タイトル:【JTFM】強襲キメラ軍団マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/01/24 12:13

●オープニング本文


 南米コロンビアの更に南端、ジャングルに覆われた一帯の奥深くにその建物はある。
 『キメラ闘技場』
 そう呼ばれているその建物はバグアのみならず、コロンビアやペルーの親バグア派の人類にもキメラ同士の戦闘を見学させる娯楽施設である。
 キメラ闘技場はバグア四天王やキメラ四天王を始めとする強固な防衛力を有しており、UPC南中央軍もうかつに手を出せない無敵の要塞の様であった。
 しかし今ではコロンビアもほぼ人類の勢力圏となり、キメラ四天王も3体まで倒された。
 そしてボリビアがUPC加盟後初の国外派兵を決定すると、その戦力をも取り込んだUPC南中央軍は遂にキメラ闘技場の短期攻略を目指して動き出したのだった。
 陽動、陸空補給路寸断、潜入、強行突入――いくつもの部隊が連携し攻略を進める中、UPC南中央軍隠密歩兵部隊がラスト・ホープの傭兵達と共に隠し通路からキメラ闘技場への潜入を試みようとしていた。



 鬱蒼と木々が茂る深いジャングルの中を兵士達が黙々と歩を進めている。
 足場はぬかるみ、視界も木々に覆われていて良いとは決して言えない。
 それでも厳しい訓練を受けた兵士達の足取りに淀みはない。
 だがキメラ闘技場まで後少しという所で徐々に霧が立ちこめ、視界が少し霞んできた。
「隊長、霧が‥‥」
「気にするな。目的地はもうすぐだ。ここまで来れば迷う事はない。このまりゃしゅるめ‥」
 隊長は毅然とした態度で前進を指示しようとしたが、急に舌が痺れてもつれた。
 いや、おかしいのは舌だけではない。もう体まで痺れてきている。
(何だこれは!?)
 隊長が地面に跪いて周囲を伺うと、自分以外の者達も同じように痺れているようだ。
 まともに立っているのは傭兵達だけで、どうやら満足に動けるのは能力者だけらしい。
「ニャーーーハッハッハッ!!!」
 その時、どこからともなく妙な高笑いが響いてきた。
 どうにか声が響いてくる方に目を向けると、そこには!
 赤いマントをなびかせて、頭に王冠を被り、アルパカに跨った黒猫の姿があった。
(え゛?)
 隊長は現状にまったくそぐわないメルヘンな光景に我が目を疑った。
 瞬きした。
 もちろん消えない。
 幻覚かと疑ったが、もちろん違う。
「愚かニャ人間ども! 貴様らが以前この隠し通路を使って我が家に忍び込んだ事くらいクシィー様はお見通しなのニャ! だからクシィー様はこの辺りに麻痺液を噴霧する植物キメラを配置しておいたんだニャー!」
 黒猫が人語を話す様子を見て隊長はようやくキメラ四天王の中にケットシーと呼ばれる二足歩行猫がいる事を思い出した。
 見た目は1.5m足らずの黒猫であるが、王冠に仕込まれたスイッチで煙に包まれると全長5mの化け猫に変化し、その力は並のキメラを遙かに凌駕するという。
(だが‥‥何故アルパカに乗っている? 何故アルパカなんだ!?)
 その疑問だけはどうしても拭い去る事ができない。
 アルパカはケットシーがニャーニャー言っている間もぼーっとした顔で足下の草を暢気にはむはむと食べている。
 もしここが敵地のジャングルでなかったら、とても和む光景だっただろう。
「ニャ!」
 ピョンとアルパカから飛び降りて、華麗に着地したケットシーは短く可愛らしい指をビシッと伸ばす。
 そして
「‥」
「‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
 そのまま5秒経過。
「え〜と‥‥フランシスカ11世、次のセリフは何だったかニャ?」
 ケットシーは構えを解いて振り返るとアルパカ(どうやらフランシスカ11世という名前らしい)に尋ねた。
「‥‥」
「あぁ、そうだったニャそうだったニャ」
 アルパカにセリフを教えてもらった(らしい)ケットシーはもう一度アルパカによじ登り
「ニャ!」
 ピョンと飛び降りて、ビシッと指を伸ばす。
 どうやら一からやり直したようだ。
「まんまと罠に引っ掛かったお馬鹿ニャ人間ども! 獣の王たるキメラ四天王のケットシーがクシィー様に成り代わって成敗してやるニャー!!」
 ケットシーがヒゲをピンピンに伸ばし「どやっ!」とでも言いたげな得意満面な顔をする。
 もちろん兵士達からはこれといったリアクションはない。
「ど、どうして誰も恐れおののかないのニャ? お前ら不感症かニャー!?」
「‥‥」
 アルパカがぼーっとした顔をケットシーに向ける。
「あ、お前ら今痺れてるんだったニャ。それじゃあ仕方ないニャ」
 アルパカに何か突っ込まれた(らしい)ケットシーが納得顔を浮かべる。
「シモベ達よ、出てくるニャーーー!!」
 ケットシーの声に応じてジャングルから鶏の様な姿のバジリスク型キメラと大グモ型キメラが姿を現し、空からは不吉な羽音を響かせて多数のスズメバチ型キメラが飛来してくる。
「そいつらをギタギタにしてやるのニャー!!」
 そしてケットシーの号令で一斉に襲いかかってきたのだった。

●参加者一覧

弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
九条院つばめ(ga6530
16歳・♀・AA
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
桐生 水面(gb0679
16歳・♀・AA
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA
フェイト・グラスベル(gb5417
10歳・♀・HD
煌・ディーン(gc6462
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

 濃い麻痺霧の中では傭兵達も全員が麻痺状態だったが、兵士達を救うためにそれぞれ行動を開始する。

「あーくそっ! えげつねぇ状況の癖にどんだけファンタジーだよっ!」
 宗太郎=シルエイト(ga4261)はケットシー達の場違いなやり取りに毒づきながら兵士達の護衛についた。
「歩いて喋る猫か‥‥可愛いけど、こんな形で相対したくなかったな」
 ケットシーを愛らしく思うアセット・アナスタシア(gb0694)も兵士の護衛につく。
「いいか、誰かが毒受けたとかありゃすぐ言え! 俺らの手間よりてめーらの命を一番に考えろ!」
 同じく兵士の護衛についた煌・ディーン(gc6462)が声を張り上げる。

「えーと‥‥長靴を履いた猫‥?」
「ユーリさん、それ別の猫や」
 桐生 水面(gb0679)がユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)のボケに突っ込みをいれる。
「え? 違う? なんだ、世界一周とかしてないのか」
「ほら、いつまでもボケとらんで、うちらは植物キメラ探してこの霧なんとかするで」
(‥危機的状況の筈なんだけど、今ひとつ緊迫感がないのは何故でしょう‥‥?)
 そんな2人の様子を見ていた九条院つばめ(ga6530)が首を傾げたが、すぐに気を取り直してバジリスク型キメラの1匹に『ソニックブーム』を放つ。
 すると傷を負ったバジリスクがつばめに向かってきた。
(グローリー‥‥いえ、ソフィアは今どこで何をしているのか‥‥? ケットシーにその事を聞いてみたくはありますが、今はこの危機を乗り切らないと)
 つばめはそんな事を思いつつ、バジリスクを連れたまま植物キメラを探しに森へ入った。
 
「ねぇ、ただ戦うだけじゃつまらないから賭をしようよ」
 弓亜 石榴(ga0468)はケットシーにそんな提案をした。
「賭ニャ?」
「そう、賭です。キメラ四天王のケットシーさんは闘技場ではヒーローで、観客がケットシーさんの勝ちに賭けるなんて日常茶飯事ですよねっ」
「もちろんニャ〜。我が輩は常勝無敗だったからニャ〜。相手がドラゴンでも我が輩は‥‥」
  フェイト・グラスベル(gb5417)も話を合わせると、ケットシーは得意顔で胸を反らしベラベラと自分の自慢話を始めた。
「‥‥という事なのニャ」
「うん。よーく分かったよ。それじゃあ賭はOKだよね。私達が勝てばアナタの肉球をぷにぷにする。負‥」
「分かったニャ。その条件で構わないニャ〜」
 すっかり天狗になっているケットシーは負けた時の条件すら聞かずOKした。
「じゃあアルパカさんをもふもふしてもいいですかっ!?」
 これ幸いと、フェイトが瞳をキラキラさせてねだる。
「構わないニャ」
「じゃ、審判役はケットシーとアルパカね」
「お二人にしかこの重要な審判役はできないんですっ」
「分かったニャ」
 あっさり頷くケットシー。
「じゃあ、審判だから手出し禁止だよ」
「分かったのニャ。任せるニャ」
 人語を解するとはいえ、知能はやはり猫並なのだろうか。
「‥‥」
 アルパカは溜息をつくと再び草を食べ始めた。



 その頃、兵士達は20匹のスズメバチ型キメラに襲われていた。
「お前らにはこっちの方が効くだろう!」
 宗太郎は武器を小銃「シエルクライン」に持ち替えて乱射し、蜂を撃ち落してゆく。
「こう敵が多いと対応が難しい‥‥けど、兵士の人達を護らなきゃ」
 アセットはコンユンクシオで斬るのではなく、分厚い刀身で叩き潰す。
「だー! ブンブンうぜぇ! マジで勘弁してくれよ、ほんとによぉ‥‥」
 ディーンは素早い蜂に苛立ちながらも炎剣「ガーネット」振るって両断した。
 しかし倒せたのは半数ほどで、残りは兵士達に毒針を突き立て、たちまちアチコチから「あー」「うー」という救いを求める呻き声が上がる。
 3人はすぐ兵士の張り付いた蜂を排除して『キュア』で治療を施すが、その間も蜂が他の兵士を襲うため治療しきれない。
 しかも3体のオオグモ型キメラも兵士を襲い始めていた。
「ちくしょう! こっちは手一杯だってのによぉ!」 
 クモは糸を吐いて兵士を繭状にし、牙を突き立てる。
「ここは頼む!」
 宗太郎は手近な蜂を全て倒すと『瞬天速』でクモに襲われている兵士を助けに行く。
 その分アセットとディーンの負担が増したが、何とか蜂は全滅させた。
 しかしまだ毒を受けた兵は残っている上、時間もかなり経過している。
(くそっ、間に合うか‥‥)
 『キュア』を施すディーンに焦りが生まれる。
「こっちは終わったよ。全員なんとか助かりそう。ディーンさんの方は?」
 それでもアセットの方はギリギリ『キュア』が間に合った。
「こっちもコイツで最後だ」
 ディーンの方も最後の1人だったが、顔色は青白く、目の焦点は合わず、体は小刻みに震え、かなり危ない状態だ。
「おい! 俺はアンタに死なれたとこで別に困るわけじゃねー。けどな、報酬が減るかもだし、何より周りにメソメソされりゃ気分わりぃ。だから死ぬな! 死神ぶんなぐってでも生きろっ!!」
 ディーンは必死に『キュア』を施しながらヘタくそな励ましを続ける。
 すると、やがて兵士の体の震えが止まり、顔に赤みが戻ってきた。
「ふぅ‥‥峠は越えたか‥‥」
 ディーンは額に浮かんでいた汗を拭い、安堵の吐息をつく。
「あ‥りが‥と‥‥ぅ」
 まだ麻痺状態にある兵士が切れ切れに感謝の言葉を口にする。
「べ、別に礼言われるような事してねーし‥‥。ただ、死なれたら気分わりぃ‥そんだけだ!」
 ディーンはそっぽを向いてぶっきらぼうに言い放ったが、その顔はやや赤かった。



 つばめは木々を遮蔽物として利用してバジリスクをいなしながら、探索を続けていた。
(麻痺霧を噴霧し続けているのなら霧の濃い場所が発生しているかもしれません)
 目を凝らして霧の濃い方へと移動していると、不意に腐臭が鼻を突く。
 そっち足を向けると、そこには巨大で毒々しく赤色をした花が咲いていた。
(‥‥ラフレシア? いえ、きっとこれが麻痺霧を噴霧しているキメラ)
 つばめが隼風を振るって茎を切断すると、花の中央から噴出していた霧が止まった。
 だが、その間にバジリスクがつばめの背後に迫り、鉤爪で背中を抉る。
「くぅ!」
 つばめは傷を負いながらも振り向き様に槍を振う。
 体を裂かれたバジリスクは後に跳び退ると口を大きく開く。
「!」
 危険を察したつばめはバックステップ。避けた場所に石化のブレスが吐きかけられた。
 バジリスクはそのままブレスを吐きながらつばめを追ってくる。
 つばめは走って避け続けたが、不意に何かに足をとられてバランスを崩した。
「えっ?」
 見ると足にクモの糸が絡んでいた。
 すぐに槍で糸を断とうとしたが既にバジリスクが眼前に迫っており、ブレスを吐こうとしている。
「くっ!」
 つばめが腕で顔を覆った直後、ブレスが浴びせられた。
 皮膚が痛み出し、続いて感覚がなくなり、やがて石化が腕と体を中心に広がっていった。
 幸い頭は無事で、足もまだ少し動く。 
(お願い治して)
 つばめがエミタに意識を集中すると石化は止まった。
 だが、治りきる前にバジリスクが嘴で突いてくる。
 脳裏に腕が砕け散る光景がよぎったつばめは咄嗟に転がって背を向けた。
 嘴が背中を何度も抉って激痛が走るが、体を砕かれるより遥かにマシだ。
(早く治って!)
 やがて石化はほぼ解けたが、茂みを掻き分けてクモが現れ、今度はクモの糸で動きを封じられた。
 だが、つばめは強引に糸を千切り、何とか片腕だけ自由にする。
「破っ!」
 そしてブレスを吐こうとしていたバジリスクに『ソニックブーム』を放ち、無形の刃で首を跳ね飛ばして絶命させた。
 しかし、その間にクモが牙を突き立て、体に毒が巡る不快感がつばめを襲う。
「負ける‥もんかーっ!」
 つばめは槍で体を覆う繭を裂いて自由の身になると『流し斬り』でクモの横に回り込む。
「勢っ!」
 槍を一閃させて足を薙ぎ払い、更に上段から振り下ろして胴体部を真っ二つにした。
「はぁ‥はぁ‥‥」
 つばめはその場に膝をつき、エミタに働きかけて毒を浄化すると、傷ついた体で次のラフレシアを探しに向かったのだった。



 ユーリは『探査の眼』を使ってラフレシアを探し出し、長弓「万里起雲煙」で遠距離から確実に仕留め続けていた。
 だが3体目を探している最中、クモの糸に囲われた場所に入って先に進めなくなってしまう。
「焼き切って行くのが楽かな?」
 ユーリは炎剣「ゼフォン」で糸を払った。
 熱気を帯びるだけのゼフォンでは焼き切れはしなかったが、普通の剣よりは排除しやすい。
 しかし作業中に『探査の眼』で背後から敵が近づいている事をユーリは察知した。
 振る向くとクモがいて、糸を吐きかけてくる。
「ちぃ!」
 ユーリが咄嗟に剣で払うと糸は刀身に絡みつき、クモは更に糸を吐いてきた。
 ユーリは剣を放して跳び退りながら弓を構え、着地と同時に射る。
 だが、クモは矢に貫かれながらも突進してきた。
「ぐはっ!」
 痺れた体では避けられず、弾き飛ばされたユーリは更に糸で動きまで封じられる。
「くそっ! やはり痺れたままじゃ戦い辛いか‥‥」
 ユーリは『キュア』を自分に施して麻痺を治し、糸も引き千切る。
 そして牙を剥いて突進してきたクモを避け、擦れ違い様に機械剣「ウリエル」を閃かせて足を切断。
 そのまま後ろに回り込み、超濃縮レーザーブレードで胴体部を斬り裂くと切断面から大量の体液が噴き出す。
 それでもクモはまだ生きていたが、頭も潰すとようやく動かなくなる。
「余計な手間がかかったな‥‥」
 ユーリはゼフォンを回収するとラフレシアの探索を再開した。



 桐生は定期的に『レジスト』を使って麻痺を抑え、『探査の眼』を使いながら霧を周囲に行き渡らせられる開けた場所や霧の濃い場所に目星をつけて探索していた。
 そして順調に2体破壊し、3体目は何重にも囲われたクモの糸の向こう側に発見する。
「これは切り払っていかんと無理やな‥‥」
 桐生は明鏡止水を振り下ろした。
 しかし糸はむにょ〜んと伸びるだけでなかなか切れない上、刀身に絡んでくる。
「なんやこれ〜」
 桐生が四苦八苦していると『探査の眼』が頭上の敵を感知。見上げるとクモが上から降ってきた。
「うわぁ!」
 桐生が大剣を放して跳び退ると、間一髪で下敷きにならずに済んだ。もし麻痺状態のままだったら潰されていた事だろう。
「なんや、ここはアンタの巣やったんか? でも‥アンタの相手は後や!」
 桐生は小銃「ルナ」を抜くとラフレシアに向かって撃ち放つ。
 数発糸に引っかかったが残りは命中。花弁が飛び散り、幹に穴が穿たれ、霧の噴出が止まった。
「よっしゃ!」
 だがその間にクモが接近し、突き出された4本の前足が次々と桐生に突き刺さる。
 更に牙を剥いて噛み付こうとしてきたが
「うちなんか食べても美味ないでっ!」
 桐生は銃身を口腔にねじ込んでトリガーを引いた。
 発射された弾丸がクモの頭部を貫通。
 桐生はクモの足から逃れ、糸に掛かったままの大剣を掴んで引っこ抜くと大きく振りかぶって跳躍。
「死にさらせぇーー!!」
 落下の勢いまで加えられて叩きつけられた大剣は甲殻を砕き、肉を裂き、クモを完全に真っ二つにして地面まで抉った。
「さて、みんなも苦戦しとるやろうし、はよラフレシア片付けて合流せんとあかんな」



 一方、石榴とフェイトはケットシーとアルパカは抑えたものの、バジリスクに苦戦していた。
 石榴は小銃「S−01」で気を引いたはいいが、跳び上がって迫るバジリスクの鉤爪を避けられず負傷。
 フェイトはブレスを吐けなくするため咽を狙ってランス「エクスプロード」を振るったが避けられ、嘴で反撃を受けた。
 なんとかAU−KVの装甲の厚い部分で受け、後は穂先や柄で受けて弾いたが、そこからは防戦一方になる。
 やがてバジリスクは首をもたげて大口を開けた。
「石榴さん、私の後ろに!」
 フェイトは石榴を庇いつつランスを地面に突き立て、炎を爆発させた。
 しかし舞い上がった土砂は1m位で石化ブレスを吹き飛ばせる程ではなく、ブレスはフェイトを直撃。
「キャー!」
「フェイトさん!」
 石榴は石化してきたフェイトを抱えると『瞬天速』でその場を離れ、木の陰に身を潜めた。
「うぅ‥しくじっちゃったです‥‥」
 フェイトは全力で石化に抵抗しているが完治にはまだ少し時間が掛かりそうだ。
「まぁまぁ、どっちにしても他の人達が来てくれるまでの辛抱だしね!」
 石榴はフェイトを励ますと木の陰から足止めのため足や頭を狙って銃を撃つが、それでもバジリスク達はジリジリと間を詰めてくる。
 そして木のすぐ側まで来た時、
「フェイト、無事?」
「遅くなってすまなかったな」
 アセットと宗太郎が駆けつけてくれた。
「アセット♪ 宗太郎先輩♪」
 思わずフェイトの顔に笑みが浮かぶ。
「1匹は俺に任せろ」
 バジリスクは向かってくる宗太郎に大口を開けた。
「させるか!」
 だが宗太郎はブレスを吐かれる前に『瞬天速』で懐に飛び込み、嘴を串刺して無理矢理閉ざす。
 そして爆炎で口を潰すとそのまま首から腹までを縦に斬り裂き、更に体を旋回させ、横一文字にも一閃。
 そうして十字に切り裂かれたバジリスクは血飛沫を上げて倒れ伏した。

 もう1匹のバジリスクはアセットにブレスを吐こうとしたが
「させないよ!」
 アセットに気を取られた隙に木の陰から飛び出した石榴が『急所突き』で咽を切り裂き、傷口からブレスが溢れ出す。
「一撃必殺‥! どんな相手だって斬り倒すのみ!」
 その隙にアセットがコンユンクシオを大きく振りかぶり、バジリスクを袈裟斬り。
「一撃必殺! どんな相手でも内側からドカンです!!」
 更にフェイトもエクスプロードを突き入れ、体内で炎を爆発させてトドメを刺した。



「審判さん、これって私達の勝ちだよね〜」
 石榴がニヤニヤしながらケットシーを見た。
 周囲の霧も薄くなっているので、ラフレシアも掃討されたのだろう。
「そ、そうみたいだニャ‥‥。約束通り、もふるなりプニるなり好きにするがいいニャ」
 ケットシーがヤケクソ気味に胸を張る。
「わーい♪」
「じゃ、遠慮なく〜」
 フェイトが嬉しそうにアルパカに抱きつき、石榴がケットシーの手を握る。
「もふもふ♪」
「プニプニ」
「もふもふ♪」
「プニプニ」
「もふもふ♪」
「プニプニ」
「もふもふ♪」
「プニプ‥」
「いい加減にするニャーー!!」
 あまりにもしつこいのでケットシーが切れた。
「‥‥」
 アルパカもどことなく迷惑顔だ。
「えー」
「もう少しもふりたいですっ」
「ニャ」
 ケットシーは2人を無視してアルパカに跨った。
「今回は大人しく引いてやるニャ! でも次に会った時はこうはいかないニャ! 覚えておけニャーー!!」
 そんな捨て台詞を残し、もの凄いスピードで傭兵達の前から姿を消したのだった。



 その後、命を落とした兵士はいなかったが重傷者は7人いたため、キメラ闘技場への突入は40人程で行われた。