●リプレイ本文
訪れた10人の傭兵を迎えたのは、仕立ての良いスーツに身を包んだ初老の男性だった。
ちなみに、10人中、8人が女性である。男性が多いだろうと想定していたが、意外にも需要はあるのだろうか。
彼は傭兵達をパースで区切られた会議スペースへと案内する。
「さて、今回の依頼を受けて頂き有難うございます。皆様のご意見は弊社が開発するゲームのキャラクターの参考にさせて頂きます」
全員が着席したのを見届けると、彼は一礼し、持参したノートパソコンを立ち上げる。
「中々面白い企画ですね‥‥愛機のディスタンをこのような形でプロデュースすることになるとは」
そう言って一番に意見を述べたのはリディス(
ga0022)。先日の依頼で怪我をしたのか、あちこちに包帯が巻かれているが、口調ははっきりとしたものだ。
「私の考えたのは、先にも述べたようにディスタンだ。一部ではディスたんと呼ばれている機体ですね」
リディスが口にした「ディスたん」の言葉に鈴葉・シロウ(
ga4772)がぴくりと反応する。一部では、彼の「ディスたん」は有名だ。
ちなみにディスタンはメルス・メス製の汎用機である。移動性能に欠点を抱えてはいるものの、それ以外の性能面は高い水準で纏まっている。
「とりあえず、ディスタンと言えば移動力を除くステータスがフラットな所から、体型面ではフラットと考えます。いわゆるつるぺた、ですね。その部分をからかわれると問答無用で泣く」
「ふむ、そうした面の需要は確かにありますね。私は胸の大きい方が好みなのですが、からかわれて泣くのは萌えますね」
担当者の言葉に頷くとリディスは続ける。
「性格面は真面目、フォロー役といった所でしょうか? 自身で真面目すぎるのを自覚していて、和らげようと寒いギャグを述べる。後はディアブロと同時発売なので、よく一緒に居るとしたいです」
「なるほど、同時発売という経緯を考えればそうした面も面白いでしょうね」
「販売元がメルス・メス社だから、チリ出身の銀髪に褐色の肌のメスティーソなんかが良いかもしれませんね。属性はいわゆる素直クールで、ああ、名前はナタリア、通称ナタリーです。戦闘時の装甲はグレイを基調とした重装甲タイプ」
リディスの次に意見を述べたのは鯨井昼寝(
ga0488)だ。彼女が担当するのはカプロイアの水中機、KF−14。遊技場景品な事とその扱いにくい性能によりあまり傭兵達にも馴染みの無い機体である。
彼女は機体イメージとして、ちょっとしたコスプレをしている。まぁいわゆるちょっと近未来風のスイムスーツな服装をしているだけなのだが、体のラインがばっちり浮かんでいたりする。
「KF−14はカプロイア社の製品だから、チビっ子イタリア娘、名前はフェデリカ。服装はやっぱりカプロイア社らしく、それなりに洒落た服装がいいわね。外見年齢13歳くらいかしら?」
「ロリですか?」
ふむふむとパソコンのキーボードを叩きながら、男が鯨井に尋ねる。
「幼いというよりは、体型そのものは均整の取れたプロポーション。性格は少しおつむが弱い系」
担当者は頷くと、性格面での質問へと切り替えた。
「そうすると、能天気系でしょうか?」
「そうね‥‥私が考えてきたのは、頭の中にあるのは食べる事と寝る事と遊ぶ事が9割弱、何か喋ろうとして思いついた事を片端から忘れる鳥頭ってトコかしら」
「なるほど、やはり水中機である以上は、水中戦闘に特化した性能といった感じでしょうか?」
「そうね。いわゆる特殊能力は所持せず、通常の戦場ではあまり役に立たないが、そうした面は性格上一切気にしてなく、謎のカニ拳法なる体術を駆使して戦おうとする。真価が発揮されるのは水中戦闘で、高い泳力を駆使して近距離遠距離両対応の強力ユニットになるのがいいわね」
「泳ぐよりは戦闘時に着用するパーツで推進するという手もありますが、通常ステージでの能力を抑えればそうした性能もアリでしょう」
「次は自分の番ですね」
そう言って立ち上がるのは鈴葉、彼が考えてきたのは雷電だ。銀河重工製の重装甲をウリとした大型機である。また4連ブースターを備え、巨体に似合わず機動性も高い。
「いわゆる体型は重装甲な機体ですからボンキュボンのグラマー。普段はインナースーツで抑えているというのが良いでしょうね、名前はラインと考えました」
「性格面はどうでしょう?」
「そうですね、いわゆる真面目型‥‥先任軍曹といったタイプでしょう。役割上体には傷跡が少々、皆の盾である証ですと言うが、女の子なので主人公に見られるのは恥ずかしい、ゆえに肌はあまり晒さないとか。戦闘形態では重武装、重装甲、4連ブースターで移動力も保ちつつ、最前線で戦うユニットです」
「ふむ」
続けて鈴葉は性格面に関する話を続ける。
「新密度が高まれば、そのように触れられるのは、嫌いではありませんとあらあらうふふで整備を手伝ってるだけとか」
ややヒートアップした状態で続ける鈴葉。ヲタ☆クマの面目躍如といったところか。
「後は銀河重工製のもう1機、ミカガミですが、こちらは語尾がござるの武士っ娘で名前はカガミ‥‥雪村を活かすために剣の修行中とかで名前だけでも出すのはどうでしょう?」
「そうしたモノは続編への伏線としても使えますね」
「後、限定版特製フィギュアの原型とか作りますよ?」
鈴葉製作のフィギュアはLHにおいては、ある意味有名だ。出来も相当に良いものなので、予算が許せばお願いしたいと、担当者は回答する。
次に意見を述べるのはL3・ヴァサーゴ(
ga7281)。
彼女が担当するのは、奉天社の岩龍だ。基本性能面に問題はあるものの、特殊電子波長装置を備えるため支援機としての性格が強く、更にKV中最安値を誇る機体だ。
「岩龍、やっぱり防御低いとかだから、極端な痩せ型。当然、ぺたんこ。名前はシェロンで、戦闘時、通常時共に黒系統のカラーリング、戦闘形態は左肩から突き出した機首が最大の特徴」
「ふむ」
あくまで、淡々と喋るL3。控えめな胸の設定がやや多い気がするが、そこら辺は趣味の問題もあるのだろうか。
「主人公に対して、最初は隊長さん。攻略ルート、進めると「○○さん」で」
「呼び方の変更ですね」
「そう、性格は気が弱い、自己主張希薄、でも頑固。ネガティブで暗い事を言って、周囲の空気を悪くする、ある意味KY」
「ネガティブ思考のキャラクタですか?」
頷くとL3は自分の意見を続けて述べる。
「ネガティブなのは、やっぱり機体の能力値低いから、落ちこぼれ、自己評価が低くて自分の存在意義を見出せずに居るから」
「なるほど、そういう背景設定ですか」
「性格面は、攻略ルート進むと、主人公のために戦うようになるけど、依存が高くていわゆるヤンデレ? ‥‥能力的には知覚力以外は最弱、でも改造費が安いから、成長は早い感じで」
続いて立ち上がったのは、風羽・シン(
ga8190)。
「俺は、まぁ自分の機体でもあるシュテルンを考えてきた」
「ああ、最近出た高級万能機ですね」
「リース価格は一応最高額だな。それはともかく、シュテルンは日仏ハーフのおっとり系お姉さん、名前はヒカル。お日様的性格でメンバーの相談役。意外といたずら好きって感じだな」
「お姉さんキャラですか、となると体型は‥‥」
「基本細身だけど、凹凸の差が激しい形だな」
ふむふむ、と頷きつつ担当者は設定面をノートパソコンに打ち込んでいく。
「最近発売されたという事を考えて、中途参戦キャラ。既存の外装パーツで十全に能力が発揮出来ないため、一人でトレーニングを続けていて、鬱屈した感情を押し込めていた」
「ふむ、表面的には明るく、しかし内面に闇を抱えているキャラクターですか」
「そういう事だな。途中戦線、特定機撃破などで、攻略最難関キャラで、無意識下に押し込められた感情を解消させないとBADルートな感じで‥‥性能は、そうだな。突出した性能はないものの、どのような戦局にも対応可能な高性能万能機って感じだろうか」
風羽に続くのは、傭兵アイドルグループIMPに属する加賀・弓(
ga8749)
多くの傭兵に愛用される高い攻撃性能を誇るディアブロを担当する。
「いわゆる、攻撃的で自分勝手なツンデレキャラを考えてきました。普段はナチュラルロングで戦闘時ツインテールの12歳くらいの子です。名前はシス」
「ツンデレキター」
担当者の冗談を軽くスルーして、加賀は続ける。
「性格面は、いわゆるツンデレでお嬢様的振る舞いで、主人公や仲間に毒舌でよく攻撃を仕掛けます。ですが、ディアブロは攻撃性能が高いかわりに、回避も防御も低く打たれ弱い機体です」
彼女の言うとおり、ディアブロは派手な攻撃力に目が行きがちだが、防御面に問題を抱えている。更に、その攻撃力を警戒してか、実戦でも一番最初に狙われ被撃墜率も高い。
「そのため、喧嘩を売る割には、たまの反撃に弱く、すぐに涙ぐむタイプで。初期は主人公を認めず、自信家で協調性が無く独断専行しがち、ただ、本当は甘え方を知らない悲しい子みたいな感じです」
「ふむ、典型的なタイプですが、そういう分かりやすいのは良いですね」
「通常時は赤のゴスロリ。戦闘時は黒と赤をベースとした軽装甲タイプですね」
加賀の考えてきたというテーマソングは、後に開発会議にてどうするか決める事を担当者は伝える。
「ボクはS−01を考えてきたよ。名前はシエル」
元気よく、口を開いたのは柿原・ミズキ(
ga9347)。
ドローム社を代表する機体であるS−01は、既に傭兵向けの新規リリースは行われていないが、初期に支給される機体という事もあり、使用する能力者も多い。
「性格は、初期支給機体でもあり、芯がある凛とした姉のような感じかな責任感が強くて諦めないタイプ‥‥リーダーシップを発揮したがり、押し付けたがる悪い癖があって、皆から口うるさいと思われているけれど、人一倍仲間思いという形で」
「ふむふむ」
「女の子として扱われる事に抵抗は無いけど、よからぬ事と判断した場合には見下した態度になる感じ、あとは岩龍の事を気にかけている。戦闘時はグレー系の無骨な装甲かな」
「スタイルについて、何か提案はありますか?」
担当者がミズキの言葉をPCに記録しつつ言葉を続ける。
「えーと、胸は大きめで身長も少し高めかな……能力値的には平均的だけど、機体のウリとして一撃離脱で戦果を上げてるから、そうした一撃離脱の高速戦法が得意な感じが良いな」
柿原の後に発言するのは、エルフリーデ・ローリー(
gb3060)。
彼女は何故か、コスプレに挑戦している。
コスプレの内容は担当する英国王立兵器工廠のワイバーンをモチーフにしたもののようだ。彼女の背後でコスプレの監修を担当した鈴葉が親指をビッと立てている。
「わたくしが考えてきたのはワイバーンです。イギリス出身の貴族令嬢のような感じですね」
「貴族というと縦ロールでしょうか?」
「そこら辺はお任せいたしますわ‥‥えーと、代々海軍の家系で、名前はライミー。誇りある英国貴族の例に漏れず、祖国の為に戦う事を誇りとしている感じでお願いします」
「ふむ‥‥他に何かありますか?」
担当者の言葉に、エルフリーデはIRSTをイメージしたゴーグルを外す。機首を模したユニット、エンジンと翼をモチーフにした脚部、その他アーマー部以外は青のダイバースーツを着用し、コスプレとしての完成度は相当に高いものだが、やや動きにくそうだ。
「そうですね、機体自体は高速性能をウリにしていますから、移動力に優れたユニットという感じでしょうね‥‥ただ、桁外れの移動力を持つ代わりに、機体の性能自体は平均的なレベルに収まってます。見た目のイメージはわたくしを自身を参照してくださいませ」
そう言うと、エルフリーデはモデルのようにその場でくるりと一回転してみせた。
「岩龍は価格安い電子戦機、つまり気安く付き合えるインテリおねえさんだと思うんです! ‥‥まぁ、それは置いておくとして、某枢軸な雑誌を読んでいる私としては参加しない訳には行きません」
何やらヒートした状態で立ち上がったのは、里見・さやか(
ga0153)。
「私はシェイドの設定を担当しますね。シェイドはその圧倒的な強さから、高飛車。各地の大規模戦域にもちょくちょく顔を出してくるので、騒ぎやイベントが大好きで、そういった場には遠距離だろうと気にせず参加ですね」
「実際に目にした事はありませんが、相当に厄介な相手のようですね」
「そうですね、100機がかりでも落とせない難敵ですから‥‥とりあえず、他にはバグア三姉妹長女、主人公、KV少女を敵視していて事あるごとに妨害してくるといった形で、やはりラスボス級ですね」
ふむふむと、頷きながらデータを入力する担当者に、実際の戦闘でどれだけ手強い相手かを告げる里見。
「普段からテンション高め、やや戦闘狂な気があり、戦っていると時はハイテンション。外見は青みがかった黒の長髪、赤い瞳、肩は実物の人型形態同様、翼が両側に突き出している形で、ハイヒール装備で」
シェイドに続き、バグアのステアーを担当するのは雨音・ヘルムホルツ(
gb4281)である。
「私はBL作家ですけど、こう言うのも大好きです!」
ちなみにBLとは美少年・美青年間の愛の営みを描いた、腐女子向けの漫画で、近年少し流行り始めているものである。同人誌即売会などでは傭兵モノのそうした本も出回っているらしい。
「あ、各キャラクターの全身図と、SDチビキャラも描いてきたんですが、どうでしょう?」
「後でデザイナーと見させて頂きますね」
雨音が手渡したファイルを丁寧に受け取ると、担当者はステアーに関してどのような事を考えてきたのか促す。
「えーと、シェイドお姉さんが暴れた後片付け、妹のスノーストームの世話とか面倒見良い感じ。シェイドお姉さんが大好きで、多少無茶な事も聞いてしまうお姉ちゃん子な感じです」
「ふむふむ」
「主人公達には敵としか考えてなくて、特別な感情は何も無い。後は口調が丁寧な形かな‥‥スペック的にはシェイドのマイナーチェンジバージョン。シェイドが敵陣に突撃していくタイプではなくて、配下を指揮する指揮官タイプな印象があるから、そういう方面です」
「‥中間管理職ですか?」
「そうですね、まぁそんな感じです。外見は赤の長髪、シェイドと同じ赤目、戦闘時は独特な肩と脚の装甲をつけますが、普段着は地味めで……あと、おまけで3姉妹の末娘なスノーストームなんですが、グリーンランドとかの寒冷地以外は出てこないみたいなので、引きこもりな子で、外見は薄い青の髪は延ばしっぱなしでぼさぼさ、普段はジャージ姿で布団を被っていたりする、暴れだすと手がつけられないタイプで」
こうして10人の傭兵達の協力を受け、ゲームのデザインが開始される事となった。