●リプレイ本文
カリ基地に3方向より進攻したUPC南中央軍8個中隊は迎撃に出てきた小型陸戦型ワーム、大型キメラ、及び小型キメラと接敵。
大群で浸透してくる小型キメラを掃討しつつ、距離をおいての激しい銃撃戦を繰り広げた。
各中隊に参加した傭兵部隊のKVも個々に奮戦し、敵の第一波の撃滅に成功する。
しかし真の戦いはここからだと言えた。
前方から第一波とほぼ同数の敵の第二波がワームの残骸やキメラの死骸を踏み越えて迫ってくる。
対して中隊のKVに無傷の機体は1体もない。ほとんどの機体が中破程度の傷を負っていた。
「踏んばれ! 情報では敵にこれ以上ワームは存在しない。これを凌げば我々の勝ちだ!」
●第一中隊
「来ましたね。敵の第二波です」
周防 誠(
ga7131)はレーダーにワームを捉えるとワイバーンの火器管制をスナイパーライフルD−02に合わせ、照準器を覗き込む。
そして射程内に入った瞬間、トリガーを引いた。
手早く排莢して次弾を込めながら照準器の先でワームへの着弾を確認後に再びトリガーを引く。
2発目のライフル弾は正確に1発目で開いた傷穴に飛び込み、ワームを内部から破壊した。
同じ要領でもう1機倒した後にワームが反撃を始めたが、その頃には既に周防はその場を離れ、次の狙撃地点に移っていた。
周りからはキメラがわらわらと寄ってくるが、ファランクス・アテナイとバルカンで掃討し、今度は対空砲「エニセイ」をワームに向かって撃ち放つ。
95mmの砲弾がワームの装甲を粉砕し、機体が大きく抉れる。
そこに第二射が命中。ワームが大きくひしゃげ、そのまま爆発した。
ワームの一部は周防の方に向きを変えようとしたが、そこに中隊のKVが射撃を加え、ダメージを与えてゆく。
周防は位置を変えてワームを放浪しつつ、中隊がダメージを与えたワームを狙撃して確実に倒していった。
そうして第一中隊は最も被害が少なく、最も早く敵の第二波を撃滅したのだった。
「中隊長、自分は他の中隊の支援に向かいます。残りの大型キメラ等の掃討は頼みます」
「あぁ、了解した」
周防はマイクロブーストとブーストを発動すると、最速で隣の戦区の支援に向かった。
●第二中隊
平坂 桃香(
ga1831)の雷電は中隊の前に出るとブーストを発動。
敵の射撃を巧み避けながら頭上でハンマーボールを旋回させて敵陣に突っ込むと、手近なワームに向かって投げつけた。
遠心力の加わった凶悪な鉄球はワームを一撃で破砕。ワームが部品をばら撒きながら地面を転がる。
「次っ!」
桃香はそこから雷電を旋回させて鉄球を振り回し、次のワームにぶつけて粉砕。ワームが粉々になった。
孤立した桃香にキメラが群がってくるが、足元は歩兵小隊の支援射撃に任せ、自身は取り付かれても構わず次のワームに向かって突撃、再びハンマーボールを旋回させる。
そうして次々とワームを撃破していた桃香だったが、取り付くキメラの数が20匹を超えると流石に機体が重くなり、機動に支障が出始めた。
「‥‥そろそろ厳しいかな」
桃香はブーストを発動して敵の中央に突撃し、できるだけ多くの敵を自分の周りに集めた。
「おい、あの子敵に囲まれてるぞ!」
「くそっ! 支援に行くぞ!」
「いえ、大丈夫なので来ないで下さい」
その行動に中隊の兵士達は慌てたが、桃香は冷静に告げてグレネードを自分の足元目掛けて撃つ。
雷電を中心にして周囲が爆炎に包まれ、衝撃と散弾が周辺のキメラを襲い掛かる。
そして爆煙がはれると、雷電の周囲には無数のキメラの屍が転がっていた。
雷電も少し傷を負ったが気になる程ではない。
「‥よし、軽くなった」
取り付いたキメラを全て倒し、機動が元に戻った事に桃香は満足そうに頷く。
「なんて無茶を‥‥」
「でもすげぇよ」
桃香の捨て身の攻撃に兵士達は呆れると同時に感心した。
「よし、敵の数は残り少ない。蹴散らすぞ!」
『おー!』
そして桃香の行動は兵士達の士気も上げ、中隊はそのまま一気に敵ワームを全滅させたのだった。
●第三中隊
機体の装備を調整し回避力と行動力を上げてきたリヴァル・クロウ(
gb2337)は戦闘開始からブースト連続使用して敵陣内に突入、ワームに肉薄してナックル・フットコートβで倒す作戦を行っていた。
「殴り合いというのは余り好みではないが‥」
調整されたシュテルンは易々と敵の攻撃を避け、確実にワームを葬ってゆく。
「良い反応速度だ、やはり機動性を確保しただけはある」
だが、敵陣内では歩兵の支援が届き辛いうえキメラに包囲され易く、ファランクス・アテナイで倒しきれなかったキメラに次々と取り付かれてしまう。
「‥だが数が多い、出し惜しみしている余裕はないか」
リヴァルはキメラを機体から引き剥がすと、バルカンで進路上のキメラを薙ぎ払い、次のワームに接近戦を仕掛けた。
だがこの戦法は効率が良いとは言えず、ナックルだと無傷のワームなら3撃は加えねば倒せないため、この機体調整は必ずしも最適とは言えなかったかもしれない。
そうしてリヴァルが敵陣でワームを倒している間もKV小隊は徐々に損耗してゆき、遂に初の大破機が出た。
「ワームに狙われた場合は無理はするな」
リヴァルはそう言ったが、ワームはまだ半数残っている。
そしてリヴァルも既に練力は底を尽き、ブーストもPRMも使えない。
このままでは敵を全滅させるまでにまだ何機か大破するだろうと思われた、その時。
突然少し先にいたワームが爆発した。
『支援しますよリヴァルさん』
「周防、君か?」
姿は見えないが支援に駆けつけた周防が何処からか狙撃してくれている様だ。
「助かる!」
そして周防とリヴァルで残りのワームを速やかに掃討し終えた。
中隊のKVは満身創痍であったが、大破は1機で抑える事ができたのだった。
●第四中隊
ウラキ(
gb4922)は愛機のノーヴィ・ロジーナ『クレヴラ』の火力で以って中隊KVの支援を行っていた。
ホールディングミサイルが弧を描いてワームの側面から当たるように発射。
時間差でGPSh−30mm重機関砲をワームの回避位置に掃射。
400発の弾丸を受けてワームの脚が止まった所にミサイルが命中。爆炎に包まれる。
「‥どちらを避けても‥結果は同じだ」
ウラキは更にシールドキャノンと重機関砲を撃ち込み、トドメを刺す。
しかし続く戦闘で重機関砲はすぐに弾切れになり、やがてミサイルも尽きる。
その頃には中隊のKVの被害も甚大になり、やがて1機、また1機と中隊のKVが大破して倒れてゆく。
「‥退けば喰われるか‥攻める‥支援を!」
ウラキは機盾「レグルス」を構えて矢面に立ち、味方の盾になったが敵の攻撃の全てを抑えることはできず、味方は次々に大破して戦列は瓦解。
やがて中隊のKVは全滅し、ウラキと歩兵小隊だけが残された。
「‥またアレを使うかもしれないな」
ウラキがかつて殴ったコンソールの角を見つめながらポツリと呟く。
そしてウラキは敵の攻撃を一身に受け、キメラをバルカンで薙ぎ払って歩兵を守り、ワームと戦い続けた。
取り付くキメラとワームの攻撃がクレヴラの装甲を削り、身を削り、ウラキをジリジリと死に追いやってゆく。
だがウラキは死力を振り絞って最後のワームも倒し、自らの力で死神を追い払ったのだった。
「ふ‥‥僕達はまだ眠るには早いみたいだな、クリヴラ」
ウラキはそう言ってコンソールをポンと叩いた。
●第八中隊
クラリッサ・メディスン(
ga0853)は小型キメラに群られて行動に掣肘が加えられる事はKV小隊全体の損害となると考え、マシンガンで優先的に小型キメラを掃討していた。
「わたしの身体に触れて良いのは旦那様だけですわよ。おぞましいキメラ風情が纏わり付くなんて不遜ですわ」
ただ、もっと個人的な理由もあってそうしている様である。
キメラの数が多い時には一番密集している地点を歩兵小隊に指示してもらってグレネードランチャーで一掃し、生き残りを歩兵小隊に追撃して貰う。
そうして近場のキメラを掃討し終えるとスラスターライフルを構え、中隊のKVと制圧射撃を行って1機ずつ確実にダメージを与えて倒していった。
しかし味方のKV小隊も長期戦闘で消耗が激しくなり、遂に大破する機体が出た。
「歩兵小隊。すぐにパイロットを救出してあげて下さい」
クラリッサは前面に押し出るとシュテルンの厚い装甲を盾として大破したKVのカバーに入り、マシンガンで忍び寄るキメラを牽制して歩兵がパイロットを助ける隙を作る。
だが、すぐ隣でまたKVが大破し、地面に倒れ伏した。
「くっ、厳しくなってきましたわね‥‥」
クラリッサはスラスターライフルを掃射して倒されたKVが戦っていたワームにトドメを刺す。
そしてグレネードを左右に撃ち放ってキメラの進攻も止めた。
「ですが後一息です! 皆さん行きますわよ!」
クラリッサは弾切れになったグレネードを捨てると、右手にスラスターライフル、左手にマシンガンを構えて敵の前面に立ち、味方を鼓舞した。
その後、更に2機が大破するも全ての敵を倒したのだった。
●第五中隊
白皇院・聖(
gb2044)は戦場に着くとまず塹壕を作るつもりだったが、敵の接近が早いため間に合わず、家屋の残骸にカラサルシールドを突き立てて代用した。
そして地殻変化計測器は設置し、半径600mの狙撃結界は形成。
感知した先頭のワームをスナイパーライフルで狙撃したが、距離が遠すぎて当たらない。
敵が接近するにつれて命中する様になったが、ワームは全て距離100mで停止。向かってくるのはキメラだけになった。
聖は接近する小型キメラをレーザーバルカンで掃討しつつ、中隊のKVと連携してワームや大型キメラを狙い撃つ。
しかし1発撃つ毎にリロードを必要とするスナイパーライフルは多数の敵と戦うにはあまり適さない武器なため、倒しきれなかった大型キメラの接近を許してしまう。
期せぬ接近戦であるが、聖は冷静にヴァイナーシャベルで攻撃を受け止め、ライトニングクローIIで大型キメラの身体を引き裂く。
そうして敵の攻撃を凌ぎつつ攻撃を続けていたが敵の攻勢を止める事はできず、KV小隊は次第に圧され、大破する機体が出始めた。
味方が倒れる毎に他の機体への負担が倍増し、各機の被弾率も加速度的に上がってゆく。
そのため一度陣形が崩れれば残りのKVが全滅するのは本当にあっと言う間だった。
「せめて歩兵だけでも助けないと‥‥」
聖が自分の身を犠牲にしてでも歩兵を逃がす策を巡らせ始めた時、不意に敵の横合いから攻撃が行われ、ワームを破壊した。
『どうやらギリギリ間に合ったみたいですね』
「‥え?」
そちらを見ると、周防のワイバーンが敵に向かってエニセイを撃ち放っていた。
「‥周防さん、どうやってここまで?」
『ブーストとマイクロブーストを駆使してなんとか。さぁ、ここの敵も倒してしまいましょう』
こうして第五中隊は周防の支援のお陰で何とか全滅を免れたのだった。
●第七中隊
中隊のKVと連携して弾幕を展開し、面制圧攻撃を行っていた漸 王零(
ga2930)だったが、味方の損耗率が危うい状況になってきたため、自機を前に出す事にした。
「粒子加速砲を使う。我の前には出るなよ」
王零は味方に警告するとMー12強化型帯電粒子加速砲を発射。
超高熱の粒子が射線上にいたキメラを蒸発させ、直撃を受けたワームは全身を融解させて爆散した。
そうして開いた敵陣の穴に王零は雷電を突撃させた。
敵の迎撃は左手のハイ・ディフェンダーで弾き、右手のジャイレイトフィアーをワームに突き立てる。
ジャイレイトフィアーの刃が高速回転してワームを内部から抉り、一撃の下に破壊した。
しかしワームを倒す間にキメラが続々と雷電に群る。
すると歩兵小隊が雷電の足元のキメラを掃討すると同時に機体に張り付いたキメラも撃ち落してくれた。
「すまん、助かる」
「いいって事よ。アンタはその調子でどんどんワームを殺ってくれ」
王零が礼を言うと、歩兵達は不敵な笑みと声援を返してくれた。
王零は自分でも取り付いたキメラを振り払うとグレネードで前方のキメラを吹き飛ばし、次のワームに向けて駆け出す。
そして敵陣を縦横に駆けながら両手の剣を振るって敵を斬り裂き、突き刺し、全てのワームを破壊し尽くしたのだった。
「よし! 続いてキメラも掃討するぞ!」
『おー!!』
●第六中隊
弓亜 石榴(
ga0468)は戦力としてはほとんど役に立っていなかった。
なぜなら、リロードの出来ないショルダーキャノンが早々に弾切れになり、ファランンクス・アテナイの自動攻撃以外に自分が出来る事はリロードとロックオンキャンセラーの維持、遮蔽物作り、そして応援ぐらいしか残っていなかったからだ。
しかし中隊の志気は妙に高かった。
何故かと言えば
「敵を全滅させたら私がいい事してあげるよ〜」
とか
「コクピットって暑いよね。脱いじゃおっかなぁ〜」
とか
「アイツを倒せば白皇院さんもサービスしてくれるかも〜」
とか言って兵士達を奮い立たせていたからだ。
しかし志気が高くても限界がある。
次第に各機の被害が蓄積し、ついには大破する機体が出た。
石榴のイビルアイズもロックオンキャンセラーが使えなくなると被弾し始める。
「よし、撤退しよう」
そして3機が大破したところで石榴が提案した。
「撤退ですか?」
「うん。この中隊の合言葉は『いのち大事に』だって最初に言ったでしょ。後は元気な人に任せよう。隣の第五中隊も大変そうだから‥‥ちょっと遠いけど第七中隊に助けてもらおうか」
「‥‥了解です。第七中隊のいる区画まで敵を引き連れつつ撤退します」
中隊長は少し迷ったが撤退を決断した。
そうして撤退を開始したが、支援要請した第七中隊と合流するまでに更に5機が大破し、石榴のイビルアイズも大破寸前のダメージを受けたのだった。
「後は我ら任せろ!」
そして第七中隊と王零の雷電が敵部隊に突撃を仕掛ける。
「うん、頼むね王零さん。みんなゴメン。結局ほとんど助からなかった‥‥」
石榴が珍しく消沈しながら第六中隊の兵達に謝る。
「いえ、あのままでは結局は全滅してましたよ。幸い死者はいませんし、撤退して間違いなかったです」
「‥うん、ありがとう」
石榴は慰めてくれた兵に感謝した。
一方、連戦となった第七中隊は王零が敵中に突撃して奮戦したが、特に損傷の酷かった6機がこの戦闘で大破。
残り3機中2機が大破寸前になりながらも敵を全滅させたのだった。
●戦闘終了
こうしてカリ基地の敵はほぼ一掃され、敵司令部も比較的被害の少なかった第一と第二中隊が占拠して戦闘は終了した。
「すぐ済みますからね」
聖はリッジウェイを医療施設にして治療を始めたが、負傷者の数は想像以上だった。
参戦したKVは大破38機、大破寸前8機、中破13機、小破21機という多大な被害を出しつつも、カリは人類の手に取り戻された。