タイトル:グリーンドックマスター:大林さゆる

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/19 21:17

●オープニング本文


 ロシア大規模作戦により主力部隊が北方に集中。
 ヒマラヤ山脈付近にあった予備基地の一つが破壊されたとの報告があった。どうやら主力戦の隙をついて、バグア軍の予備軍がUPC予備基地を壊滅させ、生き残った者もほとんどいなく……いや、生存者がいたとしても指で数えるほどであろう。
 ヒマラヤ山脈付近の予備基地は廃墟と化し、キメラも徘徊するようになっていた。報告によると、氷の息を吐く2メートル前後の緑色の犬…グリーンドックというキメラだ。
 今回はそのキメラを退治するという依頼である。エクセレンターのネオガルド・ネルガーは既に現場へと向かっていた。
「グリーンドックか‥名前は良いが、洒落にならんね。キメラが相手ではな」
 ネオガルドの見込みでは予備基地周辺や内部を合わせてキメラの数は7匹前後‥。実際、何匹いるのかは直接行ってみないことには分からない。
 いずれにしろ、バグア軍が徹底的にUPC側を不利にしようという可能性は十分に考えられる。予備基地とて、その対象となったのだ。油断は禁物だ。

●参加者一覧

陸 和磨(ga0510
23歳・♂・GP
鉄 迅(ga6843
23歳・♂・EL
九条・陸(ga8254
13歳・♀・AA
ドリル(gb2538
23歳・♀・DG
翡焔・東雲(gb2615
19歳・♀・AA
北条・港(gb3624
22歳・♀・PN
皓祇(gb4143
24歳・♂・DG
猫屋敷 猫(gb4526
13歳・♀・PN

●リプレイ本文

●集結
 ロシア大規模作戦の最中。ヒマラヤ山脈付近にあった予備基地の一つが破壊され、緑色の大型犬が出没するようになっていた。どう考えてもキメラだ。
 ネオガルド・ネルガーの呼びかけに応えてくれた八名が廃墟と化した予備基地付近までやってきた。皆、防寒服やらマフラーをしていたこともあり、寒さ対策もきっちりとしていた。
「このマフラーも意外と温かいな」
 翡焔・東雲(gb2615)はロッタの手編み?マフラーを首に巻き、山脈から見下ろす光景にしばし心奪われそうになっていた。そして空を見上げる。
「‥‥澄み切った蒼とはこのことだな。できれば観光で来たかった」
 そう‥今回は観光ではない。キメラ退治の依頼だ。気を引き締めると、目的地まで進む。案内人はネオガルド・ネルガーだ。皓祇(gb4143)はセーラー服を着ていたが、ダッフルコートを羽織っていたため、ネオガルドはあまり気にしてなかったようだ。
「もう少しで目的地だ」
 ネオガルドはそう言うと足を止め、皆の作戦を聞いていた。ネオガルドも戦闘に参加して欲しいと言われたが、周囲のバグア軍の動向や他にもキメラがいる可能性も考え、基地の外で見張りをすると告げた。基地内部に潜入したのは陸 和磨(ga0510)、猫屋敷 猫(gb4526)、東雲だった。まずは生存者の確認‥‥念の為、緑犬退治班の鉄 迅(ga6843)、九条・陸(ga8254)、ドリル(gb2538)、北条・港(gb3624)、皓祇たちが死角からの攻撃に備えて後に続く。だが、皆の気配を感じたのか、グリーンドック(緑犬)は基地内部から走ってくる。
「ここは俺たちが食い止める。救護班は先へ行ってくれな」
 迅の言葉に、和磨が頷く。
「ありがとう。それじゃ、俺たちは奥へ行くよ」
 和磨がそう言うと、猫も同意するように告げた。
「助かるのです。仕事が終わったらみんなで温かいお茶でも飲みましょうね〜」
 救護班を見送ると、迅はガッツポーズを取る。
「頼られるとなんか燃えてくるな」
「そうだね。‥と、誘き出すのが先だよ」
 ドリルが言うや否や、基地の外からエンジン音が響いた。皓祇はAU−KVをバイク変形させ、囮になるつもりのようだ。そして九条・陸が呼笛を吹く。これで緑犬がこっちに向かってきてくれれば‥そう思いつつ、陸は息が続く限り呼笛を鳴らした。
「‥‥こっちに来ましたね。このまま外へ誘い出して、全部倒してしまいましょう」
 呼笛とエンジン音が不快に感じたのか、緑犬7匹は外へと走り出す陸たちの後を追ってきた。外へ出た途端、銃声が鳴る。迅が放ったフォルトゥナ・マヨールーだ。
「外に出てくるとは良い子だ。‥ただし、褒美は鉛弾だがな!」
 迅は犬好きであったが、相手がキメラとなれば違う。
「7匹来たよ。遠慮は無用だね」
 ドリルはAU−KVを装備し、竜の鱗を発動させた。
「防御は最大の攻撃って言ったのは誰だったかな」
 そう言いながら真デヴァステイターを放ち、エンジェルシールドで横から来たキメラの攻撃を受け流した。さらに陸がショットガンで牽制する。
「攻撃は最大の防御とも聞いたことがありますよ」
 突進してきた緑犬の口を狙い撃つ陸。
「あたしの蹴りをじっくりと味わいなよ!」
 港は蹴り技を生かし、前後に10センチほどの爪が付いたキャンディーブーツでキメラの頭や首を狙う。接近戦となり、限界突破を発動する。やはり緑犬は氷のブレスを吐いてきたが、港はとっさに回避。避け切れない時はレイシールドで押し付けるように敵の攻撃を崩した。
「これ以上、キメラの好き勝手にさせやしない!」
 港の蹴りが炸裂。皓祇はAU−KVをアーマー変形させると竜の翼で一気に駆け抜け、逃げ出そうとする緑犬を足止めする。
「逃げようとしても無駄です」
 この時、すでにキメラは残り3匹だったが、迅や陸たちの攻撃でかなり戦力を喪失していた。皓祇が足止めしてくれたおかげで、陸はイアリスでキメラの胴体を斬り付けることができた。とは言え、乱戦状態が続いていたこともあり、陸は一見すると無傷なのは活性化を使用していたからだ。
「さっさと片付けてしまいましょう」
「そうだな。内部の状況も気になるしな」
 そう言いつつ、迅がイアリスでキメラを叩き付けた。周囲を見渡すと、どうやらキメラはいない。誘き出した緑犬は全て倒すことができた。ネルガーも基地周辺の見張りをしていたが、異状はないと答えた。港も基地内部が気になっていた。
「まだ中にキメラがいるかもしれないし、生存者もいるかもしれないね」


●救護
 退治するだけが能力者の専売特許ではない。人々を救出することも大切だ。むしろ人々を守るために戦っている者が多いであろう。
「救急セットを持ってきて良かった。これなら、なんとか助け出すことができるしね」
 和磨は安堵するが、生存者は2人だった。基地にいた数百人は犠牲になってしまった。あちこちに死体が転がっていたが、今は生き残った人たちを助けるのが先決だ。自分にそう言い聞かせ、和磨は応急手当をしていた。猫が水筒に入れてきたお茶を少し冷ました後、生存者2人にゆっくりと飲ませる。和磨と猫が救護に専念できるように、東雲は辺りを警戒しつつ武器を手に持っていた。いつ、キメラが襲ってくるかもしれない‥気の抜けない状態が続く。
 微かに音が聞こえた。東雲は直に攻撃体勢に入れるように二刀小太刀を構える。唸り声がしたかと思うと、1匹の緑犬が姿を現した。
「‥‥来たね」
 東雲は走り出すと緑犬キメラ目掛けて流し斬りを放った。和磨は生存者を守るため、その場から動かず、猫が東雲の援護に入り、側面からキメラに接近するとすかさず片刃の直刀‥蛍火で円閃を叩き込んだ。
「悪い犬さんにはお仕置きをしないとですね〜。しっかり躾けるです」
 生存者を守っていた和磨はフロスティアで突き、猫と東雲の攻撃により、緑犬はブレスを吐く余裕もなく倒れ、息絶えた。
「今回は槍を持ってきて正解だったかな」
 和磨は本来、接近戦が主だが、リーチの長い槍を装備していたこともあり、キメラから生存者を守ることができた。だがそれも猫と東雲がいてくれたからこそできたことだった。それは和磨自身、よく分かっていた。
「猫屋敷さん、翡焔さん、協力してくれてありがとう」
「それはお互い様なのです」
「当然のことをしたまでだ」
 猫はホンワカとした表情で言い、東雲は当り前のように答えていた。少し経つと迅たちがやってきた。
「和磨さん、猫さん、東雲さん、無事かい?!」
「ああ、大丈夫だ。生存者は2人‥直に近場の医療施設に運んだ方が良いだろうな」
 東雲が言うと、集まった8人は生存者2人を静かに基地の外へと運んだ。
「よっ、お疲れさん」
 外で待機していたネルガーが出迎えてくれた。キメラは全て退治でき、生存者も救出することができた。だが、能力者たちの戦いはこれで終わった訳ではなかった。
 戦いはいつまで続くのか‥。ふとそんな疑問が横切るが、今はそんなことをじっくりと考える余裕もなかった。だが、少なくとも生き残った者を助けることができたのは幸いであった。


●最終日の午後
 生存者2人を近辺の医療機関に輸送し、無事を確認すると猫は皆をヒラヤマ山脈がよく見える村へと誘った。
「特製のお茶なのです。どうぞ遠慮せず飲んで下さいね〜」
「山越えの時は寒かったからね。ここでお茶が飲めるなんて思わなかったよ」
 和磨は猫から差し出されたお茶を飲んだ。
 しかも今日は快晴‥昼過ぎでの野原でのお茶会となり、なんだかピクニック気分だ。猫はうれしそうだった。
「‥‥美味いな」
 東雲もお茶を一口。港や迅たちも美味しそうに飲んでいた。
「まさかこんなことになるとは‥‥まあ、悪い気はしませんね」
 陸が呟く。観光とまではいかないが、ゆっくりと過す時間が取れた8人は一時の安らぎを堪能していた。