タイトル:【AAid】少女の夢マスター:大林さゆる

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/12/12 11:49

●オープニング本文


 夢を見た。
 その少女は、まだ幼かった。
「リュメルね、大人になったらティルと結婚するんだ」
 無邪気な微笑み。
 ティル・シュヴァルツ(gz0211)が、ふと目を開けると、女性の顔がぼんやりと浮かんだ。
 夢なのか、現実なのか、その感覚さえ分からなかった。
「私の声が聞こえて?」
 女性の声が、ようやくティルの耳に響いた。
「‥‥ここは‥‥?」
 ようやく意識を取り戻したティルを見て、女性は安堵した。
「峠は越えたようね。ここは月面基地の中にある病院よ。私は医師のエル・メラ」
「‥‥どうなった‥?」
 ティルはベットに横たわったまま、エルに言った。
「‥‥生き残ったのは、貴方と通信員だけよ。本部からの指令がバグア軍に阻止されたようね。補給部隊は全滅‥‥バグア本星は爆破されたとの報告があったわ」
「‥‥そうか‥‥本星がなくなったか‥物資は無事に届いた後での襲撃だったからな。‥‥不幸中の幸いか」
 ティルが無表情に告げると、エルはどこか険しい表情だった。
「何が不幸中の幸いよ。何人も犠牲者が出ているのよ。貴方が生き残ったのが不思議なくらいだわ」
 この戦いで、何人の患者を見送ったか。エルは医者とは言え、やはり人間としての感情を捨てることができなかった。
「‥‥すまない‥心配をかけたな」
 ティルは落ち着いていたが、瞳は何故か穏やかだった。
 少女の夢を見たせいだろうか。
 エルの感情的な言葉に救われたような気がした。


 スリランカ、とある小さな村。
 少女は、ずっと一人の男性を待ち続けていた。
 そんなある日のことであった。
 村の畑が荒らされ、朝方に農作業をしていた村人が数名、巨大な鼠に襲われた。
「大きくて、青い鼠だったよ。ようやく畑を耕して野菜もできたというのに‥‥」
 村長が嘆く。
 スリランカにも、バグア軍の攻撃によって戦火が広がった地域もあった。
 インドに滞在しているUPC軍の支援もあり、スリランカもようやく復興が始まるという大切な時期だった。
 まだバグアの置き土産とも言うべきキメラが出没しているのだ。
「了解。俺たちスカイフォックス隊が偵察に行く」
 本部からの指令を受けて、ズウィーク・デラード(gz0011)は機体に乗り、メンバーたちと共に上空からスリランカの状況を確認していた。
「昼間は異常なし。どうやらキメラは夜間から朝方にかけて出没しているようだ。何人か怪我人も出ているようだが、医療物資が不足している」
 アーサーが状況をまとめて、デラードに報告する。
「上空には今のところ、キメラの存在は確認できていないが、地上にいるキメラをなんとかしないとな」
 デラードは機体から降りると、メンバーたちにそう告げた。スカイフォックス隊は、スリランカの簡易基地に滞在していた。
(ティルのおっさんからの伝言、あの子に伝えないとな)
 デラードがスリランカに来たのは、他にも理由があった。
 月面基地で入院中のティルが無事だったことを、リュメルという少女に伝えることだ。
 デラードも、月面基地付近の補給部隊が全滅したことは報告で知っていた。後方支援で参加していたティルは、しばらく安否の確認さえできない状況が続いていたが、ようやく数日前、ティルが目覚めたという知らせが舞い込んできたのだ。
「やはり愛の力は偉大だね」
 デラードが思い出したように呟くと、隣にいたウィローが怪訝な顔をしていた。
「いきなり、なに言ってんだか」
「まあ、ウィローには関係ないことだ。ティルのおっさんも、意外とやるなと思ってね。例えると、ヒカールゲンジ計画ってやつかもな」
 デラードは、リュメルという少女に会うのが楽しみになってきた。
「なんじゃそりゃ? 俺達はスリランカの復興に協力するために来たんだろうが?!」
 ウィローの言葉に、デラードは頷いた。
「感心感心。任務は忘れてないようだな」
「当たり前だろう。そのために俺達はここに来たんだ」
 そう、スリランカの大地に‥‥。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
レーゲン・シュナイダー(ga4458
25歳・♀・ST
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
村雨 紫狼(gc7632
27歳・♂・AA
ジョージ・ジェイコブズ(gc8553
33歳・♂・CA
狗谷晃一(gc8953
44歳・♂・ST

●リプレイ本文

 スリランカ、UPC軍の簡易基地。
 キメラに襲撃された村への準備として、傭兵達が集合していた。
「忙しい中、来てもらって助かるぜ。村の方は頼むな」
 ズウィーク・デラード(gz0011)は、スカイフォックス隊のメンバーと共にインドとスリランカの補給線をさらに強化するため、傭兵達とは別行動をすることになった。
「ズウィークさんよ、村にも用があるとか聞いたぜ。リュメルって女の子に会わなくて良いのか?」
 村雨 紫狼(gc7632)がそう告げると、デラードは懐から手紙を出した。
「補給路の確保に専念することになってな。代わりに、この手紙をリュメルに渡してくれないか。村長に聞けば、居所も分かるはずだ」
 そう言うと、デラードは村雨に手紙を渡した。
「愛のキューピット役ってのも悪くないな。必ず、リュメルって子に渡しておくぜ」
 村雨は少女の喜ぶ姿を想像して、うれしそうだった。手紙にはティル・シュヴァルツ(gz0211)のことが書かれていた。これから向う村では最新の通信機器がなく、伝達は口頭か手紙が多かったのだ。
「それからレグ。リュメルの話相手になってくれな」
 デラードの言葉に、レーゲン・シュナイダー(ga4458)は笑顔で頷く。
「もちろんです。リュメルさんとお話できたらと思ってましたから」
「ぜひ、そうしてくれ」
 そう言いながら、デラードはさりげなくレーゲンの髪に触れた。ある程度の準備が整うと、ジョージ・ジェイコブズ(gc8553)がデラードに声をかけた。
「キメラを全て退治したら報告したいのですが、トランシーバーでも届く距離にデラードさんはいるのでしょうか?」
「トランシーバーで届く範囲内にはいるから、何か分かったら報告してくれ」
「分かりました。退治の処理もやっておきます」
 ジョージの言うことは、デラードとしても有難い申し出であった。

●協力
 村に到着すると、荒れ果てた畑と診療所が見えた。
 百地・悠季(ga8270)は現地の状況をレポートにまとめていた。今後のためにも、役に立つ資料になるだろう。
「キメラが畑を荒らしたせいで、野菜が売り物にならないの?」
 悠季の問いに、村長が応える。
「村人に無料で配って喰うにはしばらく困らないが‥‥」
「だとしたら、さらに援助が必要になるわね」
 悠季は家事が得意ということもあり、村長の自宅にある台所を借りて、料理の手伝いもしていた。
「何かリクエストはある?」
 村の子供たちに聞くと、「野菜たっぷりのスープ」という意見が多く、悠季は合間を見計らって、料理を作ることにした。そんな中、一人の少女が差し入れにと皆にクッキーを配っていた。
「あの子がリュメルかな」
 村雨はリュメルという少女を見つけることができた。お互いに挨拶すると、村雨はデラードから預かった手紙をリュメルに手渡した。遠慮がちの少女に、村雨は読むようにと促す。
 最初は戸惑っていたリュメルであったが、手紙を読み進めていくうちにティルが無事だと分かり、うれしそうに手紙を両手で大切に折りたたんだ。
「ティルは無事だったんだね。‥‥良かった」
 その姿に、村雨も笑みが浮かぶ。が、リュメルは泣きだした。それに気が付いたレーゲンが、そっとリュメルを安心させるように抱きしめた。
「‥‥もう大丈夫です。ティルさんは戻ってきますよ」
「‥‥地上に戻ってくるのは、来年だって‥今すぐ会いたいよ」
 リュメルはレーゲンの優しさに包まれながら、泣きじゃくっていた。
(そうだよな。好きな相手には、いつでも傍に居てほしいよな)
 村雨はふと、そんなことを考えていた。

 その頃、狗谷晃一(gc8953)は診療所で怪我人の手当てをしていた。狗谷の技術とUPC軍から支給された医療物資もあり、村の診療所だけでも対応できることが分かった。
 だが、医者の人数が足りないことが判明し、派遣されてくる医者が来るまで、狗谷が臨時で他の患者の診察もすることになった。
「どうやら、怪我人だけでなく、他にも患者が何人かいるようだな」
 それを見捨てることができないのが狗谷である。彼だけではない。時間ができると、ジョージと村雨は診療所に物資を運んだり、レーゲンは狗谷の手伝いもしていた。
「レーゲン、なかなか手際がいいな」
「はう。狗谷さんのアドバイスが的確だからですよ。先日はお世話になりましたです」
 レーゲンにそう言われて、狗谷は思い出した。
「またレーゲンに会えるとはな。これも何かの縁か」
 ほんのわずかなきっかけで、また再会することもあり、今回は互いに協力して、怪我人の手当てをすることになった。何かの縁とは、自然の流れにも似ていた。ジョージと村雨は荷物を運び終えると、怪我人の包帯を新しく変える手伝いをしていた。
 昼間、皆が作業をしている間、白鐘剣一郎(ga0184)は警戒も兼ねて村の外れにある畑周辺を巡回していた。
(情報では12匹と聞いたが、他にもいる可能性がある。念には念を入れておかねばな)
 白鐘の危惧はもっもとなことである。実際、戦闘になると予想以上の数になる場合もあるからだ。

●何が為に
 二日目の昼。白鐘は村雨と同行して、獣道を進んでいた。
「村人たちに聞き込みをしてみたら、畑近くの獣道から青い鼠が出てきたっていう証言が多かったんだよな」
 村雨は情報収取をしていたが、それを頼りに前へと進む。
「なるほど、現地のことはやはり住む人に直接聞いた方が良いからな」
 白鐘も跡を辿って、さらに前進。草叢をかき分け、しばらくすると森の中に入った。
 さらに奥へと進むと、廃墟と化した小さな工場があった。
「‥‥人のいる気配はないが、何故、こんな所に?」
 白鐘の疑問に、村雨も思案していた。
「村の近所に工場があるってのは聞いてないな。もしかしたら、残党の隠れ家かもしれない」
 その可能性は否定できない。だとしたら、今は2人だけで中に入るのは危険であろう。
 村雨と白鐘は、そう同じことを考えていた。
「一旦、戻って知らせようぜ」
「そうだな。勇気と無謀は別だからな」

 村に戻ると、村雨は調査したことを仲間に伝えた。
「昼間はキメラの気配はなかったぜ。出るとしたら、やっぱ夜から明け方かな。廃墟工場にキメラを追い込めば、一網打尽にできるかもしれない」
「だとしたら、交代で夜間警戒をして、キメラ出現に備えて畑周辺で待機ね」
 悠季がそう告げると、村雨が答えた。
「見張りのローテーションも必要だし、村人たちには夜は外出しないようにジョージと白鐘と一緒に説得しておくぜ」
「3人で手分けした方が、効率も良いですしね」
 ジョージは村雨、白鐘と同行して、まずは村長に夜間の外出は控えるようにお願いすると、手分けして村を廻った。
「キメラの脅威は我々が打ち払いますので、ご安心下さい」
 全ての村人に伝えた後、白鐘は村長にそう告げた。
「ありがとう。皆さんが来てくれて心強い」
 しばらく村に緊張が走ったが、キメラが村の畑に現れたのは、4日目の午前4時頃だった。
 時間が分かったのは、ジョージが前もって現地時間に合わせていたSASウォッチがあったからだ。
「真夜中じゃなくて、朝方か‥とは言っても、やはりまだ薄暗いな」
 ジョージはGooDLuckを使った後、アサルトライフルでキメラを狙い撃つ。覚醒したレーゲンはエネルギーガンで援護に入った。
「粋な真似、するねェ」
 誰かと思いきや、レーゲンだった。後ろにいた狗谷は仲間に練成強化を施す。
「動きが素早いな」
「鼠だけに確かに早いですね」
 さらにジョージが制圧射撃で威嚇すると、鼠キメラは驚いたのか、一斉に獣道へと走っていく。
「よっしゃ、このまま廃墟工場まで行くぜ」
 灯を消して、村雨が追跡を開始すると、白鐘と悠季が走り出す。
「作戦通りにいけば、全て倒せるはずだ」
「キメラたち、同じ方向へ向かってるわ」
 悠季は少しそのことが気になったが、鼠キメラは廃墟工場に入っていった。というよりも、逃げ込んだようにも思えた。
「ここがキメラたちの住処?」
 と、その刹那、工場の入り口から2匹のキメラが襲いかかってきた。
 とっさに疾風を使い、悠季は機械脚甲「スコル」で蹴り散らした。狗谷は視界に入ったキメラに練成弱体を放つ。
「こいつをまず狙ってくれ!」
 狗谷の叫びに反応したのは白鐘。俊敏な動きで得意技を炸裂。
「天都神影流・斬鋼閃っ」
 急所突きが決まると、次はソニックブームを放つ。
「天都神影流・虚空閃!」
 白鐘の攻撃で鼠キメラが吹き飛ばされた。レーゲンが小太刀「涼風」でキメラの尻尾を受け流し、悠季が機械爪「ラサータ」で斬り払う。仲間との連携で、次々と倒れていく。
「12匹は倒したはずだけど、確認してみるわ」
 悠季は壁に手を当て、バイブレーションセンサーを使った。
「‥‥工場の中は、あたし達以外の気配はないようね。ただキメラたちが、ここに集まった原因は不明だわ」
 覚醒を解除したレーゲンはランタンを持ち、工場の中を確認していた。
「見たところ、数日前まで誰か住んでいた痕跡はありますね」
「キメラがここに来たってことは、まだ命令に従って動いていたのかも?」
 村雨がそう言うと、ジョージはトランシーバーを取り出した。
「デラードさんに報告してみますね」
 キメラは退治できたが、村外れの工場があることも伝えることにした。
「‥‥はい、完了しました。できれば廃墟工場の方も確認をお願いします。え? 皆さん全員、無事ですよ。彼女さんも怪我はしていませんから。はい、それじゃ、お待ちしています」
 そして、午前8時頃にデラード率いるスカイフォックス隊がやってきた。
「夜間任務、お疲れ」
 デラードは1人1人に声をかけた後、工場の中を見渡した。
「どうもこの廃墟工場は怪しいな。退治したキメラと工場は、スカイフォックス隊が回収しておく。まだ滞在期間はあるから、もうしばらく村でゆっくりしてくれ」
 デラードの指示で、小隊30名の兵士が回収作業は始めていた。
「デラードさんもお疲れ様でした。他の皆さんは?」
 レーゲンの問いに、デラードは飄々とした笑みで応えた。
「アーサーたちは補給路の方で待機中だ。全員が任務場所から離れる訳にはいかないからな」
「それぞれ役割がありますからね」
 ジョージがそう言うと、白鐘が頷く。
「得意分野が異なる者たちが集まれば、できることも増えるからな」
 次々と、倒したキメラが運ばれていく。
(‥‥キメラ‥安らかにな‥こんなことしかできなくて、すまねえ)
 村雨は心の中で祈った。彼の思いもまた人としてあるべき感情であり、ジョージたちが傭兵としてやるべき任務を全うすることも住民の安全を守ることにもなる。こうした矛盾めいたことは、忘れてはならない教訓でもあった。

●未来へ
 翌日。
 村の診療所で、狗谷は患者たちの診察をしていた。
 臨時とは言え、それで手を抜く狗谷ではない。その姿勢は患者たちにも伝わり、安心して治療を受けていた。
 畑仕事を手伝っていた白鐘は、作業中、少年を抱きかかえた老人がいることに気付いた。聞けば、少年が急に具合が悪くなったらしい。
「ご老人。少年は俺がお連れします。無理なさらずに」
「おお、すまないね」
 白鐘は老人の代わりに、少年を診療所へと連れて行くことにした。
「急患だ。頼む」
「何人でも受け入れるぜ」
 狗谷の熱意は、どこから来るのか。
(板チョコを食べる暇もねぇが、目の前に患者がいる限り、見捨てたりはしない)
 診察や治療となると、狗谷は今まで経験した全てを出し尽くしていた。村雨は医療品を棚に置く作業を手伝っていた。
「そろそろ昼の12時か」
 村長の家から、カレーの香りが漂う。それに気付いたジョージは畑仕事の休憩時間に、ひょっこり現れた。
「あら、どうしたの?」
 悠季が庭で子供たちに手料理を振舞っていた。
「良い香りがすると思ったら、ここに来てしまいました」
 ジョージはスパイス料理が食べたいと思っていたが、悠季が作っていたのはカレー・スープだったようだ。
「良かったら、どうぞ」
 悠季が言うと、ジョージはうれしそうだった。
「お言葉に甘えて、いただきます」
 子供たちに混ざって、ジョージは庭に置かれていた木の椅子に座り、食べ始めた。
「‥‥うまい、美味しいです。来て良かったな」
「そう言われると作った甲斐があるわ」
 子供たちの笑顔に囲まれて、村長も楽しそうに笑っていた。
 レーゲンと言えば、喫茶店でリュメルと食事をしていた。店のマスターはリュメルの母だ。
「えと、この間は泣いちゃって、ごめんなさい。手紙をくれたお兄さんにもお礼が言いたかったけど、あの時は‥‥」
 リュメルが申し訳なさそうに言うと、レーゲンがほんわかと笑顔を見せた。
「村雨さんも、リュメルさんの気持ちは分かってますから、そんなに気にしないで下さいね」
 2人で話をしていると、村雨が店の中に入ってきた。
「わーお、ここにいたのか。この村には畑を耕す重機はないみたいだぜ」
「噂をすれば‥村雨さん。この村は手作業で畑を作っているとリュメルさんのお母さんから聞きました」
「村を調査している時に、畑を見ても、それらしいものがなかったからな。てっきり倉庫にあるのかと思って、さっき村長に聞いてみたら、『この村では手作業で畑を作っておるのじゃ』とか言われてさ」
 村雨が村長の口真似を入れて話すと、リュメルはつい笑ってしまった。
「今の言い方、村長に似てる〜」
「リュメル、やっと笑ったな」
 村雨が笑い返す。と、リュメルは我に返り、椅子から立ち上がると恥ずかしそうに言った。
「‥‥手紙、ありがとう。うれしかった。ティルが無事なら、それで良い」
「ああ、手紙は頼まれて渡しただけだから、遠慮はいらねえよ。それよりも、リュメルの笑顔が見れた方がうれしいぜ。きっと、ティルって人もリュメルの笑顔を見たら喜ぶはずだ。いや、絶対、喜ぶっ」
 村雨は両手を腰に当て、胸を張って言い切った。
 その姿に、リュメルは励まされた。
 好きな人がいれば、それだけで良い。
 リュメルは、そう思えるようになっていた。

 スリランカの大空は、とても鮮やかだった。
 デラードは気晴らしに町の市場に行くと、ふとサファイアの鉱石が目に入った。
(そろそろ、俺も伝えないとな)
 巡り合い、何年になるのだろうか。
 誰もが、誰かと出会い、何かを知りたいと願う。
 世界中のどこかで、また新しい出会いがあるのだろう。