タイトル:【AW】空母艦隊護衛〜空マスター:左月一車

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/27 12:29

●オープニング本文


 インド洋洋上に展開する空母艦隊。
 展開している理由は、中東からインドへと移動するバグア航空戦力の迎撃にある。先ほども離れた場所を飛行するバグア機の群れを哨戒機が発見し迎撃に搭載戦力であるKVを発艦させた所だ。
 その哨戒機から空母の艦橋へと敵発見の報が入ったのはKV隊を発進させてから30分ほどが経過した頃だった。
 バグア隊の飛行ルートは空母を一直線に目指すもので、インドへの増援の障害となっているこの艦隊を叩く事を目指したものである事は明白だ。
 更に哨戒機が機影を捉えた数分後、同様に艦隊の目として周辺を哨戒していた対潜哨戒機がパッシブソナーに水中を航行する物体の音源を捕らえる。
 対潜哨戒機の艦載コンピュータが登録されている音の中から類似のものを検索にかけると、水中用であるマンタワーム、メガロワーム、水中ゴーレムの音源が確認された。こちらも同様に空母艦隊を目指して移動中だ。

 第1ブリーフィングルームに集められた傭兵達。
 彼等は艦隊直衛として航空部隊を迎撃する為に集められた者達だった。
 「今回の作戦は、海戦を担当する傭兵達との共同作戦になる。君達には、艦隊に接近するヘルメットワーム部隊の迎撃を依頼する」
 士官がプロジェクタを操作し、敵戦力の移動ルート、迎撃ポイントなどを細かく指示していく。
 「最終防衛ラインにはイージス艦の他、F−15も配置するが、CIWSや対空ミサイルはヘルメットワームにはほぼ通用しないと思って欲しい。諸君らが抜かれた場合艦船に被害が出るのは確実だろう。特に空母が沈んだ場合この海域での作戦行動は取れなくなる、よって増援を食い止めるラインが一つ潰れる事となる」
 そこで言葉を切ると士官は傭兵達を見回す。
 「諸君らの活躍に期待する」

●参加者一覧

ツィレル・トネリカリフ(ga0217
28歳・♂・ST
聖・真琴(ga1622
19歳・♀・GP
月影・透夜(ga1806
22歳・♂・AA
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
九条・運(ga4694
18歳・♂・BM
暁・N・リトヴァク(ga6931
24歳・♂・SN
憐(gb0172
12歳・♀・DF
前田 空牙(gb0901
18歳・♂・HA

●リプレイ本文

 傭兵達の機体は空母のカタパルトを滑走し、大空へと上がる。
「強化型ジャミング中和装置、オン‥‥各機とのデーターリンクを開始します。さぁ皆さん、行きましょう!」
 今回の作戦においては流 星之丞(ga1928)が高いアンチジャミング能力を持つウーフーを駆っている。彼がシステムを起動すると、完全とは言わないまでも普段よりはレーダーのノイズは軽減される。
「ES−008か、ノイズの海も今回は少しは見通しがきくな」
 ツィレル・トネリカリフ(ga0217)が自機のレーダー画面を見つめて呟いた。
 接近中のヘルメットワーム編隊の位置や方位は哨戒機とのデータリンクで送られてきているが、レーダーにノイズがない分ドッグファイト時に有利に戦う事ができる。
「遥かに強烈なヤツらと渡り合って来たンだ‥‥絶対に抜かせやしない」
 月影・透夜(ga1806)の恋人である聖・真琴(ga1622)がかつて対峙したエースを脳裏に浮かべる。エース級は単機で現状の敵以上の戦闘力を発揮する。シェイドやステアーといったエースの中でも別格のものは単機で戦局を覆すほどの戦闘力を発揮する。
 それに比べれば今回の敵は組しやすい相手といえる。
「折角の良い天気なのに‥‥ザコキャラが! 叩き壊して経験値にしてやる!」
 気合の入り方がどことなくずれている気がするのは九条・運(ga4694)。確かに戦いの経験によって戦闘技術が成長する事を考えれば経験値と言っても良いのかもしれないが。
 暁・N・リトヴァク(ga6931)はキャノピー越しにアフガニスタンの方向へと視線を向ける。
 アフガニスタンは彼の祖父が生まれ育ち、バグアの侵略によって陥落した地域だ。帰りたくても帰れない、そんな祖父の顔を思い浮かべ彼は己に気合を入れる。
「この艦隊は、ここから先のアジア決戦でずっと戦わなければいけませんにゃー‥‥ここでの脱落は問題外として、出来る限り傷つけずに護らなくてはにゃー」
 覚醒の影響で語尾ににゃーがつくのは憐(gb0172)普段は大人しい彼女だが、覚醒すると語尾の変化のみに留まらず性格も若干攻撃的になる。狩猟本能に目覚めるらしい。
 レーダーのレンジに敵編隊が入る。
「来たぞ、攻撃準備!」
 距離的には接触まで30秒足らずといったところで、月影が指示を出し、全機が武器のセイフティーを解除すると、あらかじめ決定していた戦闘体勢へと移行する。
 敵編隊は足を止めずに疾走する、正面からぶつかるつもりのようだ。
「さぁ! 戦闘開始だっ! とっとと片付けるよ!!」
「Skullより各機へ、予定通り仕掛けるぜ‥‥!」
 聖の機体に装備された84mm8連装ロケット弾が連射される。彼女の攻撃が全機の攻撃タイミングの合図だ。 射撃を確認したツィレルもトリガーを引く。
 全機のKVから螺旋弾頭ミサイルやロケット弾、スナイパーライフルといった兵装が、あらかじめナンバリングされていたヘルメットワーム1、2へと集中し、機体のフォースフィールドを貫きその機体を爆散させるが、機体が吹き飛ぶ直前に閃光を放っていた。爆炎を突きぬけ薄紅色の光線が駆ける。
 ヘルメットワームの主兵装であるプロトン砲の閃光だ。撃墜された2機だけでなく、中型を含む残り5機のヘルメットワームからの攻撃だ。
 目標としたのは電子支援の厄介な新型機である流のウーフーと火力の厄介なディアブロ3機の合計4機、充分な改造とアクセサリで回避能力を高めていた聖と月影のディアブロはその攻撃の大半を翼を翻す事で回避するが、流と憐の2機は回避できず、かなりの装甲を吹き飛ばされる。撃墜とまではいかないものの軽い損害とは言えない。
 この流れはヘッドオン時の一般的な激突だ。
 必ず損害が生じるが相手にも確実に損害を与える事が出来るものだ。結果としては敵の読みが外れ、有効打となったが一歩間違えればKV側の機体の撃墜にも繋がる。
 攻撃の成果を確認する暇も無く、戦局は初撃を逃れたヘルメットワームとのドッグファイトへと移行する。
 空母艦隊を狙うのであれば無視して直進するという手もあるのだが、今回のKV隊に快速を誇るワイバーンが3機揃っている。いかにヘルメットワームが高速といえど、ワイバーン3機の追撃を振り切る事は困難だ。直進に専念すれば撃破され、回避行動を織り交ぜればワイバーン以外の敵機に追いつかれる。ならば戦闘で数を減らしておくと敵機のAIは判断していた。

「鎧袖一触で蹴散らしてやるにゃー!」
 憐は損害を受けた自機の被害を意に介さず、目標のヘルメットワームへと機種を向ける。
 武装をヘビーガトリングへと切り替え、ヘルメットワームを照準に収めるとトリガーを引く。ヘビーガトリングの銃身が勢い良く回転し、複雑な回避機動を取るヘルメットワームを追うように銃弾が空を切り裂いていく。鈍い音を立てて数発の弾丸がヘルメットワームの装甲に穴を穿ち、白煙を上げさせる。
 ヘルメットワーム側も負けじとプロトン砲を放ち憐の機体にダメージを与えていく。先程の攻撃を受けていた所への追撃は憐の機体に撃墜一歩手前という深刻なダメージとなる。
「やらせるか!」
 その状況に前田 空牙(gb0901)のワイバーンが支援に入る。ワイバーンのマイクロブーストで一気にヘルメットワームの懐に飛び込むと、前田は自身の機体とヘルメットワームをぶつけるかのように至近距離を交差する。
 交差の瞬間、機体に軽い手ごたえ。
 奉天製ソードウィングとも言うべきブレードウィングの一撃だ、ヘルメットワームの装甲に浅い傷が入る。手応えから掠めたに終わったと判断した前田はスプリットSと呼ばれる機動で機首を再びヘルメットワームへと向けるとマイクロブーストを維持したまま再度突撃をかける。
 マイクロブーストによる急加速によるGは能力者の肉体といえどかなりの負荷となる。前田はGに耐えながら高速でブレードウィングを叩き込む。
 深い手ごたえ、ヘルメットワームの装甲が切り裂かれ血のようにオイルが前田のブレードウィングの翼に付着する。
 数瞬の後、ヘルメットワームが力なく海へと墜落し爆散する。
「憐、大丈夫か?」
「助かったにゃー! ‥‥ダメージは軽くはないけどまだまだいけるにゃー」
 前田の問いかけに憐はレッドランプの瞬くコクピット内でコンソールから機体のダメージを確認する。損傷率7割ほど、次に攻撃を食らったら耐え切る保障はできないが、戦闘に支障は無い。

 閃光が空を駆ける。
 ヘルメットワームの背後を取った暁のワイバーンから放たれた高分子レーザーだ。
 幾条もの光が複雑なシザース機動を行うヘルメットワームに突き刺さる。ワイバーンの特徴は高い移動力のほかに、高性能のIRSTによる高い命中率を持っている。
「‥‥っ!?」
 リロードの為に攻撃が途切れた瞬間、ヘルメットワームがその場でくるりと暁へと機首を向けた。バグア側の慣性制御という技術は航空戦闘でこそ最大限に威力を発揮する、KVを含む人類側兵器には取れない、ある意味出鱈目としか思えない機動を可能にするのだ。
 プロトン砲の砲口が輝いた刹那、暁は機体をロールさせる。
 ワイバーンは速度を優先しているためか、それほど回避性能に優れた機体ではないが、暁の反応が早かった為にプロトン砲の閃光は暁の機体の側面を掠めるだけに留まる。
 回避機動を続ける暁のワイバーンを追うように機首を回したヘルメットワームだが、上空から放たれた弾丸を回避するためその場を飛びのく。
 マイクロブーストで加速した九条のワイバーンの援護射撃だ。九条はパワーダイブとも言える速度でヘルメットワームへと攻撃を加えると、海面に衝突する前に機首を上げる。
「‥‥助かった、援護に感謝する」
「気にすんな! それよりこいつをさっさと落とすぞ」
 安堵の息を漏らす暁に答えると九条はヘルメットワームを猛追する。九条は突撃仕様ガトリングを放つが、ヘルメットワームも負けじとプロトン砲を応射する。
 プロトン砲は九条の機体に直撃するが、機体改造やアクセサリで引き上げられた抵抗でその攻撃のダメージを最小限に抑える。
「その程度、効いちゃいないぜ!」
 暁が九条の機体に気を取られたヘルメットワームへと高分子レーザーを放つ。
 3連射された光条はヘルメットワームの装甲に穴を穿ち、そこから白煙を吹き上げさせた。かなりダメージが積み重なっている。
「後一撃及ばなかったか!?」
「んじゃ、おいしいところはもらうぜ」
 暁に続き、九条がヘルメットワームへと高分子レーザーを放つ。既にかなりのダメージを追っていたヘルメットワームにとってはそれがとどめの一撃となったか、力なく墜落すると途中で自爆装置を起動したのか派手に爆発した。

「さっさと落とさせて貰う!」
 ツィレルのR−01改から次々と8式螺旋弾頭ミサイルが放たれていく。
 8式螺旋弾頭ミサイルは分かりやすく言うとドリルミサイルだ。
 弾頭先端に取り付けられたドリルが穴を穿ち、内部で炸裂する事で装甲目標に大ダメージを与える事が出来る。
 フォースフィールドを貫いた8式螺旋弾頭ミサイルが、 ヘルメットワームに深刻なダメージを与えるが、撃墜には至らなかったのか機体を炎上させながらも 真正面から正直に突っ込んでくるツィレルに対してプロトン砲を放つ。
 ツィレルにその攻撃を避ける気は無い。それどころか自ら突っ込んでいく。
 彼は敵機を早期撃墜する為に、アグレッシブに行動していた。
 ヘルメットワームのプロトン砲がさほど抵抗が高いとはいえない彼の機体の装甲を吹き飛ばす。
「損傷率4割、こっちの勝ちだな!」
 彼は不敵に笑むと、ヘルメットワームを正面に捉え至近距離から8式螺旋弾頭ミサイルを放つ。ある程度の距離があれば回避できたであろうが、至近距離から放たれては回避は困難だ。
 ヘルメットワームはその攻撃を回避しきれず、機体中枢を破壊される。
 ツィレルの機体がそのすぐ脇を駆け抜けた直後、爆発四散した。

 聖もまた1機のヘルメットワームを相手取り五分以上の戦いを見せていた。
 もともと彼女の機体であるディアブロは高い攻撃力を誇るものの、防御面では第1世代のKVに劣る面もある。しかし彼女は機体改造によるその弱点を克服していた。
 現状の彼女のディアブロは高い水準でバランスの取れた機体と言える状況となっている。  
「アンタらの仕事はココで終わり‥‥散らしてやる」
 敵機から放たれるプロトン砲を緊急用ブースターを併用して回避しながら聖は8式螺旋弾頭ミサイルを2発連射する。残り2発は中型と交戦している彼女の恋人である月影の援護用だ。
 螺旋弾頭ミサイルのうち1発をなんとか回避したヘルメットワームだが、1発は被弾し僅かに姿勢を崩す。
 ベテランの傭兵である聖にその隙を見逃してやる理由も無い、レーザーを放ち、至近距離まで接近した時点で残ったロケット弾を叩き込む。派手に煙を噴き上げるヘルメットワームから彼女目掛けて最後の抵抗とばかりにプロトン砲が放たれるが、聖はその攻撃を軽くかわす
「これでトドメだっ!」
 ヘルメットワームの横を駆けた彼女は機体を旋回させるとブーストを起動する。
 陽光にソードウィングがきらめく。
 そのままヘルメットワームの射撃の隙間を縫うように飛翔したディアブロは、その翼でヘルメットワームを切り裂く。深く入った斬撃は致命傷となり駆け抜けたディアブロから数瞬の間を置いて爆発した。

「加速装置っ! ‥‥ここは絶対に抜かせません!」
 流は一種の自己暗示なのか、生身のみならず、機体の特殊能力を発動させる場合にも右奥歯を噛む癖がある。
 ブーストでヘルメットワームへと接近した彼は機体に3門搭載した高分子レーザー砲を放つ。
 3門装備とはいえFCSが対応していない為、一斉発射出来るわけではない。だが、弾薬量が単純計算で3倍になるため、リロードを余り気にせず撃てる事は利点といえた。
 ウーフーは電子支援機とはいえ岩龍とは異なり戦闘もこなせる。
 だが、ヘルメットワームと単独戦闘するにはいささか心もとない。
 元々初手でダメージを負っていた事もあり、流はやや推され気味だ。敵に与えるダメージより機体のダメージが先に限界に達しそうだ。
「このままではっ‥‥」
「こっちは片付いたから援護する!」 
 焦燥感にかられる彼に仲間の声が届く。
 敵を片付けたワイバーンを駆る九条、暁、前田がブーストで加速して各々の獲物で援護射撃をする。
 流との戦闘で損傷していたヘルメットワームにその攻撃を耐え切れる訳が無く、次々と装甲に穴を穿たれ、最後に突撃した前田のブレードウィングがとどめとなり爆発した。

「流石に手ごわい」
 月影は中型と交戦していた。
 小型と比して大型の機体は回避性能こそ小型に一歩譲るものの、重兵装と重装甲を兼ね備え傭兵の中でもかなりの実力を誇る彼にとっても単機では容易に倒せない相手だった。
 仲間から小型機はすべて食い止める事に成功したとの連絡があった。
 これが最後の敵となるが、放たれるプロトン砲の弾幕が激しくなかなか有効打を与えられないが、仲間が来ればこの状況も好転する。
「透夜さん、お待たせ!さぁ、私ら2人の連携を見せつけてやろぉよ!」
 いち早く駆けつけたのは聖だ。
 幾らか被弾している月影の機体から注意を逸らすためにレーザーなどで牽制の攻撃を加える。牽制とはいえ充分に改造されて機体から放たれる攻撃はかなりの威力を誇る、中型の堅牢な装甲に穴が穿たれる。
 流石に無視は出来ないと判断したのか、中型からプロトン砲が聖に向けて連射される。小型とは比較にならない攻撃に聖の機体も幾つか直撃を受けるが、致命傷とはいえない。
 だが、それによって月影が攻撃する隙が生まれる。
「さすが中型、簡単にはいかないが‥‥これでどうだ!」
 アグレッシブフォースを発動させ月影が8式螺旋弾頭ミサイルを連続で3連射する。もともと高い攻撃力を誇る彼の機体が更に攻撃力を増して放つ一撃は、堅牢な中型の装甲を易々と貫き内部に大ダメージを与える。
 一発一発に必殺の威力が込められた3発その全てが直撃し、中型の装甲が砕けスパークが走る。
 あまりのダメージに中型が機体のバランスを崩す。
「相手が悪かったな‥‥2対の真紅の悪魔からは逃げられやしねぇよっ!」
「これで、ラストだ!」
 月影の支援を受けながら、聖がアグレッシブフォースを乗せたソードウィングの斬撃を叩き込む。さしもの中型も高改造が施された2機のディアブロの火力の前には太刀打ちできず、爆発する。

 バグアの航空部隊は全滅とほぼ同時刻に水中部隊も壊滅し、艦隊への被害を最小限に抑える事に成功する。
 インド戦線への増援を食い止める防波堤の一つは傭兵達の協力で守りきる事に成功した。