タイトル:戦場に轟く声マスター:左月一車

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/31 02:14

●オープニング本文


「良く集まってくれた、私は相沢咲夜と言う‥‥階級は少尉だ。まずはこれを見て欲しい」
 均整の取れたモデルのような体躯の女性士官は自らの名を名乗ると、会議室に集まった傭兵達を見渡し、プロジェクターに映像を投影する。
「先日、我が軍の陣地が1体のエースゴーレムにより突破された、その際の映像だ」
 プロジェクターに投影されたのは、1体のゴーレムだ。通常型よりも全体的に無骨でよりマッシヴなスタイルをしている。
 奇妙な事に、このゴーレムは一見非武装に見えた。通常のゴーレムはその腕にKV用の武装を模した兵器を所持している事が多いが、このゴーレムは何も所持していない。
 やがて、このゴーレムに対し陣地からの砲撃が開始されたが、その弾雨の中をゴーレムは悠然と進む。フォースフィールドを貫通した弾もそれなりにあるようだが、その損害は大きいもので装甲表面を少しへこませる程度でしかない。
「‥‥この砲撃は未改造のS−01改3機の突撃ガトリング砲による集中砲火だ」
 大した打撃を与えていない事に気づいたのか、S−01のうち1機がビームコーティングアクスを構えゴーレムへと接近戦を仕掛ける。
 その一撃を左腕一つで受け止めると、ゴーレムは空いた片腕でS−01を殴打する。
 わずか一撃で、S−01は装甲を弾き飛ばされ、フレームを歪ませ、数瞬の後爆発四散する。
 その爆炎を背景に、ゴーレムは両腕を構えると、その腕を撃ち出した。
 突然の事に残りの2機が対応できず、直撃を食らうものの何とか持ちこたえ反撃をしようと武器を構えるが、後方から再度飛来してきたゴーレムの腕に機体を貫かれ、四散した。

「以上だ、防衛隊のKVが蹴散らされてはこちらに勝ち目はない。陣地はこのゴーレムの大型プロトン砲一発で吹き飛んだ」
「相当手強いみたいだが、何か弱点とかは無いのか?」
「強いて言えば、このゴーレムは非常に鈍重だ。ほとんど回避をするつもりもないようだが‥‥ああ、それと武装使用前に何か武器の名前を叫ぶようだ」
「‥‥‥‥は?」
 思わず傭兵が聞き返した。
 エース級ゴーレムは有人機だが、武器の名前を叫ぶような奴が居るとは完全に予想外だ。
「だから武器の名前を叫ぶんだ、こうジャパニメーションのように、ファントォォォムナックルゥゥゥゥ! とかブレストォォインッフェルノォォォォォォ! とか」
 相沢少尉はやたら気合を入れて叫ぶ。もしかしたらそういうのが好きなのかもしれない。
「‥‥‥‥は?」
 傭兵達はノリが余りよくなかった。というか何故そこで気合が入るとか心の中でツッコミを入れた者もいるかもしれない。
「と、とにかく、傭兵諸君にはこのゴーレムの撃破を要請する。資料は配布したとおりだ」
 相沢少尉は恥ずかしくなったのか頬を赤く染めると、会議室を退出した。

●参加者一覧

時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
ジュエル・ヴァレンタイン(ga1634
28歳・♂・GD
南部 祐希(ga4390
28歳・♀・SF
月神陽子(ga5549
18歳・♀・GD
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
玖堂 暁恒(ga6985
29歳・♂・PN
シャーリィ・アッシュ(gb1884
21歳・♀・HD
如月・菫(gb1886
18歳・♀・HD

●リプレイ本文

 傭兵達は作戦を練った後、各々敵であるエースゴーレムに対する意見を述べた。
 その際の各人の感想を並べると次の通りになる。

 時任 絃也(ga0983)「えらく暑苦しい敵だな、しかし侮れる敵ではないのも事実、性根を入れんとな」
 ジュエル ヴァレンタイン(ga1634)「バグアも夏か‥‥まあこれ程までに自己主張が強いパイロット、ちょいとツラを見てみたいね」
 南部 祐希(ga4390)「随分と‥‥変わった相手ですね。まあしかし、ゴーレムには変わりない。いつも通り、相手をしましょう」
 月神陽子(ga5549)「個人的にこういう方は嫌いではありませんわ。敵で無ければ、笑って見ていられましたのに」
 ソード(ga6675)「なんというか‥‥今回は変わった敵が相手のようですね。こういう相手は嫌いではないですが、こちらのペースを乱されないように気をつけて戦うとしましょうか」
 玖堂 暁恒(ga6985)「また‥‥面白ぇのが来やがった‥‥が‥‥出来りゃ‥‥関わりたくは‥‥無ぇタイプだよ‥‥」
 シャーリィ・アッシュ(gb1884)「装甲の塊相手に長期戦はしたくないです。できるだけ短時間で決着をつけるのが望ましいですね」
 如月・菫(gb1886)「それにしても、何故、大声で叫ぶのでしょう。相手に攻撃を悟られて避けられる可能性もあるでしょうに」

 概ね、変な敵だという認識である。
 まぁ今までのバグアには居ないタイプである事は間違いない。


 敵と接触したポイントは、事前の情報どおり特に目を引くようなものの無い無人の野だった。
 若干の起伏はあるが、遮蔽物になるほどでもなく疎らに樹木が生えてはいるがそれも身を隠せるほどのものではない。
 3チームに分かれた傭兵達の中で、最も最初に攻撃を開始したのは長射程武器を搭載した月神の駆る真紅の塗装を施されたF−104改バイパーだ。
 P−120mm対空砲が火を噴く。ロシアのギガコーポレーションが開発した大口径の対空砲だが、陸戦への転用も不可能ではない。
 とはいえ、有効射程ギリギリから放たれた砲弾はゴーレムを逸れて着弾する。元から命中を期待したものではなく注意を引き付けるためのものだ。
 傭兵達の布陣は、中央部に囮として月神機とジュエル機、その左翼に時任機、ソード機、シャーリィ機、右翼に南部機、玖堂機、如月機を配したものだ。囮に攻撃が集中している間に両翼を前進させ、包囲陣形を完成させようというものである。
 対空砲を放ちながら前進する月神機だが彼我の距離が縮まるうちに砲撃が命中し始める。
 しかし敵機は直撃弾を受けても機体を揺るがせもせず前進を続ける。
「その程度の攻撃、この機体に傷一つつける事はできん! くらえっ! ファントォォォムナックル!」
 やたらと野太い声がゴーレムから放たれると同時に、ゴーレムの両肘から閃光が走り、拳が凄まじい速度で月神機とジュエル機に向かう。
 声に応じて月神機はセミーサキュアラーを構え防御体勢を取り、ジュエル機もまた、あえて避けようとはしない。
 凄まじい衝撃がコクピットを揺さぶる中でジュエルは計器に示されたダメージを読み取る。
「損傷率15%‥‥けっこう効くぜ‥‥」
 機体の改造に加え装甲強化系のアクセサリを積んだ重装甲の雷電であるからこその損傷だが、そのジュエルの雷電より遥かに高い装甲を誇る月神のバイパーにはそれほど大きな傷は入っていないようだ。
「普段は聞きませんが、今回は空気を読んで問いましょう。そこの黒いゴーレム、貴方の名前と機体名を答えなさい!!」
「俺の名前だと? ‥‥木島とでも呼ぶがいい。そしてこの機体はアイアンフォートレスだ。貴様は?」
「わたくしは月神陽子、機体の赤い塗装は伊達ではありません。貴方ならこの意味を、心で理解しなさい!!」
 月神機は言葉と同時に機槍ロンゴミニアトを構えると、機体それ自体を敵機に叩きつけるかの用に急加速し槍の穂先を突き入れる。
 元より回避を想定していなかったのか、その攻撃を正面から受け止めたアイアンフォートレスの右腕に突き刺さった穂先は液体火薬を放出し点火、右腕に小爆発を生じさせる。
「バイザァァァビィィィィムゥゥゥゥ!」
 並のゴーレムやワームであれば一撃で大破するであろう一撃にも耐え切ったアイアンフォートレスは、両翼のKV隊が接近しつつある事を確認すると、頭部を270度近く旋回させながらフェザー砲を放つ。
「ちっ!?」
 その攻撃の軌跡を見切った南部は機体そのもののブースターに加え、高出力ブースター、緊急用ブースターを全て全開にし、機体を跳躍させる。その胴体のあった空間をフェザー砲の光線が駆け抜ける。
 回避に成功したのは南部機のみで他の機体はいずれも攻撃を完全に回避しきれずダメージを負うが、敵機を基点にした傭兵達の包囲陣がこの時点で完成する。
「シャーリィさん、いきますよ」
「一騎打ちを挑むもよいかと思ったが‥‥さすがにこの装甲お化けに挑むのは気が引けるな‥‥」
 騎士の末裔であるシャーリィは、ソードの声に応じて、翔幻の右腕に装備したヒートディフェンダーを敵機に一閃するとその場を離脱。シャーリィ機が離脱した直後にディアブロ‥‥高い攻撃力を誇る悪魔の名を冠する機体を操るソードがロンゴミニアトを突き入れる。シャーリィ機の斬撃は装甲表面に僅かに損傷を与えたに留まり、ソードの攻撃もまた装甲を一部破壊するレベルで内部にまでダメージが通っている様子はない。鉄の要塞の名は伊達ではないようだ。
「ロートル機で敵のエース機相手に何処までやれるか、腕の見せどころか」
 既に旧式化が否めないR−01改を駆る時任は、やや離れた位置から敵の間接部を狙い高分子レーザーによる射撃を行うが、移動する機体の間接部というピンポイントな箇所を狙うのは非常に困難だ。狙いは逸れたが、アイアンフォートレスの胸部装甲を僅かに削り取る。
「一発のみですが…威力は折り紙付きです!」
 南部機は武装ラックから1m程の金属筒を引き抜く。引き抜かれた金属筒にKVの腕からエネルギーが流れ込むと光の刃が現れる。更にその状態で南部機はディアブロの機体特殊能力であるアグレッシブフォースを発動する。
 光の刃が一回り大型化し、迸る閃光を南部機はアイアンフォートレスに叩きつける。光の刃が腰部装甲を切り裂くが致命的なダメージには至らない。
「雫も打ち続ければ岩をも穿つ! それが激流ならば? 何時まで耐えられるか見せて貰うぞ!!」
 玖堂のディアブロから放たれた高分子レーザーだが、やはり時任機同様に装甲表面を僅かに傷つけるに留まる‥‥しかし、玖堂の言葉にある通り、小さな損傷も積み重ねる事が出来れば、それは大きな損傷へとつながる。
「‥‥今です!」 
 敵機が反撃の動きを示した瞬間、待機していた如月機が煙幕銃を撃つ。
 煙幕弾は着弾したその時から周囲に膨大な煙を噴出し、アイアンフォートレスの視覚を奪う。重力センサーなど現在の地球の科学力を大きく上回るバグア兵器だが、視界が無い状態では高速で動き回る機体を捕捉する事は困難になる。
 木島は舌打ちをすると慣性制御を起動して機体を横に滑らせ煙幕の有効範囲から抜け出す。
 その正面には玖堂のディアブロと如月の翔幻が居た。
「悪の地球人め、正義の鉄拳を受けてみろ! うぉぉぉぉ!」
 外部スピーカーを通して絶叫を上げた木島は目の前の如月機を右腕で殴りつけ、若干離れた位置で高分子レーザーを構える玖堂機にファントムナックルを射出する。
 如月は記録映像から読み取った相手の機体のクセを考慮に入れた回避機動を取りつつ、機体特殊能力の幻霧発生装置を起動させ回避を試みるが僅かに反応が遅れ機体の左腕に被弾。機械部品を撒き散らし機体の左腕が吹き飛ばされるが機体そのものには大きな損傷は無い。それでも左腕を失った事により戦闘能力そのものは低下したが、今回の如月はほとんど煙幕発生役として機体の装備を整えていた。武装といえるものは機体胸部に搭載されている20mmバルカン一つ、片腕が機能しなくなってもそれほど大きな問題はない。
 玖堂の駆るディアブロはその派手な攻撃力に目を奪われがちであるが、機体そのものの回避性能や装甲などに関して言えば決して優れているとは言えない。玖堂自身もその事を理解しており、若干の改造を加えてはいたが敵の攻撃を回避しきれない事に気付き、メトロニウムシールドで機体をカバーする。
 凄まじい衝撃に一瞬意識を持っていかれそうになる。首を振ってから機体のコンソールに示されたダメージに目を向ける。
「損傷率52%だと‥‥なんつう‥‥威力だよ‥‥如月、そっちは?」
「こちらは損傷率60%を超えました、あと一撃貰うと危険ですね」
 フェザー砲の一撃を受けていたとはいえ、玖堂機と如月機は2度の被弾で相当のダメージを受けていたが、玖堂と如月に退く気はない。
 木島が再度の攻撃を2機に加えようとした瞬間、煙幕を突き破って1機のKVがその手にした槍をアイアンフォートレスの頭部へと突き入れる。
 直後に頭部で小爆発を引き起こす。爆発により頭部が若干砕け、亀裂からスパークが飛ぶ。
「くっ、バイザービームがっ!?」
 頭部の損傷でフェザー砲の機能が一部損傷したのか、外部スピーカーを通じて律儀に木島の声が響く。
 月神機が煙幕を突き抜けてきたために一瞬、月神機の軌跡上から煙幕が消える。その僅かな合間を狙いジュエル機がヘビーガトリング砲を放つ。
 今までは装甲表面を弾くのみだった攻撃だが、度重なるロンゴミニアトの攻撃で装甲を大きく削られているのか、大量に放たれた弾薬の僅かが装甲を貫き、アイアンフォートレスの機体表面に小爆発を引き起こす。
 ソード機とシャーリィ機が、小爆発で僅かに揺らいだ隙を突く様に死角から槍の刺突と剣の斬撃を叩き込む。
「‥‥こちらですよデカブツ。余り余所見をしすぎると痛い目を見ます」
 更に玖堂機と如月機を庇うように移動した南部機が挑発をしつつ、その手にしたロンゴミニアトを突き刺す。
 その隙にダメージの高い如月機は煙幕の反対側へと移動し、玖堂機は高分子レーザーを撃ちながら機体を射撃兵装の限界射程まで後退させる。
「この程度で負けるものかっ、ファントォォォォムナックルゥゥゥ!」 
 アイアンフォートレスが集中攻撃をしのぎ、その両腕を射出する。
 目標となったのは時任機とソード機だ。時任機は煙幕を大きく迂回してアイアンフォートレスから充分に距離を取り、敵機の動きを観察しながら射撃の機会を図っていたが、飛来した腕の回避が間に合わず直撃する。
 ソード機もまた、近距離に居たためか反応が間に合わず直撃を食らう。
「ぐあっ!?」
 時任のR−01改は強化しているとはいえ、防御性能は低い、直撃弾にコンソールのダメージを示すゲージが一気に赤く染まる。ソード機もまた、月神の駆るバイパーや雷電のような堅牢な防御力からは程遠い、機体に深刻なダメージを受ける。
 とはいえ2機ともまだ撃墜には至っていない。
 フェザー砲に損傷を受けたアイアンフォートレスだが、撃つ事そのものは可能らしい、だが正確な照準は取れていないようで、回避運動を取るまでも無くほとんどの機体は回避できていたが、体勢を崩していたソード機と時任機は回避が間に合わなかった。
 時任機の装甲が弾け飛びフェザー砲の火線が燃料タンクを貫く。
「‥‥ここまでかっ!」
 時任は機体の誘爆に巻き込まれる前に機体から脱出する。
 ソード機は撃墜にまでは至らないが、残り耐久力が10%を切っていた。
「これ以上はきついか…ソード後退します」
 ソード機はスナイパーライフルRに装備を持ち替え、後退を開始する。直接戦闘ではなく支援射撃に徹するためだ。
 月神が脚を止めて槍を連続で繰り出すが、攻撃に集中しすぎた為かアイアンフォートレスの腕を回避する事が出来ず機体を固定される。
「‥‥しまった!? 離しなさい!」
 月神の目の前で胸部装甲が展開する。アイアンフォートレス最強の武装と目されている大型プロトン砲だ。
 他の機体が救出の為に後方から攻撃を加えるものの、かなりのダメージを受けてはいるもの頑強な装甲は健在で撃墜には至らない。
「くらえっ! ブレストォォォォォインフェルノォォォォ!!」
 プロトン砲の砲口に光が収束し月神機を貫く。
 コクピットが激震に揺れるが、装甲の薄いKVであれば一撃で吹き飛んでもおかしくない破壊力に、KVとしては最高レベルの耐久力を誇る月神のバイパーは耐え切った。
 月神は損害状況をコンソールで確認する。内部機構に深刻な損傷は無い。
「まだまだいけますわね」

 戦闘は苛烈を極めた。
 時任機に続き、後退中のソード機がファントムナックルの直撃を受け、脚部を完全に吹き飛ばされる。
「ここまでか‥‥ソード、脱出します」
 風防を開け外に出たソードは戦闘に巻き込まれぬよう急いでその場から離脱する、その際に時任と合流し万一にでもキメラに襲われぬよう周囲を警戒する。
 深刻なダメージを追っていた如月機も煙幕や幻霧発生装置で回避に専念していたが、ファントムナックルを回避しきれなかった。
 機体が誘爆発を起こす前に、如月はAU−KVを纏ったまま離脱する。
 離脱直後にAU−KVをパワードスーツからバイク形態に変形させ、戦場を高速で離脱し時任と合流する。
「AU−KVのバイク形態を見たのは初めてですね」
 ソードが如月に声をかける。
「撃墜されちゃいましたね」
「仕方ないさ、相手の方が強かった‥‥が、そろそろ決着がつきそうだな」
 バイクに乗ったまま残骸となった自機を振り返り残念そうに呟く如月に答えた時任は戦場に目を向けた。

「断ち祓え! 草薙!!!」
 玖堂が切り札である雪村にアグレッシブフォースを乗せる。南部機が初手で放ったのと同様に極大化した光剣がアイアンフォートレスの装甲を切り裂く。
 後方から接近した南部機がロンゴミニアトを突き刺し敵機の動きを止める。
 背部を貫かれ一時的に動きを止めた敵機に対して月神はブースト空戦スタビライザーを起動させる。
「さぁ、この技を受けて消し飛びなさい……未完成版・ヤマタノオロチ!!」
 槍を炎を吐く蛇の首に見立てた5連撃がアイアンフォートレスの装甲を次々に弾けさせ、最後の突きが機体中枢部に突き刺さり爆発する。
「くっ‥‥まさかこの俺が負けるとは‥‥だが、次は負けんぞ」
 直後にアイアンフォートレスの一部が展開し周囲に煙を噴出する。一時的に視界を妨げられ、その隙に超小型の赤いヘルメットワームが煙を突き破り空の彼方へと高速で消えていく。
「逃げたか‥‥」
 シャーリィとジュエルが射撃するが既に射程外だ、機体の追撃を断念した彼等の横で、アイアンフォートレスは木っ端微塵に爆散した。