●リプレイ本文
前回同様、ラストホープ奉天支社に傭兵達が集められた。
今回の目的は前回の依頼で得た意見を元に纏められた4つのプランからどの機体を用いるかにある。
前回の依頼から引き続き参加する者も居れば、今回から参加する者も居る。
「さて、それではまず機体のプランの決定から行きましょう」
会議室内に揃った傭兵を見回して、崔 銀雪が口を開きノートパソコンを起動した。
最初に発言したのは井出 一真(
ga6977)。
「俺が推すのはB案ですね」
B案は、概略で言うと回避能力に特化した高機動機である。
「理由としては、回避は強化で上昇させにくい能力である事です。加えて回避能力を機動性・運動性と捉えた場合、人工筋肉駆動による柔軟な間接構造を基本とする本気には相性が良いのではないかと思います」
井出の言葉どおり、機体強化で上昇する回避性能は他の能力と比べ上昇幅が狭い。
「また、装甲を厚くしたとしても彼我の戦力差から考えれば、通常型ヘルメットワームの攻撃であったとしても直撃時の被害をゼロに抑える事は難しいでしょう。しかし回避できれば被害はゼロに出来ます。無論、先頭時に全ての攻撃を回避する事は困難ですが、B案でも充分な搭載量は確保できるようですから、アクセサリ等で防御面を確保する事は出来ると思います」
「ふむ。ではとりあえずB案に1票ですね」
「後、特殊能力案としては機体の特徴として大きな稼動域を持ったメインスラスターを提案します。姿勢制御のスラスターを多くするのではなく、メインをダイレクトに動かして噴射角直接制御すれば、運動性を維持しつつスラスターの数を抑える事が出来ます。合わせて脚部にホバー機能を搭載」
「まぁ姿勢制御スラスターをある程度は抑える事は出来ますが、メインを稼動させると速度は低下しますよ」
「スピードより機動性を見ていますから、若干の低下は仕方ないでしょう。稼動域の高いスラスターとホバー機能を組み合わせて、他方向への移動と急速旋回を可能とするのはどうでしょうか? 動力炉の余剰熱量を攻撃に転化する破曉搭載の固定装備のようなものも便利かと思います」
「ホバー機能と推力の利用ですか、上手く使えば確かに急旋回や高速移動は可能ですね」
井出の意見に頷く崔。
井出に続くのはハミル・ジャウザール(
gb4773)
「ええと、僕の希望は‥‥D案になります」
D案は機体本体の能力を抑えた分、積載量を特化させた機体だ。
「B案もそうですけど‥‥突き抜けた能力っていうのは奉天さんらしいかなと思います、ええと機体能力とかは特に考え付かなかったですけど、装備品で色々な方向性が試せればいいかなって考えました」
「装備品と言うと、どのようなものになりますか?」
「ええと、専用のフレームを幾つか用意して‥‥換装する形です。 フレームの例としては複数のファランクスを搭載して迎撃機能を高めたフレームとか、リヴァイアサンのような可動防御フレーム、後はホバー機能とか‥‥多少重量があって、嵩張ってもこういう実験的なフレームを積める様にするというのはどうでしょうか?」
「専用装備、という形で用意するのは難しいですね」
ハミルの言葉に腕を組んで思考する崔。
「機体専用装備にするなら固定装備として組み込む形になりますから、色々なフレームを試すというのは困難です。他のKVへの搭載も可能なアクセサリとすれば不可能ではありません、高重量の推奨装備という形でなら可能ですね」
「推奨装備、になりますか。店売り装備なら、色んなフレームを使ってマルチロール機にもなりますよね?」
「そうですね‥‥ショップ販売になるかどうかはULT次第なのではっきりとは言えませんが、マルチロールを実現するならそういう形を執るのが一番でしょうね」
続いて意見を口にするのはフーノ・タチバナ(
gb8011)。
「こりゃ意見が割れそうな機体プランだな‥‥基本はAかDが良いんじゃないかな?」
A案は機動性を重視してはいるもののB程ではなく、耐久性も考慮に入れた機体案である。
「循環型バージョンアップで装甲を取り外してBになるような感じか。戦闘中に追加装甲をパージする‥‥って意見もあるみてぇだけど、戦闘中に著しく能力が変化するってのもどうかと思ってな、それだったらシールド付けた方がいいんじゃねぇかと思う訳さ」
斉天大聖などに採用されている循環型バージョンアップは、共通フレームだからこそ出来る事だ。設計段階からそれを考慮して追加装甲を施せば、多少の費用はかかるが不可能ではない。
「基本形態は人型も飛行時もがっしりと、だな。バージョンアップでBになればスカスカにはなるだろうが。変形機構自体は長座して上体を折り曲げて重ねる‥‥コンパクトケースみたいな機構だと簡単で良いんじゃないかな?」
「特殊能力については何かありますか?」
「VU前‥‥つまりはAかDの場合だが、回避を下げて防御と抵抗を上げるのとその逆、防御と抵抗を下げて回避と命中を上げる2パターンのスキルとか、長射程武器の命中精度を上げるようなスキルが良いんじゃないかな? バージョンアップ後は機動性が高くなるから、回避しつつ移動するようなスキルがあると面白いかもな」
そこでタチバナが意見は述べたとばかりに言葉を切る。
彼の次に発言を行うのはホキュウ・カーン(
gc1547)
「機体プランとしてはB型とD型を合わせた形になるでしょうか? 高い機動性と積載力を有した機体ですね。ただ、使い捨ての出来る爆発反応装甲のようなものを装備する事で、ある程度のダメージを無効化できるといいと思うんです」
「爆発反応装甲ですか‥‥」
その言葉に崔がしばし思考。
「原理的に成形炸薬弾等の実弾系にしか効果が期待出来ない‥‥表層に対非物理コーティングを施したとしても‥‥なら二重にすれば‥‥」
そんな事を呟きつつ、ノートパソコンに指を走らせてある程度の回答を弾き出す。
「‥‥お待たせしました。爆発反応装甲とは異なりますが、似たような方式を利用すれば物理、非物理双方に効果を有する使い捨ての装甲を作る事は出来そうです」
「そうですか、何にせよ数回の被弾のダメージを抑えられるようなものがあれば、強襲機としての運用が期待できます。高い装備力を活かし、大火力兵装を搭載し、短期の防御力を付与できれば強襲型として活躍しそうだと思うんです。ある程度防御したら装甲が外れて、高い機動性を発揮出来れば尚良しといった所です」
「自動での脱着は難しいですね。手動による放棄作業が必要になります。他に意見はありますか?」
「特殊能力としてはホバーによる回避力の強化です。グリフォンのエアステップのような横に回避するような機能を盛り込めば、高機動性をアピールできると考えます」
カーンが話を終えると、 先ほどのフーノの言葉に同意を示しながらカーディナル口を開いた。
「フーノも言っていたが、悩ましいラインナップになってやがる‥‥出来るなら全部採用して欲しいがそうもいかねぇか‥‥この中でどれか一つってんなら、俺としてはD案だな。A案やB案も悪かねぇんだが、追加装甲を装備出来るだけの積載量は欲しいな、機体性能で一つだけ言うんなら、攻撃と知覚の値は合わせた方が良いってくらいか」
「追加装甲ですか」
「カーンの言っていたような使い捨てではなく、純粋な追加装甲ってヤツだな。重量は150くらいあってもいいから、防御抵抗の双方が大幅に上がるタイプがいい。回避や錬力に多少のマイナス影響があっても構わんが、移動力に影響が来るのは出来るだけ避けて欲しいな。装備量で擬似的に中量級と重量級が使い分ける事が出来ればベストだな」
「固定装備としてのアクセサリにすると基本的に取り外しは出来なくなります。取り外しを考慮する場合、推奨装備という形になりますね」
「なるほどな‥‥となると機体特殊能力として組み込んだ方が希望には近くなりそうだな。手動パージをどうするかって事にも繋がるが、追加装甲を装備するってんなら最初から最後までそのままでいければベストだ。‥‥が、そうも言ってられねぇのが戦場だからな。可能なら欲しいってレベルだ。後は他の特殊能力だが‥‥一時的にスラスターをフル稼働させて機動力を上げるってのはどうだろうか。D案のままの性能だと、機動力に物足りなさを感じるんでな」
意見は全て言い終えたとばかりに口を閉ざすカーディナル。
「私の考えはB案と共に前回提示した空中での半変形形態を考えています。そこで質問があるのですが」
南十星(
gc1722)が質問を口にする。
彼が前回提示したのは、簡単に言えば飛行形態に稼動する脚部を搭載するというものだった。
「何でしょうか?」
「私の考えている半変形形態では空気抵抗が増す事が考えられる、この問題をクリアする方法はあるのだろうか?」
「どの程度を考えられているかは分かりませんが、根本から完全にクリアする方法はありません。それこそバグア技術でも利用できれば別の話になります‥‥ですが、以前のお話にあったような形状であれば、ヘルメットワームとの超音速空中戦闘に必要な速度と機動性は保てます。ワイバーン等に代表される高速の機体には追いつけませんが、普通の速度の機体には充分に追随できるでしょう」
「出来るのならば、機体構造としては脚をメインスラスターとして空中での機動性が欲しい。同時にホバーによる走行の実現を」
「脚部を振り回す事で空中での高機動性を得る‥‥という事でしょうか。超音速戦闘時は強度の関係で妙な方向に振り回すとパーツがもげますから、ある程度制限が必要になりますね。低速時限定とすれば、機敏な動作は可能になると思います。ホバーによる移動は問題なく搭載可能です」
「後は半飛行形態だからこそ出来る離着陸の簡易化、機体形状に付随する効果なので特殊能力にはならないと思うのだが‥‥」
そこで言葉を切る南十星。
「機体特殊能力としない場合、何ら特別な効果をもたらさない形になります。そうですね、形状や機構による能力値への反映のみという事になりますが、それで宜しいでしょうか?」
「ああ、それで特殊能力だがハヤブサにも似たようなシステムがあったと思うが、急激な機体への制動‥‥メインスラスターを前方に噴射する事で従来機には無い機動ができるよう。後は空中での近接武器の使用だな、フェニックスのように完全な人型で使用する訳ではないから安定して使用できると思うのだが」
「急制動はなんとか可能です、失速ギリギリまで一気に速度を殺す事が出来ますね。近接武器の使用は先にも言いましたが、超音速機動時は制限する事になります。下手に使えばやはり腕がもげますからね‥‥フェニックスは気流を制御して近接武器を使用していますのでその心配は無いのですが、制御システムが大量に錬力を使用します。此方の場合速度を落としてからの使用という事にするのが妥当でしょう、その変わりフェニックスのように大量にエネルギーを食う事は無いと思います」
彼のアイデアの一部には現状の技術で難しいものもあるが、一応ある程度形にする事は出来る。
「他にも支持している人間は居るが、俺はプランとしてはDを推す。理由はやはり積載量が大きい事だな。装備するアイテム次第で機体運用の自由度を上げられる、あとは一つの性能を突き詰めればそれだけで長所になるな。装備する兵装次第で、火力の低さもカバーできる」
桂木 一馬(
gc1844)が淡々とした口調でD案を支持する者に同意する。
「ただ、全身のスラスタによる機動性確保という案も捨てきれない、可能ならDとBの良い所を兼ね備えた機体が望ましいな」
桂木はそこで口を閉ざすと、各員に配られたミネラルウォーターのペットボトルに口をつける。
「機体特殊能力は一つはカーンが言っていたような使い捨てを前提とした追加装甲だな。機体の生存性を引き上げる事が出来るし、不要になった時点でパージすれば、機動性を高める事が出来る。上手く使えば相手の隙を突くような戦法も取れるだろうな。もう一つは多くの者が述べているが、やはり一時的に高機動性を得るようなスキルだな。その場を移動できるようにすれば回避だけでなく攻撃にも使えるし、スラスタの推力を流用するだけだからコストが掛からない利点がある」
「はい、完全な使い捨て装甲は可能ですね。一時的に機動性を向上させるのも仰っているように問題なく可能です」
「ああ。ならば俺の意見はこんなものだ」
そう言って桂木が黙ると、オルカ・スパイホップ(
gc1882)が口を開いた。
「僕はDを推すよ、何故なら地上にて駆動装置である人工筋肉の稼動データ取得とSES型熱反応炉のデータ取得が目的なら、どのくらいの重さが持てるのか、それによる金属疲労がどうなるかとかがテストできるから」
スパイホップは勢い良くそこまで告げると、一息ついて機体特殊能力を述べる。
「ええと、やっぱりコストを考えるとカーンさんや桂木さんも言っていたけれど、使い捨ての追加装甲は欲しいかな。パージできるようにするとアクセサリにはならいないんですよね?」
「そうですね。パージできるようなものは特殊能力として設定する形になります。アクセサリとして搭載する場合、其れは推奨装備という形で使い捨てではなく純粋な追加装甲という形が良いでしょう」
「そうかー、単純な防御のための装備っていう事なら多少重くても良いよね。積載力が多いからこそ出来る方法だと思うけど。アクセサリとしての装甲は防御と抵抗が大きくて良いと思うんだけど、パージによる回避性能の向上も考慮するならやっぱり特殊能力になるのかな、特殊能力の強化が出来ればいいけど」
「使い捨ての追加装甲では強化による能力の向上は見込めません、単純なパージ可能な追加装甲とすれば強化の余地は残ると思います」
崔の回答にスパイホップは腕を組んで考え込む。
「んー、スキルは難しいね。パージを自分の意思で選べるようにするのも良いし、攻撃力を引き上げるようなスキルや回避能力を引き上げるスキルも欲しい‥‥」
「まぁ今回はスキルを決定する訳では無いですから、詳しい決定は次回になりますね」
「そうか、後は価格だけど個人的には300万台に引き上げてしまっても良いと思う。中堅価格帯だと皆が欲しいと思える能力じゃないと買わないから、能力を底上げして高級機にしちゃった方が魅力的になると思うんだ」
スパイホップは最後に価格に関しての意見を述べると、席に付く。
「D案を推す意見が多いようだが、俺はB案を推したいな」
ネオ・グランデ(
gc2626)がD案に傾いている場を立て直すように己の意見を述べる。
「機動性を高められれば、被弾率は当然低下するだろうから、その分戦術的な価値は上がるだろう。勿論最低限の防御性能は必要になる訳だが‥‥その点も提示された数値から見ればあるようだしな」
事前に提示された資料からすれば、奉天が出した高機動機である骸龍と比較すれば充分な防御性能を有している事が分かる。
骸龍はその機動性を得る為に装甲が紙と呼ばれるほどに薄いが、天B型は装甲はそれ以上になっている。
「機体特殊能力としてはやはり機動性を向上させるのが向いているだろう。各部のメイン及びサブスラスターの推力を全開にする事で一時的にでも向上させる事が出来れば、機体の特徴を殺さず高める事が出来て良いんじゃないだろうか? 装甲の薄さによる防御性能の不安はそれこそパージ型の追加装甲で補えば良い。パージ前は重量が増す分機動性は落ちるという欠点は抱えているが」
そこでグランデは一度言葉を区切る。
「追加装甲に関しては別段重装化を施さずとも少なくとも一撃に耐える事が出来るレベルで良いと思う。B案だと回避を前提としている以上、回避しきれない攻撃を直撃弾でなく出来れば良い‥‥イメージとしては傾斜装甲が近いな。追加装甲を搭載するとA案に似た性能になるかもしれないが、あくまで機動性を追及するのが自分のイメージだ。追加装甲はあくまでプラスアルファといった点だな」
「つまり、別に無くても問題は無い?」
「そうだな。後は自分が考える問題点は燃料関係だな。結構スラスターの出力任せな部分が大きい機体だから、あまり燃料を食うスキルをつけてしまうと活動時間が短くなってしまう、後は高速機動にパイロット、機体が持たない可能性もあるか‥‥いっそ単機決戦向けにしてしまうのも一つの手ではあるな」
グランデの次を担うのが、功刀 元(
gc2818)。
「前回の自分の発言を引き継ぎますと、D案を推します。有り余る積載力を活かし、固定装備や特殊装備をガンガン積み、能力的にはA案を上回る性能を発揮できたらいいなと考えています」
「固定装備の積載による能力の補正を込みという形ですか」
「はい。まずはやはり追加装甲、これはパージできるのが前提です。物理防御、非物理防御其々に対応できるだけのものが良いですね」
功刀は言葉を続ける。
「ファランクス系統の自動攻撃か迎撃用の武器、後は回数制限付きの追加ブースターで移動力と回避性能を確保、これら3つの機能を一つに合わせた追加装備はどうでしょうか? デメリットとしてはパージしてしまうと全機能が使用不可になってしまいますが」
「一つ一つに関して言えば可能です。ただそれらを一まとめにして一つの特殊能力あるいは単純な装備として設定する事は出来ませんね。先にも述べましたが取り外し可能とすると固定装備ではなく他機種でも運用可能な推奨装備という形での運用が必須となります。固定装備とした場合は取り外しは出来ませんから、取り外し可能とするなら特殊能力にて装備する事になります。特殊能力として規定すると複数の効果を兼ね備えたものは設定できません」
いわゆる、ロボットアニメでよく見られるフルアーマー系の装備はKVには難しい。
汎用性を考えなければならないからだ、機種を限定するような装備はULTの方針でまず採用されない。固定装備とした場合は取り外しが原則として不可能になるからだ。
「後はそうですね、ちょっと話は変わってくるんですが、宇宙対応のAU−KVは可能という事でしたので今回の技術を流用してタイヤの変わりにホバーユニットを取り付け、短時間なら低高度飛行が可能なものは開発できないでしょうか?」
「SES型熱反応路はAU−KVに搭載可能なサイズまで縮小するのは難しいですね、炉自体は小型化できますが冷却機構が充分でないと輻射熱で死にますから‥‥仮に搭載できるだけのサイズを考えると4m〜5m近い、KVサイズになってしまいます」
回答に功刀は少し肩を落とす。
とはいえ、あくまで現時点では難しいというだけで将来的な技術革新が起きれば現実として可能な事にはなるかもしれない。
最後を飾るのは、ハーモニー(
gc3384)だ。
「皆さんの意見はBとDに集中しているようですが、私はA案を推します。ですが、基本的な機体性能はB案のような高機動機、重装甲の追加装備を施す事で機動性を減少させる事で成立させたいです」
「つまり、B案とA案を複合させるような形でしょうか?」
「そうですね、初期状態では追加装甲によりA案に近い能力値になるでしょうか、搭乗者の任意によるパージ式の特殊能力にするのを希望します。具体的な性能としては‥‥昆虫等の外骨格の生物を参考にして追加装甲そのものにある程度の装備力を持たせる事で、機体だけに頼らない装備力の確保が出来ればいいと思う」
ハーモニーの言葉に崔はしばし思考する。
「パージ可能と装備力の付与を同時に達成するのは難しいですね、パージしてしまうと装備力が下がってしまうので、もし過重量となっていた場合装備を捨てないといけません。戦場での装備の放棄は其れがやむをえない場合仕方ないものとなりますが、自身の責任に由来する場合はペナルティが課されます。この場合、其れを誘発する原因となり易いので、技術的には可能でもまず審査で却下されるでしょう」
「是非とも実装して欲しいが難しいか」
「実際に搭載する場合はパージ可能という部分を取り外す事になりますから難しいですね。戦闘中のパージを考えなければ循環型で可能となりますが恐らく意図している事とは違うでしょうし」
「そうだな、まぁ無理なら仕方ない。装備力への補正は抜きにしても、追加装甲をパージした際はB案のように防御力は低下する分、高い機動性と人工筋肉による本来の滑らかな動きの本領を発揮するような形が良いな。宇宙での運用を考慮したものが追加装甲装着時、機体に搭載された新システムの特徴である速さを活かした追加装甲を装着していない状態の2バージョンにする事で、テスト機と実戦機の両立を目標としたい」
意見聴衆が終わり、それぞれの意見を整理していた崔の所へ、上司でありこの機体の総責任者である男がやってきた。
「どんな感じだった?」
「概ね、D案を支持する者が多かったです。ただ性能面にかんしては機動性も重視している意見が多く散見されました」
「そうなると、性能的には装備力と回避性能への言及が多いという事か」
「火力に関しては特に意見はありませんでしたね、現状で問題ないという事か或いは最近の兵装は皆高火力ですから、武装に委ねあえて重視しないという思考が多いからかもしれません。いずれにせよ、次回の特殊能力の決定で機体の設計開発がスタートできますね」