タイトル:ミサイル発射台強襲指令マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/30 16:34

●オープニング本文


●ヒューストン解放戦線司令部

 その日、ヒューストン解放戦線の前線司令であるルイス・バロウズ少佐は会議室に召集した士官と傭兵達の前で苦々しい表情を浮かべていた。
「‥‥私もこの場に立つ時には皆さんに嬉しい知らせをしたいと思っているのですが‥‥。残念ながら今回も悪い知らせです。それも前回、前々回以上に悪い知らせです。つい先程、ロサンゼルス郊外の一角がジョンソン宇宙センターから発射されたミサイル攻撃によって多大な被害を受けました」
 ルイスがそう報告した途端、会議室内に動揺とざわめきが起こる。
「ジョンソン宇宙センターからミサイルが発射された事は当基地でも確認しており、その進行方向から目標がロサンゼルスである事が判明した時点ですぐにロスに警告を送りました。しかし迎撃は間に合わず、ミサイルは易々とロス郊外に着弾しました。なぜ迎撃が間に合わなかったのか調べてみた所、ミサイル発射から着弾まで5分しかかかっていない事が判明したのです。この事から使用されたミサイルは少なくともマッハ15以上の速度で飛ぶ超々音速ミサイルだと思われます」
 その事実が更に会議室内のざわめきを大きくした。
「現在ロスでは迎撃ミサイルの増強や、K−01や02といった小型ホーミングミサイルを搭載したKVでの上空警戒、更には試作型スナイパーライフルCS−01を装備したKVを地上に配備して狙撃させようともしていますが、マッハ15のミサイル相手にどれだけ効果があるのか‥‥実際のところ不明です。そのため先程、総指揮官のヴェレッタ・オリム(gz0162)中将から我々に対して可及的速やかにジョンソン宇宙センターのミサイル発射台を破壊するよう指令が下りました。そしてコレがつい先刻ジョンソン宇宙センターに向けて飛ばした無人の強襲偵察機が撮影してきたミサイル発射台の画像です」
 ルイスの背後にあるスクリーンに映し出された画像は解像度が悪いのか粒子が少し粗かったが、どうにかミサイル発射台と周囲の様子が見て取れた。
「敵はかつてロケットの発射台として使われていた施設をミサイル発射台に改造して使用している様です。そのため発射台の周囲は開けており、破壊は比較的容易かと思いましたが‥‥発射台の周囲はどうやら何らかの装甲版で囲われている様です。それと‥‥ここを見てください」
 ルイスが画像に映る発射台の周囲8箇所を指す。
「少し分かりにくいですが、ミサイル発射台の周囲には4機のタートルワームと4機のレックスキャノンが護衛に付いています。おそらくは対空拡散プロトン砲を装備していると思われます。そのため上空からの爆雷やミサイルやロケットランチャーでの攻撃は無力化される可能性が高いです。よって我々がとれる策は一つだけです。それは‥‥空からミサイル発射台に接近して降下した後に陸戦に移行、地上からの攻撃でミサイル発射台を破壊した後に空へ離脱する強襲作戦‥‥これしかありません」
 ルイスはハッキリと言い切ったが、それがどれだけ困難な作戦であるかルイス自身も十分以上に把握しているため、その表情は苦渋に満ちていた、
「空から接近した時点でHW等が迎撃に上がり、地上に降りてからもタートルワームとレックスキャノンからのプロトン砲の砲火に晒される事でしょう。そして発射台には上空からは見えない位置でキューブワームが仕掛けられている可能性も十分にあります。これは‥‥無茶と言っても過言ではないくらい危険な作戦です。しかし今作戦は時間との勝負なのです。時間を置けば敵は次のミサイルを発射するかもしれません。今回はロスの郊外に着弾しましたが、次弾は微調整が入り、市内に着弾するかもしれません。そうなってからでは遅いのです。ですから傭兵の皆さん、無理を承知でお願いします。どうか、ロサンゼルスを救うために我々に力をお貸し下さい」
 ルイスは集まった傭兵達に向かって深々と頭を下げたのだった。



●ジョンソン宇宙センター

 小野塚 愛子(gz0218)はジョンソン宇宙センター内の数々の実験兵器が納められている格納庫で偶然発見した超々音速ミサイルの威力に満足し、第二射の準備をしていた。
「珍しく使える兵器が見つかったわ‥‥。命中率は悪いけど、次はもう少しマシな所に当たるでしょ‥‥」
 しかし、ミサイルを発射台に設置している最中に重力波レーダーが敵の接近を知らせてきた。
「もう来たの? 思ったよりも早かったわね‥‥。まぁいいわ。こいつらのテストもできるし‥‥」
 愛子はそう呟くと格納庫に並ぶ、紅、紫、紺のカラーリングがされた3体のタロスを見上げた。

●参加者一覧

弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
九条院つばめ(ga6530
16歳・♀・AA
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
レイヴァー(gb0805
22歳・♂・ST
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG

●リプレイ本文

 8機のKVが高速でジョンソン宇宙センターに向かっている頃、複合装甲版の内部では超々音速ミサイルの発射準備が着々と行われていた。

「大仏爆弾の次は超々音速ミサイル‥‥大仏の時はまだおかしさもありましたけど、今回は笑っていられる状況ではないですね」
「バグアも大分頭を使うようになってきたね。けど、最近は人間が作ったものばっかり利用してるな‥‥。何か変わってきてるのかな?」
 九条院つばめ(ga6530)の言葉に蒼河 拓人(gb2873)が答える。
「何にせよ、下手に調子に乗られる前に壊してしまうとしますか」
「はい。二発目は絶対に撃たせない‥‥必ず、阻止してみせます!」
 そしてカルマ・シュタット(ga6302)の意見に同調したつばめが強い意気込みを見せた。

 そしてミサイル発射台が視認できる距離まで接近すると、漆黒の本星型HW、紅、紫、紺色のタロス、4機のHWが迎撃に上がってきた。
「黒い本星型‥‥またあの女か。縁があるのか無いのか、後ろ向きな女は早くご退場願いたいものだ」
 時任 絃也(ga0983)が苦々しげに言い放つ。

「やっほー愛子ちゃん。メイド服は着てきてくれた〜?」
 弓亜 石榴(ga0468)は本星型HWに乗る小野塚 愛子(gz0218)にゆる〜い挨拶をした。
『‥‥石榴、またアナタなの? メイド服なんて着る訳ないでしょ』
 すると愛子から嫌そうな声音が返ってきた。
「ヒドイ! 私のためなら喜んで着てくれるって言ってたじゃない!」
『そんな事! 一言も! 言ってないわ!』
「ところでこの間の返事だけどね」
 石榴は愛子の怒声など完全にスルーして話を進める。
「こんな物騒な状況じゃあ風情が無いよね。だから今度改めてお話する場を設ければ問題解決だと思うんだ、うん。という訳で、発射台を壊せたら対話イベント決定ってコトで賭けをしよう」
『お断りよ』
 即答。
『でも‥あたしを倒せたらイベントでも何でもしてあげるし、メイド服だって着てあげるわ』
 愛子はそう言うとポジトロン砲を発射し、石榴のイビルアイズの動力部を正確に撃ち抜いた。
「あれ? あらら?」
 イビルアイズがコントロールを失って落下してゆく。
『倒せれば、ね』
 愛子が小さく笑う。
「みんなゴメーン。後退するね」
 こうして石榴は早々に戦線を離脱した。


「兵装1、2、3発射準備完了。PRMをAモードで起動。マルチロックオン開始、ブースト作動」
 だが石榴が愛子の気を引いている間にソード(ga6675)、周防誠(ga7131)、カルマが4機のHWと紫のタロスをK−02小型ホーミングミサイルの射程に収められる距離まで接近し、次々とロックオンしていた。
「ロックオン完了」
「こちらもOKです。何時でも撃てますよ」
「『レギオンブラスト』、――――発射ッ!!」
 そしてソードの合図で3人は一斉にK−02を発射。
 3機を中心に数千発の小型ミサイルが放射状に広がってゆく。
 だが、HWは小型ミサイルに向かって拡散プロトン砲を発射して弾幕を展開。ミサイルの一部が着弾前に破壊される。
 そして残りのミサイルもHWのファランクスで半数近くが撃ち落された。
 結局、4機のHWを破壊するのに2500発ものミサイルを必要としたのだった。
 ソードは続けて残り500発を3機のタロスと本星型に発射。4機が爆炎に包まれる。
「降下する。空は頼むぞ」
「行きます」
 その間に時任のR−01改とレイヴァー(gb0805)の骸龍が地上に降下。

 爆炎が晴れると、強化FFで防いで無傷の本星型、半壊した紫、小破した紅、紺が姿を現した。
 そして既に再生を始めているタロスは一斉にドリルミサイルを発射。
 高い誘導性とスピードを持ったミサイルはソード、周防、カルマの各機に命中。装甲を喰い破って機体内で爆発した。
 そして紅は周防の、紫はソードの、紺はカルマの背後に回り込もうとする。
「くっ!」
 K−02発射後は地上に降下するつもりだった周防だが、紅に喰いつかれている状態では降下中に的にされるだけだ。
「誠、こっち!」
 周防が何とか紅を振り切ろうとしていると拓人から無線が入る。
 見ると、拓人がスモーク・ディスチャージャーを使いながら円を描くように飛び、広域に煙幕を展開してくれていた。
「これを使ってよ」
「助かります」
 周防はスナイパーライフルD−02で紅の頭部を狙撃して隙を作ると煙幕に突入し、拓人と共に地上に降下した。
 そして周防をロストした紅は頭部を修復後、目標をソードのシュテルンに切り変えた。


 その頃地上ではレイヴァーがブーストを使った猛スピードで発射台に迫っていた。
 当然TWやRCに砲撃されるが、骸龍の回避力を更に昇華させた高機動力の前では掠りもしない。
 だがレイヴァーはわざとギリギリで避け、敵の攻撃を自分に集めさせて他の3機が発射台に接近する隙を作っていた。

 しかし時任がある程度まで接近するとRCが気づかれ、迎撃態勢をとられる。
「邪魔だ!」
 時任は向かってくるRCにマシンガンを掃射した。
 だがRCは強靭な脚力で左右に跳ねて避けて接近し、爪でR−01改の装甲が引き裂く。
「このぉ!」
 時任はアグレッシヴ・ファングを発動し、デモンズ・オブ・ラウンド(D・O・R)を薙ぎ払ってRCの腹を斬り裂いた。
 RCは腸を溢しながら一旦距離をとり、プロトン砲を発射。
 避けられないと判断した時任は機体を融解されながらも突っ込み、D・O・RでRCを袈裟ぎりにする。
 だがRCは爪でR−01改を捉えると大顎で右肩に噛み付いてきた。
「くっ‥腕が動かん」
 肩を咥えられためD・O・Rの使えない時任はマシンガンの銃口をRCを押し当て、0距離から連射。
 高速で射出された数十発もの弾丸がRCの体をミンチに変えてゆく。
「とっととくたばれぇ!」
 やがて弾倉が空になると同時にRCの体がグラリと横倒しになった。


 一方、拓人はレーザーカノンで牽制しながらRCへの接近を試みていた。
「君の相手はこっちだ。余所見すると痛いじゃすまないぞ?」
 しかしRCはレーザーを避け、プロトン砲で拓人の接近を阻もうとする。
 高い回避能力を誇る拓人のミカガミだが、3機のCWによる強力な快音波の中ではその力を十分に発揮できず、プロトン砲が直撃。胸部装甲が完全に融解する。
 けれど拓人は速度を緩めることなく接近し、ビームコーティングアクスで斬りかかった。
 だがRCは身を屈めて避けるとそのまま跳躍し、顎を大きく開いて噛みつきにくる。
「食べられたりしないよ!」
 拓人は咄嗟に接近仕様マニューバを発動すると同時に右腕をRCの口に抉り込み、内蔵『雪村』でRCを口内から斬り裂いた。
 RCの口から体液が噴き出し、ミカガミを赤く染める。
「どうだ!?」
 しかし快音波で威力を減衰された雪村ではRCを倒し切る程の威力は出せず、RCはそのまま腕を喰い千切った。
「腕の1本くらい!」
 拓人は至近距離からレーザーを乱射したがRCが構わず爪を振るい、融解した胸部を深く引き裂き、続く一撃がミカガミの動力部を貫いた。
 コクピット内に紫電が走り、計器類が爆発。
「うわっ!」
 モニターがブラックアウトし、操縦桿がまったく効かなくなる。
 そして活動停止したミカガミにRCがトドメのプロトン砲を放ったのだった。


「蒼河さんが‥‥」
「俺が救出に行く。お前達は発射台を破壊してくれ」
「了解です」
 拓人の事は時任に任せ、レイヴァーは一気に発射台に突撃を敢行した。
 RCが追いすがりTWがプロトン砲を放ってくるが、レイヴァーはスイスイと避けて発射台に肉薄する。
 周防は発射台の前に居座るTWに向けて対空砲「エニセイ」を連射。
 高硬度の甲殻を持つTWだが、まったく同じ箇所に連続で砲弾を喰らっては耐え切れず、ヒビが入る。
 周防はそのヒビをスナイパーライフルで狙撃。
 ライフル弾が狙い違わずヒビを貫通し、体内を抉られたTWはそのまま絶命した。
 そのTWを飛び越え、レイヴァーが発射台を囲う複合装甲版に機槍「ドミネイター」を突き立てたが硬い手ごたえが返って装甲版に浅い傷を付けただけだった。
「退いて下さいレイヴァーさん。一気に破壊します!」
 なのでより火力のある周防がエニセイで攻撃を開始。
 正確無比な周防の射撃は装甲版を徐々に砕き、遂には貫通して穴を開ける。
 レイヴァーはすかさずその穴にグレネードランチャーの砲身を突き刺し、トリガー引いた。
 発射された2発のグレネードは装甲版の内側で炸裂し、3体のCWを破壊すると共に、発射台にセットされていたミサイルをも傷つけた。
 一つの爆発が連鎖的に次の爆発を産んでゆき、ミサイルの各所で次々と小爆発が起こって行く。
「これは早く逃げないとヤバそうですね‥‥」
「ミサイル発射台破壊完了。これより離脱します」
 レイヴァーは無線機に叫ぶと機体を変形させて垂直上昇を始める。
 周防はブーストとマイクロブーストを併用して全速で離脱。
 時任は拓人の脱出ポットを回収すると煙幕を焚き、煙に紛れて空に逃れたのだった。



 少し時間は巻き戻り

 発射台の上空では、つばめが愛子の本星型と対峙していた。
「生物兵器に大仏爆弾、音速ミサイル‥‥いくら何でも兵器のチョイスがちょっと節操がなさすぎると思うんですけどね‥‥!」
 つばめは通信を送ると同時にロケットランチャーを発射。
『あたしは使えそうだから使っただけよ。そういう事は作った奴に言って』
 愛子は易々とロケットを避けると荷電粒子砲を発射する。
「swallow! イクシード・コーティング」
 つばめは咄嗟にイクシード・コーティングを展開したが、粒子砲の超高熱がコーティング越しでも装甲を融解させてゆく。
 だが装甲が完全融解する前に粒子砲の射線から逃れる。
 そしてすかさず対空機関砲「ツングースカ」で弾幕を張るが、これも避けられた。
(「やっぱり私一人じゃ小野塚さんに叶わない‥‥でも!」)
「使おうと思うだけでもセンスがないですよ!」
 根が真面目で優しい性格のつばめはこういう駆け引きは苦手なのだが、発射台が破壊されるまでは1秒でも長く愛子を自分に引きつけておこうと奮起した。
(「以前戦った時より少しは鬱陶しくなった‥‥せめてそう思わせるくらいは粘らないと‥‥!」)
 しかし愛子の攻撃は苛烈を極め、続く攻撃で装甲はたちまち融解し、内部機構にもダメージを負い、各部も溶け落ちて失われ、つばめのswallowは見るも無残な姿へと変えられていった。
 機体ダメージは8割を超え、コクピット内には警告音とダメージランプが幾つも点滅する
「くっ‥‥すみません。これ以上は耐え切れそうにありません。撤退します」
 つばめは無線で仲間にそう伝えると、煙幕を本星型に撃ち込んで愛子の目を眩ませ、その隙に全速で戦闘区域から撤退した。


 ソードは紅と紫のタロスのポジトロン砲とエネルギー収束砲の攻撃を晒され、ジリジリと耐久力を削られていた。
 ソードも紫に対空砲「エニセイ」を連射するが、盾で確実に防がれてしまう。
「盾で防いでいるとはいえ、その盾にも傷一つ付かないのはどういう事だ‥‥?」
 やがてソードは盾に着弾する際、表面に濃い色のFFが展開されている事に気づいた。
「特殊なFFで盾を覆っているのか‥それなら盾以外に当てれば!」
 ソードは愛機フレイアの機動力を駆使してタロスの背後に回り込もうとしたが、2機のタロスは背中合わせになり、それぞれの背面をカバーする。
「くっ‥‥」
 それでもソードはタロスの隙を突こうとあらゆる角度から砲撃を加えてみたが、やはり盾で防がれ、逆に自身が反撃を受けて傷ついてゆく。
「焦るな‥‥いつか必ず隙は出来る」
 ソードは自身に言い聞かせて砲撃を行い、敵の攻撃に耐え続けていると、不意に紅と紫の機動力が低下した。
「今だ!」
 その隙を逃さずソードは紫にエニセイを発射。
 紫は盾で受け止めようしたが間に合わず、直撃する。
「いける!」
 ソードはそのまま一気に畳み掛けようとした。
『‥やらせない』
 しかし愛子の本星型が背後から迫り、荷電粒子砲を発射。超高熱の光がシュテルンを貫く。
「くぅ!」
 ソードは操縦桿を引いて宙返りをすると、本星型にエニセイを連射。
 砲弾は全て強化FFで防がれたが、本星型の練力が急速に低下する。
『コイツ!』
 愛子は再び粒子砲を発射。
 ソードのシュテルンにはその一撃に耐えられる程の力は残っておらず、そのまま爆散したのだった。
  

 一方、カルマのシュテルンは紺が続けて放ったミサイル群で半壊し、装甲が剥げ落ち、各部から噴き出した煙が尾を引いていたが、構わず対空機関砲「ツングースカ」を連射した。
 しかし紺は盾を正面に翳して全弾受け止める。
「あの図体でこの機動力‥‥ただのタロスではないな」
 そして紺はレールガンを構え、狙いを定めてくる。
 カルマは機体をジグザグに操って狙いを反らそうとしたが、紺は慣性機動を駆使し、照準をピッタリと捉えて外さない。
 そして轟音と共に放たれた電磁加速弾頭は一瞬でシュテルンを貫き、その衝撃力が機体を引き裂いてゆく。
「くそぉ!」
 カルマは警告灯が点滅し警報が鳴り響くコクピット内で失速しそうになる機体を必死に操る。
 だが、そこにレールガンの第二射が命中。
 機体がバラバラになりそうな衝撃と共にキャノピーが割れて吹き飛び、その破片がカルマの体に喰いこむ。
「くぅっ!」
 機体の各所からは火を吹き上がり、何時爆発してもおかくしくない状況だ。
「マズイな‥もう一撃喰らったら終わりだ‥‥」
 しかし紺はレールガンではなく盾を正面に構え、全速でカルマに体当たりをしてきた。
「うぉ!」
 まるでハンマーで殴られたかの様な衝撃がカルマを襲い、機体が失速しそうになったがギリギリで立て直す。
「‥‥何故レールガンを撃たなかった? なぶり殺しにするつもりか?」
 不思議に思うカルマに紺が再び盾でチャージを仕掛けてくるが、その動きは先程より鈍い。
 カルマは紺のチャージを避け、機体を捻って機関砲を掃射。
 すると、今まで慣性機動で確実に盾で受け止めていた紺の背中に機関砲が命中する。
 そして傷が再生する兆候も見られない。
「どうやら練力が切れたらしいな」
 カルマは額から流れ落ちる血を拭い、口元に笑みを浮かべて操縦桿を握り直す。
「よし! 反撃開始だ!」
 そうしてようやくタロスと互角以上に戦える様になったカルマだったが、紺を倒す前にソードが撃墜されてしまう。
「4対1‥‥か。さて、どうする?」
 カルマがタロスを1機でも道連れにしようかと考えた、その時。
『ミサイル発射台破壊完了。これより離脱します』
 無線機からレイヴァーの声が響いてきた。
 眼下では発射台が火を噴き、やがて大爆発する光景が見えた。
「よし! ならば長居は無用だな」
 カルマは垂直離着陸機能で地上の爆煙に飛び込み、それを隠れ蓑にして戦闘区域から離脱した。



『逃げられた‥‥。でも、まぁいいわ。リリア様から賜ったこの本星型HWと3機タロスがあれば、奴らなんて何時でも蹂躙できるわ』