タイトル:KV VS F−15Eマスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/30 22:44

●オープニング本文


「ロサンゼルスの町がバグアの空爆を受けました」
 オペレーターが端末を操作し、スクリーンにロサンゼルスの町を映し出す。
 倒壊したビル。大穴が空いた道路。溶解した車などが連続的に流れてゆく。
「ロサンゼルスがバグアの襲撃を受ける事は少なくないのですが、問題は今回空爆に使われた兵器です。空爆の瞬間を見た者の証言によると、空爆を行ったのはヘルメットワームではなく戦闘機だったそうです」
「戦闘機だと? おいおい! まさかその空爆をしたのは人間だったなんて言わないだろうな!?」
「実は当初はその可能性も考慮されていました。なぜなら、追跡に向かった軍の戦闘機のガンカメラが捕らえた映像でも、それは確かに戦闘機、それもF−15E、通称ストライクイーグルと呼ばれる戦闘爆撃機だったからです」
 スクリーンの映像が町の様子から戦闘機の映像に切り替わった。
 そこには確かに揚力を受けてで飛ぶ事を前提としたフォルムを持つ、明らかに地球側の兵器と分かる機体が映っている。
「しかし、軍の戦闘機との交戦の折、敵戦闘機がミサイルをフォースフィールドで防いだ事が確認されました」
 スクリーンにF−15Eがミサイルに着弾したにも関わらず、爆炎の中から無傷で飛び出してくる映像が流れた。
「この事から、このF−15Eは占領地区でバグアに鹵獲され、改造を施されたものなのではないかと考えられています。確認されているF−15Eの数は5機。デルタ隊形を組んで現れるそうです。武装は20mmバルカン、ホーミングミサイル、フレア弾が搭載されている事は確認されています。どうやら武装に関しても地球産の兵器を流用している様ですね。皆さんにはこのF−15Eを撃墜していただきます」

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
トレイシー・バース(ga1414
20歳・♀・FT
伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
ルクシーレ(ga2830
20歳・♂・GP
ダニエル・A・スミス(ga6406
28歳・♂・FT
レイアーティ(ga7618
26歳・♂・EL
ゼシュト・ユラファス(ga8555
30歳・♂・DF
御崎 緋音(ga8646
21歳・♀・JG

●リプレイ本文

 7機の戦闘機が音の壁を破り、その身に不可視の衝撃波を纏いながら海上を疾走する。
 ロサンゼルスを襲った5機のF−15Eを迎え撃つべく、じっとロサンゼルス郊外で待機していた傭兵達の下に海上からロスに向かって飛行してくる所属不明機をレーダーがキャッチした報が入ったのは、つい10分前の事。
 所属不明機の数は5機。
 目標のF−15Eにほぼ間違いないだろうと判断した傭兵達は緊急スクランブルをかけ、機上の人となった。
「それにしても敵がロスに来る前に発見できてよかったぜ」
「ホント。これ以上ロスが火の海になるところは見たくないものね」
 共にアメリカ人であるトレイシー・バース(ga1414)とダニエル・A・スミス(ga6406)が無線を通して会話を交わす。
「レイさん‥‥無理しないでくださいね」
 レイアーティ(ga7618)のコクピットに心配そうな御崎緋音(ga8646)の声が響く。
 緋音はおそらく前回出撃した時にレイアーティが自分を庇って被弾した時の事を思い出しているのだろう。
「分かっていますよ。以前と同じ過ちを繰り返したりしません。緋音君を何度も泣かせたくはないですからね」
 そう答えたが、もし緋音に危険が迫れば、やはりレイアーティは自分の身を呈してでも緋音を守ってしまうだろう。
 それ程にまで緋音はレイアーティにとって愛しい人なのだ。
 そして同じように緋音もレイアーティに危険が迫れば身を呈して助けようとするだろう。
「クロスボウ1より各機、僭越ながら、当機が指揮を執らせていただく‥‥といっても、基本は事前作戦どうりですが‥‥」
 確認の意味も込めて伊藤 毅(ga2610)は各機にもう一度指示を復唱する。
 部隊コールサインを
 ダニエル機は『ウッドアロー』
 榊機は『アローヘッド』
 ゼシュト機は『ロングボウ』
 伊藤機とトレイシー機のロッテを『クロスボウ』
 レイアーティ機と御崎機のロッテを『アーチェリー』
 とし、
 敵機を右から順にボギーA(アルファ)・B(ブラボー)・C(チャーリー)・D(デルタ)・E(エコー)とナンバリング。
 そして簡単に戦術を確認し終わった頃、ちょうどレーダーが未確認機を捉えた。
 確かにそれはF−15Eで、この辺りを飛ぶF−15Eなど、敵に鹵獲されたものしかありえない。
 傭兵達は未確認機のIFFを『敵機』に表示させ、能力も覚醒させると本格的な戦闘準備を整えた。



「各機! さっさと終わらせて帰還するぞ! 心して掛かれ!」
 先制するのはゼシュト・ユラファス(ga8555)の駆るディアブロ。
 ゼシュトはスロットルを全開まで叩き込み、敵陣中央に突進。
 ぐんぐんと敵が迫る最中、身体にかかるGに耐えながら操縦桿上部のハットスイッチを操作して敵機を次々にロックオンしてゆく。
「挨拶代わりだ‥‥受け取るがいい」
 5機全てをロックし終わると同時にトリガーを引く。
 機体下部に取り付けてあったK−01の発射口が開き、計250発の小型ミサイルが機体前面で花開くように広がり、敵機に向かって飛び散ってゆく。
 一瞬後。
 前方にまるで壁の様に無数の火球が産まれた。
 どこを見ても火の球しか見えず、爆音しか聞こえない。
「ヒュー! こりゃ派手だねぇ〜!」
 おどけたダニエルの声が無線から響いたが、聞き取れた者はいなかった。
 そして火の壁の向こうから左右に2機づつ傷ついたF−15Eが飛び出してくる。
 A、B、D、Eだ。
「ENGAGE!!」
 トレイシーが叫ぶのに合わせて各機がそろぞれ担当の敵機を追う。
 しかし、ゼシュトが担当するCだけは姿が見えない。
「どこだ!?」
 ゼシュトが視線を火の壁の左右に向けたその時、火の壁を突き破って目の前にCが姿を現した。
 しかも、真っ直ぐこちらに向かってくる。衝突コースだ。
「くっ!!」
 ゼシュトは咄嗟に操縦桿を傾け、ディアブロを旋回させて回避したが、すれ違いざまにCは20mmバルカンを掃射。
 ゼシュトのディアブロに銃弾を浴びせてゆく。
 幸い、20mmではディアブロの装甲には傷一つつかなかったが、ゼシュトのプライドには傷がついた。
「やってくれたな‥‥」
 ゼシュトはフットペダルと操縦桿を操作してディアブロを急旋回させ、すぐさまCの追撃に入った。
 しかしCも機体を旋回させており、2機は再び正面から向かい合う形となる。
 Cはゼシュト機をロックオンしようとしているのか機首をこちらに向けてくるが、ゼシュトは巧み操縦桿を動かしてそれをさせない。
「さてと‥‥いい加減、墜ちて貰わんとな‥‥」
 ゼシュトはそう呟くとスロットルを全開まで上げ、2機を再び衝突コースに持ってゆく。
 そして今度はすれ違いざまに操縦桿を倒して機体を90度旋回。
 翼のソードウィングをF−15Eに抉りこみ、Cの機体を大きく切り裂いてゆく。
 接触時の衝撃で機体は大きくバランスを崩したが、ゼシュトはすぐに機体を立て直し、Cの姿を確認する。
 Cは炎をあげながら落下している最中だった。
 そして海面に到達する前に爆発した。



 ダニエルはK−01の炎から逃れたAを追うため、ワイバーンの特殊能力である『マイクロブースト』を発動させた。
 すると、途端に機体が劇的にスピードを上げ、猛烈なGがダニエルの身体に襲い掛かる。
 ダニエルの身体はずぶずぶとシートにめり込んでゆき、視野も急速に狭まってゆく。
「ぐぅぅ〜〜!!」
 手も操縦桿から引き剥がされそうになる加重だが、ダニエルはそれら全てに歯を食いしばって抗い、敵機の姿を目で追う。
 そして、まるでGなど受けていないかのような巧みな操縦で跳ねるような軌道の旋回を行うと、Aのすぐ後ろにピタリとつけ、すぐさまロックオン。AAMを発射する。
「ミサイル発射っと、ソルジャーならFOX2ってか?」
 白煙を引きながらAAMは真っ直ぐAに向かって飛んでゆき、着弾。Aは炎を包まれた。
 普通のF−15Eならこれで終わりだっただろうが、バグアに鹵獲された時に防御面を強化されているのか、Aはまだ飛行能力を保っただった。
 そして機体を旋回させるとダニエルから離れる軌道をとる。
 しかし、ダニエルは再び『マイクロブースト』を発動。
 すぐにAの後ろを取り返す。
「こいつのスピードは他のと比べてもダンチなんでね、簡単には逃げられんぜ」
 そして再びAAMを発射。
 Aは回避行動をとるものの、距離が近すぎるためにかわしきれずに着弾。再び炎に包まれる。
 だがAもしぶとかった。
 これもバグアの科学技術の成せる技であろうか?
 既に飛んでいるのが不思議なぐらいボロボロであるにも関わらず、未だ墜落する事なく、ダニエル機から遠ざかろうとする。
 だが、それを黙って見過ごすダニエルではない。
 3度『マイクロブースト』を発動。
 猛烈なGに耐えながら軌道を行い、Aの後ろにつけてトドメのAAMを発射。
 Aにはもう回避軌道をとる力さえ残っていないのか、そのままAAMを受け、今度こそ四散した。
 「鹵獲兵器はウォーの基本っちゃ基本だが、ヤツらから見れば圧倒的に劣るF−15Eをチューンして何がしたいのかね?‥‥不意討ちならまだアンダースタンなんだが」
 ダニエルはバラバラになって海面に落ちてゆくF−15Eの姿を見ながら首を傾げるのだった。



 榊兵衛(ga0388)はK−01が作った炎の壁を迂回してこちらに向かってくるBの射線のギリギリ外の斜め前から突撃。
 Bとすれ違う寸前に操縦桿を小刻みに動かしつつ慎重にターゲットを照準器に捕らえ、トリガー引く。
「くらえ!」
 キューンとドラムが回転する音が響いた後、振動と共にガトリング砲が火と噴き、1秒間に何十発もの弾丸が曳光弾と共に光の筋を引きながら、F−15Eに吸い込まれていった。
 F−15Eは胴体に斜め一列の穴が穿たれ、黒い煙を引きながらすれ違ってゆく。
 だが、撃墜するほどのダメージは与えられなかったらしく、榊のバイパーの後ろをとるつもりなのか、機体を傾け、旋回を始めている。
 しかし、それを易々と許す榊ではない。
「元は頼もしい味方機だったとはいえ、敵に回った以上、手加減してやる筋合いはないからな」
 榊はフットペダルと踏みつつ操縦桿を斜めに傾け、スロットルを開ける。
 斜めになった重力と加速によるGを身体に感じながら榊のバイパーは急旋回。
 旋回してこちらを狙おうとしていたBのさらに後ろをとった。
「『槍』の名に掛けて、速やかに本来あるべき場所に戻してやる事にしよう。すなわち、墓場にな」
 機体が斜めなったままの状態でハットスイッチを動かし、Bをロックオン。まずUK−10AAMを発射。
 そして一呼吸置いてから短距離高速型AAMを選択し、発射。
 ミサイルが機体から離れる軽い振動の後、真っ直ぐBに向かって飛んでゆくUK−10AAMとは少し軌道を変えて短距離高速型AAMがBに向かって飛んでゆく。
 Bは自分に狙って飛んでくるUK−10AAMに気づいたらしく、バーナーを吹かしながら急旋回を繰り返し、どうにかUK−10AAMは振り切る。
 しかし、その頃には別角度からBを狙っていた短距離高速型AAMが既にBの間近まで迫っていた。
 そして短距離高速型AAMにBが気づく間もなく着弾。
 瞬く間にBは炎に包まれ、バラバラと部品をばら撒きながら海面へ落下していった。



 レイアーティと緋音のロッテはK−01の炎を大きく迂回してこっちに向かってくるEを向かえ撃とうとしていた。
「KITTEN、11時に敵機です! 前回のリベンジマッチです。‥‥行きますよ!」
「はい! ENGAGE」
 まずはレイアーティのディアブロがスロットルを噴かして先行。進行ルート上にいるEを一瞬、照準器に捕らえるが、Eは右旋回をして照準から逃れた。
 しかし、レイアーティの後ろにピッタリと追従していた緋音のバイパーがディアブロの影から飛び出し、Eを照準器に捕らえる。
 そしてバイパーに搭載された試作型G放電装置から迸った紫電がEを撃つ。
 緋音はさらにAAMを放とうとしたが、放電によるダメージはそれほどでもなかったらしく、Eはすぐに緋音の照準外へと逃れてゆく。
 Eは標的を緋音機に定めたらしく、バイパーの後ろに回り込もうとする軌道を取るが、二人の巧みな連携軌道の前にその隙を見出せず、逆に2人の射線から逃れるためグルグルと旋回軌道を続ける。
 しかし、緋音がEの行く手を塞ぐように前に出、それを避けるためEが左旋回を行った、その時。その進路を予測して先回りしていたレイアーティが遂にEを照準に捕らえた。
「後少し、後少し‥‥もらいました!」
 ギリギリまで敵を引き付け、ロックオンと同時にトリガーを引く。
 3.2cm高分子レーザー砲の光が空間を焼きながら走り、F−15Eの機体を貫いた。
 Eは機体の中央に大穴を開け、そこから黒い煙を引いていたが、依然として飛行能力と戦闘力は保ったままだ。
 しかし、レイアーティはこの隙を逃さず、スロットル全開まで開き、ディアブロのスピードを限界まで上げてEを追う。
「くぅっ、G‥‥が‥‥」
 身体にかかるGに耐えながら右手で操縦桿を保持し、左手で武器パネルを操作してソードウィングを展開。
 F−15Eを追い抜き様に袈裟切りにした。
 しかしアタックの衝撃でレイアーティのディアブロは大きくバランスを崩して失速。
「レイさん!!」
「くっ!」
 傍で追随していた緋音を驚かせたが、なんとか体勢を立て直して墜落は避けた。
 一方、ソードウィングに切り裂かれたF−15Eはそのまま墜落、海の藻屑と消えた。



 伊藤とトレイシーのロッテはDがK−01の爆炎を突き抜けてきたところを伊藤が狙い撃とうとしたが、Dは機体をロールさせ、高度を下げて照準を外す。
 しかし伊藤も操縦桿を傾け、バイパーのスラスターを吹かしながらDを追って降下。
 降下中に機体をロールさせ、さらに操縦桿を引いて機首をDに向けるとフットペダルで機体を微調整、照準をDに合わせる。
「エネミーガンレンジ、FOX3」
 自衛隊時代に培った経験から、ほぼ無意識の内にコールしてトリガーを引く。
 20mmバルカンが火を噴き、無数の銃弾がDのF−15Eに突き刺さった。
 Dはバーナーを噴かして銃弾の雨を抜け、伊藤のバイパーの後ろを取ろうとするかのように右旋回を始める。
「チャンス!」
 それを見たトレイシーはDの後を追って自身の機体を左に旋回させた。
 しかし、それを見越していたかのようにDは急制動をかけてトレイシーに自分の機体を追い越させると、トレイシーの後ろをとった。
 Dの機体だけは他の4機と違ってやけに動きがいい。どうやら隊長機のようだ。
「シット!!」
 トレイシーは自分の失策を毒づいたが、もう遅い。
 トレイシーはDを振り切ろうとスロットルを全開にまで叩き込み、操縦桿を左右に振るが、Dはピッタリと後ろにつけてくる。
「こちらクロスボウ2。後ろにつかれたわ。ヘルプッ!!」
「こちらアローヘッド。すぐに行く! 待ってろ!!」
 ちょうど自身が担当していたBを仕留め終えたところだった榊がトレイシーの無線を聴き、すぐさま操縦桿を引いて機首をトレイシー達の方に向けるとスロットルを全開にした。
 しかし、榊が駆けつける前にトレイシーはDにロックオンされ、ホーミングミサイルを発射される。
 トレイシーの乗るR−01改のコクピット内に警告音がビービーと鳴り響き、後ろから死を招くミサイルが急速に迫ってくる。
「くっ!」
 トレイシーは操縦桿を倒し、機体を大きく左旋回させながらラージフレアを後方にばら撒く。
 空を焼きながら散らばるラージフレアは上手くホーミングミサイルを誘導し、R−01改の後方で2つの火球を咲かせた。
「ふぅ‥‥」
 警告音も止み、思わず安堵の息を吐くトレイシー。
 そしてその間に駆けつけた榊が、Dの後ろにピッタリくっついた。
 榊はDを照準器に収めようと操縦桿を小刻み操るのだが、Dは上手く機体を左右に振ってそれをさせない。
 だが、そうして時間が経てば経つほどトレイシーの危険は増す。
「くそ! 大人しくしろ!」
 焦れた榊がそう毒づいた時。
「シーカーオープン、ロックオン、FOX2」
 無線を通して伊藤の声が静かに響き、一瞬後に榊の目の前でDが炎に包まれた。 
 そして下方から伊藤のバイパーがDの脇を抜け、上空に向かって通過してゆく。
 伊藤はDがトレイシーと榊に気をとられている隙に死角である下方に潜り込み、そこから短距離高速型AAMでDを撃墜したのである。
「敵影なし、ミッションコンプリート、RTB」
 伊藤はレーダー内の全て敵機の撃墜を確認してからコールし、ようやく肩の力を抜いて大きく息を吐いた。
「ふぅ‥‥。海外研修で負けた恨み、ようやく晴らす事ができましたね‥‥」
 伊藤は口元に小さく笑みを浮かべながら独り言を呟くと、他の6機に帰投するよう指令を発信した。