対する青のキメラは相手をからかうかのように軽妙なステップを踏む。だが、その目は笑っておらず、彼らとの距離も次第に詰められて行く。
木場自身も唇を舐め、自らその距離を縮めていく。
やがてお互いの手が届きそうな距離になり‥‥
「――シュッ!」
「でええええいっ!」
「ギャギャギャギャッ!」
2人と1体の戦いが始まった。
最初に動くのは木場、両手にはめた強化手袋クラッチャーを使った掌底突きを放つ。
対するキメラは横に避け、器用に掌底を叩き落すと、接近し肩目掛け三発のパンチを打ち込む。
重さに欠けるがスピードのある拳打が木場にダメージを与える。
その木場をフォローするために砕斗がキメラの背後を回ろうとする。だがそれは見抜かれ牽制の拳が飛ぶ。
すぐに夕凪と夜刀神を構える砕斗。咄嗟の判断が間に合い、キメラの連撃は二刀に受け止められる。
返す刀で夕凪を振るう砕斗。だがキメラはバックステップで大きく距離をとり、挑発するように二人に自らの尻を向けて叩く。
「てめぇ!」
怒声をあげ、キメラに襲い掛かろうとする砕斗、木場をそれを一旦手で制し、自らが距離をつめる。砕斗も己の役割を思い出し、木場の背後に付く。
間合いを詰める木場。青猿が動く前に身長差を活かしたジャブで牽制し、そこから脚目掛けてローキックを放つ。
対角線に散らされた攻撃に足を止めるキメラ、そこへ砕斗が上方から二刀を振り下ろす。
強烈無比な一撃が空を裂く、しかし‥‥
「詰められた」
青猿は砕斗の斬撃を彼の懐深くに潜り込むことにより回避した。
そして、それは逆襲の始まりだった。
深く息を吸い、両腕を引く青猿。
「来るぞ!」
警告の声を上げ前に出る木場、片手10発、両手合わせて20発の高速拳打が二人に襲い掛かった。
赤い毛のキメラと相対するのは幸乃と冥姫。
冥姫が挑発の一撃を与え、幸乃とともに森のほうへと走る。
赤猿もそれについていくように村を抜け、森の中へと入っていった。
「‥‥来ましたね」
「ああ、じゃあ行こうか幸乃」
二人は頷きあうと、幸乃は振り返り、キメラの方へ。冥姫はハンターアクスを持ち、その場に立ち止まる。
両手にルベウスを装備しキメラに立ち向かう幸乃。彼女の攻撃を赤猿は‥‥
「ホゥワ!」
奇声を発し、円を描くように腕を動かして打ち払う。
構わず攻撃を続ける幸乃、その度にキメラは奇声を上げ攻撃を避け、打ち落とす。
「‥‥」
攻撃を避け続ける猿を無表情に見つめる冥姫。彼女はキメラに視線を向けつつ一本の木に近づくと
「‥‥五月蝿い、その声は」
豪破斬撃を発動させた斧で切り倒した。
「ハゥオッ?」
葉の擦れる音に視線を動かす赤猿。見上げると一本の大木が自分に向かって倒れていくではないか。
「犬ではなく、猿が棒に当る、か」
キメラに向かって倒れていく木を見ながらつぶやく冥姫。どうやらあまり快くは思っていないようだった。
「ホゥアチャアアアアアッ!」
だがキメラは咆哮らしきものを上げると、その大木を回し蹴りで吹き飛ばした。
「‥‥」
「‥‥」
お互い目を合わせる、幸乃と冥姫。
だが、すぐに気を取り直し、キメラとの距離を詰め始めた。
最後に残ったのはブレイズとエリザ、そして緑色の体毛と長い脚を持った猿型のキメラ。
「上等だ‥‥本物の闘いってのを教えてやる」
一歩前に出るブレイズ、彼は拳を握りキメラに立ち向かう
「アァァァァァァァッ!」
聞き取れない叫び声とともにキメラの顔面に拳を見舞った。瞬間、キメラの身体が赤く輝く。
何かのスキルと思い目を見張るエリザ。だがそれは何のことは無いキメラのフォースフィールド。
『‥‥』
三者三様(キメラ含む)の沈黙のあと、緑色のキメラはブレイズを蹴っ飛ばす。
「ダメか‥‥流石曰く付きの技だな」
吹き飛ばされながら呟くブレイズ、そして彼はそのまま民家に突っ込んだ。
「‥‥あら? 今ブレイズさんが吹っ飛ばされたような」
民家の方を向き、独り呟くエリザ。そんな彼女に緑のキメラがゆっくりと歩いていく。
「‥‥ってソロでバトルですのー!?」
半ば悲鳴のように声を上げて、ハルバードを構えるエリザに対しキメラは長い脚をしならせ鞭のように蹴りを放つ。
「突撃あるのみですわよー!」
だがエリザはその蹴りを避けようとせず、そのまま受け止めると竜の爪を込めた斧槍を振り下ろす。
肩口に斧槍を叩き込まれ、鮮血を流すキメラ。だがすぐに彼女の腹を蹴り、距離を保つ。
「少々の攻撃ではへこたれませんわよ!」
腹部への蹴撃に身を屈ませるエリザ、だがすぐに斧槍を使って身体を起こすと、再度竜の爪をこめた突撃を敢行する。
「避けられないのなら肉を斬らせて骨を断つまでですわー!」
経験不足をカバーする為の彼女の突撃。だが緑猿はその長い脚を折り曲げ、バネを溜める。
そして斧槍の穂先が届く瞬間、一気に飛び上がった。
視線から消えたキメラを追い、見上げるエリザ。彼女の頭部をキメラの足が蹴り抜く。
あまりの衝撃に目の前に火花が散り、膝が崩れる。だが彼女は何とか踏みとどまり、斧槍を振り払う。
しかしキメラはまたも飛び上がると、そのまま身体を回転させて踵を叩き込んだ。
「くぅっ!」
肩口へのダメージに思わず呻き声が漏れる。そこへキメラが追撃の回し蹴りが放つ。
だが、その蹴りを一振りの両手剣が打ち落とす。
「待たせたな‥‥こっからは俺のターンだぜ」
「ブレイズさん?」
両手剣コンユンクシオを振るい自分を助けたブレイズを見上げるエルザ。
「‥‥ってなんで裸ですのー!」
何故か上半身裸だった。
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「‥‥いい加減にしろ!」
ベアハッグで胴体を締め付けられる絶斗とヴィンセント。怒りの言葉とともに黄猿の肘を撃ち抜く。
肩肘を打ち砕かれ、思わず拘束を離すキメラ。だが、すぐに残った腕で襲い掛かる。
パンチを打つキメラ。絶斗がその攻撃を受け止めた瞬間、ヴィンセントが背後に回りナイフを突き立てる。
「凶刃参式プロナンス‥‥!」
さらにトリガーを引き、残弾を全て撃ち込む。
背後からの攻撃に身を捻り、振り向こうとするキメラ、しかしその横腹に絶斗の激熱がめり込む。
攻撃にキメラの動きが止まる、そこにヴィンセントのロケット砲が火を噴いた。
爆炎を掻き分けキメラが腕を振り上げて突進してくる。
だが怯むことなく、絶斗とヴィンセントは黄色の猿目掛けて一斉にジャンプする。
激熱とロケット砲を叩き込み、さらにヴィンセントがロケット砲の連射で追い討ちをかける。
連続攻撃に仰け反るキメラ。
絶斗はその懐深くに潜り込み、右腕を引く。
「行くぞ! 必殺のドラゴンハンマーだ!」
叫び、巨大化した義手でのパンチを放つ絶斗。
その拳は黄色のキメラの腹を打ち、背骨をへし折った。
「‥‥ギギッ?」
青猿が不思議そうな声を上げる。
合計20発のラッシュを叩き込んだはずの獲物がまだ立っているのだ。
「どうした?」
両腕を前に突き出した構えを取り、木場が問いかける。
彼の身体はキメラの攻撃で傷ついてはいるが致命傷に至っていない。
刀を構え、淡い光に身を覆った砕斗も同様だ。
「ギギ‥‥ギャギャッ!」
驚きの声を上げるキメラ。
気を取り直し、再度同じ攻撃を放つ。
襲い掛かる拳打。
しかし、木場が腕を動かすとその拳は軌道を反らされ、受け止められる。
――前羽の構え。
肘を曲げ、腕を前に突き出す、防御に特化した構え。
空手に伝わる防御法を実践することにより、急所を守り殆どの攻撃を受け止めることに成功したのだった。
一方、砕斗も竜の鱗の力を借り、マキナの防御力を高めている。
拳の軽さを補う為、数を叩き込むキメラの攻撃法。だが全てを受け止められるとその攻撃は弱く儚いものであった。
「はっ、猿芝居にもなりゃあしねえんだ。よっ!」
キメラの攻撃が終わったと同時に前に出る砕斗。腕を伸ばしキメラの両腕を掴み、動きを封じる。
「‥‥捕まえたってか!」
そこへ限界を突破した木場のローキックが襲い掛かる。
脚に叩き込まれる無数の蹴り。威力は無いとはいえ、その攻撃は痛みを伴いキメラの体勢を崩す。
「ギャギャーッ!!」
砕斗の腕を振り払い、残った足で飛び上がるキメラ、体重を乗せた拳を木場に向かって叩き込もうとする。
「‥‥捕った!」
木場はその拳を受け止めると背中を向けるように身体を潜り込ませ、自らの肩でキメラの肘を折る。さらに身体を翻し胴をクラッチすると身体を反って、へそで投げる。
バックドロップを喰らい、のた打ち回るキメラ。そのキメラに向かって降る二振りの刀、夕凪と夜刀神。
「ギャオ?」
あわてて二刀を回避するキメラ、そこに迫るは竜の翼により脚部をスパークさせた砕斗。
真達の機巧が解除され秘められた刃を開放する、砕斗がすれ違うと同時に抜刀が完成する。
「‥‥やっぱカンフーだけじゃあ、なあ」
台詞とともに真達を鞘に納める砕斗。青のキメラはその言葉を聞く前に地に伏していた。
「ホウ! ハウ! ホウワァー!」
「キメラは牙を捨て無手に頼り、我らはその手に爪牙を持ちて戦う、か」
赤猿の繰り出す攻撃をゼロで受け止めながら冥姫は呟く。
一発一発は強力な威力を持つキメラの攻撃を彼女はいくつかは受けつつも樹木を盾にし、獣のように受け流して威力を削ぐ。
さらに死角を突いた幸乃の攻撃がキメラの攻撃力を削っていく。
「ホゥワアアアアア!」
傷口から流れる血を舐め、咆哮を上げるキメラ。その場から跳び上がり足刀を冥姫の喉笛に叩き込もうとする。
だが、その攻撃は彼女の頬を掠め、逆に自らの顔を掴まれる。
逃げようと自らを掴む手を引き剥がそうとするキメラ。だが豪力発現により強化された冥姫の前にそれは叶わない。
そのまま近くの樹木に叩きつけられる赤猿。反動で大きく跳ねる。
「逃がしません、付き合ってもらいます‥‥瞬天速」
跳ねた先にいたのは先回りした幸乃、彼女の赤い爪が煌めき、キメラの身体をさらに赤く染める。
鮮血に身体を染め、なおも立ち上がるキメラ。傷ついてもなおその目は怨嗟と殺意に満ちている。
だが二対一という戦力差を埋めるには程遠い。
結果、二人の爪の前に力尽きるのであった。
「同じ手は喰わねぇ‥‥」
剣でキメラの蹴りを受け止めブレイズが言う。
彼の復活は戦況を大きく傾かせた。体術と剣が緑猿の攻撃を遮り、防御を崩す。
それによりエリザの攻撃も通ることになり、キメラのダメージは次第に増えていく。
「これで‥‥っと!」
止めとばかりに剣を振り上げるブレイズ。
キメラは眼前に回し蹴りを放ち牽制すると後ろに跳躍し距離をとる。
「来るぞ」
「はい」
キメラの技に警戒する二人、緑猿は彼ら目掛けて空高く飛びかかる。
強靭な脚力を活かした、跳躍からの蹴り。
緑猿の最大の武器がブレイズの頭部を狙う。
だが、それが命取りとなった。
「‥‥殺界開放! ドラゴンブラァァッド!」
ブレイズは身を屈めることにより攻撃を回避し、紅蓮衝撃を込めた一撃を飛び上がり様に見舞う。
体勢を崩すキメラ。そこに膝を入れ、浴びせ蹴りで追い討ちをかける。
背中から着地する両者。キメラもすぐに立ち上がり起き上がろうとしたブレイズに蹴りを放とうとするが、エリザの輝く斧槍がそれを阻む。
その隙を突き、足をすくい上げるように切り上げるブレイズ。そして剣を逆手に持ち
「御託は要らねぇ‥‥ファフナーブレイクッ!」
殴りつけるような斬撃を叩き込む。強烈な一撃に吹き飛ぶキメラ。
だが致命傷には至らず、まだ立ち上がろうとする。
「こっからはお前の仕事だ‥‥後は頼んだぜ」
ブレイズの言葉にうなづくエリザ。
最後の錬力を持って、竜の爪を発動させるとキメラに向かって一直線に突撃する。
覚醒により光を帯びた斧槍は緑の獣に吸い込まれ、そしてその腹を貫いた。
「‥‥上出来だ」
親指を立てて賞賛する彼に対し、エリザは微笑んで頭を下げた。