タイトル:学校の怪談?マスター:瀬良はひふ

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/03 20:27

●オープニング本文


「廃校?」
 校庭の片隅、ジャングルジムの上で三人の少年が話をしている。
 日焼けした小柄な少年が太一、眼鏡の少年が亮助、おっとりした少年が勇気という。
「はいこーって何?」
 勇気が首を傾げる。
 亮助は淡々とその疑問に答えた。
「学校が無くなるってことだよ」
「えー? 僕、そんなのやだよー」
 泣きそうな顔の勇気の背中を、太一がばしっと叩く。
「嫌じゃない奴がいる訳ないだろ!」
「う、うん‥‥」
「でも亮助、その話本当なのか?」
 太一が疑わしげな表情で亮助を見る。
 心外だと言わんばかりの表情で、亮助は太一を見つめ返した。
「僕だってこんな話信じたくないさ。でも、UPCの軍人が職員室で話してるの、聞いちゃったんだ」
 亮助がその話を聞いたのは数日前のことだ。
 忘れ物をした彼が学校に来ると、職員室に件の軍人が入るのが見えた。
 興味本位で職員室を覗き見していた結果、先の話を入手したというわけだ。
「何か良い方法無いのかよ」
「うーん、難しいな」
 太一がせっつくように亮助に迫る。
 そのとき、おずおずと勇気が手を上げた。
「あ、あのさ」
「どうした?」
「うん、ええと、その‥‥」
「早く言えって!」
 焦れたように太一が大声を出す。
 まあまあと亮助がそれを宥め、勇気に向かって頷いて先を促す。
「タタリが起こるってことにすれば、いいんじゃないかなぁ」



「‥‥怪奇現象?」
 メアリー=フィオール(gz0089)は、その依頼主の言葉に首を傾げた。
「はぁ、そうとしか言えない現象でして‥‥」
 頭髪の寂しいその男性は、ある小学校の校長をしているらしい。
 彼が言うには、その学校は歴史こそ長いものの近年は生徒数の減少が著しく、また校舎の老朽化も目立つため、廃校にするという話が進んでいるそうである。
 その際、校舎は取り壊した後にUPCの備蓄基地とする、という計画もあるようだった。
 だが、最近その校舎で怪奇現象が相次いでいるのだという。
「例えば、どういったものですか?」
「ええ、宿直の先生が見回りをしていると奇妙な笑い声が聞えるとか、夕方の校舎でお化けに追い回されたという生徒も‥‥」
「お化け、ですか」
 メアリーの確認するような返事に改めて居心地が悪くなったのか、校長は何度も額をハンカチで拭った。
「直接の被害は無いのですか?」
「はい、それは、今のところ生徒も先生も、怪我をしたとかそういう報告はありませんで」
「その現象は、いつ頃からですか?」
「つい最近ですね。そう、丁度廃校の話が進みだした頃ですので、先生や生徒の間では、タタリじゃないかなんて噂も‥‥ええ、歴史だけはある学校ですので、はい‥‥」
 タタリ。
 その単語にメアリーは少しだけ眉を顰める。
「それで、その原因究明と解決を依頼したい、と」
「はい。何分こんなご時世ですから、万が一にもバグアだのキメラだのの仕業ですと、ええ、私どもは子供たちをお預かりする立場ですし‥‥」
「分かりました。承ります」
「ああ、ありがとうございます。こちらで協力できることならお力になりますので、よろしくお願いします」
 了承の返事に安心したのか、校長はぺこぺことお辞儀をして去って行く。
 メアリーは一つため息をつくと、依頼発注の手続きに入るのだった。

●参加者一覧

リディス(ga0022
28歳・♀・PN
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
パディ(ga9639
22歳・♂・FT
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD

●リプレイ本文

●ある学び舎
「なぁ、聞いたか?」
「どうしたんだ、太一」
 校庭の一角にて、日焼けした小柄な少年が眼鏡の少年に話しかける。
 前者が太一、後者が亮助だ。
「どうしたのー?」
 その声に反応して、おっとりした少年、勇気が会話の輪に混じる。
「丁度良いや、亮助のついでに勇気も聞けよ」
 勇気と亮助の肩に手を回して、太一が悪戯っ子の笑みを浮かべる。
「能力者が来るらしいぜ」


 丁度その頃、ラストホープから派遣された能力者四人が目的地に到着していた。
「ここが例の町‥‥いえ、村かしら?」
「種別はまだ町のようですね」
 リディス(ga0022)の言葉に、カルマ・シュタット(ga6302)が応えた。
 歴戦の二人にしてみれば、こうして依頼に出ることは最早日常だ。
 ある種の風格すら感じる佇まいは、実に余裕に満ちている。
 対照的なのはヨグ=ニグラス(gb1949)だろう。
 ドラグーンというクラスからも分かるとおり、能力者となってからまだ日は浅い。
 今回が初の依頼受注ということもあり、出発前からかなり緊張しているようだった。
「えと、が、頑張って事件を解決するです! 改めてよろしくお願いするです!」
 しゃちほこばってお辞儀をするヨグに、リディスとカルマは微笑ましげだ。
 ヨグの隣にいたパディ(ga9639)が、ぽんと少年の肩を叩く。
「そんなに緊張することはないよ」
「は、はいです!」
 自らの緊張振りを指摘されて、ヨグは恥ずかしげに笑った。
(「初々しいわね‥‥。やっぱり、教師になれば良かったかしら?」)
 リディスはふと、往年の夢を思い出す。
 この時世では、自らの夢を追い求めることが出来る人がどれほどいることだろう。
「どうかしましたか?」
「いえ、ちょっとね」
 問うカルマに笑いかけると、リディスは気を取り直したように髪をかきあげた。
「では、出発ですね」
 パディの言葉で、四人は学校へと向かった。
 折りしも休日ではあったが、能力者が来るということで教師が職員室に待機している、とのことだった。

「あれ、ですね」
 少しばかり歩いた後、カルマが前方を指し示す。
 その先には、寂れた、という言葉が似つかわしい木造の建物があった。
 そんな校舎の庭先、校庭では少なくない数の子供たちが楽しげに駆け回っている。
 夏の日差しの下、活力に満ちた歓声を振りまく子供たちの脇を抜け、四人は校舎の入口をくぐった。
「思ったよりも、賑やかな学校のようです」
「ええ‥‥」
 つまりは、それ程に子供たちはここを好いているのだろう。
「小さい学校だから、その分連帯感が強いのかしら」
「かもしれませんね」
 リディスとカルマはゆっくりと校舎内を見渡す。
 ゴミや埃などは目立たないが、古い建物故か、ほんの少しだけかび臭い。
「えと、僕は学校の中を見て回りたいです」
 ヨグがおずおずと申し出る。
「では、自分がお供するよ」
 パディが申し出ると、ヨグは安心したようににっこりと笑った。
「じゃ、私たちは職員室へ」
「お願いします」
 一行は二手に分かれ、それぞれに動き出す。
 そして、それを見つめる三人の影‥‥。

 カルマが職員室の扉をノックすると、思った以上に大きな音が立った。
 すでにガタが来ているらしく、立て付けが随分と緩くなっているようだ。
「古い校舎でしょう?」
 扉を開けた女性教師が、そういって苦笑する。
 何と反応したものか、とリディスはやはり苦笑で応じた。
「立て付けも悪いし、鍵も壊れてたりして‥‥。あの日も、戸締りの確認をしている最中だったんです」
 不意に声のトーンが落ちる。
「そのときのことを、教えてもらえますか?」
 気遣うようなカルマの口調に、教師は頷いた。
「時間は、六時半から七時の間だったと思います。丁度、入口の正面にある階段を昇るときでした」
 そこで、彼女は一旦息をつく。
 校舎に入ってすぐに階段が目に入ったことを、二人は思い出した。
「後ろから、奇妙というか不気味‥‥そう、不気味な笑い声がいきなり聞えてきて」
「後ろからということは、入口の方から、ですね」
 簡単な図をメモに書きながら、カルマは確認するように呟く。
 その時の教師の位置、声が聞えた方向、時刻。要点のみをさっと記していく。
「どんな笑い方だったんですか?」
 リディスの問いに、教師は少しだけ考え込む。
「何と言いますか、こう、二三人の子供が一度に笑うような‥‥」
 子供。
 その単語に、二人はぴくりと反応した。 

●vs子供
 リディスとカルマが先生に話を聞いている頃、パディとヨグは教室を見て回っていた。
「うう‥‥。な、何にもわからないです」
 緊張は多少は解れたといえど、少年には初めての依頼。
 何をすれば良いものかと焦りのみが先行して、頭が沸騰しかけているようだった。
「落ち着いて。焦る必要は無いよ」
 パディが穏やかに諭すも、中々に効果は上がらない。
 そんな折、ふとしたことでヨグは机に足を引っ掛け、盛大に転んでしまった。
「あー! 俺の机!」
「太一!」
 不意に廊下から声が響いた。
 とっさに振り返ったパディの目に、今にも飛び出さんとする小柄な少年と、それを何とか押し留めようとする二人の少年の姿が飛び込んだ。
 太一と亮助、それに勇気だ。
 ヨグも少し涙目になりながら起き上がり、三人に向き直る。
「君たちは?」
「ほら、太一のせいで見つかっちゃったじゃないか」
「まぁまぁ」
 パディの問いを無視して、亮助が太一をひじで小突く。
 太一はむすっと黙っており、それを勇気が何とか宥めようとしている。
「えと、君たち、質問には答えて欲しいのです」
「うっさい! 見つかったのはお前のせいなんだかんな!」
 開き直って噛み付く太一に、ヨグはぴしりと凍りつく。
「机に躓く能力者とか聞いたことねーよ!」
「た、太一!?」
 いきなり踵を返して駆け出す太一。
 慌てたように亮助と勇気が追随する。
 そこに至って、ヨグが再起動を果たした。
「はっ!? ま、待つです!」
「悔しかったら捕まえてみな! へへーんだ!」
「‥‥ぐっ‥‥お、お説教するですっ!」
 どたどたと、ヨグもまた走り出す。
 その様子を苦笑して眺めながら、パディもまた四人の後を追った。

「と、止まるです!」
「言われて止まる奴はいないっ!」
 能力者と一般人の身体能力には、決定的とも言える差がある。
 にも関わらず、追いかけっこは未だに続いている。
 その一番の理由は、少年たちが校舎の構造をほぼ完全に把握しているのに対し、ヨグらはそうでもないことだろう。
 もっとも、覚醒をすればその程度のハンデは無いも同然なのだが、それをするほどヨグは幼くなかったし、パディも大人気無くはなかった。
 だが、その均衡は唐突に崩れる。
「あ‥‥!」
「!」
 勇気が階段を駆け下りるとき、足を踏み外したのだ。
 踊り場があるとはいえ、この高さでは怪我は免れない。
 考えるよりも先に、パディの体が反応した。
 目が黒く、瞳が金色に染まる。覚醒した男は、疾風の如く距離を詰める。
 まさにあっと言う間の出来事だった。
 瞬きするほどの間に、パディは勇気を抱えて踊り場に降り立っていた。その瞳は、既に元に戻っている。
「平気かい?」
「あ、あ、ありがとう‥‥」
「勇気!」
 慌てて踊り場に降りてくる太一と亮助。
 無事を喜び合うその姿は、麗しい友情を感じさせる一幕だ。
 二人の後ろから現れたヨグも、ほっとしたような表情をしている。
「ありがとうございました」
 亮助が一歩前に出て、パディに頭を下げる。
 別に良いよ、とパディは笑って手をひらひらと振った。
「ほら、太一も」
 促されて、渋々、と言った表情で太一も進み出る。
「勇気を‥‥助けてくれて‥‥」
「太一」
 ごにょごにょと口ごもる太一を、少しだけ強い口調で亮助が諌める。
「ありがとう!」
 やけっぱちのように叫ぶ少年に、他の四人はおかしそうに笑った。

「あんたら、軍の手先なんだろ?」
 最初に出会った教室に戻って早々に、太一が言った。
 顔を見合わせるパディとヨグに、亮助が説明する。
「この学校を廃校にするために、能力者が来るんだって聞いたんです」
「うん。太一君がそう言ってたんだ」
 そう言った勇気の口を、慌てて太一が塞いだ。が、少々遅かったようだ。
「そうか。だから邪魔しようと思って?」
「はい」
 亮助が頷く。
 どうやら先ほどの一件で、少なくとも敵ではない、と思ってくれたようだ。
「えと、違いますよ。僕たちは、ここの怪奇現象を解決しに来たのです」
 ヨグが少しだけ胸を反らせる。
「嘘くせー‥‥」
 頼りない、とでも言いたげな太一の反応に、ヨグはがっくりとうなだれる。
 うなだれたついでに、お腹がぐぅと自己主張をした。
「‥‥んと、とりあえず腹ごしらえをするです。君たちも、プリン食べるですか?」
 どこから取り出したのか、五つのプリンを取り出すヨグ。
 手作りだというそれは、少年たちには魅力的なお誘いだった。
 おやつの時間である。

●守る方法とは
「で、あんたらはどう思うんだよ。その‥‥何とか現象について」
「怪奇現象だよ」
 プリン効果か、少年たちは先ほどよりも打ち解けたように見える。 
「不審な気配などは感じないね。少なくともキメラやバグアの仕業とは、思えない」
 パディが応じれば、少年たちは額をつき合わせてひそひそと何事かを話す。
 何を話しているのかは聞えないが、何となく内容に予想は付く、とパディは思った。
 ヨグもまた、うっすらとした予感を抱いている。
(「学校の中、荒らされた様子も無かったです‥‥。多分‥‥」)
 キメラでは無いにせよ、部外者の犯行なら何かしらの痕跡が残るだろう。
 見落としているだけかもしれないが、そういったものは確認できなかった。
 となれば、残る線は関係者だ。
 つまりは生徒と教師だが、そのうちのどちらかと言われれば‥‥。
「あら、ここにいたんですか?」
「リディスさん、カルマさんも。先生には?」
「ええ、お話は聞けました。お二人は、子供さんとお話ですか」
 カルマがちらりと少年たちに視線をやる。 
 新たな人物の登場に、三人は少々警戒しているようだった。
 内心で苦笑しながらリディスとカルマは教室内に入る。
「はい。お話し中なのです」
 リディスが差し出したメモ用紙を受け取りながら、ヨグは微笑む。
 カルマもまたパディへ同様に紙を渡す。
 教師の話の要点と簡単な図が記されたそれを見て、パディの目が細められた。
 お化けを見たと主張する生徒は三名。その名前は――。
「‥‥校内の様子は、どうでした?」
「不審なところは特に‥‥」
 そうですか、とリディスは瞑目する。
 再び開けられた目は、三人の少年へと向けられた。
「な、何だよ」
「いえ」
 笑いかけるリディスに、照れ臭そうに太一はそっぽを向いた。
「へんっ! 軍の手先が増えたところで、どーってことないね!」
 照れ隠しのつもりか、殊更乱暴な口調で太一は言う。
 軍の手先、という単語にカルマはぴくりと反応した。
「手先、か」
 呟いたその言葉に、少年たちがふと視線を向ける。
「その認識は、ある意味では間違っていない‥‥が、手先になっても守りたいものがある。そういう奴もいる」
 少なくとも、俺はそうだ。
 そこまで言ってから、ふう、とカルマは息を吐き出す。
 そして少しだけ優しい表情で、少年たちを見返す。
「君らも、心当たりはあるんじゃないかな?」
「‥‥」
 見透かしたようなその言い方に、三人は居心地が悪そうにもぞもぞと動く。
(「何かを犠牲にしても守りたいもの、か‥‥」)
 リディスはふと窓から外を眺める。
 校庭では、子供たちが相も変らず元気に遊び回っている。
「思い出が消えるような‥‥そういう感覚って、悲しいものね」
「思い出は消えませんです!」
 力強く否定するヨグにリディスは、そうね、と笑いかける。
「ただ、やり方は選ばないと、ね」
 傾き始めた太陽が、彼女たちの影を色濃く伸ばし始めた。


「‥‥なるほど。お話はわかりました」
 校長室で、四人の能力者と校長が話をしていた。
「あの、校長先生、子供たちには‥‥」
 校長はリディスの言葉を手で遮る。
「お話が本当であれば、確かに問題です。ただ、証拠がありませんな?」
「証拠、ですか」
「はい。子供たちが悪戯をしたという証拠が無い‥‥以上、疑わしきは罰せず、ですよ」
 四人は顔を見合わせ、笑いあう。
 校長もまた、寂しげな頭髪を弄りながら笑った。
 ひとしきり笑った後、意を決したようにパディが前に出る。
「あの、差し出がましい申し出なのですが、廃校の件を再考していただけないでしょうか?」
「‥‥原因は、やはりそれなのでしょうなぁ」
 校長は、一転して力なく首を振る。
「すでにかなり決定に近い予定なのです。私どもの意見だけでは、どうにも‥‥」
「何とか、なりませんか」
 パディは諦めきれない様子だ。
「せめて、生徒や親御さんから纏まったご意見でもあれば別なのですが、それこそ私たちが主導するわけには‥‥」
 深いため息をつく校長に、パディもこれ以上は何も言えなかった。


「なぁ、アレ、ばれてるよな?」
「えっ!?」
 帰り道、教室を出て以来続いていた沈黙を太一が破った。
「多分ね」
「ほ、本当?」
 勇気だけは、まだ事態を飲み込めていないらしい。
「どうするんだよ、これから」
「‥‥わからない」
 沈んだように、太一と亮助は再び黙り込む。
 勇気もようやく話を理解したらしく、沈んだ表情を見せた。
「やり方、か」
 亮助がぽつりと呟いた。
 そこで、何かを思いついたように足を止める。
 二人も釣られて足を止めた。
「僕らだけじゃなくて、他の皆も誘ってさ‥‥それでお願いしよう」
「他の‥‥」
「皆で頼めば、考え直してくれると思うんだ」
 吹っ切れたような笑顔で、亮助は太一と勇気の肩を叩いた。



 数日後。
 ULTに件の学校から一通の手紙が届いた。
 メアリー=フィオール(gz0089)はその内容を見て、少しだけ微笑む。
 早速依頼に参加した能力者たちに転送をしようとしたところで、自分に近付いてくる人影に気付いた。
「えと‥‥あの、メアリーさん」
「ああ、君か。丁度良いところに来たな」
 現れたのはヨグだった。
 手間が少し省けた、と手紙を持って歩み寄るメアリーに、少年はいきなり頭を下げた。
「な、何だ?」
「あ、あの‥‥ごめんなさいです! 出発前、い、色々と迷惑を‥‥」
 ぎゅっと目を瞑って頭を下げたままのヨグに、メアリーは苦笑する。
「頭を上げたまえ」
 ぽん、とその手をヨグの頭に置くと、少年はおずおずと姿勢を戻した。
 その眼前に、手紙が広げられる。
「え、えと‥‥?」
「君が以前行った学校からだ。廃校の話は、とりあえず保留になったそうだぞ」
 ヨグの目が、その言葉を聞いてみるみる輝きだした。
「君らの手柄だ。‥‥これからも頑張れ、少年」
「はいですっ!」
 元気な声が、室内に響いた。