タイトル:【Gr】後退戦線マスター:音無奏

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/03 23:16

●オープニング本文


「イヴェール曹長!」
「焦らずに。‥‥部隊損傷率50%超えですか、一旦下がった方がよさそうですね」

 スペイン防衛戦、山岳・森林地帯に戦線を敷く一部隊。
 バグア軍の猛烈な攻勢を前に、戦況は芳しくない。攻めること叶わずとも、せめて守りきれれば――と思い、しかし現実は彼らに後退を強要する。
 膝にノートPCを置き、送られて来る情報を打ち込みながら。リエル・イヴェール(gz0090)曹長は物憂げに息を吐いた。
 ヘッドフォンに耳を傾けたまま、傍に立つ兵士に視線を送る。

「‥‥状況を」
「本営は退避済みです、我々は自分のことだけ心配すれば宜しいかと」

 実に端的に言い渡される状況説明。自分たちだけを心配すればいい、とはいうものの‥‥この部隊は割と大所帯だ。
 たかが曹長が率いるには人数が多すぎるが、この付近には数十名のUPC正規軍が交戦を行っている。
 別に特例というわけではない。どういう心積もりがあっての命令かは知らないが、理不尽は他も割と似たような状況であり、そういうことは考えるだけ無駄というものだ。
 要は自分が指揮官で、まだ帰還できない。それだけを理解すればいい。
 ―――まずは部隊を立て直さないと。

「‥‥拠点は」
「確認済みです、バグアの姿は見当たらず、補給拠点としては申し分ないかと」

 手持ちのノートにコマンドを打ち込み、周辺の地図を呼び出す。
 自分たちの居場所、今まで送られてきた各部隊の状況が自動的に表示され、見積もった撤退先が赤い枠でくくられた。
 ‥‥身を一旦隠すには申し分のない場所、しかし部隊がそこまで持つかどうか。

「‥‥傭兵たちを呼んでください」


 この部隊では、傭兵たちもまた戦力として参加していた。
 その彼らを呼び戻し、各人の損傷が支障のないレベルにあるのを確認してリエル曹長は頷く。
「‥‥皆さん、ご無事で何よりです」
 怪訝な顔をする傭兵たちを見ると、表情を変えずに首をかしげ、程なくして合点がいったようにもう一度頷いた。
「‥‥この地域は自分が指揮官です。依頼説明の時に言い忘れてました」
 お話は後ほど伺いますとばかりに端的な説明。面々が口を噤み、他に言われることがないのを確認すると、リエル曹長はこれからの行動を説明し始めた。
 戦線の損傷率が半分を超えたために、UPC軍は一旦部隊を下げ、補給拠点を設営して態勢を立て直す必要があった。
 しかしバグア軍の数が多く、このままでは無事たどりつけるかどうか不安なため、傭兵たちに直々に動いて欲しいということを。
 撤退の護衛か、と問われるとリエル曹長は首を横に振る。
「幸い、バグア軍は後ろにまで回っていないため、護衛が必要なほどではありません。ただ‥‥」
 今前線で交戦しているUPC軍となるとそうもいかないのだろう。つまりは――前線に赴いての負傷者の回収、部隊の撤退援護。
 最終的な目標は、バグア軍に悟られることなく補給拠点を設営し、部隊を回収することだという。
「バグア軍の数は多いです、くれぐれも突出しないように。‥‥この任務、お願いできますか?」

●参加者一覧

篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
ステラ・レインウォータ(ga6643
19歳・♀・SF
美崎 瑠璃(gb0339
16歳・♀・ER
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
須磨井 礼二(gb2034
25歳・♂・HD
依神 隼瀬(gb2747
20歳・♀・HG
鷹代 アヤ(gb3437
17歳・♀・PN

●リプレイ本文

 撤退が決まれば、後方は途端に慌しくなる。
 順序立った命令は継続した指揮を必要とせず、各自自動的に行われ、目的地に向かって根拠地の移動は開始されていた。

 季節はまだ秋。枯葉を踏みしめ、ステラ・レインウォータ(ga6643)は陣営の一角、積み上げられた物資の前に準備をすべく訪れていた。
 忙しくなる前に抜け出してきたのだろう、要請に応じて曹長より用意されたのは担架の代わりになりそうなもの‥‥というか、担架そのもの。それと軍用の無線周波数を記したメモが予備と分担を兼ねて三枚ほど。
 本来なら、担架はその辺で手に入れる事が出来る品であるはずもない、が――けが人を避けられない戦闘となると流石に用意はしているらしい。
 ‥‥指揮を執るリエル曹長自身が医師候補であるというのも大きいのだろう。
 後方は担架への依存度がそれほど高い訳でもなく、本来なら貸し出しの範囲には入らない所だが、今回だけは特別に貸出許可が下りた。
 仕事に戻る曹長に別れを告げ、貸し出されたそれを抱えてステラは仲間の方へと戻る。
 KV用に開けられた広場の一角、須磨井 礼二(gb2034)が軽く手を振って出発準備が整ってる事を示し、ステラが掲げる物資を見て頷くと二人共々リッジウェイに乗り込む。
 イスル・イェーガー(gb0925)だけは役目のため陣営に残り、他の七人は目的を果たすべく前線へと赴いた。

 人が死ぬのを見ていたくはない、前線も気にかかるが――後方も整えておく必要がある。
「拠点の設営‥‥か‥‥。しっかりやらないとね‥‥責任重大だ‥‥」
 後方にある拠点までついていくのだと、申し出るイスルに曹長は怪訝な色を少しだけ浮かべ、
「‥‥道は覚えておいたほうがいいですよね」
 と了承を下す。
 一刻も早くけが人を収容する必要もあり、代理指揮に部下を残して、曹長は第一陣の移動に加わっていた。
 進む最中、曹長が抱えたノートPCディスプレイには周辺の地形と進むルート、交戦している大まかな地域や戦況などが書き記されており、大まかな位置関係が見て取れるようになっている。
 イスルに何か特別やっておきたい事でもあったのかと尋ねつつ、曹長は無線から飛ぶ定期連絡にも耳を傾け、前線と移動の状況はリアルタイムで書き込まれていく。

 出発直前の頃、前線へと赴く傭兵たちの表情は様々だった。
「一人でも多く、助けないと‥‥その為に、来たんですから」
 ステラのように真剣に、硬く引き結ぶがごとく思いを抱える者もいれば、宗太郎=シルエイト(ga4261)は機体から軽く身を乗り出し、見送る曹長たちの方を振り向いていた。
「それじゃ、ちょっと無茶してきますよ」
 ‥‥とは言っても、マンガのヒーローみたいなカッコいい立ち回りは出来ないのだと、そう笑って。
 戦況が芳しくないのには気づいていたが、案の定かぁと美崎 瑠璃(gb0339)は感想を漏らす。
 敵に背中を見せるのは悔しいけど、このままでは自分たちも危なくなってしまう。
 うーん、とでも言いたさげな。やきもきにも似たもどかしさは手早くどこかへと押しやり、XA‐08B阿修羅――愛称「Lapis Lazuli」を向かわせた。
 やる事が決まったのなら、さくっと行って戻ってくるに限る。
 無線を傍受するステラが戦線の大体の位置を特定し、KV班に行き先を要請する。
 遠く聞こえる爆音、何人かにとっては馴染み深いそれは戦いの合図で、向かおうとしてはやる心を、ステラの位置確認を復唱する情報が後押しする。
 場所を見繕い、足を踏み出して開ける視界。近くなり、一層響く鈍い着弾の音と共に砂埃を孕んで大気が舞い上がり、風が薄く吹く先にはワームを筆頭とした敵軍勢が、後下方すぐ近くには煙の中塹壕に身を潜める兵士たちが見えた。
 誰かがエンジンを切ったのを合図に、回収と足止めに分かれた二組の傭兵たちは自らのやるべきことに向かって行動を開始する。
 到着したならまずは敵をひきつけるため、宗太郎・瑠璃・田中 アヤ(gb3437)の三人で戦場の比較的高い前方へと。
 篠崎 公司(ga2413)は目立つ事を避けるため、回収班のかなり後方で遊弋し、ジャミング中和と空中警戒に専念している。
 ミサイルを準備しようと手を伸ばしかけた宗太郎は、表示される武装がグレネードになっている事に対して首をかしげた。
「‥‥出発のときに間違えたか?」
 真相は不明だが、‥‥今回は控えたほうがいいだろう。派手といえば派手だが、グレネードを想定して作戦を練った訳ではない。
 敵をひきつけるような派手な攻撃は瑠璃が使う突撃仕様ガトリング砲、そして宗太郎の3.2cm高分子レーザー砲となり、その後ろからアヤが片膝をついてライフルを構え、必中の距離に敵が入ったところを射撃して援護する。
 トリガーを引き、高速で連打される銃撃のスタッカート。一回に50発の射撃、反動で暴れるガトリングを瑠璃は気合で押さえ込み、その銃口をワームたちの方へ向けて打ちのめす。
 光条の先に爆発が上がり、ぐらりと揺れる敵影。気を緩めず、重ねて放った追撃に着弾の手ごたえがあるのを確認し、宗太郎は攻撃の手を休めなかった。
 ――手を止めていいのは、敵勢が完全に地に伏した時だけ。
 その後方、塹壕後方にリッジウェイは車体を止め、開けたハッチから依神 隼瀬(gb2747)が、ステラも続いて滑り降りてくる。
 塹壕後方に身を隠し、兵士たちに声をかける。自分たちが撤退支援に来たこと、援護するので引き上げて欲しいと伝えれば、統率らしい兵士がそれに頷いた。
 怪我人の有無については、横に振る首がここではないと示す。爆音の中、手振りも加えて位置情報を明確に示し、双方で頷き合うと移動を開始する。
 兵士たちは撤収の準備へと。銃弾と破片が飛び交う中、機動性の確保と乗車中の隙を避けるため、三人は再乗車を行わずそのまま移動し、徒歩の二人をリッジウェイの影に収め、駆け足で素早く別の塹壕へと移る。
 ――この戦いにおいて、見逃した点を一つ言うのならば。偏に、目的に対する手段が及ばなかったことだろう。
 戦場において、60メートル・70メートルというのは決して長い距離ではありえない。
 戦車サイズで言うなら殆ど至近距離と言ってもいい位で、武装の届く範囲が狭いゆえに、そう遠くの敵までひきつけられている訳ではなかった。
 無論、まだ撤収を決め込んだ訳でもなく、今一度に沢山来られても困るのは確かなのだが。
「ちっ‥‥!」
 リッジウェイから後ろに飛びのき、隼瀬が薙刀を振るう。上方に向けて描いた弧筋が鈍い手ごたえを返し、直後に赤い体液が視界に撒き散らされた。
 そのまま引きずるようにして地面に叩き付け、間髪を入れず再び薙刀を一閃させる。
 キメラの器官を跳ね落とし、更に一撃を加えればキメラは完全に動かなくなった。
 遥か前方、抜けてきたキメラが未だ多数いる事を確認し、もう一度薙刀を構える。後ろを見やれば兵士たちの見守る中、怪我人を見つけ出したステラが治療を始めていた。
「ひどい傷‥‥いま、治しますね」
 掲げるスパークマシンが作動し、力を発揮し始める。淡い作動音と共に血に塗れた傷が治癒され始め、ひとまず動かしても支障のない状態まで繰り返すと、兵士たちに対して問題はなくなったのだと頷きを示す。
「済みません。手の空いてる方、手伝っていただけませんか?」
 持参し、差し出した救急箱はすぐに他の手へと受け取られた。余り時間はない、塹壕から出てこないよう兵士とステラたちに頼み、リッジウェイを礼二に動かしてもらって隼瀬は前方へと出る。
 大きな攻撃は礼二が機盾「アイギス」で阻み、その影に守られながら隼瀬が武器を振るい、後方を目標とするキメラたちを阻み、屠っていく。
 今回、回収と防衛を目的とする礼二が携えた武装は一つのみで、攻撃にこそ加われるものの、その弾数は決して多くない。
 ――つまり、突き詰めれば今の攻撃手は隼瀬一人。
 竜の血を持ち、彼女自身は一人でも相当な継戦能力を持つが、一人ゆえに敵の消化具合は思わしくなかった。
 敵を屠るには、どんな戦士でも最低一回は武器を振るわなければならない。その度に隼瀬の体力は消耗し、疲労した体を掠った攻撃が苛む。
「イスルが合流するまでは一人、か。数で来られると厄介だが‥‥これ以上やらせるものか!」
 だが、彼女は引かない。振るわれる攻撃を槍の柄で受け、石突きの方に受け流せば返す刃で敵を切り裂く。
 肉の潰れる音、劈く銃声がそんな中に突如混じり、隼瀬が身を振るって振り向いた後方には塹壕の上から薄く煙を吐き出すライフル。
「‥‥来た、よ。‥‥お待たせ‥‥」
 次弾を装填し、誤射を避けるため少し離れた敵をメインに穿つ。隼瀬は手を休めず、一層強く振るう薙刀を持ってその返答とした。
「礼二さん、そろそろお願いします‥‥!」
 綱渡りだった前方の戦闘にやや焦り、はやる心を抑えながらステラが叫ぶ。
 その声に礼二が返答を返し、他の遮蔽物へと身を寄せる隼瀬を背に、リッジウェイが後方へと移動する。
 ハッチを開ければ、用意の済んでいた負傷者が手早く収容される。
 特に負傷のひどい数人を収容するのにさほどかからず、移動準備は整った。
「負傷者、問題なく回収しました、他の兵士たちも確保済みです‥‥って、そろそろまずいですね」
 機首を調整しながら、礼二のリッジウェイから無線に報告が伝えられる。
 後半、焦りの混ざった言葉が見る先には、敵の応戦をしながらイスルと隼瀬が後退してきていて、その更に先にはワームの増援が向かってきていた。
「負傷者を優先に‥‥あせらないで。敵は抑えているから‥‥その間に‥‥っ」
 銃口を前に向けたまま、イスルが撤退を促す。それに頷き、リッジウェイと兵士たちの撤退が開始された。
「アヤ! こっちはいいから、向こうを‥‥!」
 ロンゴミニアトに持ち替えた宗太郎が叫ぶ、射程が悪いのが影響し、敵をひきつけられていない事が深刻になりつつある。
 唯一の長射程ライフルを持つアヤが攻撃目標を切り替え、遠くのワームを穿つが振るわない。
 一度に一発しか打てないのだ、その度にリロードを必要とするライフルは決して注目を強いるほどの激しい攻撃とは言えず、ワームが後方との距離を詰める。
「あたしが行く! そっちはいける!?」
「やってやる!」
 ディフェンダーを片手にした瑠璃が叫んだ。宗太郎の返答を合図とし、阿修羅のエンジンを吹かす。宗太郎操るスカイスクレイパーが一際強く機槍を振るい、鉄がひしゃげる音。それを背にすると包囲を強引に突っ切り、瑠璃の阿修羅が滑り出した。
「‥‥いっけー!!」
 輪走を開始する、阿修羅にかかる負荷が自分にも同様にかかるが、気に留めない。
 盛大に砂埃を巻き上げながら敵の前でブレーキをかけ、移動中に持ち替えたガトリングの銃身を向ける。
「兵隊さんたちは守ってみせる! 愛と正義のガトリング一斉射、くーらえぇぇぇっ!」
 再び開始される自動射撃の嵐、突然の乱入に足を止めたワームたちがガトリングの餌食になる。
「美崎さん、下がって!」
 アヤの援護射撃を受けれるように意識しながら、間合いを測って後退。進路をずらし、後方から逸らすようにひきつけていく。
「砲撃支援、開始しますよー!」
 後方から発されるエンジン音。回収する兵士たちもいないのと、これ以上長居するのは得策でないという判断ゆえに、ステラを含んだ回収班と兵士たちが離脱していく。
 そこからたっぷり三分。ワームたちの目標は唯一残った三人に集中し、いい加減時間を稼いであしらうのも限界だと思われた頃――
 途端、言いようのない不快感と計器類の乱れが全員を襲った。
「シルエイトさん――!」
 公司の無線通信はとどかない、が、前線にいる彼らははっきりと異変を感じ取っているはずだ。
 囲まれていた。
 ふわふわと空に浮くキューブたちはいつの間にかその数を増し、前線の三人を取り囲んでいる。
 人の歩行よりは遥かに遅いその移動速度、しかし気を払わなかった故に、接近するチャンスを与えてしまっていた。
「引くぞ!」
 エンジンと共に発される声、瑠璃の機体から煙幕が吹き出し、周辺を覆う。
「これでも‥‥食らっとけ!」
 迷いを挟まず、宗太郎が間違えて持ってきたグレネードを投擲する。煙幕に突っ込んで来ようとしたワームと、グレネードがぶつかる手ごたえ。一瞬後に派手な爆風が巻き上がり、爆音と共に前方一帯を蹂躙した。
 その間に転身を済ませ、三人が後方へと駆け出す。もはや誰かを巻き込む心配はなく、がむしゃらだった。後はワームたちを撒くだけ。
 背後からは大地を踏む噛み合った機械音、そして此方に向けられる銃声が響き、ワームたちが迫ってくることを示している。
 数刻前とまったく変わらないその攻撃は、しかし機動性の下がったKVを正確に打ち砕く。
 足をもつれさせながらも疾駆は止めない。公司のアンチジャミング、宗太郎の支援がある程度効いてはいるが、状況は芳しくなかった。
 払いのけたジャミングを更に上書きして押しつぶすノイズ。二機がかりでも分は決して良いのだとは言えず、ささやかな抵抗は付近で繋がるだけまだ有効だと言える類だろう。
「お前ら‥‥」
 周辺は森林地帯。足の遅いキューブは振り払ったのか、数分走ればキューブのノイズは消え去り、ワームやゴーレムだけが追ってくる。
 公司の手助けによって、背を向けていても判る追ってきた敵数は僅か数体、それを背に宗太郎は勢いをつけて足を止め。
「しっつこいんだよ!!」
 全身をバネにしてロンゴミニアトを振りぬく。ブースターに体重まで乗せ、限界まで振り絞った一撃がゴーレムの装甲を粉砕した。

 ――で、全員帰還。
 道中で追っ手を始末したことにより、追跡対策も抜かりなく。
 今回の戦闘によって消耗しすぎた分は、後ほど消耗度合いで傭兵たちを順番にこき使う事で、なんとか埋め合わせをしてもらった。
「‥‥ふー。Lapis、お疲れーっ。いつも以上にこき使っちゃってゴメンね?」
 日が暮れて夜、漸く解放してもらった傭兵たちは思い思いに機体と体を休めている。
 瑠璃は阿修羅の近くに腰掛け、宗太郎はリエル曹長の方に。
「無茶したせいか‥‥傷、負っちゃいました‥‥」
 わき腹を押さえ、よろよろとふらつく彼は実際に大怪我一歩手前まで行っていたのだが‥‥。
「‥‥精神的に、深く」
 どうやら物凄く元気のようだ、ステラにでも治してもらったのだろう。
 この調子なら明日続けてこき使っても問題ありませんね、とリエル曹長は心の中で結論を下す。
「というわけで、仕事後の精神ケアを希望します。日本茶とか、平気ですか?」
 まだ終わってませんよ、と更に内心付け足しながら、曹長は苦笑を浮かべて頷いた。
 何故か水筒に入れて持参された番茶にも突っ込むことはなく、どうせ後でその分のツケは貰うのだからと。