●リプレイ本文
「うっわ、何か変なの来た!」
それが依神 隼瀬(
gb2747)のシェアト(gz0325)の第一印象だが、他の者も概ね同様だった。
「おぉ。またしても新しいゼオンの何番目かを見つけてしまいましたっ」
ただ、ヨグ=ニグラス(
gb1949)だけは妙に嬉しそうだ。
「誰かと思ったら‥まったく面倒なのが出てきましたね」
「まさか新司令官がゼオンジハイドとは予想外です」
「でもきっと強い事は強いんだろうなぁ‥‥一応ゼオン・ジハイドなんだし」
しかし周防 誠(
ga7131)や新居・やすかず(
ga1891)や隼瀬にはシェアトのテンションは少々頭が痛い様である。
「司令官が‘末端の戦力と同じ’で初めから攻撃をするような余裕の‘ない’行動しか‘出来ない‘のか」
リヴァル・クロウ(
gb2337)がシェアトを言葉で煽って注意を自分達に向けようとする。
『フッ、脆弱な地球人風情には理解できんだろうが我々バグアは強い者ほど前に出る。スーパーバグアたる俺様ならば最前線に立つのは当然だろう』
「なるほど、確かに貴方の実力はスーパーなのでしょう。僕では足元にも及ばすまい。‥‥それでも今この場において、貴方は僕には敵いませんよ。そのような無様な機体を駆る事で精神が萎えた今の貴方と。水中とはいえ最高のKVたる骸龍を駆る僕と。どちらが勝るかなど、火を見るより明らかと言うものです」
「そうそう。スーパーとか言ってる割に乗ってる機体はダッセぇのな、俺の獣魂の方が数億倍カッコ良いね♪」
『ははっ、これはハンデだ。俺様が本気を出してしまったら貴様らなど一瞬で倒せてしまうからな。でなければミラクルカッコイイ俺様がこんな機体に乗ってくる訳がないだろう。ハハハハハッ!』
レイヴァー(
gb0805)と龍深城・我斬(
ga8283)も挑発するが、シェアトの尊大な態度と勝手な自己解釈による脳内変換は崩れない。
「ああぁぁー!! スーパーとかミラクルとか耳につく高笑いとか、いちいちイラッと来るぅっ! でも気にしちゃダメだ、目の前に集中だ俺! がんばれ俺っ!」
隼瀬はイライラする自分に渇を入れて何とか集中力を保つ。
「しかし、色々と台無しでぶち壊しですね、主にシリアスな空気とかそういうのが‥‥」
なんだか気勢を削がれてしまった新居は大きく溜め息をついた。
『では、そろそろ始めるか。まずは最高のKVと豪語した貴様からだ。俺様こそがこの宇宙で最高で最強だと教えてやる!』
「最高や最強を自称するとは小物の証拠だな」
シェアトの布告をリヴァルがすかさず煽る。
「来ます。全機、敵前衛に向けて一斉射用意!」
そして新居の合図で各機が魚雷発射管を開いた。
(「愛子ちゃん‥私は戦うよ。もう二度と愛子ちゃんみたいな子を出さない為に。勿論、私流にね」)
弓亜 石榴(
ga0468)は心の中で友人に語りかけると先頭のHWに向かってトリガーを引いた。
各機から発射された様々な魚雷の半数程がHWに命中。
周防の魚雷はゴーレムに命中した。
敵前衛が爆発によリ発生した気泡に包まれて見えなくなるが、やがてバラバラになったHWが海底に沈降してゆくのが見えた。
だが敵の後衛部隊からも魚雷が放たれ、プロトン砲の砲撃も始まる。
「各機、敵の砲撃に注意しつつ予定通り分散して下さい!」
傭兵達は魚雷と砲撃を避けつつ敵の狙いを分散させるために上中下に分かれようとした。
しかし一斉射に時間を取ったため敵前衛が既に眼前に迫っている。これでは分散している暇はない。
「せめてC班は後衛に向かわせないと‥‥」
「ほら、こっちこっち〜。こっちの蜜の方が甘いよー」
新居と石榴が迫るMWにガウスガンを正射して注意を引き付ける。
「予定通りとはいきませんか‥‥」
周防はC班として敵後衛に向かう予定だったが、小型魚雷ポッドをHWに放って目を眩ませ、ゴーレムはフォトンランチャーで狙撃する。
「この隙に2人は先に行って下さい。自分は後から行きます」
「了解!」
「砲撃と魚雷を黙らせてくるですよっ!」
隼瀬とヨグは周防に援護されつつブースト機動で一気に敵後衛に向かう。
そして残った周防にはゴーレムがハープーンを射掛けてきたが、咄嗟にリヴァイアサンを人型に変形させるとアクティブアーマー(AA)で受け止めた。
しかしその隙にゴーレムは間を詰め、トライデントで突きを放つ。
周防はそれも受け止めたが、槍先はAAを貫通して胴体部にも傷を負う。
「やはり装甲の薄さは否めませんね」
それでもAAで攻撃を防ぎきった周防は『システム・インヴィディア』を起動するとレーザークロー(LC)で槍を持つ腕を斬り飛ばし、胸に突きいれ、そのまま装甲を引き裂くと傷跡に爪を抉りこみ、体内からゴーレムを破壊したのだった。
その頃、ヨグと隼瀬の接近に気づいた敵後衛はプロトン砲と魚雷で迎撃を行っていた。
「当たらないで当たらないでっ!」
ヨグはそう祈りつつグネグネと動き、隼瀬は攻撃を見切ってギリギリで避けようとしたが、避けられたのは魚雷だけで、プロトン砲は容赦なく2機の装甲を貫き、浸水を知らせる警告灯が幾つもコクピットに点灯する。
だが2人は構わず前進を続け、ヨグが対潜ミサイルを、隼瀬が多連装魚雷「エキドナ」をマンタに発射。
マンタのヒレが千切れ、胴体部にも大穴があいた所に隼瀬がM−25水中用アサルトライフルを撃ちこみトドメを刺す。
「よし、行けヨグ!」
「近接攻撃っ。援護お願いね!」
そしてヨグはマンタがいた場所を抜けてTWに接近。隼瀬が小型魚雷をばら撒いて牽制してくれている間に変形すると強装アクチュエータ『サーベイジ』を起動し、LCを煌かせてTWに斬りかかった。
光の爪はTWの甲羅を易々と切り裂き、噴き出した体液が周囲を赤く染める。
しかし『サーベイジ』は知覚は上昇しないスキルであるためTWを倒し切るには威力が足りなかった。
TWは体を旋回させてヒレをビーストソウルに打ち据えて弾き飛ばし、2体のマンタがその後を追ってヒレで切り裂く。
「危ないヨグ!」
隼瀬はマンタを牽制しながら警告を発したがTWのプロトン砲はビーストソウルを貫通。数瞬後に爆散した。
「ヨグーー!!」
隼瀬は機体を変形させるとマンタの攻撃をAAで防ぎながらヨグが傷を負わせたTWに水中機槍斧「ベヒモス」を叩き込む。
ベヒモスの刃は傷跡を突き破って体内深くの心臓部まで達し、TWの息の根を止めた。
だが、もう1体のTWのプロトン砲が隼瀬のリヴァイアサンに突き刺さる。
「くそっ! これ以上はもたない‥‥」
隼瀬がそう思った直後、光球がTWを直撃する。
「遅くなってすみません」
それは周防のフォトンランチャーによる狙撃だった。
周防は甲羅が融解した箇所に更に2発撃んでTWを完全に破壊する。
そして2人は残りのマンタも倒すと仲間の援護に戻るのだった。
一方、新居と石榴はHWとメガロの相手をしていた。
まずはガウスガンを撃ちまくっていた石榴だが、メガロが弾幕を抜けて接近してくるとダッシュで相手の懐へ飛び込んで変形。
突進してきたメガロの頭をガッチリ押さえ込むと、両手のLCから光の爪を伸ばす。
「鮭をも仕留める一撃をくらえ。ニャニャニャニャニャーー!!」
そしてメガロの頭に猫パンチの連打をお見舞いしてズタズタに引き裂いていった。
周囲からHWがフェザー砲を撃ち込んでくるが我慢する。
とにかくメガロが潰れるまで爪を振るい続けた。
新居は『インヴィディア』を常時使用し、ガウスガンの掃射でHWの回避範囲を狭めてホーミングミサイルを発射。ミサイルの直撃で動きが止まった所をガウスガンで更に追い撃ちする。
そこにHWがLCを振り上げて突進してきたが、「エキドナ」を発射して足を止めるとガウスガンを連射。
「石榴さん!」
「ほいなー任せて!」
損傷して動きを止めたHWに石榴のアルバトロスが組み付いて猫パンチ。
だがHWは爪で引き裂かれながらもLCで反撃しようとする。
「わっ! ちょっと待って!」
石榴は咄嗟にHWのアームで手で掴んで止めたが、この状態ではこちらも攻撃できない。
しかしHWの方はフェザー砲を石榴に向けてくる。
「いやいや、それもダメだって!」
だがフェザー砲が発射される前に新居がガウスガンでHWにトドメを刺してくれた。
「ふぅ〜‥助かったよ新居さん、ありがと」
「いえ。ではこのまま残りも倒してしまいましょう」
そうして2人は1体ずつ確実に敵を倒していった。
シェアトが駆るメガロ・ワーム・カスタム(MWC)は宣言どおりレイヴァーの骸龍に向かって猛スピードで突進してきた。
「速い!」
そのスピードは想定以上で、リヴァルと我斬は勢いの軽減を狙ってガウスガンを撃ったが、シェアトは最小限の動きだけで避け、そのスピードはまったく衰えない。
『いくぞ! スーパーバグアクラッシュ!!』
骸龍のモニターが超スピードで迫るMWCを捉え、シェアトの嬉々とした叫びがコクピットに響き渡る。
水中では骸龍の機動力は激減するため何時もの様な縦横無尽の回避軌道は行えない。
水中用キットのバラストと高出力ブースターを駆使した三次元の動きを最大限に活かし、急停止・急始動・急旋回をランダムに織り交ぜた最小限度の動きで最大の効果を出す回避を行うしかない。
レイヴァーは骸龍の各種センサーを最大にし、MWCの突進よって発生する水流の動きを正確に読み取ると絶妙のタイミングでスロットルを吹かし、操縦桿を倒し、バラストを排出。
まるで水流に乗る様な華麗な軌道でMWCのチャージを回避してみせた。
『なに? この俺様のスーパーバグアクラッシュを避けただと!』
「驚いておられる様ですが、僕の骸龍はこの程度の攻撃を避ける事など箸で豆を掴むよりも簡単なのでございます」
本当は一つ手順を間違えただけでも直撃の危険を孕んだギリギリの機動なのだが、レイヴァーは余裕の態度を見せつけた。
「これで宇宙最強を名乗るとは‥‥呆れたものだ」
そしてリヴァルが煽りを入れる。
『黙れ! 今のは単なる小手調べだ!』
シェアトは骸龍の遥か後方で急旋回すると、再び超スピードのチャージを仕掛けてきた。
「なんだ、またラムの攻撃か。やはりラム戦法に頼らなければ何も出来ないか」
リヴァルがシェアトの冷静さを奪おうと更に煽る。
『この俺様が同じ攻撃を繰り返すわけがないだろう!』
シェアトはそう叫ぶとMWCをドリルの様に旋回させて突進してきたのだった。
『スーパーバグアトルネード!!』
だが、今度もレイヴァーはギリギリで避けてみせた。
「また同じ結果でございましたね」
不敵に笑うレイヴァー。
「捻りを加えて名前を変えただけか‥子供でも思いつく幼稚な‥」
『‥おい、俺様はさっき‘黙れ’と言ったはずだぞ』
シェアトはMWCの機首を巡らせるとリヴァルのリヴァイアサン目掛けて加速した。
リヴァルは咄嗟に機体を変形させて盾で受け止めようとしたが、MWCのラムは盾を構えるよりも先にリヴァイアサンを刺し貫き、胸部装甲を破砕して背中まで抜けた。
「ぐぅっ!」
『耳元でギャーギャーうっとおしい! ただ喚く事しかできない羽虫は今すぐ消えろ! 目障りだっ!!』
シェアトはリヴァイアサンを差し貫いたままの至近距離からプロトン砲を連射。
ラムを引き抜いて離れた直後に機体が爆発した。
「リヴァル!」
レイヴァーは友の身を案じながらもMWCが動きを止めた好機を逃さずガウスガンを発射。装甲の継ぎ目や間接部を撃ち抜いてゆく。
『ちっ、当たったか。まぁいい。次はお前の番だ!』
「何度やっても同‥」
その時レイヴァーは言葉で言い表せない何か嫌な予感を覚えた。
そして今までと同様に突進してくると思われたMWCが骸龍の手前で急停止。
『スーパーバグアビーーム!!』
至近距離からプロトン砲を放ってきたのだった。
だが、直感に従って撃たれる前から回避機動に入っていたレイヴァーは辛くも避けた。
しかし避けられたのは3連射までで、4発目と5発目が骸龍を胴体部を大きく抉って突き抜ける。
「っ!」
『トドメだ! スーパーバグ』
そしてシェアトがMWCを再加速させようとした、その時。我斬のビーストソウル改が剛装アクチュエータ『インベイジョン』Aとブーストを駆使してMWC に急接近。
「必っさぁぁつ、ウルトラスーパーグレートデリシャスデラックスワンダフルボンバー!!」
『インベイジョン』Bを発動させ、LCで切りかかった。
『なんだとぉーー!!』
おそらく普段のシェアトならば避けられただろうが、我斬のセリフに過剰に反応したためまともに喰らった。
「これが、ビーストソウルの新しい力だ!」
『くっ‥‥こんな辺境の星にこの様な絶技の使い手がいようとは‥‥。さては貴様、スーパー地球人だなっ!!』
「‥‥へ?」
『ならば俺様も本気でいくぞ! ウルトラスーパーグレートバグアデらシャスデ』
「ちょっと待て、今噛まなかったか?」
『か、噛んでなどいない‥‥。ウルトラスーパーグレートバぎゅアデ』
「また噛んだぞ」
『ぅ』
「しかもさっきより早ようございますね」
『‥‥う、うるさいっ!! 貴様ら今すぐ皆殺してやるっ!!』
「自分で噛んだくせに逆ギレかよ!?」
我斬のつっこみには耳を貸さず、シェアトは全力のプロトン砲を放ってビーストソウル改を粉砕した。
「く‥‥馬鹿だが強い、か。厄介だがやりようは‥あるか?」
我斬は機体が爆発する寸前に脱出装置で離脱する。
『フッ‥恐ろしい敵ではあったが、やはり俺様の敵ではないな‥‥』
そうしてシェアトが悦に浸って隙だらけなった瞬間、『インヴィディア』を起動させた周防が背後からフォトンランチャーで撃ち抜く。
『うぉ!?』
「接近戦を仕掛けます。援護して下さい」
「了解!」
周防は仲間達が銃撃でMWCに集中攻撃を加えている間に『エンヴィー・クロック』も起動しつつ接近し、機体を人型に変形させてLCとAAを構える。
対するシェアトはMWCを蛇行させて弾幕を抜けると機首を周防のリヴァイアサンに向け、加速を始めた。
(「問題はタイミングと、機体が耐えきれるかどうかか‥‥」)
周防は猛スピードで迫るMWCのラムに意識を集中。
『スーパーバグアチャーージ!』
「ここだ!」
そして周防は絶妙なタイミングで受け止めたがラムはAAを貫通、そのまま左腕を破壊して左肩まで突き抜けた。
「片手は差し上げる。その代り‥ここで落ちろ!」
しかし周防は残る右手のLCをカウンターで繰り出し、MWCに抉り込んだ。
『なにっ!?』
MWCは自身の推進力によって頭部から尾までをLCで切り裂かれ、機能を完全に停止する。
『ちっ、やはりこんな魚では俺様のミラクルドライブテクにはついてこられなかった様だな』
シェアトは毒づくと脱出装置を作動させて一気に海上に飛び出し、そこからは自力で飛び去っていった。
「何とか撃退できましたね」
「えぇ‥‥それにしても、色々な意味で大変な敵でした」
傭兵達は妙な疲労感を覚えながらも負傷者を回収して帰還したのだった。