●リプレイ本文
タートルワームの砲撃に曝されているヒューストン空港の上空に4機のKVが飛来する。
「性懲りもなく、また来たと言う訳ですかぁ?」
「まったくバクアもしつこいですね‥‥。早急に叩き潰してしまいましょう‥‥と言いたいところですが、単純な力押しでどうにかなりそうでもありませんし、少々厄介ですね」
「今回は迅速に亀を排除せんとなんらのか、小型を相手取る事は難しいか」
アンジェリカに乗る聖・綾乃(
ga7770)、ディアブロに乗る如月・由梨(
ga1805)、R−01改に乗る時任 絃也(
ga0983)が上空から敵の戦列を眺める。
「距離が離れてるから手分けして敵を叩くよ。優先目標は亀。ゼカリア組は陸戦ワームをお願い」
シュテルンに乗る赤崎羽矢子(
gb2140)が地上部隊に通信を送った。
「了解なのであります。ゼカリアの初陣なのであります。張り切っていくのでありますよ」
痛KVペイントが間に合わなかった事が少々不満ながらも張り切る美黒・改(
gb6829)。
(「大規模作戦があるとはいえ‥この防衛網の薄さ‥軍の都合か‥気に入らないな」)
そんな不満を抱えながらも仕事は仕事と割り切って出撃するウラキ(
gb4922)。
「少々銃と言うには大きすぎる代物だが‥魔弾の射手と洒落込んでみるか」
早々に新型機の巨砲の試射ができる機会に恵まれたイレーネ・V・ノイエ(
ga4317)。
この3人のゼカリアが戦車形態で空港より発進し、小型陸戦型ワームの迎撃に出た。
「蠍のせいで、少々気が立ってる‥‥今回は真面目にやらせてもらおうか」
少し前に思わぬ仇敵と邂逅し、普段は見せない憎悪が滲ませた緋沼 京夜(
ga6138)がブーストを点火させたディアブロで敵陣めがけて駆け抜ける。
「この辺に置いておけば空港の方にEQが向かっても探知できますかね」
ワイバーンのマイクロブーストとブーストを併用して誰よりも先行した周防 誠(
ga7131)は敵陣の少し前で足を止めて地殻変化計測器を設置。
それからTWをスナイパーライフルで狙撃した。
ライフル弾はTWの装甲を貫通したが、TWは砲撃を続けている。
「やはりこの程度では止まりませんか」
周防は再びマイクロブーストを発動させると敵陣にワイバーンを突っ込ませた。
急接近するワイバーンに向かってゴーレムがライフルで狙撃してくるが周防は最小限の動きだけで易々と避け、ツングースカを放ってゴーレムの動きを牽制すると一気に脇を抜けて穴の側に到達する。
「貰った!」
周防が穴に向かってグレネードを2連続で放つと内部で大爆発が起こり、CWの怪音波が少し和らぐ。
そして周防はその場で機体を旋回させ、ツングースカをTWに向かって連射。
数百発もの弾丸が装甲を削って貫き、TWに無数の穴を穿って弱らせてゆく。
「ここを狙えば‥いけるか?」
最後にTWの眉間をスナイパーライフルで撃ち抜き、トドメを刺す。
「ちっ‥亀はもう片付いてるじゃねぇか」
少し遅れて敵陣に到着した京夜は不機嫌そうに言うと、ゴーレムにダブルリボルバー向けて連射。
ゴーレムの肩、胸、腹に弾痕が穿たれ、顔面が弾けた。
ゴーレムはふらつきながらも剣で斬りかかって来たが、剣を銃弾で弾いて反らし、側面に回り込む。
「‥‥邪魔だ」
そしてゴーレムの側頭部にリボルバーを押し付けると残りの弾丸を全て叩き込み、頭を完全に破壊して倒した。
「‥‥この程度か」
京夜は詰まらなさそうに呟くとダブルリボルバーから空の薬莢を飛ばし、次の弾を込める。
「緋沼さん、直下からEQ来ます」
「ふん」
周防からの警告に反応して京夜はブーストを発動して後ろに退がり、EQの出現箇所にあわせてソードウィングを広げた。
すると、地中から出たEQがソードウィングに突撃する形になり、EQは自ら力で体を切り裂かれていった。
「目障りだ‥‥砕け散れ」
更に京夜はダブルリボルバーの弾丸をありったけ叩き込み、EQの息の根を止める。
「こんなもので晴れるわけもないか‥‥」
京夜はEQの死骸を足蹴にすると煙草を取り出し、火をつけた。
「‥‥不味いな」
羽矢子は地上の右翼の敵陣脇にM−122煙幕装置で煙幕を炊いた。
「んじゃ、お先!」
そして煙幕の中を垂直離着陸能力で降下し、すぐに人型に変形する。
羽矢子の後に続いて綾乃も煙幕に紛れて高度を下げ、十分に速度を落としてから人型に変形させた。
そして降下中にTWに向けて滑腔砲で威嚇射撃を行ったのだが、空中でそんな機動を行ったため機体がバランスを崩す。
「あれ、あれれ?」
ただでさえ難しい悪路への変形しながらの着陸でバランスを崩してはまともに着地などできる訳もなく、綾乃のアンジェリカは地面に激突した後、バウンドして地面を転がった。
「キャーー!!」
幸い足が折れる事はなかったが機体各部が軋みをあげており、すぐには立てそうにない。
「聖さん。そちらにEQが向かってます!」
周防からの警告がコクピットに響く。
「えぇ! 立ってAngie!」
綾乃は必死に操縦桿を操ったがアンジェリカの動きはまだ鈍い。
そして不意に足元が盛り上がり、EQが地面ごとがアンジェリカを呑みんだ。
甲高い削掘音と共にコクピットも激しく振動し、機体が削られていく。
「ブーストオン、スタビライザー起動、全ブースター、スラスター最大出力」
そんな最中、綾乃は勤めて冷静さを保ちながら手早く脱出のために手順を構築してゆく。
「飛べ、Angie!!」
そしてアンジェリカの全出力を開放してEQの口内から脱出を果たした。
アンジェリカは片腕を失い、全身の装甲が剥離して満身創痍な状態だったが動く事は何とか可能だった。
「やってくれたな‥すぐにでもAngieが受けた痛みを返してやりたいが‥‥お前の相手は後だ!」
綾乃は悔しそうに言い残し、EQに背を向けてTWの撃退に向かった。
その頃、地殻変化計測器を設置した羽矢子はCWの潜む穴に向かっていたが、目の前にゴーレムが立ちはだかり、大剣で斬りかかってきた。
「邪魔だっ!」
羽矢子はブーストジャンプで斬撃を避けると同時にゴーレムの肩を蹴って飛び越え、穴の側に着地する。
「喰らえ!」
そして穴にグレネード弾を撃ち込んで炸裂させる。
すると穴からゲル状の物体が噴き出し、頭痛が少し和らいだ。
「よし!」
羽矢子が安堵した直後、背後から迫ったゴーレムが大剣を大きく振りかぶり、シュテルンの背面を斬り裂いた。
「くぅ!」
羽矢子は機体を旋回させながらハイ・ディフェンダーを抜いて続く第二撃を受け止め、金属同士がぶつかり合う甲高い音が大きく響く。
「このぉ!」
羽矢子はそのまま敵の剣を受け流して回り込み、斬撃を振るう。
ハイ・ディフェンダーはゴーレムの胸部を深く切り裂いたが、敵は構わず横凪ぎに剣を振るってきた。
羽矢子はシュテルンを伏せてかわし、そこからハイ・ディフェンダーを切り上げてゴーレムの腕を剣ごと斬り落とす。
「ここはもうお前達の居場所じゃ無いんだ。いい加減退場しなよ!」
そしてがら空きになった胸部にハイ・ディフェンダーを深々と突き刺した。
そうして羽矢子がゴーレムを引き付けてくれている間に綾乃がTWに接近し、SESエンハンサーを発動させて試作剣『雪村』を抜いた。
「不快なヤツ‥目障りだ‥消・え・ろ」
柄から伸びた超濃縮のレーザーブレードがTWの装甲をバターの様に易々と切り裂く。
1撃毎に練力が急速に消費されるが綾乃は構わず攻撃を続け、最後にTWの頭を斬り飛ばし、首から噴き出した体液がアンジェリカを赤黒く染めていった。
もう一方の降下組である時任も変形着陸のため煙幕を張ろうとしたが、そこで煙幕弾を搭載し忘れていた事に気づいた。
「しまった‥‥」
僚機の由梨はH−01煙幕銃を装備していたが、射程が短すぎて空からでは的確な場所に煙幕を張る事はできそうにない。
「仕方ない。このままアプローチを敢行する」
時任は十分に速度を落としながら高度を落とし、機体を変形させた。
だがその直後、ゴーレムの放った弾丸が機体を直撃し、大きくバランスを崩す。
「くそぉ!」
時任は何とか着地体勢を保とうとしたが叶わず、R−01改は地面に激突して転倒した。
しかし、その間に由梨は無事に着陸を果たす。
「時任さん!」
「俺の事はいい! 先に行けっ」
「‥‥分かりました。お気をつけて」
由梨は一瞬迷ったが、すぐに決断を下してブーストを発動し、人型に変形させたディアブロを一気に加速させた。
一方、まだ満足に動けない時任にはゴーレムが集中砲火を浴びせ始める。
着弾する度にR−01改の装甲が弾け、各部でスパークが起こる。
「時任さん。そっちにもEQが接近中です!」
更に周防からそんな警告がされる。
「ちぃ!」
時任は機体を強引に動かし、転がるようにその場から離れた直後、EQが地面から飛び出してくる。
敵との距離があった事が幸いして避けられた時任は機体を立て直してブーストを発動。
EQは無視してTWに向かって機体を走らせた。
その頃、CWの撃破に向かった由梨の前にはゴーレムが立ち塞がり、剣で斬りかかってくる。
由梨は高出力ブースターを吹かして易々と避け、機刀『獅子王』を抜いて袈裟切りにする。
しかし、ゴーレムは斬られてもなお道を空けず、由梨の前に立ち塞がった。
「邪魔です、どきなさい!」
由梨は獅子王を正眼に構え、上段から斬りかかる。
獅子王はゴーレムの肩から腹まで切り裂いたが両断するまでは至らず、その隙にゴーレムが獅子王を腕で固定し、至近距離から剣で突いてきた。
「っ!」
だが由梨は身を反らしてギリギリで避けると獅子王の柄を両手でガッチリ掴み直し、刀身を滑らせて固定されていた腕を切断しながら引き抜いた。
「これで終わりです!」
由梨は素早く獅子王を手元に引き戻し、ゴーレムの首を横凪ぎにして斬り飛ばし、返す刀で今度こそ身体を両断してみせた。
「余計な手間がかかってしまいました」
由梨はゴーレムの屍を乗り越えて穴に到達すると迷いもなく飛び込み、奥にいたCWに獅子王に突き立てた。
すると今まで頭に響いていた頭痛がスッキリと晴れる。
「どうやらCWは片付いた様ですね」
一方、3機のゼカリアは陸戦ワームを射程内に捉えると人型に変形してそれぞれの420mm大口径滑腔砲で狙いを定めた。
「しかし、新型機もこれだけ揃うと‥壮観だね‥」
「この戦場でゼカリア最強の伝説を刻むのであります」
「距離18。徹甲弾装填。ファイヤ!」
イレーネと美黒の滑腔砲が轟音と共に火を噴き、徹甲弾が空気を切り裂いて音速で飛来する。
だがワームは機体を左右に振って避けた。
「次弾装填急ぐであります」
「‥420mm砲装填‥撃ち抜く」
「距離14、徹甲弾、ファイヤ!」
第二射はウラキも加えた3機で砲撃したが今度も避けられる。
「意外とすばっしこいのであります」
「距離10か。徹甲散弾を使う」
イレーネと美黒は徹甲散弾を装填して発射。
轟音と共に無数の徹甲散弾が飛来してワームの装甲を喰い込み、細い手足もへし折ってゆく。
「弾を惜しんで抜かれる訳にはいかない‥ 撃ち崩す」
ウラキの放った徹甲弾はワームを貫き、半身を吹き飛ばして身体コマのように回転させた。
だがそれでもワームは歩みを止めず真っ直ぐ突き進んでくる。
「ここから先は一歩も通さないであります。通りたければ美黒の屍を越えていけなのです」
美黒は弱ったワームに徹甲弾を撃ち込んで倒し、もう1機の前に立ちはだかって進路を塞ぐと滑腔砲をワームに槍のように突き立て、0距離から徹甲弾を発射。
ワームの上半身が綺麗に吹き飛んだところに徹甲散弾を撃ち込み、完全にバラバラにして倒した。
「400連射の重機関砲‥防げるか?」
イレーネとウラキはGPSh−30mm重機関砲で鉛玉を山ほど叩き込み、ワームを鉄くずに変えた。
そして残りのワームにも重機関砲をばら撒いていったが、攻撃を耐え切った2機が二人の脇を抜けて空港に迫る。
「2機抜かれた。迎撃を」
『了解』
イレーネの指示に従ってリッジウェイが攻撃を始めたがなかなか命中しない。
『くそっ当たらねぇ!』
「構わない。そのまま撃ち続けていろ」
イレーネはゼカリアを回頭させて照準機を覗き込み、ワームの動きを冷静に追いながら狙いを定めてトリガーを引く。
「ファイヤ!」
発射された徹甲弾がワームを後ろから撃ち抜き、完全破壊する。
そして残りの1機もウラキが滑腔砲で狙撃して撃破した。
「これで陸戦ワームは全滅したか。亀の方は?」
ブーストでEQを振り切った時任が最後のTWに迫り、アグレッシヴ・ファングで威力を上げたラスターマシンガンを乱射した。
「喰らえ!」
だがTWの厚い装甲に阻まれ、あまりダメージを与えられない。
「やはり知覚兵器でないとダメか」
しかし、おそらく大規模作戦用の装備で出撃してきたR−01改には知覚兵器は搭載されてはいない。
そのため物理兵器で攻撃するより術がなく、決定打を与える事ができない。
「くっ‥‥」
TWは時任の攻撃を受けながらも砲撃を続け、攻撃を受け止めているリッジウェイは満身創痍になっていった。
だが、不意に帯電粒子加速砲の光がTWに突き刺さり、腹部に大きく抉り取った。
「堅いと言われていますが、それを勝る破壊力さえ出せれば‥‥!」
由梨はアグレッシブ・フォースを発動させると試作剣『雪村』からレーザーブレードを伸ばして跳躍、大上段から一気に振り下ろしてTWを真っ二つに斬り裂いた。
胴体を前後に分かたれたTWは大量の体液を地面に零しながら息絶えた。
「‥‥残りのEQは地中を南方へ移動している。どうやら撤退したみたいだね」
ウラキの報告に周防と羽矢子も同様の見解を持つ。
こうしてヒューストン空港は無事に防衛を果たす事ができたのであった。
戦闘終了後、空港に戻ったイレーネは医務室を訪れた。
「リッジウェイの諸君は無事かね?」
「あぁ。ギリギリだったが、まぁなんとかな」
頭に包帯を巻いた兵士が苦笑を浮かべた。
「そうか。では、これからも空港の防衛を頼む」
「あぁ、了解だ」
イレーネは兵士と別れ次の病室に入る。
「綾乃、具合はどうだ?」
「あ、イレーネさん。はい、これぐらいの怪我、全然平気です♪」
綾乃は笑顔だが、EQに呑み込まれた時に受けた傷の治療跡が痛々しい。
「そうか、良かった」
「そんな事より初めて一緒のお仕事出来ましたね♪ お疲れ様でしたぁ〜。私はその‥ちょっとヘマしちゃいましたけど‥‥」
綾乃が力なく笑う。
「自分こそ綾乃が危険な時に守ってやれなくてすまない」
「そ、そンな事ないですぅ〜! アレは綾乃がドジだっただけで、イレーネさんは全然悪くないですぅ〜!!」
綾乃はブンブンと手を振ってイレーネを庇ってくれる。
「ふふっ‥綾乃は強くて優しいな」
イレーネは微笑を浮かべると、綾乃の頭に手を置いて優しく撫でた。
「‥そ、そンな事ないですぅ」
綾乃は頬を染め、もじもじと恥ずかしそうにしながらも嬉しそうだった。