タイトル:雪山の山荘マスター:鬼村武彦

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/21 00:29

●オープニング本文


私の名は、L・R。しがない記者である。ああ、もちろん、この名は、ペンネームです。
今回、私は、ある雪山の山荘で遭遇したキメラ関連の事件に関してレポートにまとめようとその時の手帳を読み返しています。
まず、初めに、この手の事件に関しては、従軍記者などの軍事関連の専門の記者が扱うべき事件であり、本来、私が扱っている分野とは畑が違うということを明記しておきます。
幸か不幸か、この事件に少なからず関わった者として自分の記憶を活字にして置こうと思う。
前置きが長くなってしまった。とりあえず、当時のことを簡単に整理しておきます。
当時、私は、知人のツテを頼りにようやく地方新聞の山荘やらコテージを読者に紹介するコラムのための取材の仕事を貰うのだが、その取材対象がこの雪山の山荘なのです。
その山荘は、非常にでかい年代物の柱時計が食堂に置いてあるのが印象的な所です。
丁度、私が取材に赴いた日は、大吹雪と雪崩により電話線が遮断され、道路が埋もれてしまった。
そして、真夜中、この山荘の主人が鍵の掛った食堂にて惨殺されるという事件が起きてしまいました。どうやら、その傷口からキメラにかみ殺されたようである。だが、そのキメラ自体の姿が何処に見つからないのです。電話線が遮断されているのに気付いたのがこの時点です。
だが、不幸中の幸いにもこの山荘の宿泊客には、冬休みを利用してここを訪れていたカンパネラ関係者達がいたことです。

この山荘の構造を簡単に説明しますとその階層は、地階から三階までとなっております。地階には自家発電用の発動機が置かれたボイラー室とランドリー室があります。
一階には二階と地階へと通じる階段があるホールありそのホールから食堂、トイレ、遊戯室とお風呂場へとつながっております。ちなみに台所は勝手口がありますが室内からは食堂からしかいけません。二階には宿泊用の部屋が複数あります。三階には物置用の大部屋が一つあります。

山荘に在宅していてこの事件に巻き込まれた人たちのことを簡単に書いておきます。山荘の主人(すでに死亡)。この主人の奥さんであるソーニャ・イノウエ、若干19歳であり新婚一年めであることが事件前の取材で判明しています。又、飼猫が最近、懐かないのを不満がっていました。そして、アルバイトの方二名、メイリー・ヤンとラン・シラカワ。地元の方という証言です。事件発生時にはランドリー室にいたとのこと。そして、宿泊者の方々、アイリス・キャンベル、ジェーン・ドウとロイ・ハミルトン。そして、事件を解決した数名のカンパネラ関係者達です。

●参加者一覧

ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
レヴィア ストレイカー(ga5340
18歳・♀・JG
マヘル・ハシバス(gb3207
26歳・♀・ER
雲空獣兵衛(gb4393
45歳・♂・ER
ナンナ・オンスロート(gb5838
21歳・♀・HD
海東 静馬(gb6988
29歳・♂・SN

●リプレイ本文

01
この山荘が、出来たのは随分古い時代らしい。バグア襲来以前よりずっと前という話だ。そのころと言えばこの付近にスキー場が出来たころと同じ時期であるが、このスキー場は襲来以前には大層賑わいを見せていたのだがバグア襲来以降の混乱期に一時に客足が遠のいたため経営不振に陥り閉鎖してしまう。それと同時にこの山荘も売りに出され長らく廃墟のような状態だったらしい。そして、数年前に地元に幾つかのメガコーポ関連の施設が戦災地域より移転されるとスキー場およびレジャー関連が息を吹き返したことにより、現主人がこの山荘を買うと同時に改装したという話である。ソーニャ氏はここの主人と丁度一年目に結婚されたとその時の出会いやら出来事を私は、自分の手帳に書き留めている最中だった。
「本格的に吹雪いてきたようね。これではナイターには行けないわね。」
マヘル・ハシバス(gb3207)が、窓の外を見ながらそう誰にともなく告げる。
「そうか、あそこのスキー場でカクテルライトに照らされる雪の彫刻群を初日から見逃すのは残念だが、明日もあるしな」
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)がマグカップに口をつける。そんな会話を耳にして私は、あらためて自分がいる場所である遊戯室を見渡す。レヴィア ストレイカー(ga5340)とナンナ・オンスロート(gb5838)、海東 静馬(gb6988)の三名がビリヤード台を囲んでいる。ナンナがトライアングルラックで色とりどりな的球を揃えながらレヴィアに聞く。「そういえば、レヴィアさんやっぱり生トマトはだめですか?」
「えぇ、あれだけは食べられませんね。この前、兵舎で目隠ししてその味だけでその食材を言い当てるということを仲間内でやったのですが、細かく刻んだあれを挟んだサンドイッチを口にしてしまって医務室まで運ばれましたから」
とレヴィアが苦笑を浮かべながら答える。
「え!?そ、そこまで・・」
と目を丸くするナンナ。
「いやー、食べられるようしといた方が良いのでしょうけど。あれだけはどうしようもないですねー。はははっ」
どこか他人ごとのように語るレヴィア。
「あー、話が弾んでいるとこ悪いのだが御二人さん、早くしてくれ。せっかくのツキが逃げちまう」
「海東さん、リフト券取り返そうとそんなに長孝しなくても」
「ねー」
ナンナとレヴィアがにこやかに笑う。
「ビリヤードに長考って・・・・」
海東は絶句する。長孝しているのは彼ではなく雲空獣兵衛(gb4393)である。雲空は、腕組をして低いうなり声をあげつつ七国象棋の盤を睨みつけていた。
「雲空さん、そろそろ」
お手伝いのメイリー・ヤンに珈琲を新しく注いでもらったマグカップを眺めながらホアキンが聞く。
「うむ、どうも手詰まりのようです。と、投了です」
と無念の表情を浮かべて深く一礼をする雲空。そして、食堂にある柱時計が時間を告げる音があり響く。
「そろそろ、休むことにしますわ。」
そうマヘルが告げると皆も徐に自分たちの部屋へと帰っていった。

02
レヴィアは、長年愛用しているAAS−91sを規則正しく分解し、洗浄液を浸したウェスをブラシに取り付け銃身の中をやさしく清掃している内にうとうととしていたらしい。その切り裂くような悲鳴で覚醒した。彼女は、素早く小銃S−01とコンバットナイフを装備して慎重に部屋を出る。とそこへ宿泊客のアイリス・キャンベルの部屋から海東が上着を羽織ながらでてくる。
「レヴィア、今の悲鳴は?」
「わかりません。きちんと服を着てください。」
海東はレヴィアの横に並び悲鳴が起きたであろう一階へと向う。食堂へと続く入口に雲空の荒縄で括り上げたちょんまげがちらほらと見え隠れする。その姿を見ながらレヴィアは、もう少し伸びればポニーテールと呼べなくも無いわね。とそんなこと言葉が出かかるが食堂に入るとその言葉を飲み込む。なぜなら食堂には、この山荘の主人の無残な姿が横たわっていた。そして、その横でへたり込むソーニャ・イノウエの姿があった。
そして、悲鳴を聞きつけ駆けつけた人々の内、宿泊客とお手伝いさん二名を遊戯室にナンナが連れていく。雲空がソーニャの介抱をしつつ遊戯室へ行く。その間にレヴィアとマヘルでかわり果てた主人を詳しく調べて行く。そして、主人の体につけられた傷は深く複数あること。その内一つはかみ傷で残りは刺し傷―それも太いアイスピックの様なもので―であった。争った形跡ともがいた跡が無いことから気づかれずに瞬時に殺害したのだろうということを二人で確認しあう。
「これは?」
レヴィアはこと切れた主人の手の平に鍵があることに気づく。
「どうやら、ここは発見されるまで密室だったようじゃの」
そう発言したのは雲空だった。
「どういうこと?」とマヘル。
「わし、夜半に緑茶が飲みたくなってのう。台所を借りようと食堂に来たんじゃが鍵がかかっておったんじゃ。そこへ奥さんが来てくれたので奥さんに頼んで拙者、自室に戻ろうとしたんじゃ。そうすると突然悲鳴じゃからなぁ」
「台所は?」
マヘルが質問する。
「勝手口があるが閉まっていたぜ」
答えたのは海東だった。レヴィア達がこの食堂を調べているあいだに彼は台所を調べていたようだ。
「そう、本当に密室みたいね」
レヴィアはそう呟いていた。

03
「あのー、雲空さん。質問してもよろしいでしょうか?」
とナンナが雲空に聞く。
「なんだね」
「先ほどからずっと気になっていたのですが、その手に持っている物はなんですか?」
「これかね、これは深靴と云う日本の履物で簡単に説明すると藁で作り込んだ長靴じゃ。いやはや、昨日まで履いていたのを履き潰してしまってのう。で、一から作り始めたら夜半まで掛ってしまってのう。」
「自分で編んでいるのですかぁ。てか、それでスキーしていたのですか?」
「そうじゃよ。山に籠って修行していた時は、自給自足だったからのう」
そんな会話を聞きながらホアキンは、遊戯室を見渡した。事件発生時に自室に居た者達もこの部屋に集まっている。すでに未亡人だがこの山荘の主人の奥さんであるソーニャ・イノウエ。お手伝いのメイリー・ヤンとラン・シラカワの二名。セミロングの方がメイリーで腰まである長髪なのがランである。そして、宿泊者のアイリス・キャンベル、ジェーン・ドウとロイ・ハミルトンの三名。パーマをかけた茶髪で小柄なのがアイリスで、ぼさぼさの金髪で度の強そうなメガネをしているのがロイである。そして、豊かな胸を持ちハシバミ色の瞳を持つ長身の女性、ジェーン。そして、自分を含めたUPC関係者の六名で山荘の住人が全員ここに集まっているわけだが、状況は悪い状態だ。ラジオニュースはこの吹雪で交通が遮断させていることを伝えている。先ほどホアキンが外部に事件を知らせようとした電話は通信不通になっていた。何らかの事情で電話線が切られたと考えられる。マヘルが皆の気分を和らげようとして入れてくれた珈琲が配われる。そして、マヘルは、徐に皆の食事以後から事件発生時までの出来事を聞き込んでいる。
「飼い猫のクロが見当たらない」
マヘルが黒猫の聞き及ぶとそんな答えが返ってきた。たしかに遊戯室で談笑していたころまでは皆、その黒猫の姿をちらほらと見かけていた。
「では、その黒猫が擬態型のキメラかもしれない可能性がありますね。それなら主人の傷跡の説明はつきますね」
そうつぶやくマヘル。
「まぁ、どっちにしてもこの山荘に出た形跡がないんだ。虱潰しに探せば見つかるだろ」
と海東。そして、ナンナが一般人の安全のため遊戯室に残り残りの者が手分けして黒猫を探すことになった。
ホアキンは三階の物置に使われている大部屋を調べていた。床に積もった埃具合から暫くの期間この部屋に何かが居たとかそういう痕跡がみつからなかった。ホアキンは無線機でそのことを皆に伝える。
「?」
奇妙な雑音が入ることに気づいた。そのことの意味に思い至った時。
「いたよ!柱時計の中だ」
そう低く告げたのはレヴィアだった。海東は急いで食堂に向かった。
食堂の柱時計は改めて見るとかなりの大きさである。その高さは天井近くまであり、其の幅は大人が両手を広げたほどである。その柱時計の内部にそのキメラは潜んでいた。キメラは複数の殺気を当てられ自己防衛の赴くまま自身の不定型の体を球体に変えて迫る危機感を逃れるため生き良いよく飛び出した。だが、すでに食堂にて戦闘状態で待ち受けていた能力者達から逃れることなど出来るはずなどありえなかった。

04
そこは、山荘から少し離れた場所。先ほどまで激しく吹雪いていた雪はすでに緩やかに舞う牡丹雪の中に変わっていた。その静寂に包まれたその中にそれはあった。それは、雪を杜撰に盛り重ねて造り上げた雪洞である。
その中に青白い光に照らされて人影が蠢いていた。その人影は、淡い光を発している情報端末を弄り回しながらぶつぶつと独り言を口にする。
「ふん、やはり簡単に倒されてしまいましたか。しょせん、廃棄体は廃棄体でしかないですね。どう改良しても既製体には遠く及びませんね。
いやはや、此方からの指示信号も想いように受け取れないとは・・・・・・。まぁ、良いでしょう。監視役の自分の失点には為らないのですし、結果報告を受け連中はやる気を出すでしょうけど。」そう云って肩を竦める様な動作をすると同時にその肩に何かが接触する寸前でそれが弾け飛び雪洞が音をたてて崩れさる。
その監視者は雪に埋もれながら自分の肩に接触しようとした物体を摘み取る。
「うむ、ゴム弾ですか。見つかってしまったのなら致し方ありませね。」そう呟くと淡い光を頼りに情報端末を手繰り寄せて何事か操作をする。
瞬時にその雪洞が崩れた場所が音もなく青い炎に包み込まれ、辺りに濛々たる水蒸気が立ち込める。その状況をレヴィアは、AAS−91sのスコープで確認していた。
彼女はスコープを覗きこんだままレシーバーをオンにする。無線機からは山荘にいた時に入っていた耳障りな雑音は混在することはなかった。
「ビンゴね。けど口惜しいけど、自爆いえ、自ら炎に包まれてしまったわ。ええ、それと急いで組み立てたAAS−91が愚図らないでくれたことに感謝しなくては」
「後、この雪がバイク形態のAU−KVのモーター音をある程度、吸収してくれたことにも感謝しなくちゃね」
と傍らのナンナが呟く。
ホアキンが無線機の雑音で気づいた事とは、まさにこの監視者の存在であった。倒されたキメラの体から出てきた発信素子をマヘルが解析し逆探に成功しこの監視者の居場所を突き止めたのである。後はご覧のとおり。こうしてこのL・Rが遭遇した事件は解決したのでした。ああ、そうそう、キメラが潜んでいた年代物の柱時計は内部の機構が壊れていたのですがレヴィアが道具一式を持って来ていたおかげで半日かかりでしたができたようです。後、ランドリー室には生後幾日もしない子猫数匹が居たとのことです。