タイトル:アルエットの聖歌マスター:東雲 ホメル

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/24 00:36

●オープニング本文


 搾取される者、それがリア充。
 本来幸せな立場に在る彼ら、彼女らは狩られる立場に回る事が多い。
 昨今、これには哲学的な要因だけではなく、政治的、経済的、宗教的な要因も絡んでくると言われ始めた。
 そして、そんなリア充が最も爆破、もがれる時期が今年もやってきた。
 クリスマス。
 例外など無い。
 今、正にリア充狩りが行われようとしていた。
「おぉぉぉい‥‥! リア充もげろよぉ‥‥!」
「おらおら、もげろよぉ!」
「あぁ〜! やめて下さい! そんな林檎を収穫するみたいに、気軽に言わないで下さい!」
 御覧頂いた通り、恒例の行事である。
 アンチリア充にとっては、確かに神聖な行為なのだ。
 決して、リア充の物差しでソレを測ってはいけないのだ。
 だから、哀しき運命を背負った彼らを止めてはならないのだ。
 そう、本来ならば――

「う、うわぁぁああああ!」
 叫んだのはリア充、ではなくリア充とアンチリア充の両方だった。
「あ、あ、アレは! 巷で噂の凶悪キメラ‥‥! リア充ハンターじゃないか‥‥!」
 説明的な台詞と共に、アンチリア充の面々はさっさと逃げ出してしまった。
 自分達は襲われる事は無いという、残酷な現実を知らずに。
 嫉妬に塗れながらも、ある意味幸運な事だった。
 リア充ハンター型キメラ、エンヴィーは人の姿をしたキメラだ。
 それが逆に、逃げ遅れたカップルに恐怖を与える。
 いつの間にかその背後にもう一体。
 どう考えても「リア充乙」としか言えない展開である。
 しかし、神はリア充を見捨てなかった。
 バイクのエンジン音とブレーキ音が響き渡り、更に数発の乾いた銃声。
「‥‥現場なう‥‥」
「Yes‥‥! 間に合ったみたいね」
 神が使わした二人の使徒。
 フルフェイスのヘルメットと、片方はビキニ、片方はスクール水着。
 更に手には白銀の銃と、釘バット。
 そう、彼女達は――
「へ、変態だーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
 紛う事なき変態である。
 こんな冬場にビキニとスク水でバイクでキメラ狩り。
 変態以外の何者でもない。
 変態と言う名の天使である。
「‥‥通訳、ぷりーず‥‥」
「OK‥‥Consider it done!」
 スク水の女は釘バットをエンヴィーに向ける。
「‥‥とぅでいいずべりーすぺしゃるでい‥‥くりすます‥‥ちょーマジせいんとないと‥‥」
「色々とセイなる、この夜」
 そして、勝手に始まる謎の口上。
 開いた口が塞がらない、というのはこの事だ。
「‥‥がっでむ‥‥やんきーごーほーむ――」
「不埒な悪行三昧は、神が、私達が許さない! 家に帰って、良い子になさい!」
 ビキニの女も自身の得物、白銀の銃を構える。
「‥‥はちのす‥‥わお‥‥」
「出来ないなら、蜂の巣になるわよ? wow‥‥良いダイエット方法ね?」
 茶番に業を煮やした一体のエンヴィーが、ルキアとアルエット、いやビキニ女とスク水女に飛びかかる。
 と、次の瞬間にはバイクが機械音を上げて、ビキニ女の身を包む。
 そして、何発もの銃声。
 文字通り、エンヴィーは蜂の巣になったのだった。
「Repent‥‥! Now‥‥!」
「!? え、あ、ah‥‥悔い改めよ!」
 既に一体、悔い改めさせる前に葬ったのは無かった事にしたらしい。
 スク水の女は、地面に落ちたエンヴィーに目もくれない。
 激しく異常事態だ。
 残ったエンヴィーは、そう認識したのか叫び声を上げながら跳び上がる。
 そして、その場から逃亡する道を選んだ。
 カップル的には「賢明な判断だったと思う」という事だった。
「無駄ね! 私『達』から逃げられるとでも思ってるのかしら?」
「‥‥Come on,everyone‥‥」
「!?」
 スク水の女は無線に向かって呼び掛ける。
 街中に散らばった使徒達が、その声に動き出す。

●参加者一覧

キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
白虎(ga9191
10歳・♂・BM
陽山 神樹(gb8858
22歳・♂・PN
張 天莉(gc3344
20歳・♂・GD
巳沢 涼(gc3648
23歳・♂・HD
南 星華(gc4044
29歳・♀・FC
ララ・フォン・ランケ(gc4166
15歳・♀・HD
ティナ・アブソリュート(gc4189
20歳・♀・PN

●リプレイ本文

 クソッたれが!
 繁華街を選んだ事を巳沢 涼(gc3648)は本当に後悔した。
 クリスマスの繁華街はカポーの巣窟なのである。
 前にも後ろにもカポー。
 右を向けばカポー。
 左を向けばメイド。
 まぁ、其処は良しとしよう。
 そんな涼は、眼前を横切る影を見つめる。
「スク水でキメラ退治?」
 涼と並んで、その姿を見届けた後にキョーコ・クルック(ga4770)は溜息を吐く。
 どうして、こんな寒さの中で水着を着ているのか。
 理解し難い所も有る。
 しかし、キョーコも涼もそういう点での準備は万全だった。
 それはキメラの出現によって明らかにされる事なのだが。
 未だキメラの姿を確認出来ていない。
 奴らもこのピンキー吐息に当てられたに違いない。
 キョーコはわりと平気そうだが、涼は少し体調が下り坂に差し掛かっていた。
 怒りや憎しみは全てを潰す為の原動力になり得る。
 なり得るのだが、やがて自らの身を滅ぼす事になる。
「愛せよ‥‥全てを愛せよ‥‥カポーも愛せよ‥‥」
「私の日記読まないでよ!! って言うか、やっぱり英語スラスラ読めるでしょ!?」
 無線から響いてくる声に洗脳されているのかもしれない。
 苦笑しながら、キョーコは涼の肩をぽんぽんと優しく叩いてやった。

「クリスマスのドライブに色気の無い車ですみません」
 張 天莉(gc3344)は苦笑しながら、車から降りる。
 キメラを探して、街の郊外まで遥々やってきた。
 有名なデートスポットという事も有ってか、カポーが気持ち多い様に思える。
 此処にキメラが現れるのも、時間の問題だろう。
 天莉の言葉に、ティナ・アブソリュート(gc4189)は笑って首を振る。
 目的はリア充の、いや、キメラの粛清が目的だ。
 ティナには、もっと別の目的が有るかもしれないが、特に気にした様子は無かった。
 二人は辺りを見回してみるが、やはりキメラの姿は見えない。
 綺麗な夜景と、脳内まで桃色に染まった呑気なカポーの姿しか確認出来ない。
「んー‥‥手とか繋げば良いのでしょうか?」
 居ないのならば、自分達も罪深き関係に陥った振りをするまで。
 とは言え、天莉は慣れない事に少し緊張した様に手を差し出す。
 が、その手は空を切る。
「!?」
「天莉さん、あったか〜い‥‥‥ん、もしかして照れてます?」
 この時、天莉の緊張度がK点を越える。
 仕方が無い事だ。
 手を握るのでも緊張していたと言うのに、不意に後ろから抱き付かれるとは。
「‥‥照れるとは何ぞや、我はかの有名な張家の跡取りである」
「可愛いですねー♪ あ、チョコでも食べますか?」
「良いだろう、我に食での勝負を挑むとは‥‥」
 緊張で、少しキャラ設定のおかしくなった天莉。
 それを愛でながら、チョコを取り出すティナ。
 更にその後ろには――

 閑静な住宅街を抜けて、四人は公園へと入る。
「断固拒否! 断固ヒーロー! ヒーローは女装なんかしないんだ!」
 陽山 神樹(gb8858)は南 星華(gc4044)から差し出された衣装を、突き返す。
 断固たる態度、断固陽山である。
 ダークブラウンのピーコートに黒系チェックのバルーンスカート。
 何だって、こんな大人っぽさを演出しようとするのか。
 その前にどうして女装なのか。
「正義の為よ」
 そう言われると、どうしても弱い神樹。
 これも正義の為なのか。
 子供達や、カポーの笑顔を守る為に必要な正義なのか。
 悩みつつも、神樹はその服を握り締める。
 そんな姿を横目に、白虎(ga9191)はワンピースの裾を翻す。
「白虎君、今日は一段と可愛いわね」
「そ、そんなにくっつかないでにゃー」
 桃色などではない。
 自身がトップとして率いている組織の性質上、桃色になってしまうのは非常に拙い。
 白虎は焦って、星華の手から逃れる。
 が、残念そうな顔をされるとそれはそれで心苦しいものが有る。
 しっ闘士の皆には理解してもらうしかない、これが任務であるという事を。
「しっと団総帥が何とかしてやるにゃー」
 なんて言ってたけどなぁ、とララ・フォン・ランケ(gc4166)はカメラを構える。
 前を歩く三人とは微妙に距離が有る。
 キメラの索敵、と面白い事をそのカメラに収める為だ。
 前者に重きが有って、後者はおまけみたいなものだ。
 決して、総帥のスクープをパパラッちる事が目的ではないのだ。
 さっと着替えて来た、神樹を撮る事もおまけなのである。
「俺はヒーロー俺はヒーロー俺はヒーロー」
「これも任務の為これも任務の為これも任務の為」
 そんな二人に挟まれた星華は、スーツで男装している為か、どう見ても両手に花状態である。
 その三人を撮りながら、ララは周りのカポーの視線が三人に向いている事に気付く。
 更に一組、二組とカポーが近付いてきている。
 三人も気付いたのか、怪しまれない様に他愛の無い会話を交わす。
 次の瞬間、咄嗟に三人は飛び退く。
「木を隠すなら森の中なんて、よく言ったもの」
 白虎は己の手に持った鈍器を構える。
 近付いてきたカポー、その二つの影の両目は赤く光っている。
 正しく、それは情報にあったキメラの特性。
「でも、物事の真偽は見抜けなかったみたいね」
 星華は刀を抜き、カポーの振りをしていたキメラを眺める。
 その手には真っ赤な炎。
 嫉妬に狂った炎だ。
 気付けば、暗闇の中に彼方此方と灯っている。
 どうやら、嫉妬出来れば本当にリア充かどうかなどという事はどうでも良いらしい。
 流石、キメラ。
「しっと団を差し置いて、カップルに手を出そうとはいい度胸だ」
 白虎は思い切り地面を蹴り上げた。
 その後姿を見て、神樹は気付く。
「はぅあ!? 今こそ真の姿に戻るチャンス!」
 そうして、服を脱ぎ捨てた。

 悲鳴が上がり、同時に火柱も上がる。
 キョーコと涼は、其処に向かって全速力で走る。
 キメラに違いない。
 キョーコは徐に自身のメイド服の胸元を掴む。
 涼はそれを視界の端に捉える。
 分かっている、下に着ている事は分かっている。
 だが、気になっちゃうお年頃なのだ。
「人の恋路を邪魔するやつは、あたしに蹴られて地獄に堕ちろってね!」
「マーヴェラス!」
 メイド服を脱ぎ捨て、涼の歓声を余所に、キョーコは飛ぶ。
 そして、無駄に街灯の上に乗って銃を構える。
「そこまでだっ! しっとだ‥‥じゃなかった、リア充ハンター!!」
 その声に、パニックになっていたカポー達がどよめく。
 顔をマスクで覆い、白いスク水姿の女が立っていればそうなるのも仕方がない。
「あたしの名は、スク水天使W!」
「そして俺は‥‥とうっ!」
 反対側の街灯に、これまたマスクをした海パン一丁の涼が飛び乗る。
 どよめきはこれ以上無いくらいに、大きくなる。
「海パン仮面だ!」
 タキシードを脱いでしまえば、こんなものと言わんばかりだ。
「あたしらが来たからには好きにさせないよ」
 決め台詞を放った後に訪れたのは沈黙。
 カポーは勿論、キメラでさえも黙っている。
 そして――
「へ、変態だーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
 本日二度目の変態騒ぎである。
 逃げ惑う人達の中、エンヴィーは吼える。
 そして、キョーコと涼に向かって嫉妬の炎で作った火球を思い切り投げつける。
 それを飛んでかわすと、キョーコは銃の引き金を引く。
 数発の乾いた銃声が響いた後、エンヴィーはあっさりと崩れてしまった。
 しかし、隠れていた何体かがキョーコに近付こうと通りに躍り出る。
「すまない、エンヴィー君‥‥安らかに眠ってくれ」
 着地と同時に涼は釘バットを振り下ろす。
 そこには複雑な心境も込められていたに違いない。
 倒すべき敵ではあるものの、志は同じなのだから。
 ああやってキョーコに倒されるエンヴィーだって同じ。
 キョーコが脚を高々と上げて顔面にハイキックを入れたエンヴィーだって同じ。
「サービスし過ぎです、姐さん‥‥」
 涼の心には、既にエンヴィーに対する複雑な心境など微塵も残っていなかった。
 水着でハイキック、その一択。
 これが悲しい現実だった。
 勿論、後ろから迫ってきていたエンヴィーを容赦無くぶっ飛ばしたのは言うまでもない。
 後に、涼はこう語る。
「そんな事言ったって、しょうがないじゃないか」

 暗闇に迸った赤い光。
 それを遮ったのは、天莉の開いた傘だった。
 炎の奔流が収まると、天莉は自身の肩に傘を当ててエンヴィーの様子を窺う。
 周りのカポー達が悲鳴を上げなかったら、危なかった。
 時に諸君、天莉君は傘を肩に当てている訳だが――
 その状態は、普通に傘を差している様に見える。
 ティナ嬢は勿論、炎を避けて天莉の背中に隠れている。
 二人が一つの傘の下に収まっている様に見えるのだ。
「相合傘っぽいですね」
「そうですね」
 そう、これは都市伝説の一種である相合傘と同じ様な状態なのだよ。
「アイアイガサテラウラヤマシス!」
 そんな雄叫びを上げて、エンヴィーは空に向かって吼える。
 少し泣いている様に見えるのは気のせいなのだろうか。
「アイアイガサテラウラヤマシス!」
「ラブレタートカマジトシデンセツ!」
「ジテンシャフタリノリシタイ!」
 雄叫びにつられて、更に数体のエンヴィーが現れ鳴き声を上げる。
 うわ、と小声でティナは呻く。
 少女ドン引き中である。
「お祭り(?)に遅れちゃいそうですし、速攻で片付けちゃいましょう」
 お祭りとは何か、と天莉が聞こうと思った瞬間。
 その刹那には、一番近くに居たエンヴィーの身体に十字が刻まれる。
 SSSのスタイリッシュだ。
 天莉は感心しながらも、ティナに近付こうとするエンヴィーに傘を叩きつける。
 低い唸り声を上げながら、赤く嫉妬に染まった瞳を向けてくるエンヴィー。
 リア充でないのだから、エンヴィーのそれは誤解である。
 弁解するのもやや面倒に思えたので、蹴り飛ばして黙らせる事にした天莉であった。
 暫くした後、天莉は呟く。
「さて、これで一通り片付いたでしょう‥‥か!?」
 振向けば奴は居た。
 鼻先三寸の所にティナは笑顔で立っていたのだ。
 天莉、身の危険を感じつつじりじりと後退。

 黒い影に斬線が一つ描かれる。
 その線は正に、妖刀と呼ばれる代物で描かれたものだった。
「私の幸せな時間を邪魔する者には容赦しないわよ」
 星華はそう言い捨てると、刀を納める。
 束の間だったとは言え、両手に花の状態で歩けたのだ。
 それを邪魔したキメラには消えてもらう他に道は無い。
 折角可愛い子と綺麗な子から両サイドを挟んでもらっていたというのに。
 それは些か変わったリア充プレイだったが、彼女的にはOKらしい。
「破暁戦士ゴッドサンライト参上! 覚悟しろ!!」
 神樹は公園の街灯を蹴り、反動でエンヴィーに向かって跳ぶ。
 そして、無駄なキメポーズを取りながら飛び蹴りをエンヴィーに浴びせる。
 エンヴィーは溜めていた炎の制御を失い、そのまま爆散してしまう。
 着地と同時に、神樹は思う。
 俺は今猛烈にヒーローだ、と。
 女装系、という斬新過ぎるオプションは付いてきてはいるが。
 それは気にしない様にしながら、神樹は白虎を見る。
 どうやら、今回は大人しくリア充を守っている様だ。
「白虎君も、やれば出来るじゃないか」
「粛清の仕方を教えてやろう‥‥お前達の身体でな!」
「ヒーローは偶に前言を撤回する事がある」
 白虎は鉛色の鈍器をエンヴィーの脳天に全力で振り下ろす。
 鈍い音が響き渡ると、エンヴィーはゆっくりと崩れ去ってしまった。
 腰を抜かしていたらしいカポー達がお礼を言うと、白虎はにっこりと微笑む。
「なぁに気にするな、この後は君達も粛清するんだから」
「!?」
 まさに外道である。
 可愛らしい格好である事がより一層外道さを引き立てている。
 黒い笑いを見せる白虎の背後から近寄った星華はぽつりと一言。
「自分も好きな子が居るくせに、粛清とか言っちゃってほんとに可愛いだから」
「なん‥‥だと‥‥?」
 動揺を隠せない白虎。
 その後ろでは、今正にカポーがエンヴィーに襲われようとしていた。
「うわぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
「そこのけそこのけわたしがとおるー!!」
「イッサモビックリー!?」
 謎の声とドグシャァアアアァなどという音を立てながらエンヴィーは吹き飛ぶ。
 ララのAU−KVの前輪がエンヴィーの横顔にクリティカルなヒットを見せたのだ。
 彼女のお茶目な一面が出てしまった様だ。
「「HIKINIGEだーーーーーーー!?」」
 神樹と白虎、そしてカポーは同時に声を上げる。
 星華さん、マジクール。
 HIKINIGEられたエンヴィーは慌てて逃げようとするも――
「ハッハー、どこへ行こうというのかね☆」
 目の前にはいつの間にか、AU−KVで武装したララ。
 エンヴィーは強引にドリブル突破を図るも、呆気無く吹き飛ばされてしまう。
 そうして、弱り切った身体を起して目にした物とは。
 鈍く光る鈍器と、禍々しい雰囲気の刀の切っ先と、迫り来る黒い脚甲だった。





 平穏で幸せなクリスマスの夜が街に戻ってきた。
 ら良かったのになぁ、と人々は思う。
 未だ脅威はその猛威を振るっていたのだ。
 ララの吹くブブゼラが街にワールドカップを招致する。
 能力者の肺活量で吹けば、ブブゼラどころかブブゼガと言ってしまっても良いだろう。
「Calm down!」
 一台のAU−KVが止まる。
 ビキニライダーとスク水天使、もといルキアとアルエットだ。
 そもそも彼女達はクリスマスの平和を守る為に傭兵を呼んだのだ。
 その傭兵が平和を乱すなど、言語道断なのだ。
「此処からが本番だにゃー」
「‥‥抵抗すると言うのかしら‥‥」
 アルエットが指を鳴らすと、神樹が白虎の前にバットを持って現れる。
 リア充(本人は認めていません)がリア充を粛清など、修正する以外の道はないのだ。
 しかし、神樹は動けない。
 周りの野次馬から聞こえるひそひそという声が気になるからだ。
 ヒーローたる者、子供には手を上げられない。
 その隙を衝いて、星華は白虎をアルエット達に向かってぶん投げる。
 ナイスな連携で飛び込んでくる白虎はピコハンを構えて笑う。
 が、アルエットは慌てる様子も無く、指をもう一度鳴らす。
 現れたのは海パン仮面、涼だった。
「そぉい!!!」
「にゃー!?」
 特攻虚しく、白虎は涼に捕まり、勢いそのままにジャーマンスプレックスで地面に突き刺さる。
 すまねぇ、すまねぇと繰り返す涼には、アルエットのファンという呪縛があったのだ。
「聖なる夜にそのような格好、恥ずかしくないんですか!?」
 一部始終を見守っていた天莉が大声を上げる。
「私達? 別に恥ずかしくないわよ、仲間も居るし」
 ルキアはそう言って、キョーコと涼を指差す。
「‥‥なーす‥‥」
 そしてアルエットは、天莉の姿をジロジロと見るめる。
「み、見ちゃらめぇ!!」
 天莉の悲痛な叫びを聞きながら、ティナはトリュフチョコを頬張るのであった。