●リプレイ本文
奉天社による新型機開発の依頼は既に3度を数える。
機体方向性の確定から数値面の設定を終えた機体は、火力には乏しいものの、それ以外の能力に関しては平均的に高水準なものを備え、更に積載量に関しては群を抜く数値を誇る機体となっていた。
昨今の高性能を求めたが故に大重量化するKV火器の運用を目的とした機体であり、火力面の問題は装備する武器で補う事を前提としている。
奉天が得意とする防御面を捨てた高機動機ではなく、また廉価ではなく中堅価格帯であり、能力バランス的には量産機に位置づけられる機体である。
最も、そのクセの強さは健在ではあったが。
今回傭兵側からの意見を聞く事となったのは、こうした特性を有する機体にどのような機体特殊能力を積むかという事だ。
機体そのもののステータス以外に、機体特性を決定付けるものだ。
「完成形が見えてきましたね」
感慨深げに呟くのは井出 一真(
ga6977)。
彼は、機体特殊能力の一例として提示されていた追加装甲A‥‥正確には装甲を追加する訳ではなく、一部装甲を排除する機能ではあるが‥‥を推した。
「まずは追加装甲Aですが、これはとても傭兵向けの能力になるのではないでしょうか?」
その理由として、井出は防御性能として単純な防御力を重視する者と運動性を重視する者が存在する事を上げる。
「傭兵は自分で装備を用意しますが、どちらのタイプになるかは最終的には本人の好みになるでしょう、この能力ならどちらのタイプにもアピールできるのではないでしょうか?」
一部装甲をパージした場合、奉天の特性である防御を捨てた高機動機としての性質を持った機体となる。パージしなければ前述の通り、バランスの取れた防御性を発揮する。
「後は機体本体の装備量を活かせば重装甲化、高機動化も容易ですし、基本性能をダイナミックに変化させるという事は相対した相手の混乱を誘う事もできるかもしれません」
その言葉にカーディナル(
gc1569)が頷く。
「その点は俺も同意する、性能変化で不意を突きやすいってのは一瞬の判断が要求される戦場では大きなアドバンテージになり得る。前回、戦闘中に著しく機体性能がが変わるのはどうかって意見もあったが、嫌ならパージしなけりゃ良いって話しだしな」
「後はパージ前と後で戦術性が変化する事を考えれば、今までに無い運用が可能になるな」
ラナ・ヴェクサーも口を開き、同意を示した。
追加装甲Aに関して同意する人間は他にもいる。
「今までに上げられた理由以外で言うなら、追加装甲Bの使用可能回数に不安を感じたからというのもある。使い切ったらそれまで、よりもパージすれば回避性能が上がるAの方が安定して運用できそうだからな」
奉天社が提示した装甲プランは、パージ可能とする装甲以外に、使用回数が限定されるものの防御力を向上させるものもあった。
特性としては爆発反応装甲のようなものだが、物理、非物理双方に効果のある高い防御力を有する積層装甲案だ。しかし、その装甲特性上使用回数に限度があるのが欠点だった。
「ま、回避が上がれば、パージ前には避けられなかった攻撃を避ける目も出るだろ‥‥防御力下がるから当たったら目もあてられないが、それは仕方ない」
桂木 一馬(
gc1844)はそう言って首を振る。
「追加装甲BよりAの方が良いって点で言えば俺も同意見だな」
ネオ・グランデ(
gc2626)が口を開く。
「Aの方は1回発動すると、その後永続的に効果が続くってのが大きい。まぁ、装甲を外すわけだから防御と抵抗が落ちるってデメリットもあるんだが、他の提示されたスキルを併用出来れば回避は相当な向上が見込める。更にこの機体最大の特徴でもある積載量の高さを活かせば足りない装甲を補うなり、回避を更に上げるなり個人の好みや依頼内容に応じて調整もできるだろう」
「積極的賛成と言うわけではないけれど、機体特殊能力という意味ではAの方が良いですね‥‥Bを推奨装備のような形で販売する事は出来ますか?」
ホキュウ・カーン(
gc1547)の問いに崔 銀雪がしばし思考する。
「推奨装備として出す場合‥‥ですが、この機体向けの装備は基本的に重量100〜400程のものを目安として開発が進められています。結果として大重量化する事になるので、使用回数の制限は恐らく無くなると思われます‥‥もっとも、装備の採用に関してはULTの判断になりますので、確実に出るとは言い切れません」
他に、オルカ・スパイホップ(
gc1882)や、功刀 元(
gc2818)、夢守 ルキア(
gb9436)等、ほぼ全てが、追加装甲A案に賛意を示していた。
「他に欲しいのはホバー走行かな」
スパイホップが、追加走行Aに対する意見がほぼ出た所で、次に欲しい機能に言及する。
機体特殊能力は最大で3つ搭載する事が出来る。スパイホップが推すホバー推進機能は、脚部スラスタを利用して機体を浮遊させるものだ。
機体を浮遊させる事で、悪路走破性が大きく高まる他、水上での戦闘も可能とする。また、一時的に出力を高める事で、機体の回避性能を高める事も出来る。
その反面、起動中は燃料消費量が大きくなる他、人型変形中のみ使用可、常時起動などデメリットもある。
「ホバー推進があれば、水上走行も出来ますし、単純に行動範囲も広がりますからね。参番艦の直衛にも回れますし」
「問題は燃料の消費量だが、得られる機動性は魅力が大きい」
デメリットを指摘しつつ、井出がメリットを評価する。
「そうですね、ホバーは陸戦では役立つ機能です。参番艦の搭載戦力として数える場合、ホバーによる強襲揚陸、水上防衛戦力になり得る機体と言えます。欲を言えば水中への攻撃機能ですが、そちらはグリフォンに一任するべきですね」
カーンはスパイホップ同様、単純な陸上戦力としてだけでなく、参番艦に搭載する際の戦力面の点も評価する。
「確かに使用が陸戦形態に限られるとはいえ、水上で戦える機体がグリフォンと普及率の低い水中機だけな現状、あっても問題ない機能なんじゃねぇかな‥‥コイツとグリフォンで編成した強襲上陸部隊ってのも面白いと思うぜ」
「そうだな。燃料を消費する事で一時的に回避が上がるのも推したい理由の一つだが、最大の理由は活動可能範囲の広さにあるな。水上走行が可能になる上、他の地形‥‥例えば砂漠等、歩行等では脚を取られるような場所においても高い適性を保てる。場所を選ばずに運用できる点は魅力的に見える。確かに燃費の悪さは欠点ではあるが、通常依頼なら余程スキルを使いすぎない限りはガス欠になる事はないだろうし、大規模でも補給体制は基本、整っているから問題にはならないだろう」
桂木、グランデも、地形を選ばずに活動できる点に着目し、ホバー機能を推す。
「うん、やっぱり地形を気にせず動けるってのはいいよね。水上走行ができるから、やっぱり水中対応の装備も欲しいなぁ。水中キット改は使いにくいから、行動を阻害しないようなモノ」
「重量が嵩んでも問題なければ、水中キットそのものは作れそうです。作った事無いですから、時間掛かりますけど」
奉天社は水中機に関するノウハウは無い。
とはいえ、潜水艦の他、魚雷や艦船等は建造しているので、下地としては十二分な者を有している。これは殆どのメガコーポにも言える事ではある。
下地があるとはいえ、KVの特性である機動性を維持したまま、というのは若干の技術蓄積を必要とする。
夢守 ルキア(
gb9436)の意見に、技術的には恐らく問題ないという事を示す。ただ、その場合水中に潜行した後、離水可能かどうかは分からない事を示す。
「個人的な趣味の問題になるんですが、ホバーを搭載するとしても、きちんとした二足歩行型が良いですね。機体の外見もやはり重視したいところです」
「私は特にこだわる必要は無いと思うけど、ゼカリアの足回りをホバーにしました。ってのでも問題ないと思うわ」
巧刀の言葉に、今まで黙っていたクティラ=ゾシーク(
gc3347)が反論する。
彼女の言葉はホバー走行を採用した場合、敢えて歩行という移動方法を取る必要が無くなる以上、二足歩行機能は必要ないという事だ。それに対して、巧刀は機体デザインに対する注文に近い。
機能性を取るか、デザインを取るかという事である。
「‥‥実機が出来ていないのでなんとも言えませんが、二足歩行より脚をホバー推進器とした場合の方が整備は楽そうですね」
今回、依頼の様子見という形で参加していたアリステル(
gc4494)が口を挟んだ。
その言葉に整備士資格を持つ井出が頷く。
「整備性の面で言えば、確かに歩行するよりホバーの方が容易です。あまり意識されない事なんですが、歩行は間接部に結構なダメージが入りますから頻繁に部品の交換が必要になるんですよ。四足歩行型は二足よりはダメージは分散されますけどね‥‥とはいえ、デザイン面というのもKVには必要な事ではあります」
「‥‥確かに、純粋に格好の良い機体というのは評価が高いですね。広告塔的な意味合いも兼ねますから難しい所です」
整備性に言及した井出の言葉を受けて崔が思考する。
奉天の方針としてはホバー機能が採用した場合、脚部を脚ではなく推進器兼スタビライザーとして使用する事が検討されていた。フォルムとして言えば案山子が近いだろうか。
「とはいえ、それは検討するという事にしましょう。現状では搭載する機体特殊能力として追加装甲Aとホバープランが有力ですが‥‥あと一つ搭載可能ですね」
依頼参加者の比率から見て、追加装甲Aとホバーの搭載はほぼ確定事項と言えた。
「後、欲しい機能は電子支援機能‥‥特殊電子波長装置の新型でしょうか」
功刀が口を開いた。
「現状、最前線で戦える支援機能を持った機体は、ウーフーくらいです。奉天の機体は価格が安い所は利点なのですが、その分性能が抑えられている関係で、最前線で戦うのには向いていない機体が殆どです。ですが、この機体は最前線でもそれなり以上に戦える事が期待できますから、支援機という分野では有力な選択肢になり得るのではないでしょうか?」
「そうだな、非力な機体が多い電子戦機の中で、強力な火器を搭載して戦力として平均以上の水準に達している機体は戦場における需要は高いと思う」
桂木が頷く。
「前衛を張る機体だから、支援装備は別に無くても構わんとは思ったが‥‥特性から言って常時使用するには問題がある、支援装備だが自分の回避や防御を上げる為に使える装備って考えた方がいいかも知れねぇ」
支援装備としてではなく、自機の能力向上装備としての側面からカーディナルは賛意を示す。
「電子支援はあって困らない能力ですし、いつでも使えます。あと、影響圏内であれば水中にも効果があるのは、水中戦をメインにする僕には嬉しい所です」
スパイホップは水上から水中へ効果範囲が充分に及ぶ事を考えに入れていた。
特殊電子波長装置の効果範囲の広さは、航空形態においても十二分に水中へと効果を発揮する。
「電子戦機は数が充分とは言いがたいです、搭載によるデメリットもあまり考えられませんから、あっても困らないとは思います」
消極的ながらヴェクサーが賛同する。他にゾシークが特殊電子波長装置の搭載を推していた。
特殊電子波長装置を推すものが居る中で、VTOL‥‥垂直離着陸機構を推すものも居る。
支援装備に関する意見が出尽くしたと見て、井出が口を開く。
「現状ではVTOLによる展開能力の面で見ると、主戦級と呼べるのはシュテルンの独壇場です。そこに加われるのは価値が大きい事かと‥‥他に、大型機としての性質から来る運用の困難性の解消にも繋がると思います」
「‥‥タロスとかの‥‥追撃が出来る機体が少ないのは‥‥時々問題になる事があります」
「そういえば、そういう厄介な敵も居ましたね」
新米であるアリステルが、ジャウザールの言葉で初期の講習で習った敵機の事を思い出す。
バグア側の次期主力機と目されるタロスは、高い自己修復能力を持つ機体だ。更に、陸戦形態から航空形態への変形をタイムラグなしで行える事。
自己修復能力と変形が組み合わさり、非常に厄介な敵として人類に認識されている。
つまり、ある程度損傷を与えても、撤退して拠点に戻り、装甲を交換するという至極単純なルーチンで無傷の状態に戻せる。
恐らくはその特性上装甲の換装も簡単に出来るように設計されているだろう。
結果として、離脱されてしまえばすぐさま無傷の状態で戻ってくるという、相当に手強い相手だ。
追撃をかけようにも、殆どのKVは離陸に多少の時間を要する。そうした中で、追撃が出来るKVのうち、主力として動けるのはシュテルンぐらいだ。
「んー、確かにそうなんだけどさ。実際垂直離着陸って使う機会少ないのよね」
夢守が顎に指を当て、考えながら口を開く。
「そう頻繁に使わない機能を搭載するより、骸龍みたいな特殊能力に頼らない垂直能力でも良いんじゃないかって思うのよね」
機体特殊能力としてのVTOLは、言葉からイメージされるものよりも遥かに凄まじいものだ。
1秒とかからず、一気に高度100m以上まで機体を上昇、あるいは高度15000mから着地させるという荒業である為、爆発的な推力を要求する。KVだからこそ耐えられる加速であり、一瞬という僅かな時間でなければKVも中の搭乗者も無事では済まないほどのものだ。
骸龍の垂直離着陸はそこまでの推力は要求しない。
上昇及び降下に10秒程度の時間を必要とする。夢守はそれで充分であり、あえて機体特殊能力として組み込む必要は無い、そういう意見だった。
「確かに、垂直離着陸機構による展開能力の高さは必要になる場面もあるな‥‥ただ、どちらかと言えば俺は命中精度を上げる特殊能力の方が欲しい」
「あ‥‥僕も、命中を上げるものがあればいいなって思ってました」
桂木の意見にジャウザールも同調する。
「搭載を予定している‥‥高火力の大型火器‥‥命中精度が悪いものが多い。‥‥他社製品ですけど‥‥例えばブリューナクとか‥‥強化しないと命中が下がる武器が多いし」
「そうですね。積載量の高さを軸の一つに据えていますが、確かに大型火器の命中精度は低い傾向にあります。電子支援を搭載すればある程度の改善は見込めるでしょうけど、専用の照準装置や火器管制装置で命中を高めた方がいいと思います」
カーンもジャウザール同様、重火器の問題点を挙げて、照準系の機体特殊能力を提案する。
「俺としては、新しく機体特殊能力を設定するなら、特殊電子波長装置による回避、命中の向上よりは別種のスキルによるモノの方が良いな。特殊電子波長装置に代表されるジャミング系は同カテゴリで効果が重複しないっていう欠点があるからな。ジャミングじゃなくて、他の方法で命中・回避の双方を上昇させるスキルがあれば良いんじゃないかと思う」
「そうですねー。機体本体の回避性能と特殊能力組み合わせれば、特に改造しなくても回避の値が凄い域にまで達しますからね。こういうのは今までに無い特徴に鳴ると思いますよ」
運動性を重視するグランデは、命中精度の上昇だけでなく、回避性能も上げたい考えだ。
スパイホップも機体のウリとして、回避能力も相当のレベルまで上げられる点は残すべきだという意見だった。
「機体本体のみに影響する能力という事で設計するなら、特殊電子波長装置よりは高い効果を発揮できると思います」
傭兵達の意見をノートパソコンに打ち込みながら、崔が即答する。
単純な命中向上や回避向上に関しては、然程新しい技術を必要としないレベルであるので作る事は容易だった。最も1年前のレベルでは難しかったが、最新の技術を利用すれば問題は無い。
最も、技術革新の速度の異常さは今更言うまでもないことである。
「新しい機体特殊能力という事なら私は奉天製のスタビライザー‥‥ドロームが代表とするブースト空戦スタビライザーのような行動力を向上させるものがあれば良いと思う」
奉天が提示した機体特殊能力以外の話に自然と移った所で、ヴェクサーが暖めていた案を披露する。
「追加装甲Aの装甲排除による回避性能の向上補正は魅力的です。そこに行動をプラスする能力を別途の能力として導入できれば、より軽量化を意識させる事が出来るのでは?」
「そうですね、まず考えられるのはモーションレベルから手を入れる事と、機体そのものを極限まで軽量化して追従性を高める事でしょうか」
ヴェクサーの言葉に崔が頷く。
「その線で良くと、装甲を更に剥げるようにすれば良いのではないかな? 例えば追加装甲Aをパージ後、更に装甲をパージする。防御と抵抗は紙というにもおこがましいレベルにはなると思うが、機体特性としては斉天大聖、骸龍の設計思想を踏襲した機体となるのでは‥‥何より、装甲の無い機体というのは奉天らしい」
奉天の装甲軽視の風潮を決定付けた骸龍。
装甲すら装備せず、ケブラーやメトロニウムを繊維状に編みこんだ防水効果を持った布で覆われている部分すらあるという有様である。
その成果として、当時としては最高の運動性を獲得し、運動性という一点にのみ絞るなら未だに一線級の性能を与える事に成功していた。
ヴェクサーの意見は運動性を上げるものではなく、機体追従性を高めるというものではあったが、ある意味では最も奉天らしい特性を与える意見と言えた。
「アタシはリッジウェイ程じゃなくて良いから、数人乗れるような余剰スペースがあれば良いなと思う。機体特殊能力を積まないで予備シートを複数用意して、これを機体特殊能力とするの」
夢守がヴェクサーに続いて新しい機体特殊能力を提案する。
「味方が撃墜された場合の回収スペースとか、今は予備シートしかないけどアレを使うとまともに戦闘機動が取れなくなるから、きちんとした予備シート。最悪でも遺体を持って返れるようにしないと、ヨリシロとして使われちゃうから‥‥最悪にしない為の機能もあるといいなって」
バグアの肉体は、別種の生物を用いる事が殆どである。そもそもバグア本体の肉体があるのかどうかすら未だに判明していないが、その体は一度死した肉体を利用している事が多い。
ヨリシロとして憑いたした段階で、生命活動が再開するが本人の意識は無く、知識は憑いたバグアのものとなる。
単純に知識だけでなく、見知った人間が敵になるという事は相当にやりにくい上に、人間の倫理としては許しがたい行為でもある。夢守の言う最悪の事とはそうした事を言っているのだろう。
「それは可能です。ただ、クルメタルの方で、輸送用機体が仕上がっていると言う情報がありますので、難しいかもしれませんね」
「一つ考えてきたんだけど、背部兵装マウントシステムっていうのを提案するわ」
夢守の案に対して崔が回答を終えたタイミングで、ゾシークが機体特殊能力に関する案を口にする。
「機体の背部に可動式の兵装マウント‥‥腕でも良いけど、武器を保持できるものね。そういうのを設置して、装着状態で前後への攻撃を可能とさせるような特殊機構ね。前面へ回す場合は肩越しに、機体前面に兵装が展開されるようにしてください」
「方式としては、兵装を固定する副腕及び後方射撃装置の組み合わせのような形で良いでしょうか?」
「人型形態はともかく、航空形態において後方は死角になりやすいし、背後に付かれた場合対処が難しいから、あるといいなって感じね」
「ああ、そうだ。推奨武装は大重量大火力の装備を主軸に据えるとは思いますが、クァルテッドガン「マルコキアス」を更に強化、大重量化した装備とか、大型の大剣なんかがあると面白いかもしれません。前線に突入してから装甲を排除し、高速で暴れまわるとか出来たら、凶暴な機体になりそうです」
大体機体特殊能力に関する意見が出揃った所で、スパイホップが推奨装備案を口にする。
「現在、推奨装備は設計中ですね。概ね重量100〜400のものを主軸にする予定となっています。とはいえ、装備に関してはULTの裁量によるところが大きいという点があるので、あまりに重過ぎると採用されない可能性もありますけれど」
「機体愛称とかは決まってるんですか?」
「一応、現時点では天が機体愛称の候補ですね。形式番号も現状は試作機の設計段階のものになっています」
井出の言葉に回答する。
「そうですか、案の一つとして考慮して欲しいのですが、新たな奉天のスタンダードとしてという意味を込めて、初代KVである岩龍からも名を頂いて、天龍というのはどうかな、と」
「では、そちらも候補の一つとさせていただきます」
意見聴衆が終わり解散となった後、夢守が社屋に居残っていた。
「骸龍のぬいぐるみとか欲しいなあ」
そんな事を呟きつつ、立ち入りが制限されていないエリアをうろうろしてみる。目的は特にあるわけではなく、探検である。
一応、ある程度までなら見学の為解放されている。
その一角で、持ち帰り自由の奉天製KVのカタログを見つけた夢守がパラパラとめくりつつ、愛機である骸龍のページで手を止める。
「いつも、思うんだ。私のKVが私の補助、私が私のKVの補助って‥‥結局乗り手が何処まで大切にしたいか、だからさ」