●リプレイ本文
「お、来たな。待ってたぜ〜」
傭兵達が村まで来ると、グローリーグリムが嬉しそうに出迎えてくれた。
「あれは俺の獲物だ。手を出すなよケットシー」
「言われにゃくても出さないニャ‥‥」
「‥‥猫?」
「でかい猫だな」
「しかも立ってしゃべってます‥‥」
しかし注目を集めたのはグリムの隣にいるケットシーだった。
「そこの黒猫さん! 実はその姿は着ぐるみで、中の人(?)は本当はネコミミ&ネコ言葉の美少女だったりしないですか!?」
何を思ったか胡桃 楓(
gb8855)がケットシーにそんな事を尋ねる。
「バ、バカにするニャー!! 中の人なんていにゃいニャ!」
「ゴメンナサイ、出会いが無いもので‥‥」
楓は素直に謝り、遠い目で空を仰ぐ。
「あの‥お名前を教えてください」
石動 小夜子(
ga0121)が少し興奮した声音で尋ねる。
「よくぞ聞いてくれたニャ! 我輩の名はケットシー! 偉大なる獣の王にして‥」
「お前の御託なんてどうでもいい。さぁ始めようぜ」
嬉しそうに口上を述べるケットシーを遮ってグリムが前に出た。
鐘依 透(
ga6282)のミカガミと九条院つばめ(
ga6530)のディスタン改は槍を持つタロスに向かった。
対するタロスも二人に向かって突進してくる。
「仕掛けます。つばめさん、援護を頼みます」
「はい」
つばめはタロスに機関砲「ツングースカ」を放ち、その間に透が接近する。
タロスは機関砲を受けながらも槍で突いてきたが、透は身を沈めて避け、懐に潜り込む。
「えぇい!」
そしてチタンファングで脇腹を引き裂き、更に機体を捻って同じ箇所をソードウィングで斬り裂く。
しかしタロスは槍を引き戻してミカガミを殴打、その衝撃でコクピットが揺さぶられる。
「くっ‥この程度なら‥‥。それよりも‥‥」
タロスの傷跡を見ると既に癒着を始めており、装甲部は切れたままだが内部の生体部分はほとんど治っていた。
「本当に自己修復してる‥‥」
「これは厄介ですね‥‥。つばめさん、一気に畳み掛けましょう」
「分かりました。行くよswallow!」
つばめは愛機に呼びかけるとヒートディフェンダー(HeD)を抜いた。
タロスは槍を横凪ぎにしたが、つばめは機盾「レグルス」 で受けて軌道を逸らし、HeDで斬り付ける。
「やぁっ!」
赤熱化した刃が装甲と生体部分を焼き斬った。
透はタロスの背後や側面に回り、関節や装甲の薄そうな部分をチタンファングとソードウィングで斬り裂いてゆく。
どうやらタロスの自己修復能力は一定らしく、治しきれない傷から流れる体液が装甲を濡らす。
それでもタロスは槍を振って攻撃を続けてきた。
だが、つばめは槍の間合いや動きを測って身をかわし、盾で受け止めて槍を跳ね上げた隙に顔面を狙ってミサイルポッドCを発射。
タロスの頭部が爆炎に包まれ、視界を奪う。
「透さん、今です!」
透はブーストとマニューバを発動させてタロスの懐に滑り込み、ここにまでの移動中に練習した『正拳突き』のイメージを思い出す。
「‥‥よし」
右拳を脇の下
左手は正拳を前に出し
構えから腰に180度の螺旋回転を加えて切りつつ右足を踏み出し
出足の重心移動と腰の回転と拳の螺旋回転の力を拳に乗せ
「破っ!」
気合と共に真っ直ぐに突き出されたミカガミの右拳のチタンファングがタロスの装甲を粉砕し、そのまま体内深くまで抉りこまれた。
その右甲から『内蔵雪村』噴射。
超々高熱の刃がタロスを体内から焼き斬ってゆく。
「これで‥終わりです!」
雪村で腹から胸まで斬り裂いて抜くと、タロスは後ろに倒れ、自己修復も止まって動かなくなった。
「俺達の相手はある種ふざけた新型か、どの程度のものか拝見するか」
時任 絃也(
ga0983)はR−01改を爪を装備したタロスに向かわせ、その後にHeDを盾代わりに構えた楓のイビルアイズが続く。
「胡桃、俺が前に出て引きつける、後は上手くやってくれ」
「分かりました。初めて(の戦い)の時はボク、早く出(動)しすぎちゃいましたけど‥‥今度は我慢しないと!」
楓は聞き様によっては危ないセリフを言い、タロスが射程に入ったところで『対バグアロックオンキャンセラー』を起動させた。
そして時任はラスターマシンガンを、楓はG−M1マシンガンを一斉に撃ち放ち、タロスに装甲に穴を穿ってゆく。
しかしタロスは弾幕に構わず接近してきた。
「どの程度の再生能力なのか、見極めさせてもらう」
時任はデモンズ・オブ・ラウンド(D・O・R)を抜き放って迎え撃とうとする。
しかしタロスは頭部周りを変形させ、フワリと浮き上がった。
「なに?」
虚を突かれた時任だが、すぐに距離を詰めて『A・ファング』を発動。
D・O・Rを振るって浮かんでいるタロスの下半身を斬った。
タロスは脇腹から足まで大きく斬り裂かれて深手を負ったが、そのまま時任の頭上を飛び越え、胸部に内蔵されたプロトン砲を楓のイビルアイズに放つ。
イビルアイズの左腕が肩ごと吹き飛び、コクピットが激しく振動して計器類が幾つか吹き飛ぶ。
「キャーー!」
楓は悲鳴を上げて操縦桿にしがみついた。
その間にタロスが楓の前に着陸する。
「うわぁー!」
楓はHeDを振るったが容易く避けられ、距離を詰めたタロスが爪を振りかぶった。
楓は咄嗟にHeDで身を庇おうとしたが爪で除けられ、振り下ろされた爪がイビルアイズの装甲を抉り、機体がひしゃげた。
「お前の相手は俺だろう!!」
時任が救援に駆けつけながらマシンガンを背中に放ったがタロスは構わず爪を振るい続ける。
「助けて時任さ‥」
そして無線から響く楓の声は途中でグシャリという破砕音で掻き消された。
「胡桃? 応答しろ胡桃っ!」
時任が無線に叫ぶが返事はない。
カメラを望遠にして見ると、潰れたコクピットの中で血まみれになった楓の姿が見えた。
「よくも仲間をっ!!」
時任は一気にタロスに肉薄して『A・ファング』を発動。
D・O・Rを爪で受け止めようとしたタロスの腕ごと斬り落とし、そのまま肩から腰まで斬り裂く。
「まだまだぁー!」
振り下ろした刃を逆袈裟に斬り返し、更に腰溜めに構え直して胴体を薙ぎ払った。
D・O・Rが胴体を斬り裂き、反対側まで抜ける。
2つに斬り裂かれたタロスは仰向けに倒れたが、もがいて切断面を合わせ、修復し始めた。
「この‥化け物めっ!」
嫌悪感を露にした時任が縦に斬り裂き、今度こそトドメを刺した。
「ゴーレムに比べるとちょっと華奢な感じだけど‥見た目で判断はよくないか。元ネタでは結構厄介だったらしいし」
「そうですね。慎重に戦いつつ相手の能力を出来るだけ暴いてみましょう」
新条 拓那(
ga1294)と小夜子は剣を装備したタロスに向かった。
「例え強敵でも、やりようがないわけじゃないはず。まずは様子見‥ってね」
そして高分子レーザー砲の射程に入った瞬間に二人で一斉に照射。
6本の光がタロスを刺し貫き、穿たれた穴から赤い体液が噴き出す。
「知覚兵器は効果ありか‥‥。小夜ちゃん、援護頼む」
拓那は小夜子にレーザーで牽制してもらい、自分は一気にタロスに肉薄する。
「さぁて‥これなら、どうだっ!」
そして練剣「羅真人」を抜き、超濃縮したレーザーブレードで装甲を断ち、内部の生体部分も焼き斬ってゆく。
しかし焼かれた生体部も下から盛り上がってきた生体組織に埋もれ、速やかに自己修復されていった。
「あれが再生能力? ずっるいなぁ! こんな調子で際限なく復活されたら埒が明かないな。何かいい手はないものか‥‥」
「装甲や頭部周辺の機械部分を狙い、突き刺してみましょうか。金属が邪魔で再生が遅くなる等、あるやも知れません」
小夜子はハイディフェンダー(HiD)でタロスの頭部を狙ったが、身を沈めて避けられた。
逆にタロスの反撃の刃が小夜子のウーフー胴体を薙ぎ払い、更に返す刀が機体を深々と斬り裂く。
しかし小夜子はそのままタロスの剣を左手に持った玄双羽で押さえ、腕を狙ってHiDを振り下ろした。
だがタロスは剣から手を放して避け、小夜子に体当たりを喰らわせる。
「あぅっ!」
吹っ飛ばれた小夜子が剣を落とし、剣を拾い上げたタロスが上段に振りかぶった。
だがそこに拓那が割って入り、タロスの胸部にHeDを叩きつける。
「退がって小夜ちゃん! それ以上やられたら危険だ!」
赤熱化した刀身が装甲と内部の生体部分を斬り裂いたが、タロスは構わず剣を振り下ろす。
タロスの剣が拓那のシュテルンの肩に喰い込み、そのまま胸部装甲も斬り裂いて抜け、更に横凪ぎに剣を振るってくる。
「くぅっ!」
辛くもHeDで受けた拓那だが機体が僅かにぶれ、その隙にタロスは退がる小夜子のウーフーを追おうとする。
「行かせるか!」
拓那は前に跳び出す様に剣を振るい、タロスの前進を阻む。
するとタロスは頭部を変形させ、フワリと浮かび上がった。
「こいつ、もしかして支援機を優先的に狙ってるのか? こちら新条、誰か支援を頼む。小夜ちゃんが危ない!」
『こちら時任だ。すぐに行く!』
拓那は無線機から返事がきた事に安堵するとシュテルンを変形させて垂直離着陸能力で浮かび上がり、プロトン砲で小夜子を狙っているタロスにG放電装置を発射。
「小夜ちゃんは俺が守る!」
高圧の放電に晒されてタロスの動きが鈍ったところに拓那はシュテルンで体当たりを仕掛け、そのまま地表に押し戻す。
『よし新条、そのままこっちに連れて来い』
地上では時任のR−01改が待ち構えてくれていた。
そして拓那がタロスをR−01改に向かって押し出すと、時任がD・O・Rを振りかぶって跳躍。
「はぁ!」
落ちてくるタロスの頭部から背中にかけて一気に斬り裂いた。
その傷で飛んでいられなくなったタロスは地上に落下。
「これで‥‥トドメだっ!」
その上から人型に変形した拓那のシュテルンが急降下。
全体重をかけてタロスの身体にHeDを深々と埋め込み、息の根を止めた。
「アーバインにサンディエゴ、そろそろケリをつけようか」
月影・透夜(
ga1806)はそう宣言してディアブロをグリムに向けて走らせる。
「おぅ! 預けてた決着、ここでつけるぜ!」
グリムも不敵に笑って応じた。
「分かりやすくて良いですね。それでは、戦いましょうか」
如月・由梨(
ga1805)のディアブロも巨大剣「シヴァ」を引きずるようにして透夜の後に続く。
「さて、愛剣となる剣の威力、試させてもらいますよ?」
そしてグリムがシヴァの間合いに入った瞬間にシヴァを振りかぶり、グリムの頭上に叩き落とす。
だが、シヴァはグリムに当たる前に軌道が逸れ、地面にめり込んだ。
「なっ!?」
剣を通して伝わってきたその感触は、まるで濁流にオールを入れたかの様だった。
「奴は剣撃でも逸らす事が出来るのか?」
透夜が目を見張って驚く。
「ならば‥」
由梨がシヴァを構えなおし、間合いを詰めてから今度は横凪ぎに振った。
「月影さん!」
由梨の合図で透夜がディアブロを跳躍させてシヴァを避ける。
80mのシヴァが間合いにある木々や家屋など全てを粉砕しながらグリムに迫る。
しかし今度は上向きに逸らされ、シヴァはグリムの頭上を通過した。
「悪ぃな、こういう特異体質なんだよ」
「なら、この間合いならどうだ!」
透夜が『Aフォース』を発動させてHiDを振りかぶった直後、グリムが眼前から消えた。
「なに!?」
「なに驚いてやがる? これぐらいお前らでも出来るだろ。確かお前らは『瞬天速』とか呼んでたな」
背後からそう言われた。
「このっ!」
透夜はディアブロを旋回させると同時にレッグドリルで蹴りを放つ。
だがグリムは易々と受け止めた。
「さぁて、俺の全力受け止められるか?」
不意にグリムの両腕が白く輝き、斧も一瞬淡い赤色に輝く。
そして身体を1回転させると、その勢いを斧の乗せて脚に叩きつけた。
斧が脚を半ばまで断ち、バランスを崩した機体を足場にグリムが駆け上がってくる。
「オォーー!!」
そして頭部を潰し、肩を砕き、胸部が破砕し、腰部を斬った。
この連続攻撃で透夜のディアブロは頭部を失い、片腕が動作不能、足の機動も鈍ったが、戦闘まだ十分に可能だった。
「お、こいつ耐えたがった」
グリムが軽く驚く。
「今度はこっちの番だな。遠慮はいらん、全撃くれてやる!」
透夜はブーストを発動させ、グリムを『Aフォース』を付与したHiDで斬り上げた。
グリムの身体が斬り裂かれて浮かび上がった所で更にHiDを振り下ろし、今度は地面まで叩きつける。
「ぐぉ!」
更に機杭「ヴィカラーラ」で殴りつけ、メトロニウム製の杭を発射して突き刺す。
「どうだ?」
透夜が機杭を地面から引き抜くと、
「くはぁ! 今のは効いたぜぇ‥‥」
グリムが腹を押さえながらムクリと起き上がる。
HiDで斬られた箇所は血が流れていたが、杭の刺さった腹は青黒い痣になっているだけだった。
「アレを喰らってそれだけか? どんな腹筋してるんだ‥‥」
「へっ、お前らとは鍛え方が違うんだよ」
驚きを通り越して呆れた透夜にグリムが不敵に笑って答える。
そしてグリムは、更に間合いを詰めてシヴァを振り上げていた由梨の懐に超加速で入り込んだ。
「よぅ」
「くっ!」
由梨はこの距離では不利だと判断し、咄嗟にシヴァから手を離す。
「いい判断だ」
そう言ったグリムが眼前から消える。
由梨はディアブロを跳躍させ、勘だけで背後からのグリムの攻撃を避けた。
そして空中で身を捻り、眼下のグリムにナックル・フットコートβを叩き込む。
しかしグリムは無傷で受け止めた。
だがすぐに試作剣「雪村」を抜いて斬る。
「あちぃ!」
これは効いたらしく、グリムの体表が火脹れを起こす。
「由梨! 連携攻撃いくぞ」
「了解です」
透夜はHiDで、由梨は雪村でグリムの左右から斬りかかった。
グリムは裂傷と炎症を負いながらも超加速で二人の死角に回り込みながら斧を振るった。
由梨は完全に見切って避けたが、透夜のディアブロは更に傷を負う。
そうして一時は優戦になった二人だったが、やがて由梨のディアブロの練力が減り、雪村から光が消えた。
一方、グリムは全身に重度の火傷を負い、幾つもの裂傷を負って血を流していたが、その顔には満足気な笑みが浮かんでいた。
「どうやら、お互い限界が近いみたいだな‥‥。今日はこの辺にしとくか」
「いえ、逃がしません」
グリムは退こうとしたが、由梨は再びシヴァを構えた。
「止めときな。そのでか物じゃ俺を捉えきれねぇよ」
「‥‥」
グリムの指摘に由梨は二の句もつけない。
「じゃあな」
グリムが背を向ける。
「帰るぜケットシー」
「了解ニャ」
そしてケットシーを伴って森の中に消えた。
「行ってしまった‥‥」
小夜子が残念そうに呟く。
「小夜ちゃん、もしかしてあの猫を心ゆくまで撫でふにしたいとか思ってる?」
「え!? あの‥それは‥‥」
拓那に図星を指された小夜子は顔を赤らめて口篭った。