タイトル:【弐番艦】強行輸送作戦マスター:瀬良はひふ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/26 15:43

●オープニング本文


 ――ラスト・ホープにあるドローム社。
 緑溢れる敷地には、ナイトフォーゲルの整備工場を兼ねた社屋を挟むように、ハの字に滑走路が延びている。
 ハの字の右側の長い滑走路に、武装巨大輸送機ガリーニンとS−01Hが停められていた。
「ブラッド准将のお力添えには感謝の言葉もありませんわ」
 青いビジネススーツに身を包んだミユ・ベルナール(gz0022)は、整備工場からガリーニンへ運ばれるメトロニウム製のコンテナを、感慨深く見つめていた。
「主力であるUPC北中央軍の戦力が大幅に増強されるのであれば、本部も協力は惜しみません」
「ようやく未来研から届いた重力制御エンジン。これをオタワまで運ぶのは、高速移動艇では心許ないですからね」
 メトロニウム製のコンテナの中身は、未来科学研究所より提供された一機の重力制御エンジンだ。これをハインリッヒ・ブラット(gz0100)がチャーターしたガリーニンでUPC北中央軍の本部オタワまで運ぶのだ。
「流石に3機のガリーニンをこちらへ回すのは容易ではありませんでしたが」
 彼の口振りから、UPC北中央軍のヴァレッタ・オリム中将もUPC本部へ何らかの圧力を掛けたと思われた。
「指示通りに、1機のガリーニンはサンフランシスコ・ベイエリアへ回しましたが、重力制御エンジンの他のパーツも、同時にオタワへ運ばれるのですね」
「ええ。サンフランシスコ・ベイエリアで開発した艦首ドリルと、製造プラントで完成させた副砲、これにオタワで復元を終えたSoLCを搭載すれば、『ユニヴァースナイト弐番艦』は完成します」
 これらのパーツは、オタワでバグア側に秘密裏に建造されているユニヴァースナイト弐番艦の主武装だ。
 ユニヴァースナイト壱番艦は各メガコーポレーションの共同開発だが、弐番艦はドローム社とUPC北中央軍とで開発している。その為、大きさは壱番艦の4分の1程度であり、重力制御エンジンも一機のみの搭載だ。
 オリム中将からすれば、UPC北中央軍の戦力を増強する事が最優先であり、だからこそドローム社がユニヴァースナイト弐番艦の建造を打診した時、二つ返事で承諾したのだろう。

 ラスト・ホープより重力制御エンジンがオタワへ運ばれると同時に、サンフランシスコ・ベイエリアより艦首ドリルが、ドローム社の製造プラントより副砲もオタワへ向けて輸送される。
 ドローム社はこれらの輸送隊に能力者の護衛を付ける事とした。

 コロラド州、デンバー。
 ロッキー山脈の西にあるこの都市は、バグアとの競合地域に食い込む最前線でもある。
 ラウディ=ジョージ(gz0099)は、今日は能力者としてここに招かれた。
「弐番艦、か。思ったよりも時間が掛かったな?」
「情勢が情勢です。この時期に完成させること自体、並大抵の労力では」
 クラウディア=ホーンヘイムの説明を手で遮り、ラウディはドロームからの依頼書を改めて読み返す。
「ふん、俺たちには似合いの依頼じゃないか」
「‥‥陽動、ですか」
 内容を思い出したのか、クラウディアは逆に心配げな顔をする。
「輸送用トレーラーの車列は、最後の希望から来た奴らが護る。俺たちは、その輸送部隊からやや離れた場所で暴れて回る。バグアの目はこちらに釘付けで、輸送部隊がまさかその脇を通っているとは思うまい。ルートも、ここからオタワまでの最短距離。面白いじゃないか」
「はぁ」
 実に楽しげなラウディと、生返事をクラウディア。

 今回の依頼は、ユニヴァースナイト弐番艦、その副砲をデンバーからオタワまで輸送することだ。
 ルートは、デンバー→カンザス→ミズーリ→イリノイ→インディアナ→ミシガン→オタワ、という競合地域を突っ切る最短ルート。
 強行突破、というわけだ。
 しかし、闇雲に突破しようとしたところで、輸送部隊がいくらあっても足りないだろう。
 そこで白羽の矢を立てられたのが、ラウディ率いる能力者部隊、プレアデスだ。
 彼らが、輸送部隊から更に競合地域深くに食い込んだ形で併走し、派手に暴れることでバグアの目を引きつける。
 その間に、輸送部隊はラストホープの能力者による護衛の下、オタワまで一気に駆け抜ける、というわけだ。

「さて、今回も実に充実した任務だ。ゴーレムの一機や二機、タートルワームの三匹や四匹程度は屠ってやろうじゃないか」
 プレアデスの面々を前に、ラウディは無茶な目標をぶち上げる。
 いかな実力者揃いの部隊とは言え、生身でそれを成し遂げるのは無茶というものだ。要するに、気合の問題なのだろう。
 それが分かっているのか、八人の能力者たちは気負いなど全く感じさせず二台の装甲車に分乗していく。
 それを確認すると、ラウディは輸送車両に向き直り、ラストホープから派遣された能力者たちに声をかけた。
「と、いうわけだ。出来る限りは暴れてやる。万が一にも、輸送車両を壊されないようにな?」
「ご武運を」
 不敵に笑ったラウディが踵を返すと、クラウディアも丁寧にお辞儀をしてからその後に続いた。
 二人がダミーの輸送用トレーラーに乗り込むと、計三台の囮部隊が砂埃を巻き上げて走り始める。
 その姿を見届けた後、能力者たちもそれぞれに装甲車へと乗り込んでいく。
 低く唸るような音と共に、輸送車両のエンジンが動き始めた。



 備考
 輸送用トレーラー:
  弐番艦の副砲を搭載したコンテナを貨物室に搭載した、大型のトレーラー。
  軍用に改装してあり、そこそこの耐久力はあるものの、武装は一切無し。
  運転手は軍から派遣されている。腕は確か。

 装甲車:
  一台に四人まで乗り込める。
  天井のハッチを開けば機銃座があるが、今回は機銃は撤去されている。その分スペースが広くなり、二人程ならそこで周囲の警戒に当たれる。
  後部ハッチを開くと、手すりと足場がある。人一人ならば走行中でも乗り出して射撃程度は可能。
  尚、装甲車の運転は能力者自身が行うこととなっている。
  運転手はその旨を明記して申し出ること。無い場合は、こちらで振り分ける。
  つまり、直接戦闘を行えるのは、最高で六人となる。

●参加者一覧

九十九 嵐導(ga0051
26歳・♂・SN
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
寿 源次(ga3427
30歳・♂・ST
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
水流 薫(ga8626
15歳・♂・SN
レン・ヴィアータ(ga8843
12歳・♀・DF
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG

●リプレイ本文

●怒涛
 KVならば二三機は優に積めそうな超大型トレーラーが、大地を揺らして走る。
 その左前方と右後方に一台ずつ、装甲車が追走している。
「デトロイトまでは、後数時間ってとこかね。最後まで、安全迅速をモットーにってな?」
「熱々のピザを届けるとしよう」
 右後方を行く二号車、その運転手を務める寿 源次(ga3427)が、巨大なトレーラーの運転手へと無線を入れる。
 軽口を返してきたその運転手――UPCの軍人で、ジェフと名乗った――に、源次は楽しげに笑った。
「これは‥‥新しい希望‥‥。俺たちの‥‥そして人類の‥‥」
 トレーラーの左前方を走る一号車、その後部ハッチから積荷を見やりつつ幡多野 克(ga0444)は呟く。
「ユニヴァースナイトってカッコよかったよね〜」
 蒼河 拓人(gb2873)は、先日のAWで見たその勇姿を思い出して顔を綻ばせた。
「弐番艦が完成すれば、それだけ多くの命が助かります。必ず、無事に送り届けますよ」
 一号車のハンドルを取りながら、守原有希(ga8582)は決意を新たにする。
 その時、車載の無線が着信を告げた。

 ――キメラの群れが、こちらに迫っている。

 能力者たちはその知らせに、改めて戦闘態勢を整える。
「‥‥っとと、命綱命綱」
 水流 薫(ga8626)は自らの身をしっかりと固定すると、残りのコーヒーを一気に飲み干した。
 身を切る程、とまではいかないが、この季節のミシガンの気温では、外気に晒されたままのドライブは流石に寒い。
 温かいコーヒーは、そんな旅の良き友だろう。
 拓人もまた、命綱で車と自分とを繋ぎとめる。
 風圧で飛びそうになるカウボーイハットの紐をもう一度しっかりと結え、双眼鏡を覗き込む。
「‥‥まだ見えない、かな」
 といっても、キメラが確認された方向は輸送隊の進行方向から見て右。
 一号車の位置では、トレーラーが壁となって視界はあまり良くは無かった。
 対照的に、二号車は警戒という意味ではベストだったろう。
 九十九 嵐導(ga0051)と御山・アキラ(ga0532)は、共にその上部ハッチから身を乗り出して警戒に当たっている。
「さて、どう来る‥‥?」
 源次から借り受けた双眼鏡で周囲を警戒しながら、嵐導が呟く。
 同様に、双眼鏡で油断無く睥睨するアキラ。
 そんな二人の耳に、調子外れの歌が聞えてきた。ちらりと視線を交わしあい、またか、といった風に肩を竦める。
「フォース! フォース! わっれらっは強行軍〜」
 レン・ヴィアータ(ga8843)だ。
 ゴシック調の可愛らしい服、素晴らしく丈の長いマント。
 絵で描いた様にマイペースの彼女には、当初こそ戸惑いを覚えた同乗者たちだったが、長距離行の中で徐々に慣れていった様だ。
 これで仕事はきちんとこなすのだから、文句は無いのだろう。
「ふーんふフンガー♪」
 源次も釣られたように鼻歌を返す。
(「ま、ただ警戒してるだけってのも退屈‥‥なんだろう」)
 歌うに至ったレンの心情を想像して、少しだけ笑う。
「‥‥アレか?」
 ふと、アキラは地平線の一角に何かの気配を感じ、そこへ集中する。
 彼女の勘が、あれこそが敵だと告げた。
「来たぞ」
 サブマシンガンのセーフティを解除しながら、アキラが言う。
 嵐導は彼女の視線を追うと、無線を取り出した。
「こちら二号車。”団体さん”ご到着だ。派手に出迎えよう」
 言い終わる頃には、敵の全体像が双眼鏡を使わずとも目に入るようになっていた。
 地を埋め尽くすようなキメラの群れが、怒涛の如く土煙を上げて迫る。
『プレアデスの連中も、こちらへ向かっているそうだ』
 ジェフからの無線で、今まで別ルートでの陽動を行っていたラウディ=ジョージ(gz0099)率いる部隊も援護に来ると伝えられた。
 合流までの時間は、凡そ十分。
 キメラの群れもまた、こちらの輸送部隊を視認したようだ。
 少しずつ併走する形へと角度を変えながら、車列を呑み込まんとする大波の如く押し寄せてくる。
「来い‥‥」
 弾頭矢を長弓へとつがえながら、嵐導が静かに呟いた。

●合流
 まるで黒い塊のようなバッファロー型キメラの群れ。
 その先端で、爆発が巻き起こった。嵐導の放った弾頭矢が弾けたのだ。
 爆発そのものによって、あるいは抉られた地面や倒れた仲間の体に足を取られ、少なくない数のキメラが視界から消え去る。
「この状況‥‥点で当てる自信は無いが、面でならいけるか?」
 ともすれば震えそうになる腕を押さえつつ、嵐導は次の弾頭矢をつがえる。
 大規模作戦とは違った緊張感に、彼は少しだけ戸惑う。
「取りこぼしは任せろ、九十九」
 その緊張を読み取ったか、アキラが声をかけた。
 爆発を掻い潜ったハーピーが、二号車をすり抜けんと飛ぶ。
 小気味良いリズムを刻みながら、アキラのサブマシンガンが火を噴いた。
 翼をもぎ取られたハーピーは耳障りな叫び声を上げて地に落ち、見る間に小さくなる。
「数を減らしてくれれば、それでいい」
「任せろ」
 手練が後ろを固めている。それを再認識するだけで、嵐導の心は静まった。
 先程より少しだけ強い口調で返すと、手中の長弓に力を込める。
「‥‥ちょっと多すぎやしないです? これ」
 後部ハッチでは、レンが呆れたような口調でキメラの群れを眺めていた。
「やるしかないさ! 攻撃は一任する、どっちに行けばいい!」
 その声を聞いた源次が、前方を見据えたまま声を張り上げる。
「そのまま直進だ! 群れの動きが変わってきている。奴ら、私らと併走するつもりらしい!」
 応じてアキラが源次へ伝え、ついでサブマシンガンの咆哮が響く。
 ハーピーとバッファロー型キメラの混成でなる敵の群れは、空と陸とで群れを二分する構えを見せていた。
 先行するハーピーを逐次撃ち落しながら、アキラが舌打ちをする。
 全てを撃ち落せるわけではないのだ。
「一号車もいる! 気負うなよ!」
「‥‥わかっているさ!」
「先頭さえ潰せば‥‥ふっ!」
 ようやく射程内へと入ったバッファロー型キメラの群れへと、レンが弾頭矢を放つ。
 折りよく嵐導の放った弾頭矢と同時に着弾したそれは、地を行くキメラへと牙を向く。
 轟音と共に、またもその数を減らす敵。
 だが、絶対数の違いは如何ともし難い。特に、空を行くハーピーは少しずつ二号車の防衛線を抜けていった。

「来た来た」
 視界にハーピーを捉えた薫が、スコーピオンで狙いを定める。
 トレーラーの運転席を狙う構えを見せたハーピーに、吸い込まれるように二発の弾丸が命中した。
 赤い輝きを貫く衝撃に、キメラはバランスを崩して地に落ち――トレーラーの何輪ものタイヤに轢かれ、車体の重みも加わって絶命した。
「うわぁ、えぐ‥‥」
 同様にスコーピオンで狙っていた拓人が嫌そうな顔をする。
 だが、そんなことで気落ちする暇は無い。
「隙はこちらでつくります。だから、トドメは任せますよ!」
 気を取り直して自動小銃を構えなおし、続けて来るキメラへと照準を合わせる。
 最初の一匹を皮切りに、目に見えて飛来するハーピーの数は増え始めていた。
 トレーラーの運転席は予想以上に頑丈な様であるが、視界を塞がれるのは拙い。
「今まで‥‥キメラを避けられたのは‥‥プレアデス隊のお陰、だからね‥‥。こちらも‥‥やれるだけやろう‥‥」
 拓人の射撃で隙を見せたハーピーの眉間を、克がS−01で撃ち抜く。
(「‥‥あの人、苦手なんだよなぁ」)
 薫は克の言葉でラウディを思い出し、少しだけ顔をしかめた。
 今回の彼らの働きは十分に理解しているつもりだが、苦手意識というものはそれで払拭されるものでは無いのだろう。
「増えてきましたね‥‥」
 一号車のハンドルを握る有希は、ちらりとサイドミラーをみやると唇を噛んだ。
 角度的に二号車の様子は窺い辛いが、この様子では向こうは本格的にキメラの群れと戦っているのだろう、と思われた。
 と、数匹のハーピーが、先に邪魔者を片付けるつもりか、装甲車へと飛来する。
「鳥撃ちには散弾銃って相場が決まってるんだ、よ!」
 すかさず薫のショットガン20が弾丸をばら撒いた。
 体勢を崩したそこへ拓人のスコーピオンが食らい付き、一匹が脱落する。
「抜かせない‥‥」
 それでも迫る残りのハーピーへ、克が月詠を閃かせた。
 翼を切り裂かれたキメラが地面へと落ち、そのまま小さくなっていく。
 だが、そんな三人の防御をすり抜けて、一匹が運転席へと取り付いた。
「とりついたか。んには鉛の贈物!」
 有希は片手でS−01を取り出すと、窓越しにハーピーへと発砲する。
 至近で放たれた弾丸はキメラを吹き飛ばしたが、短時間とはいえ片手運転。しかもキメラに気を取られていたところに発砲の衝撃。
 自然、車はぶれてしまう。
「うわっと!?」
 大きく揺れた車から誰も落ちなかったのは、命綱の賜物という他は無い。
「守原君、頼むよー!」
「も、申し訳なか!」
 幸いにも大した被害も無く、四人は改めてキメラの排除を再開した。

「ああもう、次から次へと!」
 鼻息も荒々しく迫るバッファロー型キメラへと、レンは悪態をついた。
 無理も無い。
 弾頭矢は既に無くなっているが、群れはまだまだ健在なのだ。
 とはいえ、その数は初めに比べれば目に見えて減っていることは確かである。
「つっても、減ってこれかよ! って話なんだよな」
「ぼやくな。やるしかない」
 サブマシンガンが唸り、矢が風を切る度に敵の数は減る。
 だが、それを乗り越えて押し寄せる黒い波。
「しっかり掴まってろよ‥‥ッ!」
 源次は叫んで、思い切った動きを見せた。
 大きく右に車をずらすと同時に減速させる。速度を保っているキメラとの間合いは、一気につまる。
 そこへ、左へと思いっきりハンドルを切って割り込んだ。
 たたらを踏むように先頭を行くキメラ数体が急減速し、後ろから追突される。大規模な玉突き事故が発生した。
「急ブレーキは事故の元ってな!」
「わお!」
 レンが感嘆の声を上げ、掴んでいた手すりから手を放す。
 その目には、地上の惨状に目もくれずに飛ぶハーピー。
「これ以上抜かせるわけには行きませんよ!」
 少女は叫ぶと、目にも留まらぬ速さで妖刀を抜き放つ。
 SESが呼応して出力が最大となり、そのエネルギーを纏った鬼蛍が空気を切り裂いてキメラを襲った。
 ソニックブーム。
 一挙に三匹のハーピーが、翼を切り落とされて地上に落ちる。
「このままなら、何とかなりそうだな‥‥」
 矢を放ちながら、嵐導が呟いた。
 その根拠は、数十秒後に明らかとなる。
 キメラの群れの更に後方から、土煙を上げて迫る車列が現れたのだ。 

●突破
『積荷は無事のようだな? 上出来だ』
 ラウディからの通信が入り、一号車もプレアデスの合流を知った。
「間に合ってくれたんだ!」
 自動小銃を撃ちながら、拓人が嬉しそうな声を上げる。
 悪い意味で膠着しかけた状況を打破するに足る、十分な知らせだったろう。
 バッファロー型こそ二号車が押し留めていたものの、ハーピーはそうもいかなかった。
 トレーラーの視界を確保することと、駆動部を守ることとで手一杯になってしまっていたのだ。
「そいぎな、反撃ば開始!」
「よーし! ここまで来たなら、全部叩き落としてやる!」
 有希の気合に薫も反応する。
 士気の上がった能力者は、時に目覚しい働きを見せるものだ。
 一号車に乗る克、薫、拓人の都合四丁のスコーピオンが一気に弾丸を放つ。
 トレーラーに群がるハーピーが次々と弾丸の餌食となり、あるいは地に落ちて巨大トレーラーのタイヤに巻き込まれていった。
「正念場‥‥だね‥‥」
 トレーラーの駆動部を狙うハーピーを的確に撃ち落し、克はS−01をリロードする。
 硝煙と共にマフラーが靡いた。

「‥‥こりゃすげぇ」
 一方、二号車では呆れたように嵐導が呟いていた。
 プレアデスの取った戦法が、余りに大胆だったためだ。
 装甲車ごとキメラの群れに強引に突っ込むと、恐らくグラップラーだろう二人が何と車外へと飛び出した。
 受身を取ったかと思った瞬間、その姿が掻き消える。瞬天速だろう。
 一気に先頭のバッファロー型まで辿り着いたと見るや、その手の爪で数体の喉を切り裂く。
 倒れたキメラが後ろを巻き込み、その間を縫って走ってきた装甲車へと再び乗り込む二人。
 その間にも、車に残ったメンバーが次々とハーピーを撃ち落としていく。
「無茶をするものだな」
 アキラが無感情に言う。
 彼女ならば、同じことをやって出来ないことは無いだろう。
 とはいえ、力任せといって差し支えない戦法は正に強行突破。ハイリスク・ハイリターンである。
「プレアデス‥‥昴、六連星、か。‥‥戦場で光り輝く連中なのは確かな様だな」
 苦笑しながら源次がハンドルを切る。ハーピーの進路に割り込んだ二号車から弾丸がばら撒かれ、三匹のキメラが地に落ちた。
 そこへ、前方に抜けたキメラを片付けた一号車が合流する。
 形勢は最早、揺るぎないものとなっていた。



「助かりました」
 キメラの群れを突破した後、有希がラウディへと無線を送った。
『思ったよりも数は少なくなっていた。これは紛れも無く、君らの成果だ』
「あれ?」
 意外だ、と薫は思った。
 もう少し傍若無人の印象があったのだが。
『まぁ、もっとやりようがあったとは思うがな。あの様子ならば俺たちを待たずとも、十分に突破できたはずだ』
 前言撤回。
 苦労も知らずによく言うよ、と小さく呟いた薫を、克がまぁまぁと宥める。
「あ、あれがデトロイトだね!」
 窓から外を見ていた拓人が声を上げる。
 釣られて見れば、前方にデトロイトの都市‥‥紛れも無く人類側の勢力圏が広がっている。
「ここまで来れば、もう大丈夫か」
 アキラがやれやれと伸びをする。自己主張するその胸を見やり、レンが自らの胸へと視線を落とした。
 ため息がこぼれる。
 そんな少女の肩を、嵐導がぽんと叩いた。
「な、何で肩を叩くんです!?」
 わかっているさ、とでも言うような笑みを浮かべて、嵐導は首を振る。
 誤解だと言い張るレンだが、言えば言う程信憑性が薄れるものであって。
「‥‥何をやっているんだか」
 呆れた様に、アキラは視線を併走するプレアデスへと移した。
 先程は気付かなかったが、どの車もあちこちに傷を負っている。
 激戦の程が伺え、ラウディの口調とは裏腹に、彼らもまた限界が近かったのだと察する。
 と、聞きなれたエンジン音が響いた。
「おっと、ようやくUPC軍のお出ましだ」
 源次が窓から身を乗り出して空を仰ぐ。
 バイパーとS−01からなるKVの編隊が、車列の上空を旋回していた。
「完成した弐番艦の下で戦える日はそう遠くない‥‥か?」
 視線をトレーラーへと戻しつつ、源次はまだ見ぬ騎士へと思いを馳せた。

 輸送部隊はデトロイトで一旦補給を受けた後、再び出発した。
 翌日、彼らは無事にオタワへと到着することとなる。