タイトル:【RAL】柩の中マスター:東雲 ホメル

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/16 21:02

●オープニング本文


 ずるずると引き摺られていく大型の柩。
 オーソドックスな形の黒いそれは、引き摺るには重いはず。
 そもそも引き摺っている喪服の女は、酷く痩せている。
「ワタシはネ、そもそも非力なのヨ‥‥なノに、何デ‥‥」
 柩に繋がれた特殊な合金の鎖は、今にも切れそうな程に張り詰めている。
 少し進んで女は、溜息と共に柩の上に座り込む。
 見上げた空は既に青紫の天蓋が掛かっている。
 もうすぐ完全に夜になってしまう。
「めんドくサい‥‥帰りタい‥‥ほんトヤだ‥‥」
 そもそもこの女がこの瓦礫の街へとやってきたのは、邪魔者を追い払う為。
 自身達にとってはこの上なく邪魔な存在。
「先にしっカり追イ払ってくれレば、ワタシが来る事なんかナかったジャない‥‥」
 文句を言いながら、転がった石ころを随分遠くまで蹴飛ばす。
 早く帰りたい、そう思いながら彼女は柩の上に身体を投げ出す。
 身の丈の二倍以上も有るその黒い柩に。
「帰ッて、アルエちゃんトお話シしたイ‥‥」

 メディオクル・ソレイユ。
 クラス、エースアサルト。
 自称、非力である。

 キメラの姿を発見した、と通信が入ったのは完全に夜の帳が降りた後だった。
 通信を寄越した人物は喪服女、メディオクルだった。
 街外れで周辺警戒と言う名の休憩をしていた所、襲われたそうだ。
 何とか撒いたものの、未だ周辺にキメラの姿が在るらしい。
 二、三体ほどキメラの姿が見える為に、一人で撃って出る事は避けたい。
 そういった理由で、現場に急行して欲しいとの事だった。
 一人の能力者は、その声のトーンから「動きたくないから早く来て」と言われている様だったと言う。
 どちらにしろ、任務を完遂させる為にはキメラを排除しなくてはならない。
 情報に依ればキメラの数は十三。
 その全ては、人の形をした化け物だという。
 メディオクルがどの程度の強さかは分からないが、急ぐに越した事は無かった。

 そんな仲間達の素早い行動を知ってか知らずか、メディオクルは物陰で柩を開く。
 そうして、鈍色の得物を取り出す。
 彼女について、もう一つだけ情報を加えるとすれば――
 彼女の引き摺っている柩の中に収まっているのは、鋸刃の巨大な剣だという事くらいだろうか。

●参加者一覧

アグレアーブル(ga0095
21歳・♀・PN
周太郎(gb5584
23歳・♂・PN
龍鱗(gb5585
24歳・♂・PN
グロウランス(gb6145
34歳・♂・GP
カルブ・ハフィール(gb8021
25歳・♂・FC
國盛(gc4513
46歳・♂・GP
キロ(gc5348
10歳・♀・GD
サーシャ・クライン(gc6636
20歳・♀・HA

●リプレイ本文

 壁に背を預けながら、サーシャ・クライン(gc6636)は、その向こうの音を窺う。
 どうやら近くに自分達以外の何かは居ない様だった。
 サーシャは軽く首を横に振ると、徐に壁から顔を出す。
 視認出来る域にも、それらの姿は見当たらない。
 砂利を踏み締めながら、龍鱗(gb5585)はゆっくりと歩を進める。
 街という舞台に限らず、人口的な灯りは皆無だ。
 それでも、問題無くキメラを探していられるのは彼らが能力者であるからだった。
 月明かりでも十分に、夜目が利くのだ。
 國盛(gc4513)はその上に、暗視ゴーグルを付けている。
 怪しい影が有れば、サーシャの聞き取れない範囲の標的でも見つける事は可能だった。
 カルブ・ハフィール(gb8021)は、後方を確認しながら一番後ろを進む。
 特に言葉を発する事はなく、静かに無線に耳を傾けてはいるが――
(憎い‥‥奴等が憎い‥‥平和を乱し‥‥家族を奪ったバグアが‥‥)
 カルブの心中は常に憎悪で染まっていた。
 バグア、バグアに組する者全てが彼の敵であるのだ。
 その為か、捜索の仕方が非常に丁寧だった。
 そうして、四人はまたも視界を塞ぐ建物に進み当たる。
 息を殺して、其々が音を、姿を、気配を探る。
 そんな折だった。
 堅い物が崩れる音が明後日の方向で聞こえた。

 一先ず、キメラは先行している四人に任せる。
 残りの四人は、メディオクルの姿を探していた。
 大体の位置は教えてはもらったのだが、その間に移動した可能性も否めない。
 急いで駆けつける事に越した事はなかった。
 グロウランス(gb6145)は大きく息を吐くと、静かに眼を閉じる。
 こうして一定距離を移動する毎に、サーシャと同じ様に音を探る。
 今の所、キメラやメディオクルのそれは聞き取れていない。
 建物の屋根の上では、アグレアーブル(ga0095)が周辺を見渡している。
 彼女の思う通り、メディオクルは好戦的ではないのだろう。
 戦闘の形跡は無い。
「む‥‥」
 グロウランスが声を上げる。
 辺りを警戒していた、周太郎(gb5584)が振り返る。
「居たぞ。 音の発生源は一つ。 恐らく、彼女だろう」
 カラカラ、と金属類の何かを引き摺る音。
 グロウランスの捉えた音は、そういった類のものだった。
 彼の言葉を受けて、キロ(gc5348)は手に持った無線をに目を落とす。
「無事かー? お助け部隊じゃぞー♪」
 偶然、無線を使おうとしていたのだろう。
『無事だケど‥‥何処に居ルの‥‥?』
 返ってきたメディオクルの声を聞きながら、四人が静かに移動を開始する。
『近クに居るなラ――』
 唐突に通信が切れる。
 あぁ、と周太郎は溜息を漏らし、グロウランスに目配せをする。
 彼を先頭に四人は走りだしていた。
 前方で轟音と共に砂埃が舞い上がり、中から黒い物体が転がり出てくる。
 その姿は人の形はしているが、人ではない。
 アグレアーブルは残りの三人を追い抜いて、全速力で走る。
 それに気付いたキメラが、起き上がろうとするが、彼女の足の方が速かった。
 みしり、と軋みを上げながらその鎧に皹が入る。
 早業というものだった。
 一瞬でキメラの視界に映った朱色の瞳は、その鎧の大きめ隙間を逃さなかった。
 刃が、キメラの太腿を裂き、更にその体勢を崩す。
 アグレアーブルが追撃の姿勢を見せるが、足を止めて、その姿を確認する。
 病的に華奢な女の細腕で、振り回すには現実味の足りない物。
 地面を抉りながら振り上げられたのは、鋸刃の大剣。
 巻き上がった噴煙の向こうから現れたのはメディオクル本人だった。
 跳ね飛ばされたキメラは、呻きながらも立ち上がろうとする。
 しかし、運が悪かった。
 キロの目の前に落ちたキメラは、彼女の双斧で十字に切り裂かれる。
 その様子を見て、溜息を吐いたメディオクル。
 そんな彼女の顔を覗き込む様にして、アグレアーブルは言う。
「諦めて。 ギャラの分は働きましょ?」
 その金色に見える瞳に、メディオクルはおろおろしながらも目を逸らす。
「‥‥手伝ってくれるな?」
 周太郎はそう言うと、メディオクルの頭を撫でてやるのだが――
 逃げる様にして、アグレアーブルの陰に隠れてしまった。
 周太郎は苦笑しつつ、肩を竦めると、グロウランスとキロの方に向き直る。
「さて、先行した班に連絡を入れたいのだが‥‥どうも、都合良く事が進まん様だ」
 グロウランスは大鎌を構えると、周囲を見渡す。
 手掛かりは、僅かな足音だった。
 物陰から伸ばされた黒い手甲が、大きく開かれる。
 次の瞬間には、四人の能力者の目の前に赤光が広がっていた。

「‥‥近いよ。 数も結構いるし、油断しない様にね」
 サーシャの声に、國盛は口に咥えていた煙草の火を揉み消す。
「早々にお引取り願うとする、か‥‥」
 國盛は、走る速度を上げると視界の端に黒い影を捉える。
 一つや二つではない。
 先程の音の方向に集まってきたのだろうか。
 それならば、自分達の仲間もすぐ其処に居るのだろう。
 キメラが四人に気付いて、動き出したのに合わせてカブルが雄叫びを上げる。
 見掛けよりも、大分身軽なカブルは迫り来る刃を、己の刃で受け止める。
 オレンジ色の火花が散り、一瞬の拮抗が生まれる。
 しかし、体勢が悪かったのかキメラの方が徐々に押し始めていた。
 更にもう二体のキメラが迫ってきている。
「さて‥‥言葉が通じるか分からんが‥‥」
 龍鱗がカブル達の横を素通りして、躍り出る。
 そうして、黒炎の翼がゆらりと揺らめく。
「遊んでやる、掛かって来い」
 龍鱗の言う様に、果たして言葉が通じたのかどうか、それは分からない。
 しかし、目の前に現れた敵を無視するほどに利口ではないらしかった。
 迫ってきていた二体が龍鱗に矛先を変えたのだ。
 仄かな光を放ち、迅雷は走る。
 振り上げられた腕の下を潜り抜ける様にして、龍鱗は刀を振るう。
 我流ではあるのだが、研ぎ澄まされた業はキメラの鎧を削る。
 龍鱗は振向いて、脚に力を込める。
 しかし、キメラはそう易々とはやらせてくれなかった。
 振るわれた剣を、龍鱗は抜き放っていた刀で受け止める。
 そうして、忌々しそうに目を細める。
 周囲の温度が急激に上昇し始めたのだった。
 何とか、転がる様にキメラの刃から逃げると、目の前で炎の奔流が立ち上る。
 厄介だが、思った以上に動きが鈍い様な気もする。
 すると、視界には身体を淡い光に包んだサーシャの姿を捉える事が出来た。
 彼女がハーモナーたる所以。
 特殊な歌をそれぞれに放つ事によって、キメラの動きを鈍らせていたのだ。
 動きの鈍ったキメラ二体は、更に龍鱗に気を取られている。
 國盛はこの好機を逃さなかった。
 鉄塊の様な重さの蹴りで、横からキメラの顎を跳ね上げる。
 そして、今度はその踵を顔面に落とす。
 衝撃で、キメラの体は一瞬硬直し、痙攣した様に跳ねる。
 当たり所が悪かったのだろう、キメラはそのままその場に崩れてしまった。
 國盛はもう一体のキメラを睨みつけながら呟く様に言う。
「元ムエタイ選手を舐めてもらっちゃ困る‥‥」
 その内に、カブルはもう一度声を荒げる。
 両手に握り締めた大剣を、無理矢理払うと、大きく振り上げる。
 渾身の力で、キメラの脳天を捉える。
 またも火花が散る。
 カブルが離れても、キメラは上手く動けないらしい。
 先程よりも、更に動きが悪くなっている。
「おぉぉおぉぉぉおぉぉぉおお!!」
 カブルは咆哮すると、再び全力で大剣を振り下ろした。

 気に驚くべき事は、少女の防御力だった。
 キロは双斧を交差させて、不意の炎を防ぎきったのだ。
 しかも、大したダメージにはならなかった様で確りと立っている。
 それを見た上で、キメラは飛び込んでくる。
 全部で、五体。
 次々と襲い掛かってくるキメラに、孤立しない様に動き出す。
 周太郎は剣ではなく銃を取り出す。
 瓦礫に身を隠しながら、射線を向かって来る一体に向ける。
 引き金は未だ引かない。
 理由は、キメラと自身達の間に転がったそれにあった。
 一呼吸置いて、激しい閃光が炸裂する。
 視界を奪われたキメラは動揺したのか、足を止めて、剣を振り回すばかりだ。
 周太郎はそこで、やっと引き金を引いた。
 銃声と共に、グロウランスが大鎌を振り被る。
 近距離だった為か、鎧を穿った弾丸はキメラの体に穴を開けていたのだが、徐々に塞がり始めていた。
 グロウランスは面倒な事になる前に、大鎌で首元を横に刈る。
 装甲を裂き、キメラの首に刃は食い込む。
 しかし、それでも落とす事は叶わなかった。
 キメラは、野性とも呼べる感覚で剣を振るう。
 勿論、完全に見えている訳ではないので当たる事はない。
 グロウランスは鎌の柄を返して、剣を跳ね返すと同時に一度後退する。
 恐らく、これも気配で大体の方向に翳されたものだろうキメラの手。
 グロウランスは咄嗟に瓦礫に隠れて、それをやり過ごす。
 灼熱の奔流は、瓦礫の山を焦がして辺りを照らす。
 アグレアーブルはそんな中、飛び出し一気に間合いを詰める。
 流れる赤い髪が舞い、彼女の右足が唸りを上げる。
 一撃目でFFなど薄いガラスの様に破られる。
 二撃目の破壊力は、鎧ごとキメラの内臓器官を押し潰す。
 再生能力など、最初から無かったかの様にキメラは沈黙する。
 そのまま視線を流すと、また一体此方に向かって来ている。
 が、アグレアーブルはそれを相手にする事なく、また別のキメラを標的にする。
 新たなキメラと対峙している周太郎のサポートに向かう。
 此方に迫るキメラは、仲間に任せる事にしたらしい。
 アグレアーブルを逃がさぬ様にキメラは、火炎を撒き散らす。
 しかし、割って入ってきたキロにそれを防がれる。
 キメラは勢いそのままに剣で斬線を描くが、それもキロの双斧に防がれてしまう。
 その小さな身体からは想像出来ないほど圧迫感は、正に壁。
 小さく、しかし、堅牢な壁となったキロは、その剣を弾くと同時に頭を下げて屈みこむ。
「今じゃ、今じゃ!」
 キロの背後では、バットを構える要領で、メディオクルが大剣を構えていた。
 空気を裂き、鎧を砕き、胴体の半分まで食い込んだ鋸刃。
 メディオクルはそれを振り切るのではなく、そこから一気に引き抜く。
 何処が非力なのか。
 その光景に、誰しも自称ほど怪しい評価はない事を実感していた。
 障害物の陰にから飛び出した周太郎は、得物を剣に戻し、キメラと剣戟を演じる。
 突然、キメラの体勢が崩れる。
 アグレアーブルの足払いが作り出した好機だった。
 鎧と鎧の隙間に刺突が繰り出されると、キメラは声にならない声を上げて間合いを取る。
 しかし、そこにグロウランスが追撃の大鎌を振るう。
 キメラの視界はそうして転がっていた。
 五人はそれぞれの位置を再確認すると、残りのキメラに向かって身構える。
 面倒な事に残りのキメラも全て此方に集まって来ていた様だった。
 その内の一体が動こうとした瞬間。
 夜の闇に紛れて、黒色の球体が炸裂した。
「‥‥吹けよ風、轟け嵐、仇為す者へ烈風の裁きを‥‥さぁ行くよ、一気にぶっ飛べー!」
 凪いだ空間に、突如として現れた竜巻。
 サーシャや、國盛の姿が確認出来た。
 残りの二人は――
 突然の挟撃に、一瞬狼狽したキメラが衝撃波に呑まれる。
 カブルの放ったエアスマッシュだった。
 そして、気が付けば胸に冷たい刃が刺しこまれている。
 上手く装甲の薄い所を突いた様だった。
 反撃を食らう前に、龍鱗はキメラから離れる。
 キメラが一箇所に集まったお陰で、能力者も全員合流する事が出来たのであった。

 睨み合いは、そう長く続かなかった。
 先に動いたのはキメラだった。
 しかし、キメラは滑稽なほどに統率が取れていない。
 状況を動かした最初の一匹は、意味不明な挙動に走っている。
 サーシャの歌により、文字通り動かされたのだ。残りも、それに釣られたらしい。
 この上ない好機に、血の様に赤い光が闇夜に走り、一体のキメラの片腕が刎ねられる。
「チェックメイトだ‥‥!」
 周太郎の言葉が途切れる刹那には、キメラの首が飛んでいた。
 グロウランスは大きく息を吐き、その大鎌を構え直す。
 そんな二人を追い越して、キロが双斧を振り下ろす。
 火花が散り、キロの身体は一度後方へと押し返される。
 そのキメラの後方から、横に寝かせられた刃が滑る様に胴体に突き込まれる。
 キメラが其方を振向く前に、決着は着いていた。
 蹴り抜かれた刀身が、キメラの身体を横に両断していたのだ。
 龍鱗が、敵陣を突破して来ていたのだった。
 歌い終えたサーシャが、手に持った扇を全力で振るうと、またも突風が巻き起こる。
 その風の中で、カブルは己の得物を力強く握り締める。
 覚醒の影響で狂戦士と化していた、彼を止める術は今のキメラになかった。
 その様子を見て、國盛は相手にしていたキメラを彼の前に転がそうと思う。
 先程、発火能力を使ってしまったからかそれを実行する気配は無い。
 國盛は寸での所でかわしていた、剣を脚甲で受けると、攻撃直後の硬直を逃さなかった。
 黒いエネルギー弾を、鎧に至近距離で叩き込む。
 すると、キメラの体は軽く浮いて、そのまま地面を転がっていく。
 絶好の獲物を目の前にして、カブルは声を上げる。
 数瞬後には、キメラの亡骸が一つ増えていた。
 キメラの持った剣をメディオクルが破砕する。
 鎧もアグレアーブルの至近距離からの射撃で、胴体部分が粉々になっていた。
 その後は削がれ、蹴り潰され、ただただ、されるがままだった。
 未だ二匹のキメラの姿が残っている。
 しかし、勝敗はサーシャの歌でキメラが統率を乱した時に決していた。
 九対二では圧倒的にも程があった。

 じゃらじゃら、と鎖で遊びながら柩の上に座るメディオクルとキロ。
 迎えが来るまでの間、國盛がコーヒーを淹れてくれるらしく、それを待っているのだ。
「助かったよ、ありがと」
 サーシャは、屁理屈を捏ねながらも確りと仕事をしたメディオクルにお礼を述べる。
 その言葉に、メディオクルは目線を逸らしながら「別ニ‥‥」とだけ答える。
 サーシャは苦笑しながら、メディオクルの背後にグロウランスの姿を捉える。
 どうやら、柩に興味が有るらしいのだが――
「むっ?」
 躓いたらしく、そのままメディオクルの背中を押す形となった。
 彼女も前のめりになりながら柩から落ち、更に躓く。
 転ばぬ様に、爪先で跳ねて、片手を突き出す。
「お?」
 そのまま抱き止められれば、可愛いものだった。
 しかし、正面に居た周太郎の身体は軽々と後ろに飛ばされる。
 偶々、後ろに居た龍鱗も巻き込んで。
「ふ、不幸だ‥‥」
「やっぱり、自称ってのは当てにならないな‥‥」
 國盛は、そんな光景にコーヒーを勧めるタイミングを失っていた。