タイトル:まだ遠い明日マスター:リラ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/18 22:19

●オープニング本文


「あいつら、とうとうこの街にも近付いてきてるって話だぜ」
「それ、本当? 泣く泣く村を離れたっていうのに、また逃げなきゃいけないの?」
「そうだよ、やっと馴染み始めたとこだっていうのにさ」
 とある街のとある民家。同郷の者たちが一同に会し、話していると思い出すのはやはり故郷のことだった。
「キメラ‥‥か。くそっ、どうなってやがんだよ!」
 酒の入ったグラスをテーブルに激しく叩きつけ、一人の男が苦々しく吐き出す。その様子を見た他の者たちも、感情を引き摺られたように暗く表情に影を落とした。
 今この世の中では決して珍しいことではないが、彼らが故郷をおわれたのはそこがキメラの襲撃にあったからだ。
 あまり他の町との交流もなかったために情報が入るのが遅れ、逃げ出そうとした矢先のことだった。集団で襲い掛かられ、体力に自信のある者はいれどキメラに対抗する術を持たない彼らは必死の思いでそこから逃げることしか出来なかった。無論、直接襲撃を受けた者や逃げ遅れた者は奇跡を期待する余地もなく命を落としている。それも大きくはないが村人同士の交流が盛んであったため、今ここにいる彼らの家族や友人、恋人ばかりだ。中にはそのときの夢を見、今も心身が傷付き続けている者も多い。
「倒せるものならあたしたちが仇を取ってやりたい。でも、やけくそで水をぶっ掛けたときもちょっと動きが遅くなった程度だし‥‥」
 自分たちの無力さは襲撃の際に嫌というほど感じていた。襲われ、血を流して倒れた者に触れることすらもままならず、ただ背を向けて逃げることしか出来なかったのだから。
「‥‥なあ。俺、ずっと考えてたんだけどよ」
 壁にもたれかかり、ずっと沈黙を保っていた男が口を開く。
「UPCに依頼しようぜ。この街で働いて稼いだ金から出し合ってさ」
「‥‥‥‥」
「このまま軍が助けてくれるのを待ったっていつになるか分かりゃしない。だったら、俺たちが動くしかない。戦えないのならせめて、俺たちの行動と金で示さなきゃ。‥‥でなきゃ、死んだ奴らが報われないだろ?」
 男の提案に皆が直ぐに頷けないのも無理もなかった。今の彼らにとって、ここでの生活は常にぎりぎりだ。かろうじて住居は維持しているものの、この部屋にも必要最低限のものしかなく、食事も決して満たされる量を摂れているわけではない。
 だが。
「‥‥そうだよな。俺らがあいつらの仇を取るんだ。直接は無理でも、絶対に」
「うん‥‥それにこのままじゃ私たちも救われない。‥‥思い出すのも辛くて、幸せな頃すら笑って話もできないよ」
 言って泣き出した女の肩を、隣に立っている男がそっと抱く。その目にもまた、うっすらと涙が滲んでいた。


 数日後、彼らは金を持ち寄ると意を決してUPC支部に向かった。皆の仇を取り、明日に目を向けられるようにと。

●参加者一覧

真田 一(ga0039
20歳・♂・FT
MIDNIGHT(ga0105
20歳・♀・SN
実崎 知花(ga0233
17歳・♀・FT
獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166
15歳・♀・ST
シェリー・ローズ(ga3501
21歳・♀・HA
南部 祐希(ga4390
28歳・♀・SF
ファルル・キーリア(ga4815
20歳・♀・JG
クラウド・ストライフ(ga4846
20歳・♂・FT

●リプレイ本文

●下準備
 依頼を受けた真田 一(ga0039)、MIDNIGHT(ga0105)、実崎 知花(ga0233)、獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166)、シェリー・ローズ(ga3501)、南部 祐希(ga4390)、ファルル・キーリア(ga4815)、クラウド・ストライフ(ga4846)の八人はレンタルした大型車に乗り、地図を頼りに村のあった場所へ向かっていた。
 事前に依頼人と会って得た情報をふまえ、おおまかにだが作戦は立ててある。後は実際に戦場となる村の跡を偵察して罠を設置し、確保したルートに合わせて陽動すると指定の場所で一気に畳み掛ける。その繰り返しで殲滅を図るのだ。何か問題点や効率の悪い点を見つければ、きりの良いところで一度少し離れた場所に停める車まで待避し、休憩も兼ねて話し合い細かく連携を詰める事も出来るだろう。

「この辺りに停めておこう」
 車が止まり、運転していた一が振り返り皆に声を掛けた。比較的安全なここからは歩いて村のある場所へ向かう。ドアを開け、周囲の様子を窺いながら一人ずつ順に車から降りていく。
「牙無き人の牙となり、おにぎり一個で村を救う。‥‥たまにはそういうのも悪くないよねェー」
 ぽつりと、しかし楽しげに呟いて獄門は仲間を追い足を踏み出すと、最後にドアを閉めた。

 そして辿り着いて。
「‥‥酷い、ですね。分かっていたとはいえ‥‥」
 足を止めると眉根を寄せ、祐希が苦く零した。
 人の手を離れてたかだか数ヶ月のその村は、焼かれ破壊され、無惨な形として同じ場所に留まっている。在りし日の姿を知らない彼女も辛く思うのだ、かつて住み、ここに数々の思い出のある住人たちがこの現状を見たらと、想像するだけで胸が苦しくなる。
「だからこそ、俺たちは戦うしかない」
「そう、だよね。あたしたちに出来る事は、一匹でも多くのキメラを倒す事くらいだもん」
 隣を歩く一の言葉に頷いて、知花がぐっと拳を握る。普段は猪突猛進という言葉を連想するほど真っ直ぐで明るい彼女だが、この惨状と話を訊いた際の村人たちの様子に痛みを覚えていた。もしも自分が彼らの立場だったなら。想像するだけでも苦しく、掛ける言葉も見つけられない。励ましの言葉を口にするのは簡単だが、考えればこそ何も言えなかったのだ。
「‥‥ぜってぇ許さねぇ」
 そしてもう一人。低く声を発したクラウドもまた複雑な思いに駆られていた。
 最初はただ、何のことはないキメラ退治の依頼だと思っていた。だが村人たちに経緯を訊き、身の危険から逃れた今でも心に傷を負い苦しんでいる姿を目の当たりにして。キメラに対する憤りを覚え、そしてそれと同時に、彼らの気持ちを汲んで戦うこと、それをどこか綺麗事のように感じていた自分がどうしようも情けなく思えて。噛みしめた唇は、焼けるような感情を如実に示していた。

 まずはキメラたちに勘付かれないよう細心の注意を払いながら、改めて罠の設置場所及び移動ルートの確保にあたる。
「数、少ないね」
「‥‥たぶん、本隊は森‥‥」
 気を抜かないまでも少し拍子抜けした感の覗く知花に、MIDNIGHTも周囲を窺いながら呟く。数はおおよそ村全体でも三十から五十といったところか。念の為武器は携帯しているが、準備が出来るまで戦闘は回避するに越した事はない。慎重に、だが迅速に移動を続ける。
 幾つかある比較的破損の少ない家屋に入り込むと、周囲を見回した。床に散らばる本、足の折れ傷だらけのテーブルには飛び散り、未だこびりつく赤黒い血液。異様なまでに生々しさが残っている。
「ふむ、これは使えそうだねェー」
 言って、ゆっくりと屋内の様子を観察していた獄門は頭上に目を向ける。
 荒らされ、ひび割れも各所に見られるここは、もはや人がそこに在った頃の姿も留めていない。だが、だからこそ使えるものは使う。獄門と同様に天井を見上げ、MIDNIGHTが小さく単語を口にする。
「‥‥水袋‥‥」
「うむ。使い捨てになるがー、こちらのほうが効率が良いだろうねェー」
 幾つか見た道路跡とは違い、天井に水袋をぶら下げ、まずはそれを叩けば怯ませられ逃げられる心配が少ない。引きが予想以上に強く、また誘導が上手くいけば一つのポイントでかなりの数を稼げる可能性もある。
「じゃあ水を汲んで設置しないとね」
「ええ。頑張りましょう」
 微笑んで頷いた祐希を見返し、知花もぐっと拳を握ってウインクしてみせた。

 攻撃ポイントを決めた後は移動ルートの確認と陽動班の退避及び奇襲班の潜伏場所の確保だ。ポイントの一つで潜伏用の穴を掘っていたファルルはふと手を止めて首を傾げた。
「うーん。なんか最近、穴を掘ってばっかのような気がします。‥‥名古屋でも穴掘ってたしなぁ」
 作戦に必要な事とは言え。思わずシャベルの持ち手に軽く肘をつくと苦笑が漏れる。だがそうゆっくりもしていられない。気を引き締め、改めてファルルは作業に取りかかった。

●陽動、そして駆逐
 直前になって再度ルートと手順を確認したのち。物陰に隠れていた一はゆっくりと立ち上がり、近くにいるキメラの気配を意識した。
「‥‥行くぞ」
 言い、頷くのを見て取り、また無線機越しの返事を聞くと。
 その刹那。白く伸びた無数の髪が風に揺らされた。もっとも、その変化に気付く暇はキメラたちにはない。それ以前に認識できるのかどうかも疑わしかったが。覚醒した一は壁から離れ際に抜いたハンドガンで、容赦なくキメラの腹部を撃ち抜いた。乾いた発砲音に漏れた体液、そして重みのある物が落ちた音。陽動作戦の先制攻撃として充分に効果を発揮した一撃だった。それを合図に、哨戒していたキメラたちが一斉に彼らを捉え、向かってくる。
「いいかい、アタシの足を引っ張ったら誰であろうと容赦しないからね!」
 低く本気の声音で一喝し、角に身を隠し息を潜めていたシェリーも飛び出した。
「虫ケラ如きがこの夜叉姫を殺ろうってのかい!」
 地面に唾を吐き捨て言い放つと、シェリーはにやりと唇の端を吊り上げ悠然と刀を鞘から抜き放つ。
「面白い‥‥かかってきな!」
 瞬間、彼女の全身から黒く、まるで深淵のように深く濃いオーラが発せられる。しかしその冷たくも妖艶な姿はより一層引き立てられ。彼女の目の前に立つのが人であれば、狂気と美しさの融合に心奪われたまま、その命を断たれていただろう。
 キメラに美醜を感じ取る感覚はない。だが、シェリーの心底から満ちる殺意に本能的な恐怖‥‥もしかしたらそれを感じているのかもしれない。引き寄せられるように集まった蜂キメラに、彼女はゆっくりと刀を構えた。
 一もまた紅い瞳で素早く前後左右、仲間とキメラの状況把握に努めながら、距離と速度を己の感覚で計り絶妙のタイミングで立ち回っていく。一匹を斬り捨てると即座に反転し後退、無線で奇襲班と連絡を取りながら徐々に罠のあるポイントへ誘導する。

「入るぞ!」
 クラウドの声を合図に四人が穴の脇を通り抜け、逆に身を潜めていた奇襲班の四人が一斉に彼らを追うキメラたちの前には立ちはだかる。
「‥‥打ち抜く」
 MIDNIGHTが端的に宣言して。天井にぶら下がる複数の水袋をキメラたちの動きに合わせて時間差で打ち抜く。水を掛けられ、わずかにそれらの動きが鈍るのを確認すると、今度は弾頭矢で複数の敵を巻き込んでいく。その傍に立つファルルも、
「誘き出されたとも知らずに‥‥愚かね」
 向けた長弓の弦を引き、冷静かつ確実に敵を捉え。そして指を離す。
「さようなら、永遠に」
 誰かに、ましてやその相手に伝えるわけでもなく。そっと吐き出された言葉は射抜く音に紛れて掻き消えた。警戒を緩めないまま、再度ファルルは弓をつがえる。一方で、同様に奇襲の役割を担う祐希は、
「‥‥震えも毎回となると笑うしかありませんね。‥‥はは」
 と自嘲的に呟き。それでも彼女は沸き上がる恐怖と指先の震えを押し殺し、攻撃の手を緩めずに射撃を続けた。致命傷を与えるよりも手数‥‥少しでも多くの敵をその場に留め置く、その事を優先する。
 今回、強力な範囲攻撃が可能な武器を持つ獄門が攻撃の要となる。その為、足止めだけでなく彼女を護る事も優先事項だった。今度は総攻撃にあたる奇襲班を反転した陽動班が、彼女らの攻撃を阻害しない程度に援護する。もっともその時間もさしたるものではない。
「黒焦げにしてくれるんだよー!」
 覚醒し、金色の瞳が捉えた蜂キメラの群れを超機械γの発した電磁波が一気に襲った。密集しているだけに数十匹を巻き込み、焦がし尽くす。やがて煙に包まれ視界が確保出来なくなると即座に退避し、次のポイントに向かう。
「兵隊は走るのが商売‥‥足が遅ければ死にます。急いで!」
 先頭を走る祐希がルートを確保しながら声をあげた。

 罠の種類や場所の特性などに違いはありつつも陽動と奇襲、その二つを繰り返し作戦を続行する。しかし、さすがに三度目の戦闘を終えたところで、積み重なった疲労感を抜く為一度車を止めた場所まで戻り、休憩を取る事になった。
 歯噛みする思いで一人車から少し離れた場所に立っていたクラウドは、不意に人の気配を感じて視線をそちらへ向ける。少し離れた場所で足を止めたのは奇襲を担当するファルルだった。
「大丈夫。私たちが諦めなければきっと、ここにもいつか笑顔が戻ります」
 問い掛けるでもなく、言って。ファルルはそっと、息を潜めている間にか少し土のついた顔に微笑みを浮かべた。絶対を語る事は出来ない。だが出来る限りの事をすれば未来は変えられる。そう思えるからこそ、彼女は戦っているのだ。
 戦闘中、様々な思いに駆られていた彼だ。クラウドは未だ落ち着かない様子で顔を背けようとしていたが、弾かれたようにまた彼女を見返し、視線を巡らせる。
「‥‥ありがとう」
 やがて自然と漏れた言葉。似合わない、自分でもそう思い、その気恥ずかしさからクラウドは大きく視線を外し、しばし黙り込んだ。そして他の陽動班の仲間に声を掛けられると、ゆっくりと身体を起こす。軽く腕を回し、安堵した。これならばまた問題なく戦う事が出来る。歩き出した彼の拳は強く握られていた。

●最後のポイント
 更に作戦を続け、八人は順調に敵の数を減らしていった。きりがないと思えた戦闘も体力的にもこれが最後。ここまでくれば後は全力で戦うだけだ。
 知花が迫ってきたキメラを大剣で殴るように打ち倒し、別の攻撃をその刀身で受け止める。そして周囲に気を払い、退路の指示を出しながら後退した。
 少し離れた場所では、積極的に立ち回り続けるシェリーの刀が深く蜂キメラの胴を薙ぎ、そして鮮やかに抜けていく。彼女は自分の手許、そしてその下で未だ足掻くように痙攣するそれに視線を落とすと、喉の奥から笑い声をあげた。
「バッサリいく感覚‥‥いいねぇ」
 喜色を浮かべたまま、針を向けて襲い掛かってくる蜂キメラに刀身を突き立て、躊躇一つなく斬りつける。刀を、そして手を伝わりダイレクトに響くこの感覚。戦場で無ければ決して得られない、彼女にとっては歓喜を煽る代物だった。
 だがいつまでもここに留まる訳にはいかない。声を掛け合いながら徐々に後退し。最後の、奇襲班の潜むポイントが近付いていた。
 さすがにもうパターンにも慣れ、呼吸も合っている。己の力を過信はしない。だが不安も決して多くはない。終わりはもう目の前だった。

 最後の罠で網にかけ、電磁波で畳み掛けると同時にかつて集会場だったであろう建物が崩壊し、外に出ていた八人は更にそこから距離を取った。残ったのはわずか三十ほどのキメラ。覚醒している彼らにはもはや敵ではない。
 数十分後。
「あーあ。もうお終いかい」
 戦いが終り、黒いオーラが晴れれば急速に熱も冷めていく。舌打ちし、どすりと地面‥‥そこでのたうっているキメラの頭部に刀を突き刺すとシェリーは落胆するように肩を下げ溜め息を吐いた。蜂キメラ自体は弱く物足りなかったが、巨大なキメラ数匹と戦うのとはまた違う感覚だ。心地良い疲労感も追うように自覚する。
「あの‥‥ちょっと、いいかな」
 振り向いた七人を順に見返し、口を開いたのは知花だった。

●眠れる命、そして明日へ
「手伝ってくれてありがとね」
「いえ。だいぶ慣れてきてますから大丈夫です」
 知花は手や衣服についた土を払いながら、少し悲しげに笑みを浮かべた。それにつられるようにファルルもわずかに苦笑を覗かせる。その傍には穴の掘られた後があった。村の中で見つけられた限りの亡骸を埋葬したのだ。さすがに時間が経っていた為不完全な物もあり、簡易な物だったが、しないよりはずっといいと思ったのだ。
 一方で獄門は、用意したポリ袋を何重にも重ね、その中にキメラの死体を幾つか詰めていた。
「それは‥‥?」
「本来ならば獄門が自分で調べておきたい所だがー、あくまで傭兵の身だからねェー」
 眉根を寄せる一に、細心の注意を払い作業を続けたまま獄門が答える。
 然るべき研究機関に今回の戦闘を纏めたレポートと共に提出し生態研究を依頼すれば、他の地域に同種類のキメラが出現した場合や万が再び増殖した場合、その対処もずっと正確で迅速な物になるだろう。
「‥‥私達に出来る事は何も、戦う事だけではない‥‥そういう事ですね」
 立ち上がると、寒さの為か右手で自分の身体を抱くようにして祐希が呟いた。
 傭兵である限り、能力者として活かせる力はバグアやキメラが潜む場所に赴き、全力を以ってそれらを蹴散らす事。それが真価であり、エミタの適性が無かった人々の希望でもある。だが、がむしゃらに戦い続けるだけでは一握りの勝機すら露と消える。
 戦場で戦うのは傭兵ばかりでも、生きる為に皆が戦っている。UPCとそこに属する軍人、未来科学研究所や未知生物対策組織。戦う力はなくとも、何らかの形で人々を支援する企業や前を向き記憶の闇を払う為に依頼をする一般人。生き続ける人々がいて繋がり合って、だからこそ立ち向かえるのだ。
「なら、この水も貰っとこうかい」
 戦いが終わったことで熱も冷めたシェリーが剥き出しの浴室、そこにかろうじてくっついている蛇口を軽く蹴って落とした。勢いは弱いが、絶え間なく壁を伝い流れていく水に視線を落とす。
「フォースフィールドの抑止効果も多少なりとある‥‥かもしれないしねぇ」
 もっとも、今回戦った蜂キメラのみに若干だが効果があった、という可能性がかなり高く、過剰に期待は出来ない。念の為調査するに越した事はない、と言った程度の物だ。
「後は帰るだけ、か」
「‥‥陽が暮れる前に、帰らないとね」
 クラウドとMIDNIGHTもそれぞれ呟き。見上げた空にある陽は少し傾き始めていた。