●リプレイ本文
「まさか、こんなことになるなんてね。ここで自分が役に立てるのかは分からない。けど、何をしないといけないかは分かるよ」
ヒューストン市内が壊滅したと聞いて馳せ参じた蒼河 拓人(
gb2873)はヒューストン空港だけは何としても守るつもりだった。
「‥‥私一人の力でどうにかできたとは思いません。それでも‥‥それでも。あの時、私がもっと頑張ってればあんなに沢山の被害が出ることはなかったかもしれないのに‥‥! だから、今度は‥‥絶対に、負けない! 必ず‥‥小野塚さんたちを、止めてみせる!」
ヒューストン上空での決戦の折、一人逃げ延びた九条院つばめ(
ga6530)は強い決意と覚悟でこの戦いに臨んでいた。
「そうですね。ヒューストンで散った彼らの想いを無駄にしないためにも、今回は何としても勝って次に繋げたいと思います。ここが正念場です」
セラ・インフィールド(
ga1889)がつばめの言葉を受け、胸の内で死者へ黙祷を捧げる。
「さあ、皆行こうか。あの鷲からヒューストンを取り戻す為に!」
そして拓人の言葉を合図に各機が敵編隊の迎撃に向かう。
紺タロスの編隊にはアルヴァイム(
ga5051)のディスタン改がまずK−02小型ホーミングミサイルを放って小型HWを前面に引きずり出す予定だった。
だがK−02よりも長い射程を持つ中型HWが先にリヴァル・クロウ(
gb2337)のシュテルンと拓人のフェニックスにプロトン砲を放ち、2機は少なからずダメージを受ける。
続いて紺タロスがアルヴァイムにドリルミサイルを発射。
だが、ドリルミサイルはディスタン改の装甲を貫けず、そのまま弾かれて爆発する。
アルヴァイムはそのまま敵編隊に接近すると小型HWを全機K−02の照準に捉えて半分の250発を発射。
小型HWが拡散プロトン砲を掃射した後にファランクスで迎撃したためダメージを最小限に抑えられたが、アルヴァイムは爆炎に包まれた小型HWをスナイパーライフルD−02で狙い撃つ。
アルヴァイムは恐るべき速さで発射とリロードを繰り返す次々と小型HWを撃ち落していった。
紺タロスはアルヴァイムを止めるべく、レールガンを発射。
だが、超音速の弾丸はディスタン改を浅く傷つけて小揺るぎさせる事しかできなかった。
そうしてアルヴァイムが紺タロスと小型HWの相手をしている間にリヴァルと拓人が中型HWを狙う。
「いくぞ、リヴァルくん。合わせろ!」
2機はブーストで中型HWの下方に回り込み、まずはリヴァルがスラスターライフルを正射。
続いて拓人がオーバーブーストAを起動させ、ラスターマシンガンが撃ちながら加速して一気に肉薄。ソードウィングで斬り裂いて上昇する。
そして今度は上空からもう1機の中型HW目掛けて急降下。ラスターマシンガンを撃ちながら縦に斬り裂き、リヴァルも横合いからソードウィングで斬りつける。
十字に切り裂かれた中型HWはそのまま爆散した。
「よし、じゃあ僕は本星型に向かうね。タロスは2人に任せたよ」
拓人は機首を本星型を戦っている仲間達に向け、ブーストで加速した。
「吶喊するぞ、アルヴァイム!」
そしてリヴァルが残る紺タロスの死角に回り込んでスラスターライフルを発射する。
だが、紺タロスはブーストと慣性機動で身を回して盾で防ぎ、レールガンで反撃。
超音速の弾丸がリヴァルのシュテルンを深く抉って貫通する。
「まだだ、まだ終われん!」
その間にアルヴァイムがピアッシングキャノンを3連射。砲弾が紺タロスを直撃する。
「再生する暇など与えませんよ」
アルヴァイムは手早くリロードすると、間を置かずに更に3連射。
紺タロスの厚い装甲に阻まれて威力が減衰しているとはいえ、続け様に6連発も喰らっては如何に厚い装甲でも大きくへこんで砕け、生体部分までズタズタにされた。
堪らずタロスは身を隠すように盾を構えたが、アルヴァイムは急接近して上方に回り込み、スラスターライフルを正射して頭部を破壊する。
「これで終わりだ!」
その隙を突いてリヴァルが再度突貫。背後からスラスターライフルを浴びせかけて装甲を砕き、そこをソードウィングで斬り裂いた。
胴体の半分以上を斬り裂かれた紺タロスの体は自重で引きちぎれ、2つに分かられた体はそのまま落下して地面に激突したのだった。
小野塚愛子(gz0218)の編隊でもセラのシュテルンがK−02で小型HWを引き付け様としていたが、やはり中型HWが先にセラにプロトン砲を放ってくる。
「PRM抵抗モード20%」
セラは咄嗟にPRMを作動させたが、高熱の光はシュテルンの装甲を融解させて突き刺さる。
更に愛子の本星型HWがポジトロン砲を発射。対消滅エネルギーが装甲を吹き飛ばし、内部機構にもダメージを負わせる。
「想像以上の威力ですね‥‥。でもまた落ちませんよ」
セラは機体を立て直して小型HWロックオンするとK−02を発射。
小型ミサイル群は拡散プロトン砲とファランクスで迎撃されたが、それは予測範囲内の事だ。
「今です!」
セラの合図でハルカ(
ga0640)のR−01改が中型HWに、つばめのディスタン改と、柳凪 蓮夢(
gb8883)のシラヌイ・S型が小型HWに強襲をかける。
「ミユお姉さまと一緒だから怖くないぞっ」
『みゆのぬいぐるみ』を膝に抱いたハルカは中型HWをスナイパーライフルD−02で狙撃して態勢を崩すとアグレッシヴ・ファング(AF)で威力を増した対空機関砲「ツングースカ」を乱射。
空に大量の空薬莢をばら撒きながら中型HWに無数の弾痕を穿って擦れ違ち、敵編隊の後方で急旋回する。
続けて隣りの中型HWにもAF付ツングースカを乱射して撃墜した。
「R−01の敵じゃあないのだ」
ガッツポーズを取るハルカだが、その間に小型HWに後ろを取られて拡散プロトン砲を照射される。
「おっと」
ハルカはバレルロールで弾幕を潜り抜けると、わざとスピードを落として小型HWに接近させた。
すると、ファランクス・アテナイが無数の銃弾を小型HWに叩き込む。
そして小型HWがアテナイから逃れて距離をとったところをスナイパーライフルで狙撃してトドメを刺した。
つばめは小型HWをスナイパーライフルRで狙撃し、更に蓮夢がショルダー・レーザーキャノンを撃ち込む。
ダメージを受けた小型HWは蓮夢に拡散プロトン砲を照射。無数の光がシラヌイ・S型に被弾する。
だが、面積の狭い機体側面で受けて被害を最小限に留めた蓮夢は小型HWに接近しつつレーザーライフルML−3を発射。
そのまま機体を加速させてソードウィングを展開し、擦れ違い様に斬り捨てて撃墜した。
「柳凪さん、私は小野塚さんを抑えに行きますので後は頼みます」
そこでつばめは小型HWを蓮夢に任せ、愛子の本星型に向かった。
「今回の作戦はいかに早く敵の数を減らせるかが一つのポイント」
蓮夢はレーザーライフルをリロードすると、次の小型HWに撃ち放つ。
「私の力は微々たるモノかもしれないけれど」
だが残り2機が回り込み、3機で蓮夢の全方位から拡散プロトン砲を照射してきた。
「今の自分の力で出来る事を見極め」
蓮夢は『試作型AEC』を起動。
「それを為す」
シラヌイSの装甲に展開されたアンチ・エネルギー・コーティングが全てのプロトン砲を弾き返す。
そうして危機を脱した蓮夢だが3対1という状況は変わらない。
だが、不意に飛来したライフル弾が小型HWを撃ち抜く。
「これは?」
それは重傷のため空港の防衛をしていた熊谷真帆(
ga3826)の攻撃だった。
「コイツは私に任せてください!」
真帆は超伝導アクチェーターを起動し、小型HWに短距離高速型AAMを発射。
小型HWはファランクスで迎撃し、ミサイルの爆発に包まれながら接近して拡散プロトン砲を照射。雷電改に無数の光が突き刺さる。
「あぅっ!」
その衝撃だけでも傷に響くが、痛みに堪えて8式螺旋弾頭ミサイルを発射。
そうして真帆はとにかくミサイルを撃ち続け、どうにか小型HWを撃墜したが、その頃には自身も雷電改もボロボロになっていた。
一方、蓮夢も機体に無数の傷を負いながらも小型HW2機を撃墜していた。
その頃、愛子は3度自分の前に立ち塞がったつばめと正対していた。
『‥‥いい加減、アナタの顔は見飽きたわ。そろそろ消えて!』
「そうはいきません。言いましたよね、私。諦めが悪いって‥‥!」
つばめは愛子の荷電粒子砲をイクシード・コーティングで軽減しつつ対空機関砲「ツングースカ」を放つが、やはり簡単に避けられる。
『またこのパターン? この攻撃も見飽きたわ』
愛子は更に粒子砲を放ってくるが、つばめには耐える事しかできない。
「この前みたいに何もできずに、ただ見ているだけなんて絶対に嫌‥‥! 『swallow』、お願い‥‥!」
つばめが愛機に呼びかけるが、愛子は容赦なく粒子砲を放ち続ける。
だが、
「貴女の相手は私です」
セラがスラスターライフルを放って粒子砲を阻止した。
『‥‥お前が先に死にたいの?』
愛子は不愉快そうに言って機首をセラに向ける。
「そんなつもりは毛頭ありませんが、しばらく付き合っていただきますよ」
「無茶ですインフィールドさん! インフィールドさんも被弾してるのに!」
「それでも九条院さんよりはマシですよ」
つばめは声を上げて止めようしたが、セラはそう言ってUK−10AAEMを発射。
愛子が避けている間に接近し、PRMの命中モードに残り80の練力を注ぐとソードウィングで斬りかかった。
だが愛子は慣性機動で易々と避けてシュテルンの側面に回りこむと、至近距離から粒子砲を発射。
粒子砲が発射される度に機体に大穴が穿たれ、衝撃がセラを襲う。
「インフィールドさん!!」
セラのシュテルンは爆発、炎上しながら地上に墜落した。
『結局、少し寿命が延びただけだったわね』
(「ここで負けたら、今までの戦いが無駄になってしまう‥‥ワニキアさんにだって、笑われる‥‥!」)
愛子が改めてつばめに砲身を向けた、その時。
「お待たせー」
愛子の眼前を拓人がスモーク・ディスチャージャーを焚きながら通過。そのままぐるりと愛子の周りを1周する。
しかし本来10m四方にしか効果がないスモーク・ディスチャージャーを広域に撒いたため、煙幕は薄くなってしまう。
だが、つばめがM−122煙幕装置を撃ち込んで濃くした。
そしてハルカが放ったAF付8式螺旋弾頭ミサイルが煙を突き抜けて本星型に飛来する。
『なに?』
強化FFを張る暇もなく直撃した螺旋ミサイルは本星型の装甲を喰い破って内部で爆発。本星型に大穴が開いて煙を噴く。
『く‥油断した‥‥』
「このまま堕ちちゃえー!」
ハルカがツングースカで一気にトドメを刺そうと接近するが、愛子が先にポジトロン砲を連射。
R−01改の装甲が吹き飛び、翼が折れ、エンジンが火を噴き、機体が歪み、バランスを崩して地表に落ちゆく。
「助けてミユお姉さまーー!!」
ハルカは『みゆのぬいぐるみ』を抱きしめながら操縦桿を必死に操ると、R−01改は地面に激突する寸前で再び舞い上がった。
だが、そのダメージは深い。
「みんなゴメン! もうこれ以上戦えそうにないわ」
ハルカは仕方なく戦線を離脱した。
その頃、拓人はブースト&オーバーブーストA&スタビライザーAを発動し、本星型の側面に周りこんでスナイパーライフルを発射していた。
ライフルは避けられたが、拓人は構わずフレアを撒いて急上昇すると、本星型の頭上から一気に急降下してソードウィングで斬りかかる。
「白刃一閃‥‥この空から消えろっ!」
だが愛子は煙幕に紛れて拓人の目をくらまし、その一撃を避けた。
「えっ?」
『自分の撒いた煙で見失うなんて‥馬鹿な奴』
愛子は煙の中から粒子砲を放ち、両翼と動力部を撃ち抜かれたフェニックスは墜落しながら爆散した。
『‥残り3機』
そして愛子が残りも一気に片付けようとした時、周囲の煙幕を突き抜けてアルヴァイムの放ったK−02小型ミサイルが飛来してきた。
『っ!?』
愛子は咄嗟に避けられないと判断すると強化FFを展開。本星型が無数の爆発に包まれた。
アルヴァイムはそのまま接近すると、ピアッシングキャノンとスラスターライフルを連射する。
どちらも強化FFに弾かれたものの、本星型の練力が急速に低下した。
『このっ!』
愛子もアルヴァイムに粒子砲で反撃を行う。
並外れた高硬度の装甲にイクシード・コーティングを付与したディスタン改だが粒子砲の超高熱で焼け溶けてゆく。
だが融解したのは装甲のみで内部機構に被害はなかった。
『なんて装甲なの‥‥』
愛子が驚嘆していると、不意に後ろから重い衝撃を受ける。
それは煙幕に紛れて後ろに周りこんだリヴァルの攻撃モードのPRMを全開にしたソードウィングでの奇襲だった。
『コイツ‥‥』
強化FFで防いだので無傷ではあったが愛子は激しい苛立ちを覚える。
「小野塚、君は何のために戦っている。人間を抹消するためか」
リヴァルが愛子に問いかけた。
『‥‥リリア様のためよ。あたしはリリア様の親衛隊トリプル・イーグル。他に理由はないわ』
愛子がつまらなそうに答える。
「本当にそれだけか? 俺には君が人の心を憎んでいる様に思える」
『‥‥だったらなに?』
「確かに心は人を腐敗させる。だが、それだけではない。俺はそれを証明するために存在する! そして君に提示する。人の心の持つの可能性を!」
リヴァルは力強く訴えた。
『‥‥アナタ、馬鹿でしょ。武器を向けながらそんな事を言われたって欠片も説得力がないわ。そもそも証拠ってなに? どうやって提示するつもり? 口先だけの適当な事ばかり言うんじゃないわよ!』
しかし生半可な言葉では愛子の心には届かない。
愛子は粒子砲をリヴァルに向けたが、発射される前にアルヴァイムが割って入る。
「汝の相手は我がしよう」
そして近距離からスラスターライフルを乱射。
強化FFが本星型の眼前で煌いて防ぐが、不意のその光が消失した。
『しまった! 練力が‥』
そして光の加護を失った本星型に数十発もの弾丸が突き刺さる。
『このままでは‥‥』
機体が半壊する程のダメージを負った愛子は撤退を試みる。
「逃がすな! 一気に畳み掛けろ!!」
しかし、この好機を逃がすまいとリヴァルがスラスターライフルを放って愛子の足を止めた。
「逃しません!」
更に、つばめが愛子の前に立ち塞がって退路を塞ぐ。
『コイツ! またあたしの邪魔をして!』
愛子はつばめをポジトロン砲で排除しようとしたが、それより先にアルヴァイムがスラスターライフルを連射。
装甲を貫いた弾丸は内部機構を喰い破り、蹂躙し、破砕する。
コクピット内では計器類が爆発、モニターがブラックアウトし、操縦桿も効かなくなる。
『落ちる? この本星型HWが? まさか‥そんな‥‥』
そして完全にコントロールを失った本星型HWは炎を噴き上げ、各部で小爆発を繰り返しいたが遂に爆散し、破片を周囲に撒き散らしながら墜落したのだった。
<つづく>