タイトル:【JTFM】グリム強襲マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/11 15:18

●オープニング本文


 人類の攻勢によりバグアより解放されつつある南米コロンビア。
 この地にバグアが建造した軍事基地の一つ、メデジン基地はカリ基地がUPC南中央軍に攻め込まれた際に増援を送ったものの、ビッグフィッシュは2機とも撃墜され、地上を行く増援部隊は道半ばで半数以上が傭兵部隊に潰された。
 更に、増援を送っている隙にチリKV海兵隊と傭兵部隊によって基地施設の一部は破壊され、駐留している兵力の大部分が削られた。
 こうして兵力を激減させられたメデジン基地は、現在、基地周辺に厚い防壁を築いて立て篭もり、徹底防戦の構えをとっていた。
 対するUPC南中央軍は100機を超えるKVでの包囲殲滅戦を敢行。圧倒的な物量で持って敵の防衛網を押し切ろうとした。
 しかし敵はレックスキャノンのプロトン砲や、ゴーレムのスナイパーライフルや重ガトリング砲などを駆使してKV部隊を寄せ付けず、頑強な抵抗を続けていた。
 UPC南中央軍のKVは突撃を敢行するたびに撃ち減らされていったが敵の数も徐々に減り、メデジン基地の攻略は目前だと思われた。




●メデジン基地攻略軍駐屯地

「ようやく敵の抵抗にも陰りが見えてきたみたいですね」
 UPC南中央軍の総指揮官ジャンゴ・コルテス大佐の補佐官であるソフィア・バンデラス准尉は膠着状態になっていたメデジン基地攻略軍の駐屯地の視察に訪れ、後方に配備された戦闘指揮車のレーダーで戦況を見守りながら自分の護衛としてついて来た鉄木兼定中尉に話しかけた。
「はい。こちらもかなりの被害が出ていますが、後一息で落とせるでしょう」
 鉄木中尉は指揮車から顔を出し、双眼鏡で前線の様子を伺った。
 メデジン基地とUPC南中央軍が敷設した陣地の間には数十機にも及ぶKVの残骸が横たわり、敵基地からは未だにプロトン砲の砲撃や数多の銃声が轟いているものの、それも初期の頃より遥かに下火になっている。
「ここを落とせばコロンビアの本格的な復興に着手できますね。平和‥‥というにはまだ遠いですけど、少なくとも国民の暮らしは今までより楽になるはず‥‥。そうなれば‥‥」
 ソフィア准尉が何かに想いをはせて微笑を浮かべた、その時。
「レーダーに感あり! 味方KV部隊の側面から何者かが接近してきます。これは‥‥小型キメラです! 数百匹もの小型キメラ群がKV部隊目掛けて進攻してきます!」
 レーダー班がそう叫んだ。
 ソフィア准尉も見つめるレーダーに未確認を示す光点が灯った直後、たちまちレーダーが無数の光点で埋まってゆく。
 それに続いて今度は敷設してあった地殻変化計測器から次々とデータが送信されてきた。
「地中にも感あり。巨大な物体が複数KV部隊に向かって進攻しています。正確な数は分かりませんが、おそらく10機はいます!」
「くっ! アースクェイクまで来たのか‥‥。地殻変化計測器からのデータを随時各KVに転送。地中からの呑み込み攻撃に備えさせろ」
 現場指揮官が至急各KVに指示を飛ばす。
「小型キメラ群が向きを変えました。この方角は‥‥いけない!! 小型キメラは地殻変化計測器に向かっているものと思われます!」
「なに? 奴らの狙いはそれか。至急小型キメラを迎撃しろ!」
「‥‥ダメです! 数が多すぎて進攻を止めきる事が出来ません」
 レーダーに映る光点が次々と地殻変化計測器と重なってゆき、それと同時に送られてきていたデータ量が減少してゆく。
「地殻変化計測器、次々と破壊されています!」
 レーダー班が悲鳴の様な声で報告する。
「鉄木中尉、この状況は‥‥」
「非常にマズイです。これではKV部隊はアースクエイクを感知できない。ヘタをすれば全滅だ」
 次々と悪化してゆく戦局に、ソフィア准尉と鉄木中尉は表情を曇らせた。



●メデジン基地最前線
 小型キメラ群により地中の警戒網を断たれたKV部隊に地中からアースクエイクとサンドウォームが大口を開けて襲い掛かる。
 襲われたKVの半数近くは辛くも避けたものの、運悪く口に捕らえられたものは呑み込まれ、体内に生えた削岩機の様な無数の牙でズタズタにされた。
『ギャアーーー!!』
『た、助けてくれぇーー!!』
 アースクエイクやサンドウォームの体内から不気味な破砕音が響き渡り、無線機から悲痛な悲鳴が木霊する。
 だが、敵はアースクェイクやサンドウォームだけではなかった。
『グ、グローリーグリム‥‥』
 そう、異星人型バグアのグローリーグリム(gz0255)もアースクエイクの1機に乗り込み、ここに攻め込んできたのである。
「さ〜て、暇を持て余してたところだ。暴れさせてもらうぜ」
 グローリーグリムはニヤリと笑うと超加速で手近なKVの懐に飛び込み、ハルバードを一閃。瞬く間に破壊した。
 そしてグローリーグリムがハルバードを振るう度に次々とKVが破壊され、吹き飛んでゆく。
 グローリーグリムに蹂躙された部隊の指揮系統は完全に混乱し、そこにアースクエイクとサンドウォームが襲い掛かり、次なる犠牲者を産んでゆく。

「グローリーグリム様。命令された機械は全て壊してきましたニャ」
 そして一部隊を壊滅させたグローリーグリムの元に身長が1.5m程で二足歩行をする黒猫型キメラのケットシーが戦況報告にやってくる。
 ケットシーは小型キメラ群を率いて地殻変化計測器を破壊する命令を受けていたのだ。
「おぅ、ご苦労さん。手が空いたならお前もこっちを手伝え。こいつら歯ごたえねぇから、俺はイマイチやる気がでねぇんだよ」
「む、無茶言わないで下さいニャ! 我輩の爪がいかに鋭くてもロボットと戦える程ではないニャ〜! 素手でロボットと戦えるのにゃんてグローリーグリム様ぐらいのものだニャ〜‥‥」
 従者のネコにすら呆れられるグローリーグリムだった。
「根性のねぇ奴だな〜‥‥。じゃあ、敵が片付くまで俺の後ろにくっついてろ」
 グローリーグリムはケットシーにそう命じると、ハルバードを構え直した。
「そうさせてもらいますニャ」
 そしてケットシーは巻き込まれないようにグローリーグリムから少し離れた。



●メデジン基地攻略軍駐屯地
「仕方ない‥‥総員撤退!! 至急戦線から離脱せよ!」
 指揮官が発した苦渋の選択を耳にした鉄木中尉は無線機を掴み、トニ・バルベラ(gz0283)曹長と連絡を取った。
「トニ曹長。KV部隊の撤退を支援しろ。このままでは全滅しかねない」
『了解』
 トニ曹長は簡潔に応答すると、新鋭機の少ないUPC南中央軍では珍しいシラヌイ(しかもスク水模様がペイントされている)で支援に向かう。
「ソフィア准尉、至急後方の傭兵部隊を呼んで下さい。彼らにもKV部隊の撤退支援をしてもらいます」
「了解しました」
 ソフィアは無線を開き、傭兵部隊に出動を要請した。
「だが、今から向かって果たして何人助けられるだろうか‥‥」
 鉄木中尉は今もレーダー上から消えてゆく味方識別信号を見つめながら苦々しく呟いた。

●参加者一覧

神崎・子虎(ga0513
15歳・♂・DF
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
月影・透夜(ga1806
22歳・♂・AA
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
九条院つばめ(ga6530
16歳・♀・AA
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
ウラキ(gb4922
25歳・♂・JG
ルノア・アラバスター(gb5133
14歳・♀・JG

●リプレイ本文

 一斉に撤退を開始したUPCのKV部隊だが、メデジン基地からはその後背に向けて容赦なく砲撃が加えられていた。
 足の遅いS−01やテンタクルスは真っ先に標的になり、先に逃げのびたR−01やアルバトロスにはEQやSWが大口を開けて襲い掛かる。
 そんな仲間達を救うため、後方から9機のKVが出撃する。


「私たちの出番がなければ一番よかったんですけど‥‥ミミズに加えてグリムまで出張ってきたのなら、そうも言っていられません。まだ戦場には多くの味方機がいます‥‥急がないと」
 九条院つばめ(ga6530)は全機が無事撤退できる事を願っていたが、望遠カメラの先では既に何機ものKVが大破する光景が映り、つばめの胸を痛ませる。

「1機でも、多く、助け、ないと‥‥。それに、しても、あの、シラヌイの、塗装は、一体‥?」
 ルノア・アラバスター(gb5133)はトニ・バルベラ(gz0283)曹長のシラヌイのスク水ペイントが気になるらしい。
「トニさんもここに? 良く会うね‥。ところで‥‥」
 トニとは戦友であるウラキ(gb4922)もペイントについて何か言いたげだ。
「トニ‥‥まあ趣味趣向は其々だからな‥‥」
 月影・透夜(ga1806)などはそう言いつつも深く嘆息している。
「これは‥! 僕の趣味じゃなくてその‥‥」
 本当に趣味で施している訳ないのだが、頂き物なため悪く言えないトニはゴニョゴニョと口篭る。
「まぁ、その話は後にして今は任務を優先しよう」
「‥‥はい。後にしてくれると助かります」
 とりあえずは解放されたトニだが、後でまた色々と追求される事だろう。

「一人でも多く助けないとね! 出撃ー♪ 一気にダッシュなのだ!」
 そして神崎・子虎(ga0513)の号令で全機ブーストで加速し、戦場に向かったのだった。


 先陣を切ったのは子虎のサイファー、Anbar(ga9009)とトニのシラヌイといった足の速いKVだ。
 3機はKV部隊の最後尾より前に出ると地殻変化計測器を設置する。
「さて、ミミズさん達はどこかなー?」

 その間に三島玲奈(ga3848)の雷電が3機に合流。
「ここ敵から丸見えやん! KV壊れんの嫌やのに‥‥しゃあないなぁ‥ほんまに‥‥」
 そうボヤキつつも金や機体より結局人命優先な玲奈は両手に構えたスナイパーライフルD−02とRで敵基地に牽制攻撃を始めた。
「ミミズの分はボーナス弾んでや」

 続いてルノアのS−01Hも合流し、長大なM−181大型榴弾砲を腰溜めに構えて敵基地の防壁に向け、トリガーを引く。
 強烈な反動がS−01Hの両足を地面に沈み込ませ、轟音と共に発射された300mmの榴弾が敵陣に降り注ぎ、粉塵が舞い上がる。
「壁に、隠れても、無駄、です、よ?」
 敵への被害がどの程度かは不明だが、それで敵の砲撃は一時的に止んだ。
「皆はまっすぐ撤退して! バグアは僕たちがなんとかするのだ!」
『すまない、頼む!』
 味方機が子虎の声に呼応して全速で撤退してゆく。
「計測器に感あり! 5機こっちに向かってる」
 Anbarが仲間達に警告した。
 5人は計測器のデータを元に出現位置とタイミングを計り、敵襲に備える。
 そして地盤を吹き飛ばし、土砂を撒き散らしながら出現した3機のEQと2機のSWは付近にあった地殻変化計測器を呑み込んで破壊した。
「測定器が!」
「どうやらミミズさんもキメラと同じで測定器から破壊しにくるみたいだねー」
 5人の手元に残っている計測器は砲撃を行っていたため設置する暇のなかったルノアの物が一つだけ。
「味方機に、行かない、だけ、マシ、です、よ?」
 ともかく5人は反撃を開始。
 子虎がガトリングナックル、玲奈が試作型リニア砲、Anbarとルノアが試作型「スラスターライフル」、トニがヘビーガトリング砲でSWに集中砲火を浴びせかける。
 無数の弾丸を喰らったSWは地面に戻る間もなく全身をズタズタにされて絶命した。
「設置、完了」
 そして5人は最後の計測器からのデータを頼りに敵の奇襲を避ける。
 その際、子虎が計測器が敵に破壊される前に回収しようと飛び出したが間に合わず、自分の方が
EQの体に弾かれた。
「うわー、ダメだったのだー」
 子虎は尻餅をつきながらもガトリングナックルを発射。ファランクス・アテナイも自動攻撃を始める。
 EQは数十発の拳に殴打されながらも子虎のサイファーを押し潰そうと乗りかかってきた。
「させない!」
「往生しぃ!」
 だが、横合いからAnbarが強化型ショルダーキャノンを、玲奈がリニア砲を撃ち込んで機動を反ららす。
 そして地面に横たわったEQの口内にルノアとトニが攻撃を加えてトドメを刺す。
「よし! 残り3体です」
 だが計測器は全て破壊されてしまった。
 敵基地からの砲撃はルノアが定期的に散弾を撃ちこみ、煙幕も足したので問題はないが、地中からの攻撃はもう勘で避けるしかない。
 そして狙われたのは子虎、玲奈、ルノア。
 子虎は咄嗟に『試作型斥力制御スラスター』を発動して避けつつガトリングナックルを連射。
 ルノアは機盾「アイギス」で防いで難を逃れ、スラスターライフルとアテナイで攻撃。
 玲奈はディフェンダーで防いだものの、威力を殺しきれずに弾き飛ばされた。
 そして倒れた玲奈にSWが圧し掛かり、雷電がグシャリと嫌な音を立てる。
 玲奈は押し潰されながらも練剣「メアリオン」をSWに突き立てて斬り裂く。
 そして仲間達も周りから攻撃を加えて仕留め、玲奈はSWの下から這い出した。
「くっそー! 後でULTに請求書回したるぅ〜!」

 その後、残るEQとSWも順当に殲滅し、5人は味方機と共に後方へと下がっていった。



 少し時間は撒き戻り
 5機の少し後方ではウラキのノーヴィ・ロジーナが煙幕を張って敵基地からの射線を塞ぎ、つばめのディスタン改が機盾「レグルス」で傷ついた味方機を守っていた。
「支援を開始する」
「さぁ、今の内に撤退してください」
『すまない。俺達のために危険な目に‥‥』
「大丈夫です。誰かの盾になるのは、慣れっこですから」
「今あんた達が‥死んで良い道理は無い」
 二人は味方を背にしながら地殻変化計測器を設置し、地中の敵も警戒する。
「‥‥2機来ますね」
 そして地表に現れた2匹のSWはまず地殻変化計測器を呑み込んで破壊したのだった。

「何度見ても嫌だね‥このサイズは‥」
 ウラキはGPSh−30mm重機関砲と対空機関砲「ツングースカ」を乱射。
 それぞれの武器から排出された薬莢が地面を跳ね、火薬が断続的に炸裂する音と共に数百発の弾丸がSWに撃ち込まれる。
 SWは弾痕を穿たれながら地中に逃れた。
 ウラキは他でまだ残っている計測器からのデータを頼りに敵の位置を掴み、SWの攻撃を避けると同時に両機関砲を掃射。
 SWは体液を零しながら再び地中に逃れる。
「次は‥何処から来る‥‥」
 この時点で残っている計測器はなく、ウラキは勘で避けるしかない。
 そして真下から急襲してきたSWの攻撃を何とか機盾「バックス」で防ぐとソニックナイフを突き立てた。
 SWはそのまま地表に首を伸ばしたためノーヴィも一緒に吊り上げられたが、ウラキはナイフを掴んだまま重機関砲を体表に押し付けて0距離から発射。
「‥駆逐する‥」
 数十発もの弾丸がSWの体内を蹂躙し、破砕してゆく。
 SWが体を大きく振り、その勢いで放り出されたノーヴィが地面に激突。
「ぐぅ!」
 その衝撃でウラキの体が跳ねるが、トリガーは離さず引き続けた。
 そうして体中に無数の弾痕を穿たれたSWは自身の体液まみれになりながら息絶えたのだった。

 一方、つばめはSWが地表に現れた瞬間に対空機関砲「ツングースカ」の集中砲火を浴びせて頭部をズタズタにした。
 SWは地中に戻り、真下から奇襲を仕掛けてきたが、つばめは『イクシード・コーティング』を発動して盾で防ぐと同時にハイ・ディフェンダー(HiD)を叩き込んで刀身をSWに食い込ませ、呑み込まれるのを防ぐ。
「そう簡単に食べられたりしません!」
 そして大きく開いたSWの口腔内に機関砲を撃ち込んだ。
 SWは首をもたげてディスタン改を地面に叩きつけようとしたが、つばめはSWを蹴り、HiDを抜いて間一髪離脱する。
 つばめは地面に着地するとHiDと盾を構え、周囲の地面を油断なく伺う。
 するとSWはつばめの背後に現れた。
 咄嗟に振り返って盾を構えたつばめだが、SWは触手を伸ばしてHiDに絡みつける。
「しまった!」
 足を踏ん張って取られまいとするがSWの方が力が強く、今にも手から引き剥がされそうだ。
 しかし、つばめはSWの牽引力を利用してSWとの間合いを一気に詰める。
 そして機関砲で触手を断ち切ると、今までの攻撃で傷ついたSWの頭頂部をHiDで斬り裂いた。
「たぁ!」
 一撃目で半ばまで断ち、二撃目で完全に断ち切ってSWの頭を斬り飛ばしたのだった。



 グローリーグリム(gz0255)には如月・由梨(ga1805)のディアブロと、透夜のディアブロが向かっていた。
「もしやと思いましたが‥。また来ましたか、グローリーグリム」
「まだこっちに居たのか」
「お、いつかの二人か。久しぶりだな」
 二人の接近に気づいたグリムが嬉しそうに笑う。
「えぇ、またお会いしましたね。前回の仕切りなおし、今度こそは白黒はっきりつけましょう‥‥と言いたい所ですが」
 由梨は足を止め、その場に地殻変化計測器を設置する。
「なんだよ、お前はこねぇのか?」
「貴方にはこれが効きませんので苦手なのですよ。と言っても戦えないこと自体は惜しいですので、いずれということで」
 そう言って由梨は巨大剣「シヴァ」を構え、計測器から送られてきたデータを読み取る。
「3匹ですか‥‥」
 由梨は敵の出現位置を予測してジリジリと立ち位置を変える。
 そして敵が地表に現れると同時にシヴァを振り下ろした。
 超重量のシヴァはEQを叩き潰す様に縦に両断。
 由梨はそこから機体を一回転させ、今度は横凪ぎにシヴァを振るう。
 シヴァを喰らったEQは体を今度は上下に両断されて真っ二つになる。
 由梨はそのままシヴァを振り抜いて隣に出現していたSWにも叩きつけた。
 SWは頭部を半分近く破砕されたが、体液を撒き散らしながら再び地中に潜る。
 残るもう1匹のEQは地殻変化計測器を破壊して地中に潜った。
「計測器が‥少し厄介ですね」
 由梨はシヴァを正眼に構え、周囲の地面の変化を注視する。
 そして足元の地表で微妙な盛り上がりを捉えた直後にディアブロをバックステップさせた。
 すると直前までいた場所にEQが飛び出してくる。
「破っ!」
 由梨は着地と同時にシヴァを振り下ろしてEQを叩き潰しながら両断した。
 だが、その間に真横に出現していたSWが触手を伸ばしてシヴァを絡め取る。
 由梨はすぐにシヴァから手を離して練機刀「月光」を抜き、白く輝く光の刀身を縦横無尽に振るう。
 剣線が走る度にSWが切断され、分断された体が次々と地面落下。
 由梨が手を止める頃には6分割にされたSWが地面に横たわっていた。



「俺一人では不満か、グリム?」
「いや、タイマンは望む所だぜ」
 由梨と別れ、単独で相対した透夜が尋ねるとグリムが不敵に笑って応じてくれた。
「散々遣り合ってきた間柄だ、名乗っておこうか。月影透夜だ」
 透夜は名乗りを上げ、グリムとの間合いを一気に詰める。
 対するグリムは斧を掬い上げる様に振るって迎撃してくる。
 透夜はその一撃をHiDで受け止め、右手の機刀「建御雷」を振り下ろす。
 建御雷はガードされたが、そのまま左腕に仕込んだ機杭「ヴィカラーラ」にアグレッシブ・フォース(AF)を付与して発射。機杭がガツンとグリムの額を打つ。
「ぐはっ!」
 ダメージは薄いようだがグリムの態勢は崩れた。
 その隙を逃さず透夜はAF付与のHiDを斬り下ろし、グリムの体が袈裟懸けに斬り裂く。
 だがグリムも斧で反撃する。
 しかし透夜はHiDで受け流し、泳いだグリムの体に建御雷を突き刺した。
「くっ‥‥腕を上げたな。なら、これはどうだ?」
 そう言ってグリムは超加速を発動。透夜の眼前から消える。
「その技は前回受けた。これでどうだ!」
 透夜は慌てる事なくHiDと建御雷を水平に構え、ブーストを発動してその場で急旋回。周囲180度全てを薙ぎ払う。
「うぉ!」
 すると背後で手ごたえがあり、HiDがグリムを捉えて弾き飛ばした。
「くっあぁ〜〜効いたぜ‥‥。つえぇな月影透夜。お前みたいな奴がいてくれて嬉しいぜ」
 今度は体を横一文字に切り裂かれたグリムだが、その表情には歓喜が浮かんでいる。
「俺も意外に単純なようだ。お前との戦いを面白いと思う自分がいる」
 一方、透夜も不敵な笑みを浮かべていた。
「そろそろケリをつけよう。最大の一撃だ、ちゃんと受けろよ」
 透夜がディアブロの腰を落として重心を下げ、脚部に十分な力を溜める。
「いいだろう、来い!」
 対するグリムは両腕が白く輝き、斧も一瞬淡い赤色に輝く。
 先に仕掛けたのは透夜。
 地面蹴込むと同時にブーストで加速、グリムを間合いに捉えた直後に更に踏み込み、機体が最大速度に達したところでその加速力を腕の振りに繋げ、AF付加の建御雷を振り下ろす。
 その最速の一閃は音速を超え、空気を断ち、グリムの体も斬り裂いた。
「ぐはっ!」
 グリムの体が鮮血が飛び散る。
「いい一撃だっ! だが俺を倒すにはまだ足りん!」
 しかしグリムは血濡れの体を旋回させ、こちらも最速の一撃を放つ。
「見切ったぞ!」
 だが、透夜はギリギリでグリムの斧を見切り、ディアブロの身を反らす。
 すると斧は胸部装甲を僅かに削るだけで抜けた。
「なに!?」
 その隙を突き、透夜はAFを付与したHiDを振り下ろし、グリムの体に更に深い傷を刻んだ。
「ぐぅ‥‥」
 グリムが膝をつき、体からボトボトと血が滴り落ちる。
「やったか?」
「がはははっ! いいぜ、月影透夜! よくここまで鍛え上げた!」
 だが、それでもグリムはまだ笑っていた。
「だがまだだ! 今日は俺の方がつまらねぇ戦いしちまった。これじゃあ最高の戦いとは言えねぇ! 次は俺の方がパワーアップしてくる。悪ぃがそれまで待ってくれや」
 グリムは勝手な事を言うと、透夜に背を向けた。
「待て、グリム!」
 透夜は今後の憂いを断つ為に今ここでグリムを倒しておうとしたが、敵基地から煙幕弾が発射されて透夜の視界を奪う。
「くっ‥‥」
 視界が晴れた後にはグリムもケットシーもいなくなっていた。

 グリムの撤退を機に全機戦場を離脱。作戦は終了した。



「鉄木中尉、50機中14機が未帰還、及び大破です」
 後方の指揮車にいたソフィア・バンデラス准尉が鉄木兼定中尉に被害報告を行う。
「あの状況での強行撤退の被害としては少ない方だ‥‥と思いたいですね」
 鉄木が渋い表情を浮かべる。
「ともかく敵にも相応の被害を与え、こちらにまだ包囲網を敷けるだけの戦力が残ったのは幸いです。ただ‥‥」
「グローリーグリムですか?」
「えぇ‥。敵基地に合流したあの化け物がどう動くのか‥それが問題です」
 鉄木は重い言葉と共に重い溜め息も吐き出した。