タイトル:【JTFM】火山要塞戦前編マスター:真太郎

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/21 03:23

●オープニング本文


 2011年5月中旬
 エクアドルの首都であるキトの町でソフィア・バンデラス(gz0255)が張った罠に嵌まったUPC南中央軍は動員した正規軍所属のKV51機の内40 機を失った上、パイロットも23名失った。
 対するバグア軍の被害はキメラが100匹前後、小型のHWが35機。
 数だけならそれなりの損害を与えている様に見えたが、キメラの大半は出来損ない、HWも傷物や老朽機がほとんどであり、実質的な被害は少ない。
 バグア軍は戦闘後キトを放棄し、ソフィア・バンデラスはグアヤキルへ、A・J・ロ・ユェラはコトパクシ山内部に建造された要塞まで後退した。
 敵がキトを本拠地として見せていたのは人類を罠に嵌めるための欺瞞で、本当の本拠地はグアヤキルだったのだ。

 総司令官のジャンゴ・コルテス大佐はこの戦いで著しい被害を受けたUPC南中央軍を立て直すため、ヴァルキリー級飛行空母の弐番艦『ヴァルトラウテ』を召集し、ヴァルトラウテを中心としたKV部隊を再編成した。
 これで戦力の問題はどうにか解決したものの、グアヤキルへ進攻するには進攻ルート上にあるコトパクシ山、チンボラソ山の両要塞の攻略が不可欠であった。
 そのためコルテス大佐はUPC南中央軍の佐官位と、ヴァルトラウテの艦長であるビビアン・O・リデル中佐、副長のチャールズ・ハイデマン少佐を集め、今後の作戦会議を行っていた。


「さて、ヴァルトラウテを合流させた事で何とか戦力は整えられたが、少ない戦力であの要塞をどう攻略するかが問題だ。副長、まずはコトパクシ山の要塞に関して説明してくれ」
「ハッ」
 副長は起立すると

・山の中腹付近に四角くくり貫かれて整地された発着場の様な出入り口が1箇所だけ確認されている
・KV小隊が接近すると突然火山が爆発し、吹き上がった無数の溶岩が雨の様に降り注いだ
・溶岩に当たったKVは運が悪ければその場で爆散。運が良くても溶岩の重みで機動力が格段に下がる
・発着場からはタートルワームとレックスキャノンがプロトン砲や対空拡散プロトン砲で迎撃してくる
・発着場には迎撃砲火網『オルバース』も配備されていて、実体弾はほぼ全て迎撃される
・一度外れたプロトン砲の軌道が捻じ曲がってもう一度向かってきたという報告があるため、要塞内部には擬似アグリッパの『ケプラー』が存在している可能性が高い
・地上から進攻しても火山が噴火し、火砕流でKV部隊が押し流されてしまう
・敵はおそらく火山を自在に操る事ができる

 以上の事を説明した。
「なるほど、火山を使った天然の防衛機構で空もダメ。陸もダメですか‥‥。正に難攻不落とも言うべき鉄壁の要塞ですな」
 チャールズが困り果てた様子で顎に手を添えて考え込む。
「‥‥」
 ビビアンも難しい顔でジッと戦術マップを睨みつける様に凝視している。
「どうだね中佐。何か策はないかね?」
「そう‥ですね‥‥」
 コルテス大佐はビビアンがカリの補給線を分断する作戦を立案して見事に成功させた時から、その手腕を買っており、今回も何か策を出してくれるものと密かに期待していた。
 もちろんビビアンだけでなく、会議室の者達は全員知恵を絞って打開策を考える。
 しかしコレといった案が出ないまま、ただ時間だけが流れていった。
 そして
「これは‥かなり危険な策になるのですけど‥‥」
 ようやくビビアンが口を開いたが、その表情はやや曇っていた。
「構わん。言ってみたまえ」
「はい。火山の噴火で噴き上げられる溶岩なのですが、これはヴァルトラウテの電磁フィールドなら防ぐ事が可能だと思います。なのでヴァルトラウテを傘にして溶岩を防いでいる間に艦載機で発着場に突入。火山のコントロール装置やケプラーを破壊した後、ヴァルトラウテに帰還して離脱。という方法が‥」
「相変わらずリデル中佐は大胆な作戦を立案するな。だが悪くない」
「ぁ‥いえ、あの‥‥実はこの作戦はかなり不安要素と不確定要素がありまして‥‥」
 コルテス大佐は満足気な様子で褒めたが、ビビアンは困った様子で言葉を濁す。
「それはなんだね?」
「‥はい。まず敵の総戦力が分からない状態で要塞内部に突入するためかなりの危険が伴う事、要塞内部の何処に火山のコントロール装置やケプラーがあるか分からない事、ヴァルトラウテの電磁フィールドは連続使用だと30秒しか持たないため作戦時間が限られてしまう事、火山にある発着場は距離が短いためVTOL 機でないと着陸は不可能だという事、ヴァルトラウテの艦載機にも南中央軍のKVにもVTOL機がないので突入は傭兵部隊に行ってもらう必要がある事、等です」
「なるほど‥‥」
「す、すみません‥‥。こんなに不確定要素だらけの作戦案なんて、策とは言えませんよね‥‥」
 コルテス大佐が神妙な顔で考え込み、ビビアンがとても申し訳なさそうなしょんぼりした顔をして縮こまる。
「いや、現状ではこれ以上の策は見込めまい。リデル中佐、この作戦案をより確実性の高い物に仕上げてくれ」
「‥‥了解しました」
 ビビアンは少しの間迷ったが、起立して敬礼を返した。

 そしてビビアンは

・ヴァルトラウテでコトパクシ山の要塞に強襲を掛け、電磁フィールドで溶岩を防ぐ
・その隙に傭兵部隊のVTOL機で発着場に突入する
・その際にヴァルトラウテの艦載機がカタパルトデッキから支援砲撃を行う
・傭兵部隊が突入後、ヴァルトラウテは一時離脱
・傭兵部隊が『火山のコントロール装置』、『ケプラー』を破壊
・指定された時間にヴァルトラウテが再強襲し、傭兵部隊を回収して離脱

 以上の様に作戦を練り上げ、ULTを通じて集められた傭兵達をヴァルトラウテに乗せてコトパクシ山へ飛び立った。



 そして無事にコトパクシ山に到着したヴァルトラウテは作戦準備が整える。
「作戦開始! ヴァルトラウテ最大戦速!」
 そして発着場に向けて強襲を掛けると、予想通り火山が噴火して無数の溶岩が降り注いできた。
「電磁フィールド出力最大!」
 すかさず電磁フィールドを展開すると溶岩は全てバリヤーに阻まれ、山の中腹にある発着場までの進路はクリヤーだ。
 しかし発着場にタートルワームとレックスキャノンが現れてプロトン砲を放ってくる。
「邪魔だ! 道を開けろ!」
 だが、マチュア・ロイシィ(gz0354)が率いるマリアンデールとスピリットゴーストが砲撃を行って牽制。
「今です! 傭兵部隊の皆さん、発艦して下さい」
 その隙に傭兵部隊がVTOLで降下し、発着場に降り立った。
「全速離脱!」
 それを見届けたビビアンはヴァルトラウテを全速で離脱させた。
 しかし要塞からは大型本星型HWを筆頭にして次々と敵が出撃してくる。
「ジェームス隊は発艦して迎撃。ただし決して火山に近づいてはいけませんよ」
『了解だ艦長』
 ジェームス・ブレスト(gz0047)がKVを率いて出撃し、戦闘を開始する。
(傭兵の皆さん、どうか無事に戻って来て下さい‥‥)
 ビビアンは届かぬ願いを胸に秘めつつ、刻一刻と変わる戦況を見守った。

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
聖・真琴(ga1622
19歳・♀・GP
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
エリアノーラ・カーゾン(ga9802
21歳・♀・GD
シエル・ヴィッテ(gb2160
17歳・♀・HD
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
鳳 勇(gc4096
24歳・♂・GD

●リプレイ本文

 VTOLで発着場に降りたった9機のKVの内、聖・真琴(ga1622)のOGRE、弓亜 石榴(ga0468)とシエル・ヴィッテ(gb2160)のオウガ、 カルマ・シュタット(ga6302)のシュテルン・G、周防誠(ga7131)の骸龍がその場にいたタートルワーム(TW)とレックスキャノン(RC)に攻撃を仕掛けて動きを抑える。
 その隙に鳴神 伊織(ga0421)とエリアノーラ・カーゾン(ga9802)と鳳 勇(gc4096)のシュテルン・G、番場論子(gb4628)のグロームが一足先に要塞内に突入した。

 要塞内を直進すると四つ角があり、更に直進した先にあった扉の中は狭い個室だった。 
「どうやらエレベーターの様ですね」
 論子が室内で見つけた壁の6つのボタンを指し示す。
「移動の手間を少しでも省くため、上階から一階ずつ調べていきましょう」
「上階というと‥‥1かな?」
 伊織の意見に従ってエリアノーラが一番上の1のボタンを押すとエレベーターは上へ向かって動き出す。
「鬼が出るか蛇が出るか‥‥」
 エレベーターが止まって扉が開くと外が見え、50m程先にはケプラーがあり、2体のTWと1体のRCがジェームス隊のKVに向かってプロトン砲を放っていた。
「あれがケプラーですね。先に潰しておきましょう」
「そうね。時間が惜しいし、撃ち合いに付き合ってらんないし。手っ取り早く殴り合いでカタつけましょ」
「了解です」
「援護する。行ってくれ!」
 勇がGPSh−30mm重機関砲で、論子が47mm対空機関砲「ツングースカ」で弾幕を張り、エリアノーラと伊織が突貫した。
 銃弾を浴びせられた敵は傷つきながらも振り返って反撃を試みる。
「遅い!」
 しかしエリアノーラが双機槍「センチネル」のカートリッジを炸裂させて突き放った槍先がプロトン砲を斬り裂く方が速かった。
「破っ!」
 続いて伊織が機刀「獅子王」で腹を裂き、裂いた腹に刃を突き入れて抉り、そのまま斬り上げて上半身を縦に両断する。
 残りのTW2体は知覚武器を持つ者がいなかったため始末するのに少々手こずったが味方に大した被害はなく、ケプラーも滞りなく破壊した。

 2は大型本星型HWの発着場で、伊織がハッチの開閉装置の破壊を提案したが、開閉装置を見つけだす時間のロスを考えて見送る事となった。

 3は背の高い透明なシリンダーが何十本も立っていて、シリンダーの中には10cm位の丸くて不定形な物体が数千個の単位でプカプカと浮かんでいた。
 気にはなったが時間の事を考えて次に向かった。

 4は最初の階に戻ってきた。

 5は色々な生物の標本や訳の分からない生体機械がゴチャゴチャと並んでいる部屋だった。
 簡単に調べてみたが何一つとして理解できる物がなかったため、結局スルーした。

 6はかなり気温の高い洞窟の様な場所で、3体のタロス(Trs)、1体の中型本星型HW、そしてHWの後ろには4体のキューブワーム(CW)がおり、CWの更に奥には見た事もない大がかりな生体機械が安置され、機械から地中のあちこちに複数の管が伸びている。
「歓迎の連中が多いな。どうやら後ろのアレが火山のコントロール装置で間違いなさそうだ」
「はい。ですが、あのHWをどうにかしないと潰せそうにないです。それにはまずCWをどうにかしないと‥‥」
「タロスとHWを抑えつつ隙を見てCWを潰す‥‥しかないわね」
 エリアノーラ即席の策とも呼べない策に皆が頷く。
「行きます!」
 そして伊織の合図で全員が突撃。
 するとHWから拡散プロトン砲が照射され、超々高熱の光が次々と4機を貫いてゆく。
「お前の相手は私よ!」
 エリアノーラはPRMを抵抗モードで発動するとクロスマシンガンをプロトン砲の砲口に向けて連射しつつ側面に回り込む。
 するとHWはエリアノーラを追って向きを変え、3人がプロトン砲の射線から外れた。
(かかった!)
 エリアノーラは拡散プロトン砲で機体を融解されながらも愛機の装甲と耐久力を頼りにHWに突っ込んで、双機槍「センチネル」をHWの斜め下から突き立てる。
 そしてカートリッジを炸裂させて柄を伸ばし、HWを浮き上げてCWへの射線を確保すると、クロスマシンガンを連射してCWを潰した。

 伊織はTrsを機刀の間合いに捉えた瞬間、一閃。
 怪音波のせいで動きが鈍く、盾で防がれたが構わず脇を抜ける。
 だが別のTrsが立ちふさがり斬りかかってきた。
 伊織は盾で受けたが、先程抜けたTrsも後ろから斬り掛かってくる。
 辛くも機刀で受けると、伊織はその場で到着状態となった。
「くっ‥‥。論子さん、勇さん、今の内にCWを」
「分かりました」
「任せろ」
 伊織に促され、論子と勇がCWに向けて駆ける。
 だが、残る1体のTrsが2人に襲いかかってきた。
 2人はそれぞれの機関砲で迎撃したがTrsの足は止まらず、傷も徐々に再生される。
「ここはわたしが抑えますから勇さんはCWを頼みます!」
 論子はTrsの剣を辛くも盾で受け止めると機槌「明けの明星」で反撃した。
 しかし怪音波の影響を受けた鈍い動きでは当てられず、反撃の刃で機体を斬り刻まれる。
「まだです! ここで倒れる訳にはいきません!」
 論子は腕を振り上げ、コンソールを斜め45度で強打。
 すると低下していた出力系が上昇し、機体に力が漲ってきた。
「やった!」
 勇はその間にCWを射程に捉えるとトリガーを引きっぱなしにして機関砲を乱射。
「30mm重機関砲で一掃する!」
 1200発の銃弾がCWをゲル状のミンチに変えた。
 それを見届けた勇はTrsに向き直りつつリロードした機関砲を連射。
 背面から機関砲を受けて体勢を崩した隙に論子が機槌を叩きつけ、胸部を潰されたTrsが吹き飛ぶ。
「これでトドメです!」
 論子は倒れたTrsに何度も機槌を叩き込んで念入りに潰したのだった。

 伊織は怪音波の影響が大きく下がった直後にPRMを攻撃モードでフル発動。
 刀で剣を受け流し、盾を離してTrsの体勢を崩すと、胴を薙ぎつつ後ろに周り、背中を袈裟斬りして蹴り倒す。
 そこから機体を旋回させて、隣りのTrsの首を跳ねる。
 首を無くしてもまだ斬りかかってきたが機刀で受け、再びPRMを攻撃でフル発動して連撃をくわえて倒し、蹴り倒したTrsにもトドメを刺した。

 残るHWはエリアノーラが正面からプロトン砲の攻撃に耐えつつ攻撃を仕掛け、論子と勇は拡散プロトンの射程外から攻撃を加え、伊織が攻撃の隙を突いて機刀で斬りつける。
 HWは強化FFで耐えて抵抗を続けていたが、やがて強化FFも消失し、それを機に4機で猛攻を加えて破壊したのだった。


 少し時は巻き戻り


 発着場の敵を手早く片づけて四つ角まで来た5人は、石榴とシエルをA班、カルマと周防をB班、真琴は通路に残って通路の索敵と警戒及び2班の状況確認と増援役とし、A班は一番奥の扉、Bはその隣りの扉から探索を開始した。

「骸龍は紙装甲ですので、カルマさん壁役お願いします。帰ったら何か奢らせてもらいますよ」
「それならコーヒーでも奢って下さい。では開けます」
 一番奥の扉を開くと狭い個室だった。
「倉庫だろうか?」
 中を調べるとボタンが一つ見つかり、2人がやや緊張しながら押すと扉が閉まり、部屋ごと上に移動し始めた。
「エレベーターだったのか‥‥」
 やがてエレベーターが止まって扉が開くと外が見え、50m程先にケプラーがあり、ここでも2体のTWと1体のRCがプロトン砲を放っていた。
「当たりですね」
「えぇ、幸先いいです」
 周防はスナイパーライフルD−02でまだ背中を向けている3機を撃ち抜いてゆき、カルマがロンゴミニアトと機盾「アイギス」を構えて突撃した。


 B班が入った部屋はエレベーターの3とまったく同じ作りの部屋だった。
「なんだろーコレ?」
「とりあえず壊してみよう」
 重要そうな物は何でも壊していこうと思っていたシエルが20mmガトリング砲を乱射する。
 するとシリンダーが割れて中の液体と物体が床一面に広がり、2機の足に当たった物体は足に張り付き、機体をよじ登り始めた。
「こいつらスライム!?」
 シエルはすぐに引き剥がそうとしたが、スライムは小さすぎてKVではどうしようもない。
 やがてスライムはKVの装甲の隙間に入り込み、そこで爆発した。
「うわ! 爆発した」
「被害は?」
 幸い被害が軽微だ。しかし
「ねぇ、これ全部爆弾スライム‥‥」
 もし数万個はいそうなここのスライムが一斉に襲いかかってきたら‥‥。
「ここには火山のコントロール装置はないね!」
「そうだね! 次行こう!」
 2人は手早く室内を見渡して確認すると、早々に部屋を後にした。

 通路に戻った2人は真琴からハンドサインでA班がまだ戻ってない事を確認すると、隣の部屋の探索に向かう。

 扉を開けると50m程の通路があり、奥にまた扉があった。
 奥の扉も開けるとそこはワームの格納庫で、中にいたTrsとゴーレム(Grm)とバッチリ目が合った。
「‥‥あ。部屋を間違えちゃいました。ゴメンナサーイ」
 石榴が謝ってすぐに扉を閉める。
 もちろんそれで許して貰える訳がなく、すぐにまた扉が開いてTrsとGrmが飛び出してきた。
 しかし待ちかまえていた石榴がDC−77クロスマシンガンを、シエルがガトリング砲を連射する。
 だがTrsは傷を再生しながら剣で石榴を斬りつける。
 一撃目は辛くも盾で受けたが肘間接が軋み、続く2撃目3撃目は装甲を斬り裂かれた。
 後続の2機のGrmは1機が銃を放ち、1機が剣でシエルに斬りかかる。
 銃弾は盾で受けたが剣で胴体を斬り裂かれた。
「2対3じゃ不利だよシエルさん。聖さんの所まで戻ろう」
「その方がよさそうだね、煙幕展開!」
 シエルがスモーク・ディスチャージャーで煙幕を張った隙に2人を身を翻した。

 その頃、真琴は四つ角に一番近い部屋から出てきた小型HWと戦闘中だった。
 真琴のいる通路の3機は一斉にフェザー砲やプロトン砲を連射、逆の通路の3機は接近中だ。
 真琴は回避機動を行いながらスラスターライフルで反撃していたが決して広いとは言えない通路では全ての攻撃を避ける事はできず、機体が徐々に傷ついてゆく。
 部屋から更に2体のHWが現れた上に逆の通路HWも合流したため、弾幕の層は更に厚くなる。
「離れてたンじゃジリ貧だな、こりゃ‥‥」
 ライフルで2体は倒した真琴だがツインブーストBを発動して弾幕を潜り抜けると一気にHWに肉薄した。
「ここまで近づきゃ味方が邪魔で撃てねぇだろ!」

 石榴とシエルは格納庫から出てきたのはそんな時だった。
「聖さん助けてー! ‥‥って、聖さんも手一杯っぽい!?」
「こりゃあ2人で頑張るしかないね。煙幕展開、一気に突っ込むよっ!」
 シエルは煙幕を焚くてTrsに突撃する。
 Trsが振り降ろしてきた剣を圧練装甲で受けてダメージと引き替えに練力を回復しつつ更に踏み込み、機爪「焔魔」をTrsの胸部に突き立て、捻って抉り、一気に引き裂く。
 その間にGrmがシエルの横に回り込んで銃を放つが、間に石榴が割り込んで盾で防いだ。
 しかしもう1体のGrmがシエルの逆サイドに回り込んで剣を振り上げる。
「させるかぁー!」
 ケプラーの破壊を終えて通路に戻ってきたカルマがブーストで駆けつけ、Grmを背中を槍で貫いて胸部まで貫通させる。
 Trsと1対1になったシエルだがTrsの振るった剣が機爪ごと腕を斬り落とし、胴体に食い込む。
「腕の一本ぐらいーっ!」
 シエルは再生中の胸部にガトリング砲を突き入れて0距離で連射。
 胸部をズタズタに粉砕されたTrsはもう再生する事なく倒れ伏した。
 
 カルマは串刺しにしたGrmにトドメを刺していたが、扉が開いたままの格納庫から2体のRCが現れ、1体は大口を開けてカルマのシュテルンの腕に噛み付き、もう1体が至近距離からプロトン砲を連射してきた。
「くそっ!」
 カルマは47mm対空機関砲「ツングースカ」で反撃しながら腕を抜こうとするが、牙はガッチリと食い込んでいて抜けない。
「カルマさん動かないで」
 だが周防がRCの目、眉間、喉を撃ち抜くと顎の力が緩み、強引に腕を引き抜いたカルマが血塗れの頭部を槍で粉砕した。

 石榴はGrmの攻撃をストライクシールドで耐えていたが、周防がGrmの膝間接を狙撃で砕いて体勢を崩す。
 その隙を逃さず石榴は盾ごと体当たりをしてGrmを吹き飛ばすと、倒れたGrmにマシンガンを浴びせかけてトドメを刺した。
「ありがとー周防さん」

 そうしてA、B班は優勢に戦いを進めていたが、通路の真ん中の扉が開いてGrm2体、TW2体、RC1体が現れ、TWは通路を塞ぐ様に並んでA、B班に砲撃を始め、GrmとRCは真琴に向かって突進した。
「次から次へと出てくンじゃねぇー!!」
 真琴は残り4体まで葬ったHWからRCへ向き直って再びツインブーストBを発動。
 一気にRCの懐に飛び込むと、大きく振り被った機爪「シェルシェード」で引き裂き、そのまま機体を旋回させてソードウィング(剣翼)で斬り裂き、再び正面に向き直ると機爪で更に深く引き裂いて、早々に1体仕留めた。
 だが、RCを倒した隙を突いてGrmが左右から同時に斬り掛かってくる。
 片方は機爪で受けたが、もう一方には左腕の半ばまで食い込む。
「チッ!」
 真琴は機体を旋回させて爪で剣を弾き、剣翼でGrmの足を斬り落として蹴り跳ばし、倒れたGrmの腹を抉る。
 だが背後に回ったGrmに斬られて剣翼を失い、HWのフェザー砲も次々と被弾。
 振り返りざまにGrmの顔面を引き裂き、腹にライフルの銃口押しつけて全弾撃ち込む。
 しかし逆側の通路からRC1体とGrm2体が到着。HWとGrmが弾幕を張る中、RCのプロトン砲がOGREの頭部を左腕を撃ち抜いて融解させた。
「真琴さん!」
 カルマがTWの砲撃を突っ切って真琴の救援に向かうとするが、通路一杯に立ち塞がっているTWが邪魔で通れない。
 しかも2体のGrmも標的を真琴からカルマの代えて迎撃に来る。
「それなら」
 周防が2体のTWの隙間からRCを狙い撃つ。
 しかし放たれたライフル弾はRCに浅く傷つけただけだった。
「くっ‥物理特化になっているのか」
「右手一本でもテメェを掻っ切ってやらァ!!」
 真琴はHWの放つフェザー砲で機体に幾つもの弾痕を刻まれながらも機爪を振りかぶって突撃したが、RCが連射したプロトン砲で左足を吹き飛ばされて機体が横倒しになる。
「聖さーん!!」
 そして石榴の悲鳴とほぼ同時に放たれたプロトン砲が真琴のOGREを完全に破壊したのだった。

 その後、カルマがロンゴでTWを排除すると全員で強襲をかけて真琴を救出。
 そして残敵と戦闘の最中にエレベーター班が戻ってきた。
「火山のコントロール装置とケプラーを破壊したわ。そっちは?」
「ケプラーを1機破壊です」
「では長居は無用ですね。撤退しましょう」
「スモーク展開します」
 論子が煙幕を焚き、伊織を殿になって敵を牽制しながら傭兵達は発着場まで戻った。
 要塞内に真琴のOGREを残して‥‥。



「艦長! 発着場に傭兵部隊を確認」
「無事に戻ってきたんですね。すぐに急行して下さい」
「了解」
 ヴァルトラウテは再び強襲をかけるとVTOLで帰還した傭兵達を連れて全速で離脱した。