タイトル:異星のインファイターマスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/19 22:27

●オープニング本文


 ロシアのウダーチヌイでの大規模作戦の折、UPC北中央軍の防衛能力が薄くなった隙を突いてロサンゼルスにシェイドとステアーが強襲をかけてきた事があった。
 シェイドは傭兵達の活躍により撃退できたが、ロサンゼルスの防衛の要の一つであるアーバイン地区の橋頭堡はステアーによって破壊されていた。
 そして現在、ウダーチヌイでの大規模作戦も人類側の勝利で終わり、UPC北米軍の最大戦力であるユニヴァースナイト弐番艦も北米へと帰還している。
 そうして戦力の立て直しを図る事が出来たUPC北中央軍はアーバイン地区の橋頭堡の再建を急ピッチで行っていた。




●橋頭堡、東端部司令室

 かつて、この橋頭堡の防衛の総指揮を任されていた司令官は現在は中央部から東端の司令部に転属させられていた。
 ステアーによって彼が指揮していた司令部と橋頭堡を破壊されたが迅速な撤退を行い被害を最小限に抑えた事で罷免にはならなかったものの、この東端部に左遷になったのだ。
「再建は急ピッチで進んでいる様だな‥‥」
 その司令が双眼鏡で再建中の橋頭堡中央部を眺めた。
 ここから中央部まで10km以上離れているため、双眼鏡を使わないと見えないのだ。
「えぇ、このペースなら予定よりも早く再建できそうです」
 傍に控える副官が再建計画書に目を通しながら言う。
「そうか、それにしても‥‥」
 司令は司令室の窓から肉眼で辺りを見渡した。
「ここは暇だな」
「ここは被害が皆無でしたからね」
 副官の言う通り、この辺り一体はステアーの攻撃を受けず無傷だったため、再建の喧騒とは無縁だった。
「まぁ、司令は今までずっとここの防衛司令長官として働きづめでしたからね。この機会に少し休めという事でしょう」
 副官が苦笑を浮かべながら慰めの言葉をかけてくれる。
「‥‥そうだな。確かに今の間に少し楽させてもらうのも悪くはないか」
 司令はデスクの上のコーヒーを手にして美味そうにすすった。
「そしてこのまま何事もなく橋頭堡が再建できれば御の字だ‥‥」
 そんな風にして司令が和んでいた時
「司令っ! 地殻変化計測器に感アリ。地中から何かが接近してきます」
 レーダー班の一人が防衛司令に向かって叫んだ。
「くっ! 言った先からこれか‥‥敵は空気を読むという事を知らんのかっ!?」
 司令は手にしていたコーヒーカップをデスクに叩きつける様にして置いた。
「敵の位置と数は?」
「方位は南南西。アースクエイク級の敵が‥おそらく8体です」
「8体か、多いな‥‥。その数で橋頭堡の真下から襲われてひとたまりもないぞ‥‥」
 司令は顎に手をあて、苦虫を噛み潰したような顔で呟く。
「司令、どうします?」
「‥‥アースクエイクの出現予想ポイントを割り出して基地内のリッジウェイを配備。傭兵部隊にも出撃を要請しろ!」
「了解です」
 司令の指示を受けた副官が指示を実行をしようとしたが、
「司令、アースクエイクが橋頭堡の手前で浮上を開始しました」
 レーダー班の報告が副官の足を止めさせる。
「なに、真下まで来ないのか?」
「アースクエイク、地上に出ます!」
 レーダー班がそう叫んだ直後、橋頭堡の先で地面が大きく盛り上がり、まるで爆発したように土を周囲に撒き散らしながら4体のアースクエイクと4体のサンドウォームが這い出してくる。
「敵がどういうつもりか知らんがチャンスだ。橋頭堡に接近される前に撃退する! リッジウェイと傭兵部隊を出撃させろ!」
「了解!」 
 司令は副官に指示を与えると双眼鏡で敵の様子を窺った。
 すると、1体のアースクエイクの頭頂部分が開いて、そこから何か出てくるのが見えた。
「なんだ?」
 双眼鏡の倍率を上げると、それは人の様に見えたが、人にしてはずんぐりとした体形をしており、筋骨隆々で髭面なその姿はファンタジー世界に出てくるドワーフを彷彿とさせた。
「司令。あれはもしや、ラインホールド内部での目撃報告があった異星人型のバグアでは‥‥」
 司令の隣りで同じように双眼鏡を覗いていた副官が息を呑む。
「なんてこったぁ!! ステアーの次は異星人型バグアだとっ! どうして俺の赴任先ばかりにこんな大物が立て続けに出てくるんだぁ!? 敵の大将は俺に何か恨みでもあるのかぁーーっ!!?」
 司令がやけっぱち気味に怒鳴り散らす。
「司令、そんな事よりも指示を‥‥」
「分かっている! アースクエイクともども異星人型バグアも殲滅しろ。傭兵部隊を前面に展開し、リッジウェイは後方で砲戦援護だ」
 副官につっこまれて少し冷静さを取り戻した司令が新たな指示を飛ばした。





●橋頭堡、東端部

「お、来たな」
 迎撃に出てきたKVを目にした異星人型バグアは嬉しそうに口の端を釣り上げて豪快な笑みを浮かべた。
「まずは名乗っておこう! 俺は名は『グローリーグリム』。起きてみたら仲間達が面白そうな奴らと戦っていると知ってな。どんな奴らなのか知りたくなって駆けつけたって次第だ。さぁて、おしゃべりはここまでだ。俺は口より拳を使って話す方が好きなタチでな。さぁ、かかってこい!」
 後ろにアースクエイクとサンドウォームを従え、『グローリーグリム』と名乗った異星人型バグアは拳を握って構えた。
 武器は持っていない。
 どうやら拳だけでKVと戦うつもりらしい。
『武器なしで戦うだと、舐めやがって!』
 リッジウェイのパイロットの一人がグローリーグリムに向かってスナイパーライフルを撃った。
 しかし放たれたライフル弾はグローリーグリムに届く前に逸れて明後日の方に飛んでいってしまう。 
『馬鹿な! 弾が逸れた?』
 パイロットの顔が驚愕に歪む。 
 おそらくはグローリーグリムが何かをしたのだろうが、それが何なのかさっぱり分からない。
「おいおい、飛び道具なんて無粋なものを使うな。男だったらガチンコの殴り合いだろう!」
 グローリーグリムは僅かに失望した様に言うと、KVに向かって全速で突っ込んできた。

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
聖・真琴(ga1622
19歳・♀・GP
月影・透夜(ga1806
22歳・♂・AA
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
九条院つばめ(ga6530
16歳・♀・AA
榊 刑部(ga7524
20歳・♂・AA
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER

●リプレイ本文

●戦闘開始

「正面からの殴り合いを好むとは、潔い戦士もバグアにも居たものですね。ここは仲間を信じて、私は私の仕事をきちんと済ますことにしましょう」
 榊 刑部(ga7524)はグローリーグリムと戦ってみたい気持ちもあったが橋頭堡の防衛を優先し、ミカガミにR−P1マシンガンと135mm対戦車砲を構えさせた。

「バグアって私の中では狡猾なイメージが強いんですけど‥‥ああいうタイプもいるんですねぇ‥‥って、感心してる場合じゃないですね。この前の大規模でのバグア人の暴れっぷりは凄かったみたいですし、油断はできません」
 刑部と同班の九条院つばめ(ga6530)は気を引き締め、愛機のディスタン『swallow』に地殻変化計測器を設置させ、対空機関砲『ツングースカ』をSWに向かって発射する。
(「うちの小隊で、ああいうタイプの敵とガチンコしたいって人、多いだろうなぁ‥‥」)
 けれど、ふとそんな事も考えてしまった。
 そして弾を逸らす能力をもう一度確認しようとツングースカをグローリーグリムにも放つ。
 すると、やはり弾丸はグローリーグリムの手前で全て逸れてゆく。
 どうやら弾はグローリーグリムに一定距離まで近づくと逸れる様だ。

「あのバグア。飛び道具が無粋だなんて、僕の拘りとは相容れない相手ですね」
 新居・やすかず(ga1891)は思わずグローリーグリムにリニア砲で砲弾という名の拳をお見舞いしてやりたくなったが、そんな個人的な思いはしまって地殻変化計測器を設置するとSWに向かってツングースカのトリガーを引く。
 ベルト給弾によって100発の弾丸が連続的な炸裂音を伴って発射され、続々と排出される薬莢が地面に散らばってゆく。

「妙な格闘バカが居たモンだ♪ ま。私は好きだけどね‥こぉ言うオヤジ☆ けど‥‥ココをくれてやる訳にゃいかねぇよ」
 聖・真琴(ga1622)は嬉しそうに言って唇をペロリと舐めた。
「真琴、アイツとやり合いたい気持ちも分かるがまずは数を減らすぞ」
 月影・透夜(ga1806)は真琴の手綱を引き締めると新居とつばめが攻撃したSWに向かって長距離バルカンを発射。
 バルカンで更に穴だらけにされたSWは地面に倒れ伏して動かなくなる。
「了解。じゃあ、まずは肩慣らしといくか」
 真琴もスラスターライフルで別のSWに攻撃を加えた。

「常時発動か任意発動かは分らないけど、面倒な能力を持っているみたいだね。隙を狙うか、非物理で攻めるか‥‥」
 新居と同班のアーク・ウイング(gb4432)はグローリーグリムの能力が気になるらしく、対策を練りながらスナイパーライフルD−02を構えSWを狙撃。
 1発目が命中した所にリロードした2発目を正確に撃ちこみ、真琴の攻撃で弱っていたSWにトドメを刺す。



●右翼

「前衛は俺達が就きます。皆さんは各班に別れて射程を生かしたバックアップを。折角ここまで直した基地、みすみすミミズにやるわけには行かないです!」
 新条 拓那(ga1294)はリッジウェイ部隊に指示を飛ばし、敵の気を引く様に右翼側に回り込みながら地殻変化計測器を設置すると、そのリンクを石動 小夜子(ga0121)のウーフーに移譲する。
「どう小夜ちゃん?」
「はい、リンクできました」
 小夜子も地殻変化計測器を設置し、戦場のほぼ全ての地中を観測できる様になる。
「‥‥大丈夫、小夜ちゃん?」
「え?」
 不意に拓那から心配そうに尋ねられ、小夜子は驚いた。
 実は小夜子は少し前の戦闘で受けた傷がまだ完治しておらず、それを圧して出撃してきていた。
 しかし、仲間達に心配をかけたくなかったので黙っていたのだが、拓那には見破られていたらしい。
 バレてしまった事はちょっと恥ずかしかったが、気づいて貰えた事はとても嬉しかった。
「はい、大丈夫です。拓那さんもお気をつけて」
「うん、早く片付けてゆっくりしよう。フォローよろしくね、いくよーっ!」
 小夜子の元気そうな声を聞いて安心した拓那はチラリ操縦席に吊るしてある小夜子からのお守りに目を向ける。
(「鶴亀神社の神様。どうか俺達を守ってください」)
 そしてガトリングナックル射程内まで接近したのだが、撃つ前にEQとSWは地中に没してしまった。
「小夜ちゃん!」
「はい。敵は左翼に1体、中央3体、右翼2体に分かれました」
 すぐに小夜子が計測器で追跡する。
「出現場所を予測してくれ」
「はい。出現位置は‥‥‥。あっ! リッジウェイの真下です。逃げてくださいっ!!」
「え? 了解!」
 小夜子達の班に合流したリッジウェイのパイロットが慌てて機体を後退させたが1歩遅く、地中から現れたEQがリッジウェイをその大きな口内に飲み込んでしまった。
「うわぁぁーー!!」 
 EQの中からバキバキと金属が軋む音が鳴り、無線機からはパイロットの悲鳴が響く。
「すぐに助けます!」
 小夜子がEQに向かって高分子レーザーを放つ。
「俺もすぐ行く!」
「ダメです拓那さん。後ろに反応が!」
 拓那も救援に向かおうとしたが、不意に背後の土が盛り上がり、SWが顔を覗かせて触手を放ってきた。
「しまった!」
 触手はヒートディフェンダーに絡まり、拓那のシュテルンの手から奪い取ろうとする。
 拓那はリッジウェイの救出を優先するため敢えてヒートディフェンダーから手を離し、EQに向き直る。
「当たって砕けろ鉄拳制裁! 喰らえぇ! ガァァァァァドリング、ナァッコゥ!」
 そして高らかに叫んで音声認識型のガトリングナックルを撃ち放つ。
 連続して30発もの拳型弾丸に腹を殴打されたEQはその衝撃でリッジウェイを吐き出した。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、なんとか‥‥」
 小夜子が声をかけると心底安堵したパイロットの声が返ってくる。
 リッジウェイは両手足が千切れ見る影もない程の有り様になっていたが、装甲の厚さと耐久性の高さが幸いしてコクピット部は無事だった。
 しかしEQは今度は小夜子にウーフーに喰らいつこうと迫ってくる。
 小夜子はなんとか避けて至近距離からレーザーを放ったが、EQは構わず身を捻ってウーフーに体当たりした。
「キャーー!!」
「軽々しく小夜子に触れるな! ミミズ風情がッ!!」
 拓那は小夜子とEQの間に自機を立ちはだからせると残りのガトリングナックルとレーザー砲を撃ち込んでゆく。
 吹っ飛ばされた小夜子もレーザー砲を放ち、EQにトドメを刺した。
「大丈夫か小夜ちゃん!?」
「はい、平気です」
 そう言った小夜子に声は嘘は感じられず、ウーフーも傷ついているが機動は滑らかだ。
「‥‥そうか、良かった。じゃあ、早くSWも倒しちゃおう」
「はい!」
 心底安堵している拓那に小夜子は元気に答えた。



●左翼

「アークさん、直下から来ます!」
「了解」
 新居の警告を受けたアークは地中からのEQの呑み込み攻撃を避け、レーザーガトリング砲を放つ。
「アーちゃんは食べてもおいしくないし、食べられるほどノロマでもないよ」
 胴体に穴を穿たれたEQは体液を零しながら身を振るって体当たりをしてくるがアークは距離をとって避けた。
「この距離なら外す方が難しいですね」
 新居も近距離からリニア砲を放ちEQの身体に大穴を開けてゆき、リッジウェイもヘビーガトリングで弾幕を張ってくれる。
「これで一気に決める」
 アークはPRMシステム起動し、可変ノズルを攻撃モードするとスナイパーライフルD−02で新居のリニア砲で開いた傷跡を狙撃。
 着弾と同時に体液が激しく噴きだした。
「もう一発!」
 そして手早くリロードしてもう一つの傷跡にも撃ちこんだ。
 EQは体液を噴き出しながら身もだえ、口を開けて新居のS−01Hに迫ってくる。
「それでは撃ち込んでくれと言っている様なものですよ」
 新居はEQの口にグレネードを撃ちこみ、その爆発で足止めをするとリニア砲をリロードして構える。
「これで終わりです」
 放たれた砲弾はグレネードで傷ついた体内を更に破壊し、完全に息の根を止めた。



●中央部

 つばめは地中から現れたSWの触手から辛くも逃れ、ツングースカで触手を薙ぎ払った。
「えぇいっ!」
 そして思いっきりハンマーボールを振りかぶり、遠心力を込めて横から力一杯叩きつける。
 ガツンと鈍い音が響いてSWの頭部が大きくひしゃげた。
「他人の得物を奪おうなどとは卑怯な戦い方をしますね」
 そこにEQの呑み込み攻撃を避けた刑部が駆けつけ、マシンガンと対戦車砲を乱れ撃つ。
 SWに無数の弾痕が穿たれ、砲弾が体表を深く抉ってゆき、弱ったところで刑部は真ツインブレイドに持ち替えて一気に懐に飛び込んだ。
「フンッ!」
 そして『接近仕様マニューバ』を発動させると真ツインブレイドを頭上で旋回させ、その回転力を維持したまま一気に袈裟懸けに斬り下ろす。
「ハァ!」
 更に下から逆の刃で逆袈裟に斬り上げ、
「トドメッ!!」
 最後は深々とブレイドを突き入れトドメを刺す。
 だが、動きの止まった刑部のミカガミの後ろから大口を開けたEQが襲い掛かってくる。
「危ない榊さんっ!」
 つばめは咄嗟にEQの口の中にグレネード弾を撃ちこみ、体内で爆発させて動きを鈍らせた。
「セイッ!」
 その隙に刑部は真ツインブレイドを引き抜き、振り向きざまに横薙ぎに一閃し、EQと頭部を横一文字に斬り裂く。
 そうしてEQの軌道を僅かに逸らした刑部はミカガミをバックステップさせてEQの突進をギリギリ避け、横をすり抜け様に真ツインブレイドを胴体に突き刺す。
「ハァァァーーー!!」
 そしてブレイドを突き立てたままミカガミを走らせ、EQの胴体に長く深い傷を刻んでいった。
 EQは傷跡から体液を垂れ流しながら身体を左右に振ってミカガミを吹き飛ばそうとしたが、その前に刑部は距離を取る。
「ハンマーーーーアタァーーック!!」
 そこにつばめがハンマーボールをEQに頭部目掛けて叩き落した。
 ハンマーボールはEQの頭部にめり込み、そのまま地面に激突。
 EQの頭部はグシャリと鈍い音をさせて完全に潰れた。



●グローリーグリム

「殴り合い勝負ぅ? ‥‥脳みそに炸薬でも詰まってンのかぁ? 気に入ったぁ☆ アンタの相手はコッチだ!」
「殴り合いをご所望か。いいだろう、俺たちが相手になってやる」
 真琴と透夜のディアブロはグローリーグリムを待ち受けていた。
「おっ、二人で相手してくれるのか? だが俺はまずタイマンでやり合いたいんだ。悪いがおまえはコイツと遊んでてくれや」
 グローリーグリムが指をパチリと鳴らすと透夜のディアブロの足元が盛り上がり出す。
「っ!」
 透夜が反射的に後退すると、地面からEQが飛び出し襲い掛かってきた。
 透夜はハイ・ディフェンダーを抜き、迫るEQに合わせて振り下ろす。
「破っ!」
 そうしてハイ・ディフェンダーをEQに喰い込ませて呑み込まれるのを防ぐと、EQの身体を蹴って飛び退り、一旦距離を取る。
 だが真琴とは分断される事になった。
「透夜さん!」
「こっちは平気だ。すぐに合流する」
 透夜は牽制のバルカンを放ちながらEQの懐に飛び込み、ハイ・ディフェンダーで胴を薙ぎ払う。
 斬られたEQは一旦、地中に身体を引っ込めた。
「小夜子! 地中データをこっちにリアルタイムで転送してくれ」
「はい!」
 透夜は送られてくるデータをじっと睨み続ける。
 そして、機を見てバックステップすると目の前にEQが飛び出してきた。
「征っ!」
 透夜はタイミングを合わせてハイ・ディフェンダーを一閃させ、EQを深く斬り裂いた。
 EQはまた引っ込もうとしたが、
「逃がすか!」
 先に透夜がハイ・ディフェンダーを更に一閃させてEQの頭部を斬り飛ばし、息の根を止めた。



 一方、真琴はグローリーグリムと相対しながら不敵な笑みを浮かべあっていた。
「さぁやろうか。私が『女』だからってガッカリなんてしねぇよな?」
「あぁ、相手が戦士なら男も女も関係ねぇ。行くぜ」
「来いや♪」
 グローリーグリムは地を蹴って跳び上がると真琴のディアブロに殴りかかってくる。
「速い!」
 真琴はライトニングファングで受け止めたが、それでもコクピットにまで響く程の衝撃がきた。
 グローリーグリムは止められた拳を支点にして身を捻り、頭部に向かって蹴りを放ってくる。
「くっ!」
 真琴はスラスターを噴かして身を引き、ギリギリ避けるとファングを打ち下ろす。
 グローリーグリムは腕を頭上で交差させて受け止めたが、そのまま地上に落下する。
 だが、落下しながらもグローリーグリムは拳を連続的に放ってきた。
 その度にディアブロの装甲がひび割れ、コクピットが揺さぶられる。
「こなくそっ!」
 しかし真琴はその衝撃に耐えながら落下するグローリーグリムに蹴りを放った。
「うぉ!」
 グローリーグリムは地面に叩く付けられたが、すぐに跳ね上がって体勢を整える。
「思ったよりもずっと硬ぇし強ぇじゃねぇか。いい感じだぜ」
 蹴りを受けたグローリーグリムの顔は腫れ上がっていたが、その表情は嬉しそうだ。
「私もイイよ♪ KVでここまでの格闘が出来るとは思わなかった。さぁもっと楽しもぉぜ♪」
 対する真琴も同じように嬉しそうな顔をしている。
「じゃあ、第二ラウンド行くぜ!」
「おぅ♪」
 グローリーグリムは身を低くして地面スレスレに突っ込み、ディアブロの足を刈る様に蹴りを放ってきたが、真琴はスラスターを小刻みに噴かして避け、後ろに回りこむ。
「もらった!」
 振り下ろしたライトニングファングがグローリーグリムの身体を斬り裂いたが、グローリーグリムはその手を取り、逆関節を極めてへし折った。
 だが、真琴は構わず右手のバニシングナックルを叩き込む。
 しかしグローリーグリムはガッチリとブロックして受け止めた。
「こっちの腕も貰うぜ」
 グローリーグリムが不敵に笑って関節を極めにきたが、真琴の攻撃はこれで終わってはいない。
「イケぇぇっ!! バニシーーングッナッコォォォーーー!!」
 ジェット噴射の猛烈な爆音を響かせて射出されたバニシングナックルがほぼ0距離でグローリーグリムにぶち当たる。
「ぐはぁっ!!」
 バニシングナックルはそのままグローリーグリムと共に飛んで地面に激突。
 そして何度かバウンドしてから地面に突き刺さった。
「やったか?」
 しかし、不意にバニシングナックルが横に転がり、
「あ〜〜イタタァ〜‥‥」
 ムクリとグローリーグリムが起き上がってきた。
「ガハハハッ!! いやぁ〜すげぇすげぇ。まさかあそこから拳が飛んでくるとは思わなかったぜ」
 グローリーグリムは頭から血を流し、全身も傷だらけのボロボロになっていたが血まみれの顔は笑顔だ。
「いや、今のを喰らってイタタで済ませてるアンタも十分すげぇよ」
 真琴がつっこむ。
「いやいや、これは久しぶりに武器を持って戦わねばらぬ相手の様だ」
 グローリーグリムは嬉しそうに言って指を鳴らし、拓那と小夜子が相手をしていたSWを呼び寄せる。
「じゃあな。次会うときは武器で殴り合おうぜ」
 グローリーグリムはそう言い残すとSWの頭部に乗り込み、地面に潜っていった。