タイトル:夏のプールを開放せよ!マスター:磊王はるか

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/08/15 10:07

●オープニング本文


 大阪の夏は暑い――それはもう寝起き早々から吹くような汗の洗礼を受け、昼間にはゆらゆらと陽炎が立ち、夜になってもエアコンが無いと寝苦しくて仕方がないと言う、それくらいの暑さなのである。
 一説によれば、それはかつての東京と同様にコンクリートの高層ビルが並ぶ、所謂コンクリートジャングルであるだとか、地形的に山で囲まれている部分が多い為に盆地の様に熱が篭りやすいのであるだとか言う研究者の話もある。
 けれども、そんな理路整然とした理由なぞはどうでも良いのである。特に現地で生活している人々の間では――
「‥‥ああもう、暑苦しくて仕方がない! それとバグアがすごく憎い、今なら能力者にすらなれるような気がするわい!」
 大阪某所にあるウォーターパークのその一角で、がーっと牙を剥きながら野球狂なおっさんよろしくちゃぶ台返しの様な仕草をして、一人の男が燦々と照りつける太陽の下で叫ぶ。その隣には浅黒い肌の青年が一人、どうしたもんかなぁと立ち尽くしている。
「いや、暑いのは確かなんだけどさぁ‥‥それより先にプールをどうにかしないと不味いっすよねぇ、オーナー」
 そう言った彼の視線の先には、ざばざばと波が打ち寄せてくる大量の水を湛えたプールがあった。一般的に言う波のプールと言う奴で、海水浴にいけないご家庭や機動力に乏しい学生さんからすると夏の娯楽の一つを司っていると言っても過言ではない物だ。他にもスライダーや流れるプールもあるのだが、そのどれにも人っ子一人見受けられない。
 その代わりに、ピンク色で人間程の大きさをした丸っこく見える物体が波のプールと流れるプールに見て取れた。他にもあるプールにももしかしたらいるのかも知れないが、彼には怖くて覗きに行けなかった。
「暑いのも腹立つが、なんでうちのプールがこんな目に合わなあかんのだぁ〜〜!!」
「‥‥ま、運が悪かったって思うしかないっすよ。でも早くこいつら片付けないと営業の再開、出来ませんよ」
 俺も監視員のバイト続けられませんし、と青年が愚痴る。自分の他にもバイトは居るが、流石にプールの中に点在しているぷるんぷるんとした瑞々しさすらあるピンク色のスライムは駆逐出来そうにはない。
 いや、実は無謀にもオーナー命令で一度挑戦したのだけれども、参加したバイト達はあっさり捕まってしまった挙句、何故か水着だけを溶かされてポイスと放り投げられてしまったのである。その後、参加した男女からは管理係だった彼に「先に傭兵に頼めよ!」とブーイングが来てしまったのであった。
「そ、それもそうだな‥‥やはり能力者に頼むしかないだろうか?」
「当然でしょ、報酬も必要になりますけど‥‥どうしますかねぇ。とりあえず、早めに予定が取れた日の午前中にでもさっさと片付けて貰って、後はフリーで楽しんでもらうってのは」
 バイト監視員の言葉にオーナーと呼ばれた男は、あんまりお金かけられないんだけどねぇ、と渋々頷いた。報酬額はあまり用意出来ないが、仕事が片付いた後は一日フリーで楽しんで貰って、売店での飲食やビーチグッズの貸し出しやらを無料にすれば良いだろうと、先程までいらついていた脳がくるくると回転し始める。
「それにプール内でのご飯やらビーチマットとかのレンタルとか全部無料にしよう。それならきっと来てくれる‥‥だろうか」
「打倒じゃないですかね? あのスライムが片付けば、1日2日の損なんか取り戻せますって」
 そんな訳で、本部にスライム退治と言うおまけのついたプールへのご招待――いや、依頼が届けられたのであった。まる。

●参加者一覧

三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
ミオ・リトマイネン(ga4310
14歳・♀・SN
香坂・光(ga8414
14歳・♀・DF
ゼフィリス(gb3876
16歳・♀・DF
九頭龍・聖華(gb4305
14歳・♀・FC
上杉 怜央(gb5468
12歳・♂・ER
月城 沙耶(gb7550
16歳・♀・FC
シャイア・バレット(gb7664
21歳・♀・SF

●リプレイ本文

●夏だ、プールだ、以下略
 空には燦々と輝く太陽。雲ひとつ無い青空の下、よくぞ辿りついた我が精鋭達よ! と言わんばかりに駆けつけた能力者達の殆どは水辺での戦闘に則した姿へと変えていた。すなわち、水着である。
「ちょっと違う人も居るけどね」
 淡々とした様子で三島玲奈(ga3848)の姿を見て呟くのはミオ・リトマイネン(ga4310)である。何故かセーラー服に身を包んでいるのだ。
「だ、だってそういう依頼多いじゃない」
「そういうって、どういうのなのかなあ」
 動揺の色も露に反論する玲奈であったが、更に香坂・光(ga8414)の素朴な疑問が追い討ちをかける。、と凹む最中にやってきた上杉 怜央(gb5468)の姿に、ぷふっと軽く噴き出した。
「ちょ、ちょっとなにそれっ!?」
「ううー‥‥水着を忘れちゃったのでレンタルをお願いしたらこんなの渡されちゃったんですよう」
 もじもじと怜央が言う。彼の姿を上から下まで視線を向けると、どーみても女性用のタンキニであった。しかも、何故か黄色。
「黄色は扇情の色と言うが‥‥」
 やれやれと言った様子で月城 沙耶(gb7550)が――いや、今はもう一人の人格であるマイだが――が肩を竦める。そんな彼女は黒のビキニを着けており、落ち着きのある色気を宿していた。
「あら、可愛らしいじゃない♪」
「そ、そうでしょうか‥‥」
 オトコノコだけどね、と艶やかに苦笑するのはシャイア・バレット(gb7664)だ。肩の少し上で切り揃えた金髪を軽くかきあげると、その度に揺れる豊かな双丘を隠そうとして、申し訳ない程度の白ビキニが何とか頑張ろうと踏ん張っている。
「‥‥そろそろ、狩るのじゃ」
 このまま和みモードに入りそうと思った九頭龍・聖華(gb4305)が流れを本題に引き戻すべく加わる。そんな聖華も小さな体躯の割りには着痩せする体質なのか、水着の下から押し上げる様にふくよかな二つの丘が主張していた。
「水着‥‥久々に‥‥着ましたので‥‥恥ずかしいです‥‥」
「‥‥良いわね」
 黒のラインが入ったワンピースに身を包んだゼフィリス(gb3876)回復、流し切りが、少し胸元が苦しいとばかりに右手で肩の紐を浮かせながら言う。くにくにと指で紐をいじるたびに彼女の豊かにも程がある胸が、布地の向こうで苦しそうに形を変える。その様子につい無意識にミオの口からぽろりと漏れたり漏れなかったり。
「プールで早く遊ぶのに、さっさとキメラ倒しちゃおうよ♪」
「‥‥うむ‥‥そう‥‥しよう」
 光の言葉に聖華がこくりと頷く。こうして、漸く二手に分かれてのスライムキメラの退治が始まったのであった。

 ――A班。覚醒後から妙にテンションの高い聖華を筆頭に流れるプールへと訪れていた。水音と共に流れていくプールの水の中に、ゆらゆらとピンク色の姿が怜央にも視認出来る。
「あ、あれですね‥‥」
「あれらを退治すればプールが一日貸切か、悪くない。しかし、随分と派手なスライムだね」
 覚醒し、髪の色を銀に染め上げ、青白い燐光を放ちながらマイが薙刀「疾風」を軽く振り回して構える。既にノリノリである聖華は指揮棒の様な超機械、ラミエルをぴっと水中に居るスライムに向けて口を開いた。
「問うぞ! スライムよ! お主はイチゴ味か? それともピーチ味か?」
 がしかし、勢いある聖華の言葉にもスライムは反応しなかった。
 けれども、何か近づいてきた事だけは本能で察知したのか、にゅるーんっと水底に居たピンク色の軟体生物は蛇が鎌首をもたげるように半身だけ姿を現したのである。
「で、出てきましたよ!」
 咄嗟に姿を現したキメラに怜央が練成弱体を用いて敵を弱める。動きを僅かに止めた一瞬を逃さず、聖華がラミエルから電磁波を放った。
 聖華の電磁波を受けてキメラは僅かに震える。だが、次の瞬間には前衛として手近な所に居たマイへ体を伸ばして襲い掛かった。
「こいつ‥‥なかなか元気じゃないか!」
 触手のように伸ばした液体の腕を受けながら体捌きによって回転。遠心力を上乗せした斬撃をマイは繰り出した。途端、ぶよんとした手応えを感じ、大して効果が無い事を悟る。
「難儀な奴だ、このままじゃ足場が不安だな」
 プールから出てもらえれば少しは楽に殺れるんだが、と瞳を細めて呟きを漏らす。次の瞬間、先程受けた液体の腕によってはらりと上が落ちかけた。
「――な、しまったっ!」
「沙耶さんっ!」
 頼り無い布切れを押さえつつ、マイが後ろへ飛び退く最中に玲奈が試作型水中剣、アロンダイトを携えて走り出す。
「足が沈む前に踏み出す、水上歩行の要領よ!」
 空元気で自らを後押しして水上を駆けようとするも、当然ざぶざぶと水に沈む。間合いに入って急所突きを繰り出すも、セーラー服が水を吸って彼女の挙動を鈍くさせる。
 当然ながらそんな動きを鈍らせた得物を敵が逃す訳も無く、スライムはしかえしとばかりに広がってたぱーんっと彼女の頭上から覆い被さった。
「ボク、助けに行きますっ!」
 蛍火で削る聖華を他所に怜央が機械剣αを携え、続いて水の中へと突入する。その間に玲奈のセーラー服は溶かされ、その下の体操服と紺色のブルマをぐにぐに責めたてる。
「ちょ、ちょっと待ってよ! ‥‥ん、んふぅ‥‥っ、だ、ダメぇっ! ぶ、ぶるまは覚悟してたけど、その下はいやぁーっ!?」
「えいっ!」
 怜央が柄から発生させた刃を玲奈を避けて突き立てると、びくんと傷みでのけぞって玲奈を勢い良く放り投げる。
「今日はなんでこんなにツいてないのぉーっ!?」
 そんな叫びを上げた直後に大きな音と水柱を立てて着水する彼女。だが、芸人である玲奈がその程度で運命に屈するであろうか? ――それは、否。
「‥‥な、なんと大胆な」
 妾、何か今回、影薄いかも。そんな事を聖華に考えさせるくらいの出来事が次に起きた。
「――こんな事もあろうかと持ってきていた良かった、S田さん的な意味で!」
 夏の輝く光の中に立つ影は――鍋で申し訳なさげに下半身を隠す玲奈であった。
「気、気をとりなおして。喰ろうて味を確認してやるわ!」
 蛍火を構え、赤金色の瞳に炎を宿して聖華が斬りかかって行く。雷光の如き体捌きで彼我との距離を無くし、瞬速の斬撃を放つ。
 受けた斬撃に苦しげに震えるキメラ。けれども聖華の猛攻はまだ続く。
 がぶっ☆
 勢い良く聖華は噛み付いて、スライムの一部を千切りとった。そしてもしゃもしゃごくりと飲み込んでしまう。アマガミなんてレベルじゃねえ!
「お主‥‥淡白‥‥な味じゃな‥‥」
 ピーチ味でもイチゴ味でもない、なんとも言い表し難い淡白な味だったので、残念そうに感想を漏らす聖華。そんな彼女を他所に、玲奈が倫理的な意味でひみつへいきである鍋の蓋を低めに構えた玲奈が途端、殆ど布切れと化した体操着とぶるまのまま突っ込んでいく。
「このまま殺る!」
 更にマイが追随し、円閃を放った。横一文字に断たれたピンク色の生物はその一撃で活動を停止したのであった。
「ふっふっふ‥‥羞恥耐性は整ったわ」
 鍋の蓋を片手に呟く玲奈の反対側の手には何時の間にか黒いTバックがあった。そして即座に身に纏う。
「今日はこれしか持ってなくて、手間取ったけど心の準備は出来たわ」
 はっきりとした口調で述べる彼女だったが、後ろで怜央がぶわーっと耳まで真っ赤にしている事には気付かない。
 ‥‥ボクの好きな人は少尉、少尉なんですっ! そう言い聞かせる怜央の前には手ブラ状態のマイこと沙耶、布切れ状態の体操着から目の前でTバックに着替えた玲奈の姿があった――

 一方、B班はと言うと――
 造波装置によってざざざ、と穏やかな波が生まれるプールの中にA班同様にピンク色の生物を発見した光達は其々に準備を整えていた。
「‥‥バグアも何故季節に合わせたキメラを‥‥それとも精神的に追い詰める作戦?」
「とりあえず誘き寄せなきゃいけないわね、私が囮役しましょうか?」
 ミオの呟きにシャイアが言うと、光とゼフィリスが挙手をする。
 囮役が決まると、彼女らは慎重に波のプールへと足を踏み入れた。ざぶざぶと水音を立てて歩くと、こちらに気付いたのかするすると浅瀬へスライムは寄ってくる。
「来た来た‥‥♪」
「行きます‥‥」
「ほら‥‥こっちよ‥‥?」
 光とゼフィリスが大きく水音を立て、ミオが胸を寄せ上げて谷間を強調するポーズをとってみせる。細身にむっちりとした双丘を持つ彼女を普通の男が見れば、それだけでふらふらと色香で迷うに違いない。
 色香に負けたかどうかは不明だが、キメラは速度を上げて浅瀬に来た。既に半分以上露出している有様だ。
「今よ!」
 誘導の最中に敵背後へと回ったシャイアが電磁棒で思い切り強打を放った。鈍い音が響き、打撃が通ったと見た彼女だったが、スライムは彼女へ仕返しとばかりにのしかかる。
「あんっ!?」
 頭からスライムに囚われたシャイアの水着は、瞬く間にほつれて布の切れ端へと姿を変えていく。
「んぅ‥‥何なの‥‥この感触‥‥」
 スライムが蠢く度に触れた箇所に熱を感じ、艶めいた吐息が漏れる。外で光達が攻撃する最中、ちょっと不味いかしらと思い始めた時に彼女の体が解放された。
「大丈夫!? さっさとこのキメラ倒しちゃおうよ!」
「ありがと、助かったわ‥‥」
 彼女を解放したのは莫邪宝剣を手にした光であった。シャイアを助けるべく、戦闘に夢中になったゼフィリスが敵の意識を誘い、更にミオが超機械αによる追撃を虚を突いて放つ事で畳み掛けていく。
「‥‥もうすぐ‥‥!」
 戦闘自体に不慣れなゼフィリスは両の手につけた四本の鋭い爪でスライムを切り刻んでいく。キメラが液体の腕を伸ばして巻きつくが、構わぬとばかりに腕を振るう。
「あたしがプールで遊ぶためにさっさと倒れろーっ!!」
 その攻撃に敵の限界が近いと見た光は、キメラに巻きつかれながらも止めとばかりに腕を振り上げ、機械剣を中央部に深く突きたてた。
 途端、ずるりとその一撃で脱力し、キメラは徐々に水に溶けてその姿を消し去っていく。ゼフィリスは荒れた呼気をゆっくりと整える。だが水面に移った自らの姿に驚き、か細い声で絶叫して水の中へとしゃがみこんでしまう。
「あたしも水着、溶かされちゃったよ」
 しょうがないからタオルで巻いておこ、と光は自分の胸を隠すように素早く元水着の上に巻きつける。
「‥‥そりゃあ、水着が無くなったらそうなるわよね」
 敵と距離を取って戦っていたミオはゼフィリスの一部始終を余す事無く瞳に収めていた。しゃがみこむ最後の最後、隅の隅まで――
「いい、目の保養だったわ」
 うっとりとした声音で白磁の肌を思い起こしながらミオは呟いたが、狼狽して水の中に隠れた彼女の耳には届かないのであった。

 あれから落ち着いて、他のプールの確認を提案したシャイア達はウォータースライダーへと訪れていた。
「まず私が滑って、キメラが居るかどうか確かめるわ。滑るのが怖い子がいたら、一緒に滑ってあげるけど?」
「す‥‥すいません‥‥一緒に‥‥滑ってもらえますか‥‥?」
 先に前に出たシャイアの提案に新たな水着になったゼフィリスが手を上げる。分かったわ、と艶やかな笑みを零してシャイアは彼女を先に座らせ、自分がその後ろで抱きしめるように腰を下ろす。
「行くわよ?」
「‥‥はい」
 ゼフィリスは背に彼女の豊かな胸を感じて頬を仄かに染めながら頷いた。そして下から噴き出す水を潤滑油代わりにして滑り出した。スピードが乗って胸の水着がずり落ちそうになりながらも二人は滑り続け、そのまま下のプールへざぶーんと着水した。どうやらここにはキメラは居なかったらしい。
「‥‥後はひょうたんプールかしらね」
 立ち上がって暫くして口にしたシャイアの後ろで、勢い良く新たな水柱が立った。光である。水の中からすっくと立ち上がると、他は大丈夫! とにっこり笑う。
「これで全部のプールを見終わったから依頼完了、かな?」
 彼女達が滑っている間にどうやら光が見てきたらしい。となれば、オーナー達に退治が済んだ事を説明すれば終わりだ。
「ぷふぅ‥‥色々とあったけど、これでゆっくりとプールを堪能できるね♪ ‥‥思いっきり遊ぶのだ♪」
 ご機嫌気分で光がにっこりと微笑みを浮かべたその瞬間、ぱさりと摩擦で緩んだタオルが落ちたのであった。まる。

 そうしてプールに巣食ったキメラを駆逐した彼女らは、午後のひと時をのんびりと満喫していた。玲奈はビーチマットの上で日焼けを楽しんでおり、ミオはプールサイドでトロピカルジュースを片手にゆったりとした様子で寛いでいた。つい先程までは光がプールで思い切り泳ぎまくっていたが、その姿は見られない。
「‥‥眼福」
 ぽそりと、ウォータースライダーのある方を見てミオは呟く。ちょうど、先程沙耶が滑り終えて、直後にゼフィリスとシャイアが正面から滑ってくるのが見えたのだ。
「‥‥ひ、ひゃあぁぁっ!?」
「きゃああっ♪」
 か細い叫びが上がった直後、もの凄い速さで水の中に突入するゼフィリスとシャイア。暫くしてざぱーっと立ち上がると、二人分の豊かな白い乳房が勢い良く揺れて、プールの監視員すらも一瞬動きを止めてしまう。
「‥‥ただ浮いてるだけなら私に換わってよー」
 たこ焼きやらカキ氷を食べてのんびりとプールに浮いていたマイの意識に沙耶が声をかけてくる。確かに自分だけで満喫するのもあれかと思い、僅かに舌打ちをした後、
「――やっぱりプールに来たらあれだよねっ!」
 マットから下りて、ゼフィリス達が昇り始めてるスライダーへと沙耶は向かっていった。
「こ、ここは地獄の一丁目ですよぅ‥‥」
 怜央はスライダー付近での彼女達の様子に思わずしゃがみこむ。スライムの戦いの時も水着が溶けたり躍動感あるお姉さん達に赤面したが、今はもっと厳しい――下は‥‥うん、まだ大丈夫、大丈夫。
 などと自分に言い聞かせている怜央を他所に、聖華と光は飲食コーナーに根を下ろしていた。先程まではプールで泳ぎまくったり、ビーチチェアーで昼寝をしたりと各々で楽しんでいたのだけれども、お腹が空いてしまったらしい。
「‥‥大して‥‥量‥‥食べられなかった」
 聖華はピンク色のナマモノをたくさん食べられなかったので、どうやら売店の食べ物を食い尽くす考えのようだ。
「ねえ、カキ氷とかも美味しそうだよね♪」
「‥‥一つ‥‥頼んで‥‥焼きそばのあと‥‥また頼む」
 既に彼女達のかけた卓には4枚ほど皿が重なっており、光はそれなりに満足しているのだが、聖華は治まる様子が見られない。
 そんなこんなで、ちょっとオーナーが経済的に泣くようなところもあったが、スライムを退治した事でウォーターパークに平和が戻ったのであった――その後にバニー姿の女性が近所で見かけられて、ジャーンジャーンとか銅鑼が鳴らされたとか鳴らされないとか言う出来事があったそうな。