タイトル:ワニキアの仏像マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/29 03:39

●オープニング本文


●ジョンソン宇宙センター

 ヒューストン市内を放棄した小野塚 愛子(gz0218)は拠点をジョンソン宇宙センターへと移していた。
 かつては宇宙開発の最先端を担っていたジョンソン宇宙センターであるが、今ではバグアの秘密研究所として利用されている。
 愛子はその研究成果が収められた格納庫に並ぶ、数々の奇妙な実験兵器を眺め歩いていた。
「よくもまぁ‥これだけのガラクタを作ったものよね‥‥」
 そう、愛子の言う通り、実はこの格納庫に納められている物は大半が使用に耐えないガラクタばかりなのだ。
 秘密研究所と言えば聞こえはいいが、実際に実を結んだ研究は全体の1割あれば良い方である。
 そして実を結んだ研究の中でも使用に耐えるものは、更にその1〜2割程度になる。
「‥‥とりあえず、コレなら使えるかしら?」
 愛子が足を止めたのは山の様に聳え立つ仏像のようなものの前だった。
「これって確かワニキアが作ったのよね‥‥。似てないけど、仏像なのかしら? アイツの趣味ってよく分からないわ‥‥」
 愛子は呆れ顔を浮かべながらも、その『仏像』を動かす準備を始めた。



●ヒューストン司令室

「悪い知らせがあります」
 ヒューストン解放戦線の前線司令であるルイス・バロウズ少佐は召集した士官と傭兵達の前で苦々しい表情を浮かべていた。
「先ほど、ヒューストンの市外の一部が消失しました」
「‥‥あの、消失とはどういう事でしょうか?」
 士官の一人が質問する。
「文字通りの意味です。本当に市外の一部が消失したのです。今から2時間程前、ジョンソン宇宙センターから敵の兵器と思われる全長30m程の巨大な仏像が出現し、ヒューストン市内に向けて進攻を開始しました。ヒューストン市内に駐留していたリッジウェイ部隊がすぐに急行して迎撃にあたりました。そしてリッジウェイが仏像に攻撃を仕掛けた直後、仏像は大爆発を起こし、周囲一帯を焦土と変えたのです」
 ルイスが一枚の航空写真を拡大して背後のスクリーンに映す。
 そこには大きなクレーターを中心にしてビルや家屋や樹木が薙ぎ倒された町並み映されていた。
「そして先ほど2体目の仏像がジョンソン宇宙センターに出現し、現在市内に向かって進攻中です」
 ルイスはスクリーンを次の映像に切り替えた。
「これはX線によって仏像の内部を透写した物です。ご覧の通り、仏像の中身はほぼ空洞になっている様です。そしてこの空洞部分に高性能な液体爆薬で満たされている事が判明しました。この液体爆薬はある程度以上の衝撃を与えると爆発する物だと思われます。そのためKVや戦車などで攻撃を仕掛けると、ほぼ間違いなく爆発するでしょう。これらの情報を基にして、この仏像を爆発させずに破壊する作戦が考案されました。そしてこの作戦は傭兵の皆さんにしか実行できません」
 ルイスが集まった傭兵達に目を向ける。
「まず、この仏像の空洞部分は5つに分かれている事が判明しています。頭部に1つ、胸部の左右にそれぞれ1つずつ、左右の大腿部に1つずつです」
 スクリーンの仏像内部の映像がそれぞれの空洞毎に色分けされて表示される。
「人の手で仏像の体表を抉る程度の衝撃であれば爆発はしないと思われますので、傭兵の皆さんには各空洞の下部に取り付き、そこに穴を穿って中の液体爆薬を抜き出して欲しいのです。そして全ての液体爆薬を抜き取った後に上空で旋回待機していたバイパー部隊がロケット弾で攻撃し、破壊します。作戦時間は5分。それ以上経つと仏像がヒューストン市内に入ってしまいます。もし仏像が市内に入ってから自爆をした場合、市内は壊滅的なダメージを負うでしょう。ですので、5分経過した時点で作戦は中断。傭兵の皆さんが非難を完了した直後にバイパー部隊で攻撃を仕掛け、その場で仏像を爆発させます」
 ルイスがスクリーンの映像を消し、真剣な表情で傭兵達を見据えた。
「もちろん口で説明したほど簡単な作戦ではありません。仏像に取り付くだけなら比較的簡単でしょうが、そこから目標地点までは素手で登ってもらう事になります。30mの巨体に取り付いている際の振動は相当なものでしょう。仏像から攻撃を受ける可能性もあります。もし手を滑らせて落ちれば高さによっては能力者といえども只では済みません。そして仏像に踏まれでもしたら命に関わります。不安要素だけなら山の様にある、正直無茶な作戦です。しかし他にこの仏像を倒す術はありません。ですので無茶を承知でお願いします。どうか我々に力を貸していただきたい」
 ルイスは傭兵達に向かって深々と頭を下げた。

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
木場・純平(ga3277
36歳・♂・PN
九条院つばめ(ga6530
16歳・♀・AA
リュドレイク(ga8720
29歳・♂・GP
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD

●リプレイ本文

 現場に到着した8人は打ち合わせ通りにそれぞれの持ち場に散ったが、まだ距離があるにも関わらず、どの位置からでも接近してくる仏像の威容はハッキリと見て取る事ができた。
 今回の敵はそれ程の巨体を有しているのだ。

「また、妙に厄介そうな代物が出てきたな‥‥。あんな巨像に街を蹂躙されてはたまらない」
 仏像の肩に飛び移る為にビルの屋上に来ているホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)が忌々しそうに仏像を見据える。
「その通り。まったく危険な仏像だな。早くなんとかしなければ、ヒューストン市内が大変なことになってしまう」
 木場・純平(ga3277)は双眼鏡で仏像を観察していた。
「中には液体爆薬なんて厄介なもの積んでるそうですしね。それにしても‥‥なぜ仏像なんでしょうね?」
「‥‥制作者の趣味ではないだろうか。以前、アザラシの顔を付けた不謹慎なキメラなどを見た事はあるが、その類だろう。ただ、今回は開発者にそういった悪意がない事は同じ開発に携わった事のある人間としては分かる‥。分かるのだが‥‥」
 『GooDLuck』を発動させて運を呼び寄せたリュドレイク(ga8720)の最もな疑問に自分の見解を答えたリヴァル・クロウ(gb2337)だが、彼自身もその答えでは納得がいってない様だった。


 その4人の更に先にあるビルの屋上では弓亜 石榴(ga0468)と赤崎羽矢子(gb2140)が最後の攻撃要員としてスタンバイしていた。
「バグアのトンデモ兵器としてはまだインパクトが弱いね。でも爆発したら大惨事だし、ネタとしては笑えない‥‥か」
 双眼鏡で仏像の動きや歩幅を計っていた羽矢子が呟く。
「仏像ねー‥外見は面白なんだけど、それ意外はイマイチだね。普通なら転がして始末するのが一番なんだけど、それも出来ないとは厄介かな。赤崎さん、ちょっと双眼鏡借してくれないかな?」
 石榴は借りた双眼鏡で仏像ではなく、周囲を見渡した。
「こんなブツを出すんだから、敵もどっかで監視してる筈‥だと良いなぁ‥‥。たぶんやったのは愛子ちゃんだと思うから、居たら呼んでみよう」
 しかし見える範囲には人っ子一人見あたらない。
「う〜ん‥残念。居たら前回の問いに答えてあげたのになぁ〜‥‥」


「動く‥‥仏像、ですか? ヒューストンに? な、なんだかB級映画のワンシーンみたいですね‥‥」
 九条院つばめ(ga6530)は地上から仏像を見上げ、目の前の現実離れした光景に苦笑いを浮かべる。
「ですが‥これは本当に仏像なのでしょうか? 想像していた物とは違う気がしますけど‥‥」
 鳴神 伊織(ga0421)の言う通り、ワニキアの作った仏像の造形は決してうまいとは言えず、どこか滑稽な姿をしていた。
「でも、話を聞く限りではシュールの一言では済まされないほどの脅威みたいです‥‥。あんなのに今までの攻略作戦の成果を台無しにされては堪りません。早急に何とかしないと‥‥!」
「そうですね。取りあえず考えるのは後にしましょうか‥今はそれ所では無いですし」
 二人はタイミングを併せて物陰から飛び出すと、伊織は左足に、つばめは右足に取り付いた。
 そして表面の凹凸を見極め、慎重に手足を乗せて登って行く。
 体力のある二人は危なげない様子でするすると登り、伊織が先に大腿部の目標地点に到着。
 少し遅れて右の大腿部に到着したつばめは体を保持しながら蛇剋を抜く。
「つばめです。こちらは配置に付きました」
 そして頭に装着したインカム型の無線機で伊織と連絡を取る。
「はい。こちらは何時でも構いませんよ」
 伊織はつばめに応えながら『紅蓮衝撃』を発動。
「ではいきます。伊織さん、合わせて下さい! 3・2・1・0っ!」
 二人はタイミングを合わせ、ほぼ同時に仏像を攻撃。
「まずは一撃‥!」
 豪速で打ち込まれた伊織のコメットナックルが涼やか音を立てながら仏像の体表を砕いて陥没させる。
「‥意外と硬いですね」
 涼しい顔でそう呟きつつ伊織は開けた穴をコメットナックルで連打。一撃毎に砕けた体表が飛び散り、6撃目で遂に内側から強い刺激臭を放つ液体が吹き出してきた。

 一方、つばめは両足で上手く凹凸を捉えて上体を支え、左手1本で身体を固定、右腕の力とわずかな腰の捻りと背筋の力で真っ直ぐに蛇剋を突き出す。
「破っ!」
 そうして穿たれた穴に更に『急所突き』を連続で繰り出して少しずつ掘り進んでいった。
 しかし不意に激しい揺れが起こり、つばめ慌てて右手でも仏像にしがみつく。
 どうやら攻撃を受けていると気づいた仏像が激しく動いて振り落とそうとし始めた様だ。
「そう簡単には落ちません!」
 つばめは激しい揺れに耐えて蛇剋を構え直した時、
『危ない九条院!』
 インカムから羽矢子の警告が響く。
「え?」
 振り返ると、仏像の巨大な手が自分に向かって迫ってきていた。
 この体勢では避ける事はほぼ不可能。
「くっ!」
 つばめは四肢に力を込めてしっかりとその場に身体を固定した。
 その直後に平手で殴打され ドォン という衝突音が響き渡る。
「かはっ!」
 その衝撃で肺の空気が全て押し出され、全身の骨が軋む様な痛みを受けた。
「つばめさん! 大丈夫ですか?」
「ゴホッゴホッ! だ、大丈夫です‥‥。ここは私に任せて伊織さんは次へ行って下さい」
 心配する伊織につばめは咳き込みながらも気丈に笑ってみせた。
「‥‥分かりました。ですが無理はしないで下さい」
「はい」
 伊織は少し迷ったが、つばめを信じて自分は仏像の胸を目指して登り出す。
 伊織がちゃんと行ってくれた事を確認したつばめは再び蛇剋を仏像に突き立てた。
「破っ! 破っ!」
 ガツッガツッっと体表が砕ける音共に穿たれた穴は確実に深くなっていったが、仏像も続けてつばめを殴打する。
 その度につばめの全身に衝撃と激痛が襲い、身体を支える手足から力を奪ってゆく。
 アチコチの骨にヒビが入り、口の端から血が滴り、練力が減少して『急所突き』も使えなくなったが、それでもつばめは気丈に蛇剋で突き続けた。
「破っ!」
 そして十数回目の攻撃でようやく剣先から何かを貫いたような感触が伝わっていた。
 蛇剋を引き抜くと、穿った穴からちょろちょろと刺激臭を放つ液体が漏れ出してくる。
「‥‥やった!」
 やがて内圧で穴が大きく開き、ドバドバとあふれ出してきた。
「次に行かないと‥‥」
 つばめは再び仏像をよじ登り始めたが、壁面を掴む握力は半分以下になっていて非常に危なっかしい。
『九条院、もう無理だ。下がった方がいい』
 そんなつばめを見かねた羽矢子がそう指示する。
「でも‥‥」
『アンタは一つ潰しただろ。それで十分だ。残りはもう誰かが取り付いてる。そいつらを信じて任せな』
「‥‥分かりました」
 そう言われてはつばめも引き下がるしかなく、途中で何度か足を踏み外しそうになりながらも地面にまで戻って安全な場所まで避難した。


 戦闘開始から1分経った頃、ビルの上の4人は仏像の動きにあわせて跳躍。難なく肩に跳び移った。
 そして予め先を輪にしたザイルを投げて仏像の頭にくぐらせ、それを命綱にしようとしたが、

 プチッ

 ザイルはアッサリと仏像にちぎられてしまった。
 しかも首がグルリと動き、仏像と目が合う。
「見つかったか」
「こうなったらこのまま行くしかないな」
 ホアキンは右胸に、木場とリュドレイクは左胸へ、リヴァルは頭に向かって走る。
 そして仏像は振り上げた手を木場に向けて振り下ろした。
 どうやら木場が身体を安定させるために突き立てたパリィングダガーがお気に召さなかったらしい。
 ブォンと風を切る音と共に巨大な平手が木場に迫る。
「ぐうっ!」
 木場は仏像に打ち据えられる直前に身を固め、歯をグッっと喰いしばり、全身を襲う衝撃と痛み耐えた。
「木場さん! 大丈夫ですか?」
 仏像の手の範囲外にいて難を逃れたリュドレイクが木場に声をかける。
「あぁ、平気だ。‥‥しかし仏像のくせに何でこんなに敏感肌なんだ?」
 木場は毒づきながら衝撃でクラクラする頭を振ると『限界突破』を発動。
 急ぎつつも足場には細心の注意を払い1歩1歩確実に目標地点まで下ってゆく。
 そして木場が下ったポイントをなぞる様にリュドレイクが後に続く。

 その頃、ホアキンはロッククライミングの要領でするすると体表を移動し、早々に右胸部に到達した。
「こちらホアキン。目標位置に到着した。他の者も到着したら順次連絡してくれ」

 続いてリヴァルが頭の裏に取り付く。
「こちらリヴァル。予定地点に到着した。いつでも攻撃可能だ」

 この頃にはつばめが穴を開け終わり、仏像も大人しくなっていたため木場も素手で目的地点までやってくる。
「木場だ。途中で1発痛いのを喰らったが到着したよ」
 そして木場に少し遅れてリュドレイクが同じ場所に到着。
「俺が最後ですか? お待たせしてすみません。さぁ作戦開始と行きましょう」

「よし、タイミングを合わせるぞ。3・2・1・攻撃開始!」
 4人はホアキンの合図で一斉に武器を仏像に突き立てた。
「一点突破だ! きっちり貫け!」
 ホアキンは『豪破斬撃』を発動し、淡い赤色に包まれた蛇剋で『急所突き』を放つ。
 その一撃で蛇剋は仏像の表面をまるで軽石か何かの様に易々と砕きながら深々と突き刺さる。
「ふんっ!」
 ホアキンはまったく同じ箇所に鋭く蛇剋を突き入れ続けると、いともアッサリと貫通し、だくだくと液体爆薬が流れ出してきた。
「さて、次は‥‥」
 大腿部は既に完了し、左胸には木場とリュドレイクの二人掛りで行っている。
「頭に行くか」
 なのでホアキンは下りてきた順路を戻り始めた。


 頭部に取り付いたリヴァルは合図と同時に月詠を突き立てようとしたが、仏像にほぼ垂直に取り付いた体勢では長さ1.1mの月詠を突き立てるのは困難だった。
 なので『紅蓮衝撃』を発動させ、出来る限り大きく振りかぶって叩きつけるように斬るしかなかった。
 振り切る事の出来ない斬撃では本来の威力は出せないが、それでも同じ箇所を斬り続けていれば傷口は広がり、段々と深く抉れていった。
「何とかいけそうだな」
 だが、不意に今までの振動とは違う揺れがリヴァルを襲う。
「なんだ?」
 咄嗟に両手でしがみ付いて様子を伺うと、どうやら仏像は首を左右に振って取り付いたリヴァルを振り落とそうとしている様だ。
「くそっ!」
 上下の震動に加えて左右の遠心力まで加わっては迂闊に動く事も出来なくなる。
 しかしリヴァルは冷静に首の動きを見切り、仏像が首を振り切って停止した瞬間に身を起こして攻撃を加えた。
 そうしてタイミングさえ掴んでしまえば後は同じ要領を繰り返せば良いだけで、仏像が幾ら首を動かそうともリヴァルを振り落とす事は出来なかった。
 そして穴がある程度に深くなった所で月詠を刺し込み、連続して『急所突き』を放った。
 すると遂に月詠が体表を貫通して液体爆薬が噴き出してきた。
「よし、頭部の処理は完了だ」


 リュドレイクも1.2mある鬼蛍を上手く取り回せずにいたが、リュドレイクが鬼蛍で斬り裂いた箇所を木場が蛇剋で抉るという連携攻撃を行っていた。
 だが不意に二人に向かってゴゥという風切り音と共に仏像の手が迫ってくる。
「来るぞ、しがみつけ!」
 咄嗟に二人は攻撃を止め、リュドレイクは『自身障壁』も発動して衝撃に備えた。
 そして仏像の掌がリュドレイクを直撃。
「ぐぉぁ! い、痛すぎる‥‥」
 自身障壁で少しダメージは軽減されたものの、全身の骨が砕けたかと思うような痛みをリュドレイクは味わった。
「おい! 大丈夫か?」
「な、なんとか‥‥。でも後2、3発喰らったらヤバそうです‥っていうか、もう喰らいたくないです」
「俺もこれ以上殴られるのはゴメンだ。こりゃあ急がないとな‥‥」
 木場は再び自分達を狙って腕を持ち上げた仏像を見上げながら頭を巡らせる。
「‥よし、俺が支えるからお前が全力で突け」
「え? 俺がやるんですか?」
「そうだ。俺よりお前の方がパワーがあるからな」
「‥‥分かりました」
 木場はパリィングダガーを突き立てて自分の身体を保持すると、リュドレイクの上半身を支えた。
 リュドレイクは斜めになった身体を木場に支えてもらいながら鬼蛍を両手で持ち、水平に構えて『紅蓮衝撃』を発動。全身が炎のような赤いオーラに包まれる。
「よし、やれ!」
「はあぁぁっ!」
 そしてリュドレイクは渾身の力を込めて今まで穿った穴に向けて連続した突きを放った。
 鬼蛍が突き込まれる度に仏像の体表が砕け散り、鬼蛍が深く潜り込んでゆく。
 やがて鬼蛍の刀身が体表を突き抜け、穴から液体爆薬が滲み出し、鬼蛍を抜くと勢いよく噴き出してきた。
「よし、逃げるぞ!」
「了解です!」
 そして二人がまるで落ちる様にその場を離れた直後、仏像の掌がそこに打ち据えられた。


「よし! 5つ目の穴も開いた。任務完了だ」
 その様子をビルの屋上から双眼鏡で眺めていた羽矢子が歓声を上げた。
「結局あたし達の出番はなしか‥‥。ま、あの面子なら当然だけどね」
「うんうん。私もこっち来るまでにケリが付くって思ってたよ。コレで楽が出来‥げふげふん‥‥」
 してやったりという顔の石榴が本音を呟きそうになって慌てて誤魔化す。
 それから羽矢子は6人の撤収が済み、仏像の傷穴から液体が漏れなくなったのを確認すると無線機で上空のバイパー部隊と連絡を取った。
「こちら地上班。仏像の液体爆薬の除去を確認したよ」
『了解。これより攻撃を開始する』
「あんな危なっかしいモノ二度と使わせないためにも徹底的にやってよ」
『ははっ、任せておけ。オーバー』
「あたし達も退くよ。ここに居ちゃ巻き添え喰うかもしれないからね」
 そして羽矢子と石榴は仲間達と合流し、安全圏から仏像の最後を見守った。

 上空より降下したバイパー部隊はロケット弾ランチャーで攻撃しては離脱を繰り返した。
 目標が大きいため攻撃が外れる事はなく、仏像もバイパーに手を伸ばすが捕らえる事は不可能だった。
 ロケット弾が命中する度に仏像に大穴が開き、腕が落ち、頭が半壊し、遂には足が折れて横倒しになる。
 それでも仏像は前に進もうともがき続けたが、バイパー部隊は倒れた仏像に容赦なく攻撃を加え続け、やがて仏像は動かなくなった。



「首尾よく片付いたし‥‥お疲れ様かな」
 石榴がう〜んと伸びをする。
「何と言うか‥今回は少々疲れましたね」
 伊織は小さく溜め息をついた。
「まぁ、全員無事だった事だし、帰ったらみんなにコーヒーをご馳走するよ」
「ほぅ、それは嬉しいな」
 木場の誘いにホアキンが微笑む。
「‥今回の敵の着眼点は間違っていない。だが‥何故仏像なのだろうか?」
「それに誰がこんな悪趣味な兵器を作ったんだろうね?」
 悩むリヴァルに石榴が尋ねた。
「このヒューストン近郊でこの様な開発ができる人物‥‥。まさか‥彼ではない‥だろう」
 できれば違って欲しいと願うリヴァルだった。