●リプレイ本文
ジリジリと照りつける日差し。
そんな中、アルジェ(
gb4812)はプール全体を見渡す。
白スク水と黒い外套を羽織って監視員のバイト、らしい。
彼女のマスターであるルノア・アラバスター(
gb5133)は隣で寛いでいる。
どうやら、彼女はバイトと言うわけではなさそうだった。
しかし、気になるのはその物騒なパラソル(主に支柱部分)だ。
能力者なので気にしない事にしよう。
その近くでもう一人、寛いでいる姿が見える。
こちらも白いスク水装備の少女、夕凪 春花(
ga3152)だ。
その彼女の視線の先には濃紺のスク水を着た女性が歩いている。
(「るきあ‥‥」)
ルキアさん、らしい。
どう見ても二十歳前後なのにも関わらず堂々とスク水を着て歩いている姿に親近感を感じてしまう春花だった。
もう一人、ルキアに視線を向ける人間が。
「男に見せるなんて勿体な‥‥コホン」
小さく咳払いして、ミオ・リトマイネン(
ga4310)は周りを見渡す。
その食い込みも胸元の開き具合もセクシーな赤いハイレグ水着が眩しい。
夜十字・信人(
ga8235)はそのセクシーな彼女を見て静かに興奮中だった。
しかし、その姿はミオの周辺には確認できない。
それもそのはず、彼はプールを囲むフェンスの外から双眼鏡でのぞ‥‥水着鑑賞を行っていたのだ。
副業で行っている神父の仕事に向かう途中だと言うのに、何て羨ましい男だ。
その不審者の後ろを通り過ぎようとしているのは熊谷真帆(
ga3826)。
どうやら学習塾の帰りらしく、鞄の中には勉強道具が揃っている。
勉強して終わり、と言う訳ではないらしく、真帆は制服の下にスク水を着込んでいる。
泳ぐ気満々の彼女曰く「文武両道なのですっ」だそうだ。
その真帆が信人に気付き、不審に思い声を掛けようとした時だった。
鈍く、重い、爆音が辺りに響き渡る。
当然、誰かの水着がはち切れた訳ではない。
急に冷静になった信人が双眼鏡でその爆音の方向を確認する。
次の瞬間、信人と真帆の近くに有った建物が綺麗に吹き飛ぶ。
「‥‥うん、マジで?」
とりあえず、信人は丁度後ろに居た真帆に聞いてみた。
キメラだ。
アーシュ・オブライエン(
gb5460)は美しいその肢体で水中から一気にプールサイドに上がる。
近くに置いてあった防水バッグの中からクロックギアソードを取り出し、周辺を確認する。
悲鳴を上げ混乱する人々の中で、冷静な水着姿の少女の姿を見つける。
天城・アリス(
gb6830)はその視線に気付き、アーシュの方を見て頷く。
アイコンタクトのみでお互いを能力者だと察知した彼女達は大声で混乱する人々に呼びかける。
「安心して下さい、我々はLHの能力者。 脅威を速やかに排除します」
アーシュがそう言いながらクロックギアソードを掲げる。
「落ち着いて、避難してください」
アリスがそう言いながら人々を誘導している。
発砲音が聞える。
他にも能力者が居合わせたのだろうか、キメラと交戦中の人間が居る。
春花とミオ、それにルキアの三人だ。
キメラに一般人を狙わせない様に注意を引き付けている所らしい。
「ミ、ミオさん‥‥ぁぅ‥‥まさか、こんな格好で戦闘する羽目になるとは思ってなかったです‥‥」
キメラを足止めしようと交戦中に、ミオと鉢合わせた春花は少し恥らいながらも覚醒する。
ミオは苦笑しつつも、銃弾をキメラに撃ちこむ。
ルキアもそれに倣い銃撃を開始し、三体のキメラはそれに反応し、空中で散開する。
散開していったキメラを追う様に走り出す。
そして、その内の一体がミオと春花の間に光線を放ち、水柱を上げる。
反撃もそこそこでは有るが、今の所「キメラを引き付ける」事は成功している。
春花の碧眼はその動きを見極め、空から肉薄してくる一体のキメラの攻撃を回避する。
ミオはその豊満な胸を揺らしながらもそのキメラに攻撃し、キメラをかく乱させる。
それとは真逆の方向。
「落ち着いて、転ばないように、落ち着いて駆け足」
アルジェとルノアは避難誘導を率先して行っていたが、キメラの動きに合わせて避難経路が狭まってきていた。
確かに今の所はミオや春花達にキメラが気を取られているから良いものの、その位置関係は常に直線状に有る。
光線を撃たれてしまったら、それでアウト。
一箇所からの避難は得策ではないと判断したルノアは別に避難誘導に当たっていた一般人のスタッフに一つ確認を取る。
「そこの、フェンス、破ってもよろしいでしょうか?」
スタッフが頷くのを確認したルノアはフェンスを豪快に切り裂く。
そして、アルジェが先に外に出て周辺を警戒しながら避難誘導を再開する。
「マスター、此処はアルが引き受けた‥‥マスターは武器を取ってきて」
アルジェのその言葉に小さく頷きルノアは彼女の真の得物の元へと向かう。
正規の出口から、素早く外に出てきたのはアリスだった。
アリスもアルジェと同じ様に先行して周辺の警戒に当たっていた。
「速やかに避難して、プールスタッフの指示に従って下さい」
プールスタッフが何とか落ち着きを取り戻し、テキパキと指示や誘導をし始めたのを確認するとアリスはもう一度中に戻る。
「これ以上近付くのは危険です」
アーシュはキメラの動きを警戒しながら、怖い物見たさの一般客を説得していた。
一時的なパニックで冷静な判断が出来ない客も中には存在するのだ。
そういった、客をアーシュは冷静に、時には強引に避難させる。
興奮した客も流石に素直に従うしかなく、キメラに狙われたり怪我をする事なく無事避難する事が出来た。
アーシュが一通り避難を終え、キメラの姿を確認しようとすると二人の人影がキメラに向かっていくのが見えた。
巨大な十字架の様な大剣を背負った信人と真帆だ。
真帆は器用にスカートを落とし、ブルマ姿になり、太股に吊った銃を抜く。
鞄の中からアンバーシールドという名のビート板、いや盾を取り出す。
そして、恐らく最後の避難者である人に声を掛ける。
「さぁ、早く! 此処は私達が食い止めるです!」
空に向かって銃を撃ち、キメラの気を惹きながら避難者と別の方向、アルジェが居る方向に動く。
因みに、結構アクティブな動きをしても彼女はブルマの裾を気にしたりなんかしない。
スク水です、パンツじゃないから平気だもん、だそうだ。
一方、信人はその背中の大剣ではなく、手持ちの武器の中のマジシャンズロッドを使ってキメラに牽制をしていた。
キメラはそれを嫌い、光線を放つ。
それを回避し、体勢を立て直すと近くまでアリスが走ってきた事に気付く。
「すみませんが、予備の武器を貸して頂けますか?」
信人は可愛らしい姿のアリスに手に持っていたロッドを投げ渡すと大剣を抜き放つ。
抜剣の勢いそのままに、一番近いキメラに向かって剣を振るう。
空気を裂き、縦に放たれた衝撃波がキメラを襲う。
他の能力者に気を取られていたキメラに信人のソニックブームが直撃する。
直前で気付いたキメラは翼を交差させる様にしてそれを防ぐが、勢いを殺し切れずに地上へと落ちてくる。
追撃でアリスが知覚攻撃を加えると、交差させられた翼から羽が散り、舞い落ちる。
指揮棒の様な超機械のラミエルを振るい、キメラの動きを制限する様に牽制する春花。
それを止めさせようとキメラはゆっくりと目を開く。
しかし、光線は放たれる事はなく、キメラは空中で一気に方向転換をする。
「どこ見てるの? こっち‥‥」
銃声が一つ、二つ。
キメラを追う様に続けて放たれる攻撃はキメラの翼や太股辺りに風穴を開ける。
方向転換の甲斐もなく、ミオの銃弾が直撃してしまったのだ。
直撃によって滞空姿勢を維持できなくなったキメラはプールに浮かぶ設備の残骸に何とか着地する。
しかし、このチャンスを逃すわけもなく春花はラミエルを振るう。
強力な電磁波が、周辺に波紋を立たせながらキメラを膝から崩れ落ちさせる。
キメラは怖ろしい程に瞳を輝かせ、薙ぎ払う様に首を横に振る。
水の壁を作り、何とか攻撃を遅らせる様に仕向けた訳だ。
しかし、その前にミオの銃撃がキメラに更なるダメージを負わせていた。
既に足が止まり、飛ぶ力も残っていないキメラ。
その好機を逃がす訳もない春花は、指揮棒を優雅に振るった。
ラミエルを振るうのに合わせて天使の羽が舞う光景は、まるで絵画の様だったと言う。
その後方でプールサイドを飛び回る黒い影が見える。
キメラではない、アルジェだ。
爪による攻撃を仕掛けようと高度を落としたキメラを翻弄する様にアルジェは動く。
「懐に飛び込み‥‥切り裂く」
プールサイドギリギリのラインを全身を淡く発光させながら一瞬で駆け抜け、体を捻り、キメラに攻撃を叩き込む。
アルジェはキメラの爪による攻撃を爪で迎撃しながらも、相手の体力を奪う事に成功する。
キメラは一度アルジェから距離を取り、アルジェの直線状後方に居る真帆に対して光線を放つ。
真帆は上手く盾でそれを受けるが、何故かプールの中によろける様に落ちてしまった。
一瞬、アルジェは表情を曇らせるが見逃さなかった。
真帆が落ちると同時に放り出した鞄の中から弓を抜き去るのを。
キメラがそれに気付く訳もなく、真帆を追撃する為に大きく翼を広げた瞬間だった。
「隙だらけ、ですよ」
キメラの頭が大きく跳ねる。
ルノアの深紅の右目がキメラの頭部を狙っていたのだ。
正に一発必中。
薬莢を地面に落としながらルノアは息を大きく吐く。
キメラがその攻撃を避けられなかった要因は射程距離、隠密潜行、そしてその命中率に有った。
しかし、そのまま水面に向かって落ちていくキメラは絶命する直前に最後の攻勢に転じる。
これ以上に無い位、強い輝きを発しながら瞳を開く。
標的はルノアだ。
大体の位置さえ分かれば後は光線で焼き払えば良い。
アルジェがその間に割り込もうと飛び出した瞬間だった。
キメラの目の前に物凄い水飛沫が上がり、キメラの照準を狂わせる。
水中から現れたのは、筋骨隆々の少女、弓の弦を限界ギリギリまで引いた熊谷真帆だった。
スク水とブルマがはち切れそうだ。
その全身からは炎の様なオーラが溢れ、甲高い音と共に矢が放たれる。
キメラはそのままプールサイドまで矢の勢いで体を持っていかれ、地面に叩きつけられながら絶命した。
アリスはマジシャンズロッドによる追撃を的確に加え、キメラを空に逃がさない様にしていた。
そこに別々の方向からアーシュとルキアが戦闘に加わる。
「お久しぶりです、ルキア様‥‥何故その様な格好を‥‥?」
「え?」
アーシュが不思議そうな顔をしながら剣を構える。
ルキアも不思議そうな顔をしながら銃を構える。
信人がキメラを弾き飛ばし、それを避ける様にまたも別々の方向に跳ぶ二人。
着地したアーシュが迅雷で一気に間合いを詰め、体を回転させながら斬撃を浴びせる。
翼でそれを受け、キメラは後退する。
既にボロボロの翼は捨てたらしく、殆ど防御に使われている。
しかし、それにも限界が有るらしく動きが段々鈍ってきた。
「チャンスね」
ルキアはスク水の食い込みを直すと、トリガーを引く。
それは完璧なタイミングだったが、ルキアはAU−KVを装備していない為にあまりダメージは与えられていない様だった。
それが災いしたのか、キメラは翼をはためかせルキアの方向を向く。
ボロボロの翼から羽が弾丸の様に飛ぶ。
ルキアはそのスピードに反応できず、このままその攻撃が直撃するかと思われた。
「スクール水着の美女が、血を流すなど、神も俺も許しはしない」
信人が十字架の大剣を盾にしながら羽の弾丸を防ぐ。
防ぎ切れず、刺さってしまった羽を引き抜きながら信人は不敵に笑う。
その傷はすぐさま塞がってしまった。
「Aer you OK?」
「平気さ。 早く終わらせて皆の水着を鑑賞したいわけだ」
呆れる様子もなくルキアは信人の隣に立つ。
此処に煩悩神父とスク水シスターの異色コンビが誕生したに違いない。
キメラが動こうとすると、アリスが足元を、アーシュが翼を牽制し、動きを止める。
ルキアも銀髪を揺らしながら初撃と同じ箇所に連続で撃ち込む。
それらの攻撃に押され、後ろへと体勢を崩した時だった。
信人の大剣がキメラを貫きそのまま地面へ磔にしたのだった。
そしてそのまま拳銃を引き抜き、頭を超至近距離でぶち抜く。
神父としては破天荒な信人だが、やはり天使姿のキメラはどこか許せないものが有るらしかった。
ミオと春花がキメラを沈黙させた頃には辺りは完全に静まり返っていた。
蝉の鳴き声すら聞こえない。
プールの水音のみ。
「武器お貸し頂きありがとうございました」
アリスはぺこりと信人に向かって頭を下げる。
そして、何も言わず首を振った信人を尻目にプールの方に歩いていく。
その先には丁度、プールの片付けを終えて二人で遊んでいるルノアとアルジェの姿が在った。
「‥‥冷たいぞ、ノア」
「プール、ですから」
ルノアは柔らかく微笑み、アルジェにもう一度水を掛ける。
その姿を見てアリスはようやく緊張が解けた様に思えた。
少し離れた場所でアーシュがルキアにどうしてスク水なのかを問いただしていると真帆が近寄ってきた。
彼女も服が濡れてしまった為、スク水姿だ。
「ルキアさん、スク水は日焼け跡が格好悪いので素人にはお勧めしないのです」
「Oh‥‥そうなの、徐々に慣れていくしかないのね」
「素人?」
結局、アーシュはルキアがスク水の理由を聞けずじまいだった。
その近くで春花はスタッフと自分達以外殆ど人の居ないプールを眺めながらビニールシートの上にうつ伏せになっていた。
その隣ではミオが何やら話し込んでいるルキアとアーシュ、真帆の方を見ながらポツリと呟く。
「やはり、勿体な‥‥コホン」
「?」
一方、信人は仕事に行くとか言っておきながら煙草を咥え双眼鏡片手に、一人水着鑑賞会を開催中だった。