タイトル:縛鎖を断つ者マスター:左月一車

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/14 00:38

●オープニング本文


 バグアとの戦線に程近い地域。
 哨戒中のKV小隊がゴーレムとの遭遇、戦闘に入った旨を伝えた後、通信が途絶。
 上層部は該当のKV小隊が撃破されたものとみなし、応援のKV隊を送ったものの、それらも同様の結果を辿った。
 再度の増援を送るべきかどうかという時に、生き残りのパイロットが帰還する。
 彼が言うには、ゴーレム部隊と接触した後、KVの電子機器が破損し動作不能となったとの事だった。
 また動作不能となったKVはそのままゴーレムに持ち去られるらしい。

 上層部は該当のゴーレムをエース級の敵機と判断し、KVではなく生身の兵士を偵察に派遣する。
 数日後、該当のゴーレムを捕捉した偵察部隊が持ち帰った情報を検討した上層部は、傭兵の派遣を決定する。


「という訳で諸君に集まってもらった訳だが‥‥まずはこの資料に目を通してもらいたい」
 相沢咲夜と名乗ったUPC軍の女性士官は依頼を受けた傭兵達それぞれにコピーした書類を手渡す。
 資料には今まで撃破された部隊の構成、敵部隊の構成に加えて、ゴーレムの保持する特殊な兵装に関しての言及が為されていた。
「資料にも示されている通り、敵ゴーレムは指向性の高いEMPあるいはそれに類する機能を持つ兵装を搭載しているようだ」
「EMPって何だ?」
「EMP‥‥電磁パルスの事だ、電磁波ではあるが、これを受けるとケーブル等に過電流が生じ結果として電子機器に甚大な被害を及ぼす。無論KVも並のEMPでは損傷しないよう保護してはあるが、敵機はその保護をある程度は無効化できるようだ」
「つまり、KVで近づくと壊れて動けなくなるって事か?」
「即座に動作不能という事にはならんようだ、推計したデータではある程度の間は戦えるようだが、徐々に戦闘力が奪われる事になるだろうな」
 咲夜は傭兵の質問に対して、淡々と回答を行う。
「他に質問が無ければ、早速で悪いが撃退に動いてくれ、現在敵機はこのポイント付近で活動中だ」

●参加者一覧

霧島 亜夜(ga3511
19歳・♂・FC
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
ヴァシュカ(ga7064
20歳・♀・EL
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
ヤヨイ・T・カーディル(ga8532
25歳・♀・AA
来栖 祐輝(ga8839
23歳・♂・GD

●リプレイ本文

  依頼を受けた8名の傭兵のうちアルヴァイム(ga5051)とソード(ga6675)の2名は事前に情報収集を行った。
 アルヴァイムは先遣部隊の撃墜エリアや偵察部隊からの情報を検討し、索敵エリアを絞り込む。
 ソードはゴーレムがどのような戦い方をするのか生き残りのパイロットからの話を聞く。彼によるとゴーレム自体は4機全機が比較的防御に動く傾向が強いとの事だった。
 
  作戦領域上空を霧島 亜夜(ga3511)の岩龍が飛ぶ。
 今回の任務での彼の役割は空からの敵の捕捉と味方の情報の相互伝達だった。
 「陸戦で空からの索敵も3回目か…サクッと見つけてやりますか」
 霧島は時折レーダーに視線を向けるが、木々に反射するレーダー波のためかレーダー上ではゴーレムらしき機影は見られない。もっとも岩龍の特殊電子波長装置で敵のジャミングをある程度中和しているとはいえ、完全にジャミングを中和しきることは出来ず、レーダー画面はノイズも多いのだが。
 陸戦部隊に先駆けて飛翔する霧島機は、偵察部隊が敵機を発見した箇所へと84mm8連装ロケットランチャーからロケット弾をばら撒く。
 目標とした地点を中心に8発のロケット弾が突き刺さり、周囲の木々をなぎ倒すが目視では敵を見つけることは出来ない。
 あるいは場所を移動した可能性もある。
 霧島は飛行高度を下げ、更にロケットを放ち木々を吹き飛ばしていく。
  ソードとペアを組む熊谷真帆(ga3826)は高分子レーザー砲とヘビーガトリングを使用して樹木を撃ち倒しつつ進撃する予定だったが、いくらリロードが可能な武装とはいえ弾薬には限りがある。
 弾薬を必要としないライト・ディフェンダーを振るう事として樹木を破壊しつつ、赤外線探知装置を使用に切り替えるが特に目立った反応は見られない。
「EMP‥‥札付きの悪はどこ?」
 ソードも熊谷同様にセンサー類をフル活用するが、現地点からは何もセンサーには引っかからない。
 KVの駆動音に驚いた動物や鳥が視界の端を駆けていく。
  アルヴァイムと敵機から発見される確率を下げる為、自機に迷彩塗装を施した来栖 祐輝(ga8839)はA班であるソード、熊谷のペアから役100mほど離れた地点を進行しつつ索敵を行う。
 とはいえ、バグア側の兵器の主要な索敵システムは重力センサーである。森林地帯とはいえ迷彩塗装にそれほど意味があるとは言えないが、まったくの無意味という訳でもないだろう。
 アルヴァイムと来栖はお互いの死角を極力下げ、センサー類に加え目視による索敵を行うがやはりこの周囲に敵機は居ないのか発見できない。
  高性能な電子戦機であるウーフーを駆るヤヨイ・T・カーディナル(ga8532)は砕牙 九郎(ga7366)、ヴァシュカ(ga7064)と組み索敵をしていた。
「EMPですか‥‥。長時間当たると不具合が出そうですね〜」
 ヴァシュカがあまり緊張感を感じさせない口調で呟くが、彼女は通常のセンサー類に加え、外部マイクの感度も最高値に設定し駆動音そのものも見逃さないように注意を向けている。
 
  索敵を開始して30分ほど経った頃だろうか、上空を飛行する霧島機を除いた全機の電子部品からスパークが上がり、レッドランプが灯る。コクピット内の計器も一部火を噴いたが、そうした機器はすぐさま予備系統へと切り替わる。
「全機、後ろだ!」
 霧島が動き始めた敵機を確認して声を上げる。動き出すまでは完全に周囲と溶け込んでいた4機のゴーレムは、完全に機体の動作を停止させ廃熱も最小限に抑えKVをやり過ごしてから背後からの奇襲をする手を選択したらしい。
 反転した霧島機がゴーレムに向けて長距離バルカンを放つ。バルカンに込められた弾薬はペイント弾である。霧島機は木々すれすれという限界の低空飛行を行いゴーレムに照準を合わせてトリガーを引き続ける。
 航空機形態での対地射撃は困難だが、これだけ低空飛行をすれば数発の直撃は見込める。猛烈な勢いで吐き出されるペイント弾のほとんどは逸れたものの幾つかは命中したのかゴーレムの迷彩塗装が赤く染まる。霧島は対空射撃を受ける前に機体を翻して射程外へと逃れる。
 霧島機の後を追うようにゴーレムから放たれた閃光が空を走る。
 対空兵装を搭載していない機体による対空射撃の命中率は大きく落ちる。更に今回の依頼では岩龍の特殊電子波長装置とウーフーの強化型ジャミング中和装置の二重のアンチジャミングが発揮されており通常よりも命中、回避が容易になっている。
  対空射撃による光と霧島機のペイントを目安に傭兵達は機体を反転させると、ゴーレム達を包囲するべく散会する。
 散会した目的はEMPの指向性が強いことを念頭に入れ、全機の能力低下を抑えるためだ。
 ヴァシュカは小型カメラを機内に持ち込み、EMP機を識別する為に利用しようと考えていたが、敵が一塊の現状では小型カメラを向けてもどれがどれだかは分からない。
「敵さんは指向性EMPなんて厄介なもの使ってやがるし時間はかけらねぇ、一気に行くぞ!!」
 来栖がミカガミの肩に搭載された長距離ショルダーキャノンを射撃しつつ、ミカガミの得意レンジである近距離格闘が可能な距離まで間合いを積めていく。
 長距離ショルダーキャノンから放たれた弾丸のうち、いくつかは目標と定めたゴーレムへと命中するものの、先ほど受けたEMPのせいかFCSの照準補正が普段よりかなり甘くなっている。
 その彼を援護するためアルヴァイムは被弾して損傷を受けたゴーレムに照準を合わせてトリガーを引く。
 ヘビーガトリングの銃身が回転し、嵐の如き弾丸がゴーレムの装甲を打ち砕いていく。ゴーレムは致命傷に至る前に慣性制御を用いて移動すると反撃とばかりにフェザー砲をアルヴァイムのディスタンへと撃ち放つ。
 アルヴァイムはフェザー砲の砲身に光が灯った瞬間、ディスタンの操縦桿をすばやく動かし、フェザー砲を回避する。
「EMPとは厄介な‥‥」
 ウーフーのヤヨイが呟き、Mー12帯電粒子加速砲を構える。高い火力を誇る重武装だ。すばやく照準を1機のゴーレムに合わせてトリガーを引く。
 膨大な光が迸る。
 標的となったゴーレムは危険を察知して機体を回避させようとするが、一歩間に合わず機体の半身に直撃を食らい装甲の半ばを吹き飛ばされた。
 僚機の砕牙が雷電の重装甲を活かすためにヤヨイ、ヴァシュカの前に立とうと機体を動かした直後に彼らの機体からスパークがはじける。EMPを食らったためだ。
 ちらりとコンソールに目を向けると、機体性能が約20%近く減少している。
「‥‥ダメージは無いが機体性能がかなり落ちてきたな」
「あの配置だと、どれがEMP機か分かりませんね〜」
 砕牙の言葉にヴァシュカが応じる。言葉を紡ぎながらも彼女は機体のコンソールを操作し、アンジェリカのブースト空戦スタビライザー及びSESエンハンサーを起動する。
 ヤヨイが一撃を食らわせたゴーレムに照準を絞ると、3.2cm高分子レーザー砲を放つ。
 多くの傭兵にその扱いやすさで愛用されている高分子レーザー砲だが、充分に改造されたヴァシュカのアンジェリカの機体性能とSESエンハンサーの相乗効果でその威力は帯電粒子加速砲にも劣らないものとなっている。
 既に脆くなっていたゴーレムの装甲を光が貫通し、内部で爆発を引き起こす。
 接近した砕牙にゴーレムがディフェンダーを振り下ろす。
 その重い斬撃を砕牙の雷電は肉厚の巨大な半月刀、セミーサキュアラーで受け止める。金属と金属がぶつかり火花を散らす。
 攻撃を完全に受け止めた砕く牙は、お返しとばかりに半月刀を損傷しているゴーレムの胸部に叩き込む。
 重量を活かし断ち切るのではなくゴーレムの装甲を叩き斬った半月刀を砕牙は引き抜き、機体を後方バックステップさせる。
 砕牙の跳躍から数秒後、内部機構に甚大な損害を受けたゴーレムは、バグア無人兵器の基本装備の一つである自爆を作動させ、機体そのものを爆発させる。地球側でバグア兵器を鹵獲し研究するといった行動が取れないのはこうした機能があるためだ。
「一点集中攻撃にて空戦スタビを併用し主兵装で滅多打ち! 全弾発射! 銃撃・夏吹雪の舞!」 」
 機槍ロンゴミニアトを構えて突撃するソードを支援するため、熊谷はバイパーのブースト空戦スタビライザーを起動する。ブーストの安定補助装置を作動させヘビーガトリング砲で弾雨を浴びせつつ、スナイパーライフルで脚部や間接を狙い撃つ。
 ガトリングから放たれた大量の弾丸がゴーレムの装甲を弾き飛ばし、スナイパーライフルの精密狙撃がゴーレムの脚部装甲を突き破る。
 その弾幕をあえて無視して、ゴーレムが駆けてくるソード機に狙いを定めカウンターのようにディフェンダーを振るう。
 バグア軍にとって、機槍ロンゴミニアトを所持する敵機は厄介な相手の一つである。特にディアブロのような高い攻撃力を誇る機体が所持している場合、損害が大きい。
 その為、優先して彼を狙ったのだが、ソードはその攻撃を回避する。
「普段だったら当たっていましたね‥‥電子支援に感謝しますよ」
 ソードの個人的な感覚では攻撃の回避にはわずかにタイミングが遅れていたが、ウーフーと岩龍の相乗効果による電子支援は命中と回避に大きい影響を及ぼしているようだ。
 攻撃を回避しざまソードは熊谷の攻撃で損害を受けていたゴーレムの胴体に機槍ロンゴミニアトを2度突き入れる。
 装甲を貫いた槍はその穂先から液体火薬を放出し、着火する。装甲に守られていない内部機構はバグア軍の機体といえど脆弱なものだ。内側から装甲を破るほどの爆発に晒されたゴーレムは最後の手である自爆装置を起爆させる。
 自爆によって飛散する装甲の破片がソードの機体に殺到するが、元より攻撃手段として設定されていないその一撃はソード機の装甲に阻まれ、ダメージとはならない。せいぜい装甲表面に多少の傷をつける程度のものだ。
「残り2機だ、緋眼の追跡者から逃れられると思うなよ!」
 バレルロールをかけた岩龍の霧島が眼下の戦闘に目を向け各機に通信を送る。木立が邪魔でお互いの機体の位置を目視では正確に把握できない傭兵達だが、空の目となっている霧島機とのデータリンクでお互いの位置座標は充分に把握できている。
 戦闘は高い戦闘力を誇る機体だけで勝てるというものではない。霧島は味方機の高改造を施された高級機に若干劣等感を感じてはいたが、純粋な性能面では一歩劣る岩龍でも活躍は出来る。
 劣勢を感じた残存のゴーレム2機が木立にまぎれて後退を計るのを目ざとく発見し、機体翼下に搭載されたロケットランチャーを撃ち込む。
 ゴーレムの周囲に着弾したロケット弾が木立をなぎ倒しその姿を露出させる。
 戦域からの離脱をはかっていた2機だが離脱できない事を判断すると、全機を正面に捉えるように大きく後ろへ離脱する。直後に上空を飛行する霧島機以外の機体からスパークが弾ける。
「うわっ!?」
 砕牙の雷電のコクピット内で計器類の一部が火を噴いた。幾度にも及ぶEMP攻撃は計器系にまで損傷を届かせ始めていた。
  敵機に接近するべく移動していた来栖だが、周囲の木立に遮られ敵機への最短経路を進むのに若干苦労していた。
 木々をなぎ倒して進む事も不可能ではないが、どうしても減速が生じてしまうからだ。来栖は近接攻撃を仕掛ける為に霧島機から送られてくる情報を頼りに機体を跳躍させる。
 着地する来栖のミカガミをゴーレムはディフェンダーで薙ぎ払う。
 迎撃がくる事をあらかじめ予測していた来栖は接近仕様マニューバを使用し、空中で姿勢制御する事で軸をずらし、その斬撃を回避する。
「死にさらせっ!!」
 正面、攻撃を空振りしたゴーレムを視界におさめ、来栖は内蔵雪村を起動する。
 消費する錬力の関係上、一度の斬撃しかできない武装だが、威力は折り紙つきだ。ミカガミの腕部から光の刃が展開し、ゴーレムの装甲を紙の如く切り裂いてゆく。
 腰部を内蔵雪村に切断されたゴーレムは自爆を起動させる。来栖はその爆発に巻き込まれないよう雪村への錬力供給を停止し、接近仕様マニューバを使用してすばやくその場から飛び退く。
「残り1機です」
 残存する1機に8機のKVが集中砲火を浴びせる。
 途中反撃としてEMPを食らった事から、EMP搭載機は最後の1機だったようだ。もちろん、現時点でEMPを浴びせたとしても勝敗にはほとんど関係が無い。
 弾丸の雨に装甲を貫かれ、EMP搭載ゴーレムも爆発四散する。

「こりゃ、持って帰ってもあんまり意味無いかね。データ取れただけ良しとするべきかな」
 砕牙がEMP搭載ゴーレムの残骸を眺めて呟く。
 基地に渡して解析を依頼しようと思ってはいたが、その場に転がる部品はほとんどその全てが砕けたり爆発時の熱で融解しているものである。
 戦闘の影響、特に自爆やロケット弾による熱によって一部森林火災が発生しかけていたが、それらの樹木は最も原始的な消火の手段である燃えそうなもの、燃えているものを叩き壊すという手段で実行された。
 KV並の巨体で実行すれば、鎮火そのものは手早く終わり、森林の損失はある程度抑えることが出来た。
 機体表面に大きな損傷は出ていないが、内部の電子機器に少なからぬダメージを追った傭兵達の機体は各々基地へと帰投する。
 
 傭兵達のKVが完全に視界外に消えた頃、その成り行きを見守っていた一人の男が呟く。
「それなりの有効性はあるようだが‥‥やはり量産せねば役に立たんな。鹵獲した機体も含め、少し考えてみるか」