タイトル:クロの短い乙女時間マスター:東雲 ホメル

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/05 23:18

●オープニング本文


「うわっ、何すか、このニオイ‥‥」
 能力者の女、クロ・カシスは眉を顰めて一歩ほど後退りする。
 依頼で植物園にキメラを退治しに来たのだが、単なるキメラ退治ではなかったらしい。
「青臭い様な、何とも言えない様な、いや、いやいやいや‥‥拙いニオイっすよね、これ」
 マジで、と一言付け加えて濃いニオイにクロは溜息を吐く。
 ウンザリしながらも、銃口を正面に向けたまま室内に入る。
 足元には、出所不明のケフィアがぶちまけられている。
 いや、ケフィアにしては粘度が高めなのだが――
「ケフィアっすから」
 クロは自分に言い聞かせる様に呟くと、白く濁った水溜りにブーツを突っ込む。
 買ったばかりのブーツが台無しである。
 小さく呻きながらも辺りを確認する。
「此処、植物園じゃなくて、ケフィアグレイン園って名前にした方が良くないっすか?」
 周囲は緑よりも乳白色に近い景色だ。
 やはり粘度高めである。
「ケフィアっすからね」
 ぐちゃぐちゃと音を立てて進み、そして気付く。
 キメラの姿が未だに確認出来ないのだ。
 気配はびんびんに感じているのだが、一向に襲ってくる気配は無い。
 仕方が無いので、周囲を警戒したまま奥へと進んでいく。
 そうして、植物園の中央に位置する噴水に到達する。
 其処で目にした光景は、もう、呆気に取られるなんてレベルじゃあなかった。
 クロは思考する。

 噴水って、水が噴出してて「わぁ〜綺麗だなぁ〜v」とか「ね、ね、もうちょっと近くに行こうよ」とか。
 何かそんな感じの、乙女ティカルな展開が待ってる場所じゃなかったっすかね。
 あれ、うちの間違いっすかね。
 あんな、ケフィアが一定のリズムで噴出す物ですっけ。
 何すか、常識は捨てろって事っすかね。

「っ!? OGYAAAAAAAAAAAAA!?」
 何かに足を取られたかと思ったら、一気に吊るし上げられる。
 クロの心ばかりの乙女心がスカートを押さえ、片方の手では銃を構える。
 そこで、彼女はようやっと気付く。
 キメラはずっと居たのだ。
 ずっと天上に張り付いて。
 クロは舌打ちをすると、無数の触手の先に在る本体に銃口を向ける。
 彼女が引き金を引くよりも早く、触手が蠢く。
 クロの視界や、全身を人肌くらいの熱量をもったケフィアが白く染める。
 約940文字分の短い乙女時間だった。
 大丈夫なのだろうか。
「ケフィアっすからねっ!!」

●参加者一覧

幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
k(ga9027
17歳・♀・SN
大神 直人(gb1865
18歳・♂・DG
美空・桃2(gb9509
11歳・♀・ER
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
姫川桜乃(gc1374
14歳・♀・DG
レガシー・ドリーム(gc6514
15歳・♂・ST
エレミア・エグゼニミル(gc6672
28歳・♀・HA

●リプレイ本文

「全国1億3000万人のケフィリスト、ケフィナーの皆様に謝罪したいっす」
 クロ・カシスは、落ち着いた調子で答えてくれた。
 白い庭の惨劇(tragecal kefir)と称される事件――
 いや、依頼の詳細を溜息混じりに思い出してくれている。
 如何にも彼女の目は虚ろな様な気がする。
 ハイライトを入れ忘れた様だった。
 リテイクを受け付けてくれるかもしれない。
 それは怖い。
 彼女はそれほど恐ろしい体験をしたのだろう。
 ぽつり、ぽつりと言葉を紡ぎ出した。


 植物園の入り口近く、レガシー・ドリーム(gc6514)は手鏡を覗く。
 婦女子としての嗜み、とでも言うべきなのだろう。
 しかし、今回に限っては全くまるっとびゅるっと意味の無い行為である。
 そんな事を知る由も無く、レガシーは柔らかな唇に紅を引く。
 レガシーを横に、幸臼・小鳥(ga0067)は植物園を凝視する。
 普段は日光が入る様に、ガラス張りになっている植物園の壁。
 しかし、白いブラインドが掛かっている所為で普段通りの光景とはいかない。
 キメラの仕業だろう、と小鳥は哀しい推測を立ててみる。
 確かにそうなのだが、現実のベクトルは大分明後日の方向を向いている。
 唯のキメラ退治と救出依頼だったら、どれだけ幸せだった事か。
「とーぅ!」
 取り敢えず高い所から飛び降りただけのジリオン・L・C(gc1321)。
 意味不明な掛け声と意味不明なポージングが眩痛しい。
 しかし、脱毛された脚だけは艶かしい。
 艶かしいのだが、彼の美脚の出番はこれにて終了。
 お察し頂きたく御座候。
「俺様は! ジリオン! ラヴ! クゥラフトゥ! ‥‥未来の勇者だ!」
 k(ga9027)は恐ろしいほどの無表情だ。
 車椅子に座ったまま微動だにしない。
 自身も謎のナース服だと言うのにも関わらず、人のボケ(?)には干渉しない。
 ジリオンの精悍な顔は悲壮感に溢れていた。
 良かったな、それだけ言うと大神 直人(gb1865)は溜息を吐く。
 いつも通りの依頼、少々騒がしくはあるが、それも特に問題は無い。
 そう思っていた時期が彼にも有りました。
 今だけは彼の心に少しでも安息が有る事を、ささやかとは言えども喜ぶべきだ。
 出来れば、ずっと有って欲しい安息。
 そんな安息は打ち壊される。
 ラヴ・クラフトの手に因って。
 ガラガラと開け放たれた植物園の扉。
 花や草木の芳しい香り――
 ではなく。
 もっと別次元の異臭。
「あの白い液‥‥どう考えてもザ」
 ケフィアである。
 姫川桜乃(gc1374)、彼女の言動は報告官に畏怖の念を抱かせる。
 INBIな足音を立てて、桜乃は進む。
 そうして、改めて思うのであった。
「どう考えt」
 ケフィアです、ありがとうございます。
 桜乃に続いて、他の面々が園内に侵入する。
 肩にぽたりと落ちた白い雫に、エレミア・エグゼニミル(gc6672)は恍惚としている。
 理由は定かではないが、定かではないのだが、何故か、熱を帯びた吐息を漏らす。
「‥‥とと、浸っている場合ではありませんねぇ〜」
 などとは言ってみるものの、遠くの方に見え隠れしている触手に釘付けである。
 醸し出されるのは敵意であって、他意は無い、はずだ。
 ぽたり、ともう一滴。
 美空・桃2(gb9509)は頭に落ちたそれを眺める。
 ケフィアなので教育上なんの問題も無い。
「美空はケフィアって初めて見るのであります。 食べ物なのでありますよ‥‥ね?」
 誰かが止めるべきだったのだろうか、直人、如何した。
 彼が「あ」と口にした時には、既に美空の人差し指は綺麗になっていた。
「にがい‥‥」
 哀しき邂逅。
 人差し指を介しての遭遇は、何も良い事ばかりではなかった。
 自転車で空も飛べやしなかった。
 それはさて置き、このままでは埒が明かないと、一行は更に歩を進める。
(もう、これは‥‥臭いと言うか瘴気や悪想念の類だな‥‥)
 直人は頭痛に襲われる感覚に、こめかみを押える。
 ふと、とある事に気付いて振り返ってみる。
 この時点で1人、大変な事になっていた。
 kは車椅子である。
 車輪は手で漕ぐ物である。
 車椅子を止めて、彼女は両掌を見つめている。
「あの、ハンカチ貸しましょうか?」
 変な気を起こさない様に、紳士的に振舞ったつもりだった。
 しかし、kは首を横に振るうと顔を覆う様にしてそれを舐める。
 ある意味紳士的には有り難い行動だった言えよう。
「押しますよ‥‥」
「あら‥‥ありがとう、ございます‥‥」
 中指を唇に掛けながら、kは睫毛を伏せる。
 どんどん前を行く6人に追いつかなければならなかった。

 園の中央部に当たる噴水広場に着くと、エレミアのテンションがまた少し上がる。
「あらぁ〜」
「な、なんか、とってもイヤらしい感じがするですぅ」
 レガシーはあれやこれやと妄想を飛ばしつつも、人形型の超機械を前方に向ける。
 見え隠れしていた物が見えたのだ。
 無数の黒い触手。
 幾筋かのケフィアが垂れている。
 よもや説明など不要だった。
 気付いていない幸せ者は、ジリオンと小鳥、美空くらいだったろうか。
 天上を見上げて小鳥は声を上げる。
「クロさん‥‥大丈夫ですか!? 今、助けますね!」
 重い金属音と共に銃口が向けられた先。
 救出対象であるクロが吊るされていた。
 幸いにも逆さ吊りではない様だった。
「あ‥‥もうらめなんっす‥‥た、たふへてしゅ‥‥」
 生気の無い瞳で訴えかけてくるクロ。
 INBIである。
「‥‥触手とケフィアと‥‥時々おっぱい‥‥」
 ライトノベル風にしてみて気づいた事が有る。
 正しく勇者イズムな展開。
「うおおおお! 待ってろよ! おっぱい!! 俺様の、この、燃える思いh」
 パァン、と乾いた音が響く。
 一応、ジリオンは何かを叫んでいたが何だか良く分からなかった。
「何するにゃ! 痛い痛い!! だがそれが良い‥‥って、何言わせるにゃ!」
 触手が襲ったのは車椅子のk。
 しかし受けたのは、桜乃の下半分(裏)である。
 抜群のコンビネーション、もとい、kの反応速度。
 何発かの触手を受け切ると、kは何処からともなく抜いた小太刀を構える。
 先に動いたのは能力者達だった。
 数発の鉛弾が空を切り、触手を爆ぜさせる。
 クロを助ける、この一点のみに集中している小鳥。
 ぶちまけられたケフィアを浴びようが、青臭かろうが、明鏡止水。
 エレミアが嬉々としてケフィアを浴びていようが、無我の境地。
 直人も、諦めの境地に入ってしまったのか刀を滑らせる。
 斬線は幾重にも重なり、触手を細切れにしていく。
 後で丁寧に洗っておく事を彼にお勧めしたい。
 そんな彼の後ろでジリオンが叫ぶ。
「勇者、フラアァァァァアアッシュ!」
 みえているせかいが、すこしだけしあわせになったきがした。
「お前は戦えぇぇえええええ!!!」
 直人の声に、ジリオンはドヤ顔で頷くだけであった。
 その声に反応して、ジリオンの背後から触手が迫る。
 こんな時の為に、彼は勇者アイズを用意しておいたのだった。
 無駄に細かな指示を出すと、美空は何の疑いも無く従って動く。
 振向き様の拳と触手の、先端部分のガチンコ対決。
 軍配は美空の拳に上がったのだが――
 弾けた触手が辛抱溜まらんとケフィアを撒き散らす。
 突然の事に、美空はそれを全身に浴びてしまう。
「この際、おっぱいは関係無いであります」
「!?」
 美空の幼き心に刻まれたのは吊るされたクロのおっぱいと、腰をくねらせているエレミアのおっぱい。
 幼く、無邪気な心はちょっぴり荒んでしまった。
 何も言うまいと、心中を察したレガシーは様子を窺っている触手に電撃を浴びせる。
 ビクビクと跳ねるそれは、未だに果てる事無くレガシーを攻める。
「う、ち、近寄るな‥‥」
 そんなレガシーの抵抗も虚しく、彼女は触手に身体を絡め取られてしまった。
 スカートの端を押えて俯くレガシー。
 足元に落ちた超機械を拾おうにも、拾えない。
「あ、いや‥‥いや‥‥駄目、駄目‥‥」

【プチ情報:クロの好物は豚骨ラーメンとホルモン系の焼肉です】

 エレミアは何時の間にか解放されたレガシーの上半身を抱え上げる。
 ケフィアの温度や粘度と同じ様な雰囲気の視線。
 レガシーの身体にべっとりと付着したケフィアを拭き取ろうとする。
 が、淑女の嗜みのハンカチは、再三の攻撃に因りじっとり濡れてしまっている。
 仕方が無いので苦肉の策だったのだろう、そう思いたい。
 首筋のケフィアを美味しく食す。
 INBIである。
 体が麻痺してまともに動けそうにもないレガシーは、疲れた様に肩で息をする。
「良い感じに痺れてあしゅえぇ〜」
「は、はひ‥‥」
 正直、エレミアも舌が回らなくなってきていた。
 それもそうだ。
 戦っている最中にも、色々と楽しんでいたのだから。
 恐るべき永遠の17歳である。
 上から数えて八番目に当たる大きさの双丘は伊達じゃあない。
 キメラ、触手だって恐れをなして、何匹も谷底へと逃げ出してしまうほどだった。
 勿論、何度も往復してやったと触手さん(23歳)は後に語る。

 風切り音の数瞬後に響く、破裂音。
「ひっ! スカートが破けてぱんちゅあうにゃにょー‥‥」
 自称パンツ姫でも、流石に限界である。
 相変わらずの連携プレーでkを守る桜乃だった――
 しかし、それにも限界が有る様で、kも幾らか被弾を許していた。
 その際に気づいた事が一つ。
 ホットケフィア(kさん命名)の粘度、保温力、微弱な麻痺毒。
 眠るのに最適ではなかろうか、などという事に。
 喉が渇いたら、寝起きにすぐに飲める。
「次世代、型の毛布、れしょーあ?」
 シュールな推理な上に、後半から麻痺毒に侵されている。
 そんなkの様子を窺いながら、桜乃はkの太腿にうつ伏せに顔を埋める。
 謎のナース服を着ているので、謎の白いタイツ着用である。
 そこで小さく声を上げたkは桜乃の顔を上げさせて、引き寄せる。
「ひめかわさん、あらしの、ケフィア、とらないえ、くらさい‥‥」
 どんどん近付いて行く唇が横に薄く割れ、白いいt――
 此処で都合の良い事に、キーボードが割れて、ディスプレイがブラックアウトした。
 此処からは報告官のスーパーナチュラルな力で書くしかない。
 想像できない部分は、描写のしようが無かった。
 済まないと思ってる。
 報告官を含め、誰しもがろくな事になっていない中でも、状況は動いた。
 マジ感謝の域である。
 小鳥が遂にクロを吊るしていた触手を落としたのである。
「こえで後は本ふぁいを‥‥ふぇ‥‥しまっ‥‥みゃぁぁぁ!?」
 次の贄は、幸臼・小鳥その人であった。
 でろでろのクロが、べしゃっと地面に落ちると直人はクロに駆け寄る。
「ね、ねこがらっしゅね」
 因みにクロは雪の結晶を水玉に見立てたやつだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
 力無く転がったクロ。
 上半身を抱き起こそうとして直人は気付いてしまった。
 エレミアほどではないが、たわわに実った果実に。
 強くて太ってる人達の協会にも見習って欲しいほどに透けている。
 直人は不用意に生唾を飲み込んでしまった。
 それがいけなかった。
 クロは自分の格好に気付いてしまったのだ。
 咄嗟に自分の上着を掛けてやったのだが――
 クロの奥歯が軋みを上げて、右手が唸って跳ねる。
「この‥‥HARENTI YAROU!!」
「ありがとうございます!!」
 ギャグ漫画ではお約束だが、拳が顔に減り込む。
 直人は地面を転がって大樹に突っ込む形となった。
 その光景を目の当たりにした美空は、今回自身の使っている武器の真髄を見た気がした。
 右手を叫んで爆ぜさせれば良いのだ。
 それをあの――
 天上にへばり付いている、球体型の本体に叩き込めば良いのだ。
 頭を捻る美空。
 そんな美空を尻目に、ジリオンはクロの傍に寄る。
 拳の射程圏外なのは、彼がビビリたる所以だろう。
「大丈夫か、おっぱいよ!! さ、未来の勇者が助けに来たぞ!!」
 ドヤ顔がくどい。
 クロは拳が届かない事を心底悔やんだ。
 しかし、その代わりにジリオンの臀部を触手が引っ叩いた。
「ひ‥‥卑怯な!!」
 勇者様の臀部を背後から叩くとは、何事だろうか。
 ジリオンは剣を振るう。
 一閃されたそれは、微かな赤光を残して、触手を切り落とす。
 許すまじ、触手。
 本体はまた別の問題だ。
 そんな事を考えている間に、美空が声を上げたのだった。


 シンプルだが、成功するかはやってみなければ分からなかった。
 しかし、他に手立ては見つからなかった。
 痺れの残る中、何本かの触手を切り落とし、kはその一本を見極める。
 そして膝の上の桜乃を抱える。
「なじぇ!?」
「しゃくせんの、ため、えす‥‥」
 スカートは完全に擦り切れていた。
 サディスティックなナースである。
 桜乃を打った触手は、一度だけ攻撃の際の衝撃で硬直する。
 その触手を美空は全力で握り潰すが如く掴む。
「いみゃでありましゅ!」
「了解!」
「とーぅ!」
「こえああたいのおひりを‥‥」
「あんあに、たえこんえ、いけあい、ひめらえすね‥‥」
「ボク‥‥ボク‥‥ぐす‥‥」
「うふふ‥‥あっははぁ〜」
 エレミアだけ何故か触手に跨っているが、既に突っ込み隊長の気力は無い。
 眼鏡と一緒に何処かに飛んでいってしまった様だ。
 吊るされている小鳥を助けて、本体を叩く方法。

 引っ張って、落とす。

 6人が引っ張って、1人は擦る。
 簡単な作業だ。
 とは言え、そうそう容易には――
 噴水の上に、勢い良くキメラが落ちてきた。
「勇者スラーッシュ!」
 いの一番に飛び出したジリオンは、小鳥を捉まえている触手に刀身を叩き込む。
 飛び散る白い飛沫の中、やはり精悍な顔付きは忘れられない輝きを放つ。
「はぅぅ、恥うかひい格好にひた‥‥うあみを喰らう‥‥えす!」
 落下しながらも、小鳥は最後の力で引き金を引く。
 銃声に続いて、レガシーが人形を翳して本体に電撃を与える。
 それでも迫る触手をkが切り払い、桜乃がピコハンで迎え撃ったり撃たれたり。
 直人が刀を突き立て、美空が拳を本体に叩き込むと、大きく跳ねる。
 もう一押し、エレミアは落ちた小鳥の傍まで寄った後に、横笛を吹く。
 既に虫の息だった本体は、呆気無く、本当に呆気無く沈黙してしまった。
 絶命する際に、大量のケフィアを撒き散らしたのは言うまでもないのだが。
「おっぱいはかんけいあいのえありましゅよ」
 無い。
 確かに無かった。




「後は、エレミアさんと小鳥さんがエロエrげふん! 色々やってたみたいっすけど」
 どうやら、その後は気絶してしまったらしい。
 目が覚めたら、植物園の外だったと言う事だ。
「それから大神さんに奢ってもらって‥‥あー、勇者にタオル貰ったすかね‥‥」
 あのドヤ顔が忘れられないらしい。
 頭を抱えて女、クロ・カシスはただただ唸り声を上げるのみだった。
 以上、白い庭の惨劇報告書の詳細である。