タイトル:天に吼える龍マスター:左月一車

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/05/22 06:34

●オープニング本文


 幻龍の発表以来、奉天社から新たなKVの情報が発表される事はなかった。
 一時、新型の開発を中止したのではないかとも噂されたが、公表される資金の流れはKV開発関連の予算額が削れている事を意味していた。
 市場では、これ以上の「新型」の開発を中断したのではないかという噂も流れていた。


「……一応最終調整は終了したけれど、実地テストまでは少し時間があるわね。この辺に敵艦が居るらしいけれど、上手く出てきてくれるかしらね?」
 仮設モニターや、操作機器、注意事項のメモが多数張りつけられたコクピット内で診断プログラムからの情報を確認していた少女は、機器類に触れないよう慣れた様子でグリップを握ると体を宙へ躍らせた。
 そのまま慣性の法則に従って宙を漂った後に壁を蹴り、反動を利用して格納庫床面に降り立つと磁力靴を起動し体が反動で流されぬよう固定する。
 艦の護衛の名目の依頼で同乗している傭兵側の機体とは隔壁で仕切られている為、この格納庫に固定されている機体はこれ1機。
 しかし、容積的にはKV2〜3機分に達するだろうか。
 そのサイズもさる事ながら、機体側面に大型の砲が取り付けられているのがこの機体の最大の特徴と言えるだろう。
 砲身の口径や基部からして通常のKVに搭載されるような大口径砲と比になる大きさではない。艦砲、それもエクスカリバー級主砲クラスの砲身だ。
 XHA−021、試作機を示すXナンバーを与えられたこの機体が、奉天社が極秘裏に開発した局地戦用対艦大型KVである。
 バグア大型艦に通常のKV兵装で有効打を与えられない現状に対しての、通常兵装でダメージを与えられないのなら艦船主砲級の砲を搭載すればいいという至極単純極まりない解答で建造された機体だ。
 この機体が今まで公表されなかったのは、敵艦船のみならずそれら巨大兵器に対しての決戦兵器として開発されていた為である。
 試作機建造の予算は何かを作っていると言う事を情報機関やバグア側に悟られない為に、いわゆる大和方式と呼ばれる方法で組まれていた。
 実稼働の為に、チューブやケーブルから燃料や電気供給が行われている瞬間、艦内に警報が走る。

「敵艦なおも此方に接近中」
「交戦距離まで現在の速度を維持した場合、1000秒」
 オペレーターからの淡々とした報告を受け、艦長は一瞬の思案の後艦内電話に手を伸ばす。
「……艦長です。いけますか?」
『準備に時間を要します、そうですね最短で20分程度は頂く事になるかと』
「了解しました、では出撃準備をお願いします」
 受話器を戻すと、敵位置を自艦位置を表示する正面モニターに視線を向ける。
「敵艦から小型機8機射出確認、速度、反応ともに本星型ヘルメットワーム。全て無人機と推定されます」
「では、此方も後退しつつ護衛機を出すとしよう」

 艦内ブリーフィングルームでは集めらた傭兵に対して今回の作戦内容が説明されていた。
「依頼内容でも説明しましたが、本艦は最低限の武装だけ施した哨戒艦です。なるべく本艦に敵を近づけずに敵ヘルメットワームを撃退するのが主任務となります。作戦宙域には障害となるようなものは確認されていません」
 モニター上に敵位置と接触予定空域を示し、女性士官が言葉を続ける。
「敵大型艦に対しては、此方の秘密兵器で対応する。詳細は規約により話せないが、少なくともG5弾頭級の破壊力は保障されています。ただし、準備に時間を要します。可能なら準備が終わるまでにヘルメットワームの撃墜をお願いします。以上、特に質問が無ければ出撃をお願いします」

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
レイミア(gb4209
20歳・♀・ER
ビリティス・カニンガム(gc6900
10歳・♀・AA
村雨 紫狼(gc7632
27歳・♂・AA

●リプレイ本文

 愛機のコクピットで計器上に何ら問題が無い事を確認、乾 幸香(ga8460)はヘルメットのバイザーを降ろす。
 キーを捻り、主ジェネレータを起動。定常出力まで上昇した事を確認し、電力供給を外部ケーブルから機体ジェネレータへと切り替える。
「秘密兵器の性能がどれくらいのモノか分かりませんけど、ともかく時間を稼がなくちゃならないのは確かですね。全力を尽くさせて貰いますね」
 そう呟くと、モニター上面を確認。
 艦のハッチが徐々に展開し、隙間から漆黒の宇宙が見える。
 地上から見た宇宙空間は星が瞬く空間だが、太陽光が強烈すぎる為モニター上には漆黒の空間が広がっているようにしか見えない。
 乾が側面に目を向けると、レイミア(gb4209)が駆るピュアホワイト――ソリアデウザ――からも外部ケーブルが輩出されるのが見えた。
 この艦は中心軸上下左右に2機格納のKV格納庫を備える為、他の機体は別の格納庫に搭載されている。
 レイミアも又、機体のサブモニタに表示される他機の準備状況を確認し、全機の発進体勢が整っている事やハッチが展開されている事、整備員が安全な距離まで後退している事を確認する。
 再度見落としが無いかチェックし、問題が無い事を確認してから僅かに弾くように姿勢制御スラスターを噴射する。
 1G環境下では機体が動くはずも無いが、現在の状況は無重力環境だ。僅かな推力を壁面に叩きつけ機体がふわりと浮上。
 専用の艦船であればカタパルトを利用する事もあるが、仮設的に設置された格納庫からの発進手順は全て機体を僅かな推力で浮かせてから艦船に影響の無い位置まで移動した後、主推進器を用いるという手だ。
 他の機体が格納庫から離脱し、ハッチが閉鎖されている事を確認したレイミアは、レーダーのスイッチを入れる。
 生身で浴びれば即死するような強烈な電磁波が機体から発振され、漆黒の空間を照らし出す。
 同時にピュアホワイトが備える複合ESM「ロータス・クイーン」が稼働し、レーダーが捉えたぼんやりとした反応に慣性制御による重力偏向による補正が加えられ、敵機の位置や移動速度、進行方向といった情報が表示される。
 レイミア機が得た情報は即座に至近の味方機へ回線を伝わり、戦闘宙域の味方機へデータリンクという形で共有される。
「任せておきな! 秘密兵器が出て来る前にHW全滅させてやんぜ!」
 データリンクによる空間の把握が終わると同時に、ビリティス・カニンガム(gc6900)がスラスターを全開に叩き込む。
 メタリックシルバーに塗装されたニェーバ――鏖殺大公テラドゥカス――に搭載された4基のG光線タービンエンジンが唸りを上げるかのように震え、推進炎を吐き出し機体が加速。
 ふわふわとした無重力の感覚が消失し、加速によるGがカニンガムの小柄な体をシートに押さえつける。
 カニンガムの隣を並走するように加速する機体は、村雨 紫狼(gc7632)のタマモ。彼とカニンガムは恋人だ。
 問題はカニンガム10歳、村雨27歳。愛に年の差は関係ないとはいえ‥‥10歳は色々まずいだろう。都知事が来るぞ。
「秘密兵器なあ〜どうせ極端なコンセプトの奇想兵器ロボだろ! ま、浪漫二ストの俺的にはそういう駄っ作機も嫌いじゃねーな」
「奉天機なら、それが仕様かもしれないね〜」
 村雨の言葉に応じるのはドクター・ウェスト(ga0241)。
 因みに、奉天の機体の半数以上が極端なコンセプトの上に成立した機体だ。必要な部分にのみ注力して、他の性能は一切を切り捨てる。
 ウェストが搭乗する天も莫大な装備重量と引き換えに、機体本体が備える攻撃力は低いという極端な性能を与えられた奉天製の機体だ。
「説明聞いた限りじゃ、G5弾頭クラスっつーかどーせ宇宙戦艦の砲台に手足くっつけてKV、とか言い張ってるアレなロボだよなーぜって〜」
「まぁ‥‥秘密兵器の性能がどれくらいのモノか分かりませんけど、ともかく時間を稼がなくちゃならないのは確かですね。全力を尽くさせて貰いますね」
 刻々と近づいてくるレーダー上の光点を見つめた乾の言葉に若干弛緩していた場の空気が締まる。
 会敵距離まで後20秒弱。
「月の恩寵を‥‥」
 彼方に見える大きな光。星々が瞬かぬ黒の空間の中で、青く輝く地球と、太陽、月の三者が輝いている。
 そして今、その月の裏側。自転と公転の影響からか太陽の光が届かぬ位置では12の敵施設を巡る戦いが繰り広げられている。
 終夜・無月(ga3084)は僅かに思いを寄せ、機体に響く電子音に目を前に向ける。
 接触5秒前。
 4、3、2。
 一定のリズムで低下するカウント、操縦棹とスロットルに僅かに力を込める。
 1、0。
 カウントが0に切り替わる刹那。スロットルをブーストの位置まで一気に叩き込む。
 直後に翼を翻し、簡易的な慣性制御の力を持ってHWから放たれた光芒を回避。
 敵機の数は8、味方の数は6。
 防衛線において、敵機の数が多い事は防ぐ側としては厳しい。敵の行動からレイミアはヴィジョンアイを起動。
 KV額のカメラアイ‥‥航空形態においては機首やや後方に設置されたカメラアイが強く輝く。同時に、機体コンピュータがエミタから与えられる重力反応を解析、より詳細な敵位置を弾き出す。
 その有効範囲は半径20kmに及び、後方にて状況を静観している敵艦の位置や動きも際立たせる。視界を遮るような遮蔽物があれば別だが、現状の空間には僅かな水素分子等の星間物質が漂うのみ。
 遮蔽になるようなものはほぼ存在しない。
「敵位置把握、予想進路解析。データ転送開始します」
 目の前の戦闘に意識を向けながらデータの解析を行う事は人間の処理速度では困難であり、ほぼ全ての処理は機体のコンピュータにて行われる。
 情報を一瞥したレイミアはデータ回線に情報を載せ、味方全機へと情報を送る。
 刹那、回避運動を続ける機体にプロトン砲が掠め、純白の塗装を焦がしていく。ヴィジョンアイ発動中はその情報処理に演算能力が大きく食われる為、反応が一時的に低下する為だ。
 サブモニターに表示されるダメージはほぼ無視できるレベル。強いてあげれば表面の高抵抗樹脂塗装が剥げた程度だ。
 カニンガムはウェポンセレクタをM−HM8Fにセットする。
 瞬時に表示されたミサイルシーカーがヘルメットワームの1機を捉え、ロックオンした事を意味する赤表示に切りかわる。
 弾かれたようにトリガーを引き、ミサイルを射出。
 宇宙空間では大気圏内のようにミサイルの軌道を目で捉える事は出来ないが、後部の噴射炎は見える。HWは機体を急激に横にスライドし、ミサイルの軌道から逃れるべく回避運動に入る。
 ミサイルのセンサーには、カニンガムの機体に転送されているレイミア機からの情報が入力されている、急激な横方向スライドを予測していたかのように方向転換したミサイルが側面からHWに近づき、爆発。
 直撃弾ではないが、十分にダメージを与える至近弾。
 爆発の衝撃で軌道をブレさせたHWの上面装甲に光の束が着弾。
 僅かの間を置いて、光が下面装甲を融解し突き抜けていく。終夜の機体がその側面を抜けていく。
 1機撃墜。
 会敵から僅か10秒の間でHWはその数を一つ減じる。プロトン砲の砲火を潜り抜けたウェストの機体が搭載去れたライフル「S−01」を発射。
 照準機構にS−01のブレスノウを基とした機構を備えたライフルが、僅かに照準を補正し弾丸を放つ。
 ライフリングによる回転エネルギーを得た弾丸が音速を超えた速度で突進し、ヘルメットワームの装甲を抉り取る。
「あんまり効いてないかね〜」
 右の推進器を吹かしてヘルメットの直前で左旋回。反撃として放たれたプロトン砲を回避してウェストが呟く。
 そのプロトン砲の光に沿うように、ロケットモーターの噴射炎を盛大に撒き散らし、超高速で突き進むミサイル。
 乾が放った高速ミサイル「イースクラ」。
 威力を犠牲に命中精度を高めたミサイルが6基連続してHWに迫る。長射程を活かし、遠距離から放たれながらも狙い過たず先頭のミサイルが着弾。
 衝撃に揺れる敵機が体勢を整える間もなく、連続して爆光が煌く。
 地球上なら大気の振動を感じそうな程の爆発だが、威力が犠牲となったミサイル故かダメージを与えてはいるものの撃墜には至っていない。
「今がチャンスです!」
「応ッ!」
 乾のハヤテ――アエーマ――の主翼に描かれた毒ガスを抱えたタヌキのイラストを横目に、村雨の機体が駆ける。
 ロケット砲の射出枠を敵機に合わせてトリガーを引く。
 ロックオン機能が無い為命中精度が低いとは言え、体勢を崩した敵機にその全てを回避する事は出来ない。
 8連装のランチャーから放たれたロケット弾はその半数以上をヘルメットワームへと着弾させる。ほぼ同時にレイミアの機体からも同様の攻撃が放たれ、次々に着弾。
 その攻撃がトドメになったのか、本星型が爆散する。

 戦況は傭兵側へと傾いた。
 先制打でKVにダメージを与えられず、一気に2機のHWが撃墜されたのだ。敵は数の上で勝っていた優位を失った形になる。
「んじゃいくぜマイワイフッ!」
「おう、マイダーリンッ!」
 敵機直前で人型形態に可変した村雨の機体は往年のロボットアニメの機体が如く、その頭部には目鼻口が備えられている。
 彼と連携を取るかのようにほぼ同時に機体を可変させたカニンガムのニエーバも同様だ。むしろカイゼル髭が付いている分、厳しい雰囲気がある。
「て何だそのロボォォッ!?」
「お揃いにしたかったのさ」
「え、俺のダイバードとお揃いにしたかったのビリィ?」
 そこはかとなくバカっぷる的な通信が戦域に響く。ここにしっと団が居れば間違いなく狙われるレベル。
 とはいえ目前の敵を前に、気を抜いているわけではない。
「行くぜ、魔導鳥神ダイバード! 天下無敵のスーパーロボット、ここに見参っ!!」
 見栄をきりながら二振りの刀を構え、眼前のヘルメットワームへと斬撃を叩き込む。
 それに続くように側面から接近したカニンガム機が機体に内蔵された機関砲群を猛烈な勢いで発砲しながら接近、回避軌道を弾丸で封じ、携えた正義の名を冠した刃を叩き込む。
 両機はすぐにその場を離脱。
 慣性のまま直進を続けたHWの装甲断裂面に沿うように小規模の爆発が連なり、連鎖反応したかのように火球へと変わる。
「我輩もいくかね〜」
 いささか間延びした口調のまま、ウェストは機体を操作。装甲の一部をパージする。HWの重力波レーダーではいきなり対称が二つに分離したように見えている。
 人工知能がどちらを攻撃するべきか一瞬の逡巡を見せた瞬間、片方から猛烈な勢いでミサイルが放たれる。
 優先攻撃対象の決定に処理を走らせていたHWは不意に放たれたミサイルに対応出来ず、直撃弾を多数受け姿勢を崩した。
「シンジェ〜ン〜!」
 その声と共に抜き放たれた重練機剣「星光」。ジェネレータ内蔵の大重量の剣の周囲に淡い光が灯る。超高出力極短距離レーザー発振器が作り出す光の刃。
 振り下ろされた刃は抵抗無くヘルメットワームの装甲へと食い込み、そして抜ける。一刀両断、まさにその言葉が当てはまる。
 その後方を狙ったHWは側面からの急速接近する敵反応に、回避軌道を選択した。
 ウェスト機の攻撃直後の隙を付く敵機に、乾が猛然と迫る。
 左手に携えたアサルトライフルを射撃しながら、人型形態へと可変しディフェンダーの刃を振りぬく。
 刃の衝撃を殺しきれなかったHWが弾かれたように吹き飛んでいき、急停止。慣性制御で姿勢を取り戻した刹那、レイミア機から降り注いだロケット弾が突き刺さり爆発した。


『敵小隊の全滅を確認しました』
「了解、此方も丁度準備が整った所だ」
 レイミアからの戦況報告に艦長が応じる。
 哨戒艦の格納庫の1基、傭兵が立ち入りを禁じられていた場所から巨大な機体がせり上がってくる。
 通常KVの2倍近い巨体に、側面肩部に取り付けられた大型砲。
 先に村雨が指摘したように、そのフォルムは砲台に近い。搭載されている大型砲は通常KVが搭載する砲の4倍近い。
「さあて露払いしただけのモンが見られるかな?」
『これより、敵艦を沈めます』
 村雨の言葉に大型KVはそう告げると、そのまま敵艦の射程内へと踏み込む。当然ながら敵艦が反応し、砲撃を放つ。その攻撃に対し、一切の回避機動を見せず戦艦の砲撃の直撃弾。
 大型機はその攻撃を何でもないことかのように受け止める。
 前面装甲表面に若干焼けた痕は残っているが、それだけだ。艦載砲の直撃を受けたにしては些細過ぎる損傷。
「アレは‥‥前面に装甲の集中配置、か?」
 終夜が機体フォルムを見て呟く。側面や背面は内部構造が露出している箇所があったりと脆弱に見えるが、正面は分厚い装甲に覆われている。
 その構造は正面からの撃ち合いしか意図していない構造とも言える。
「あ、追加の敵機が出てきました」
 レーダー上に追加された光点が、敵艦から新たに数機のヘルメットワームが発進した事を示す。正面からの砲撃では迫る機体を撃破出来ないと判断した敵艦が取った対抗策。
 その情報は大型機にも送られているが、構わずに直進した機体が一点で加速を停止。
 直後に肩部に背負われた大型砲が展開、砲身の隙間から燐光が溢れ、砲口に閃光が迸り始める。それと同時に機体正面から小型のミサイルのような何かが前方に飛んでいく。
 砲口先端から迸る光は尚も増大を続けている。
 じっくりと見れば、砲身が前後している事から既に幾度かの射撃を行っているようにも見える。その都度破壊的な閃光が輝きを増す。
『さて、これが実戦では初公開となりますね』
 声と同時に、蓄えられた光が無数の光条となって空間に解き放たれた。一つ一つが粒子加速砲の一撃に相当するような光が数十。
「おや、方向が違……曲がっただと〜!? す、凄いね〜」
 ウェストが呟いた瞬間、光の束はその向きを変え、HW群が居た場所を薙ぎ払う。放たれた弾丸が曲がった理由はどのようなものか、目を丸くしながらもウェストは思考する。
 レーダー上に示された光点が僅かの間を置いて爆発の光と共に消失し、更に光は弾かれたように進行方向を変え、正面から敵艦へと迫り、直後に爆発の光が閃く。
 幾度も小爆発の光が瞬いた直後、一際大規模な爆発。
『敵艦、及びHW群の撃墜確認。予定通りの出力ですね』
「素晴らしい‥‥これがあればバグアなぞ恐れるに足りん! 悉く鏖殺出来ようぞ!」
「マイワイフ、そのワカモトちっくなボイスチェンジャーはヤメロ」
 通信に流れた妙に貫禄のある男声を発したのが誰か、即座に察した村雨がツッコミを入れる。
「欲しい!我輩もアレが欲しいね〜!」
『発売予定は来月、ですね』
 ウェストの言葉に、大型機からは笑みを含んだ声でそう告げられた。