タイトル:【DR】破壊槌、降るマスター:沼波 連

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/09 22:46

●オープニング本文


 ウダーチヌイ偵察作戦の結果、バグアの完成間近の施設が発見された。施設の名称は『ゲート』といい、その機能は港湾施設もしくは軌道エレベーターとでもいうべきもので、バグア本星から地上のバグアへの物資の移送だ。
 『ゲート』完成の暁には地上のバグアは本星からほぼ無尽蔵の補給を得られるようになる。その結果は起こることはもちろん、速やかな戦争の終結、すなわち人類の敗北だ。UPCはこれを阻止するため各地から援軍をロシアへ派遣することを決めた。
 ロシア、ウダーチヌイ周辺に戦力が集結するにつれて戦火は激しく燃え上がり、バグア人類双方で死傷者を出した。
 そしてウダーチヌイ周辺のとある空で1機のKV岩龍が墜落しつつあった。この岩龍は編隊を組んでウダーチヌイに向かう途中、バグアの奇襲を受けて壊滅した。生き残った唯一の機体、この岩龍はからくも撤退に成功したものの、機体は損傷を負い過ぎていた。
(「だめだ、もう機体が持たないっ」)
 大揺れする機体の中でパイロットは脱出を決意する。だが、まだ操縦桿から手を離さない。ひび割れたディスプレイにはガイドビーコンの位置とそこまで距離がかろうじで表示されている。ガイドビーコンのある地点は墜落された場合に頼る救助施設だ。救助施設のできるかぎりそばで降りたい。
 KVのパイロットは例外なく能力者で、能力者は常人を遙かに超えた身体能力を持つが、ロシアの自然の厳しさには勝てない。ロシアの国土は広大で救助の到着まで長時間が必要で、待つ間に体力を奪われ、最悪の場合、死んでしまう。
 これを避けるためにUPCは空から目視可能な規模の町や村に救助施設を建設した。急ごしらえのものだが、食料、医薬品、暖房、通信装置、要救助機を誘導するビーコンを備え、生存率の向上を図った。
 ほどなくして岩龍は限界を迎え、パイロットは脱出装置を起動させた。パイロットの座っていた座席が機外へ射出、一瞬遅れて、パラシュートが展開した。パイロットはふわふわと降下しながら眼下に救助施設のあるとおもわれる村を発見した。


 一方そのころ戦火のせいで人気のない村へUPCの部隊が到着した。部隊は工兵隊とバイク形態のAUKVにまたがった一団、カンパネラ学園の学生による護衛部隊で構成されていた。到着するや工兵は村の中央にある大きな建物、廃墟となった教会に取り付き、救助施設に改造し始めた。同時に学生隊が展開、周囲を警戒し始めた。
 この辺りは戦場の後方に位置し、本来ならさほど警戒は必要ないはずだったが、バグアは救助施設の存在を厭ってキメラやヘルメットワームを差し向けてくるので護衛が必要になった。
 なおカンパネラの学生が護衛に加わっているのは第一線の戦場に耐える兵士を後方の護衛で腐らせず前線に送り込むためだった。そんな極東ロシア軍の意向に護衛部隊の学生の一部は不満を持ったが、大半はいずれ前線での出番が否応なく回ってくるだろうと予想していた。
 学生がふと空を見上げた。なにか聞こえた気がしたからだ。流星群が空に筋を描いている。
「昼間の流星? しかも流星群とは珍しいや。ってあれは!」
 発見した兵士は流星群が方向転換したのを目撃した。
 流星の先端で小さな火花が散った。人工衛星が位置を微調整するときに使う推進器の炎のようだ。流星は方向転換を繰り返し、角張った尾を空に描きながら地上に迫った。それはさながら光のシャワーもしくは虹の激突かのようだった。
 見上げている学生の視界が光の束でいっぱいになる。誰かが総員退避と叫ぶ。
 突然の出来事に関わらず学生の反応は素早かった。何の命令もなかったが、護衛の任務を放棄、同時にそれぞれが手近にいた工兵を脇に抱えると、脚部のタイヤを唸らせた。学生部隊はリンドヴルムを装備していたのだが、左右の脇に工兵を抱いた状態で人型形態での最高速度230キロを叩き出して村の外へ脱出した。
 村の外で学生の1人がターンする。足下から煙が立った。脇に抱えている工兵がGのせいで失神したが、気にせず村をみた。空から村へ光の雨が降り注ぎ、光が着弾するたびに地面が揺れた。村は高々度から爆撃を受けていた。流星のようにみえたのは降下する過程で白熱した爆弾の弾頭だった。
「KVがあればあんな爆弾撃墜できたのに」
 地響きが続き、呟いた学生の前で村がクレーター群に変じた。


 上空では小型ヘルメットワームが流星爆弾の成果を確認していた。廃墟の町は流星の落下によってUPCの工作部隊ごと吹き飛び、クレーターとわずかな残骸のみなってしまった。
 コクピットの中でバグア兵は震えていた。救助施設の建設阻止という任務を与えられていたからこの光景に喜びを感じてもおかしくないはずだった。それなのに寒気が走るのはヨリシロとしている人間の記憶のせいらしかった。
(「爆撃を行ったら誰かが効果を確認しなてくてはならない。砲撃を行ったら誰かが着弾を確認しなくてはならない。観測兵は味方の攻撃で怨嗟渦巻く戦場にただ1人で潜り込む。もし見つかったら、もし見つかったら‥‥‥‥!」)
 観測兵は憎悪の対象だ、見つかったら殺される、おぞましい死という抽象的な言葉で表現できれば軽い扱いだ。そこまでおもってバグア兵は頭を振り、ヨリシロから湧きだしてくる自分のものではない恐怖をねじ伏せた。そして次の攻撃ポイントへ向かった。
 小型ヘルメットワームは低空を飛行、上空では後を追うように流星爆弾が飛翔する。

●参加者一覧

里見・さやか(ga0153
19歳・♀・ST
旭(ga6764
26歳・♂・AA
榊 刑部(ga7524
20歳・♂・AA
アズメリア・カンス(ga8233
24歳・♀・AA
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
芹架・セロリ(ga8801
15歳・♀・AA
ドッグ・ラブラード(gb2486
18歳・♂・ST
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG

●リプレイ本文

○飛翔する者、墜ちる者

 深海のような空から1機のKVが降下する。ちがう、墜落だ。機体各所から煙を引きながら地表に接触、大地を削りながら滑っていく。勢いが無くなって止まると、コクピットシェルが内側から破られ、パイロットが転がり出た。
 パイロットは肩からつま先まで叩いて回って身体に支障がないのを確かめると、機体からエマージェンシーキットを引きずり出し、善戦虚しくも翼折られた愛機に別れを告げた。被弾の挙げ句、脱出装置が故障したときには死を覚悟したけれども、機体は無理な胴体着陸を成功させて、パイロットを守ってくれた。そのうえ救難施設のそばまで弱った翼で飛んでくれた。
 ロシアの国土は広いうえに気候が厳しいので救助隊の派遣が間に合わないことがある。これを見越してロシア戦線の各地には撃墜されたパイロットが身を寄せるための救難施設があった。
 救難施設のある方向へ歩きながらパイロットはふと空を見上げた。
「‥‥‥‥地上から空へ飛ぶ、流星か。珍しい」
 空から地上へ出なく、地上から空へ流星が飛んでいた。流星の尾が黒と青の中間色の空を引き裂いている。愛機の魂が昇天したのかもしれないとパイロットはふとおもい、短い祈りを捧げた。

○星に弓引け

 爆弾の投下による救難施設の破壊を阻止するためKVが飛翔する。爆弾は高空から飛来するというKVは天を突くように急上昇した。その姿は地上から流星のようにみえたが、パイロットは知らなかった。
 蒼河 拓人(gb2873)とドッグ・ラブラード(gb2486)の事前調査により敵の攻撃箇所の予測がたっている。各機は予測ポイントへ向かった。
 里見・さやか(ga0153)が僚機に告げる。
「こちらAnahite、爆弾とおもわれる飛翔体を発見、電子戦闘機は観測に入って下さい」
 蒼河さんとラブラドールさんの読みが当たりましたね。コクピットで里見は独白した。
 電子戦装備のKVが文字通り目となる。里見と芹架・セロリ(ga8801)のウーフー、旭(ga6764)のイビルアイズが爆弾を捉える。
 弾道の計算を開始、と旭。弾速、高度、軌道から旭が爆弾の移動予測を計算し始める。それはすぐに完了して爆弾の迎撃を担当する僚機に伝達される。
 コクピットのディスプレイに爆弾の情報が表示され始めるのを蒼河は確認した。複数ある爆弾をどう撃破するのが効率的か思案する。その耳に芹架の無線が入ってきた。
「アテンションプリーズ。アテンションプリーズ。前方に見えますのは、バグア製の爆弾の流星群になっております。 最も接近してるのは‥‥‥‥」
 芹架のバスガイドとフライトアテンダントを混ぜたようなアナウンスに蒼河はくすりとした。ほのかな笑いを楽しんでからいう。
「セロリちゃん? もうすぐ戦闘機動に入るから、舌、噛まないようにね。能力者でも痛いのは違いないから」
 情報伝達が完了する。バグアの爆弾に対してKVが牙を剥く。
 落下する爆弾に対してKV編隊は一旦、距離を取った。爆弾を中心にして大きく旋回する。コクピットから爆弾が地上に吸い込まれていくようにみえた。パイロットはそれぞれのコクピットで爆弾にアプローチするタイミングを図る。
 爆弾はしずしずと音のない雨のように降下し続ける。それを見守るかのようだったKV編隊が突如として動きを変えた。急旋回、投げられたブーメランが射手のもとに戻るように爆弾のもとへ向かう。
 ラブラドールは爆弾の群にKVの鼻先を向けながらトリガーに指をかけた。他のパイロットもそれぞれのコクピットで同じようにしていた。
 KV編隊と爆弾の群がすれ違う、その瞬間、KVが一斉射撃を行った。爆弾の群が、レーザーや銃弾で構成された火線になぎ払われた。
 KV編隊がさっきまで爆弾の群であった残骸とすれ違いきった。ラブラドールは身体をひねって後方を確認、破壊され尽くして好き勝手な方向に落下していく爆弾をみて、快哉の声をあげた。
「やったねっ」と蒼河は操縦桿から片手を離して小さくガッツポーズを作った。
「やりましたね」と榊 刑部(ga7524)が満足げにうなずいた。
 だが、紅 アリカ(ga8708)はコクピットの中で首を傾げた。
(「容易すぎる。罠に嵌ったみたいな甘さね。寝首をかかれないといいけど」)
 爆弾を簡単に撃破できたことにはしゃぐ仲間にアズメリア・カンス(ga8233)が注意を喚起する。
「気をつけて。爆弾はあれだけじゃない。それに次も同じようにいくとは限らないわ」

 一方そのころ地上では1機の小型ヘルメットワームが都市の廃墟に潜伏していた。
 コクピットではバグア兵がディスプレイを睨んでいる。付近の救難施設を爆撃するつもりだったが、上空で待機させてある爆弾の数が減っていく。レーダーのウインドウには8機のKVが表示されている。
(「まずはこいつらを撃破しないと任務を達成できないな。やってやる。だが‥‥‥‥」)
 バグア兵は爆弾の機動を変更させるためにコンソールを叩いた。残存する爆弾に回避プログラムを走らせ、またいくつかの爆弾にはKVを狙わせることにした。狙いは8機のうち電子戦機だ。電子戦機が潰れたら複雑な機動を持った爆弾をKVは破壊できないだろう。
 コンソールを叩く右手が震えているのにバグア兵は気づいた。バグア兵は右手首を左手できつく締め付けて震えを止める。攻撃に転じるということは隠れている自分が危険にさらされるということだった。
(「それでもやってやるさ。人類には負けない」)

○乱舞

 KV編隊は別の爆弾の群にアプローチをかける。爆弾は落下し続けて今度もまた攻撃は成功するかのようにみえた。しかし各機の鼻先が爆弾の群に向いた瞬間、閃光が迸った。
 猛烈な光にカンスは反射的に目を伏せた。圧倒的な光量でコクピット内が白くなる。
(「誘爆した? いいえまだ攻撃していない」)
 状況を掌握できないなかでカンスは芹架の警告を聞いた。
「爆弾が散開、各機‥‥!」
 芹架は最後まで警告できなかった。爆弾破壊のアプローチをかけた瞬間、爆弾の群のうちのひとつが目眩ましのように爆発した。その直後、レーダーを確認すると、いままで一定の動きで降下していた爆弾がミサイルのように機動し始めたのがわかった。だが、芹架が冷静でいられたのはそこまでだった。高機動をとった爆弾が自機へ飛んできたからだった。
 コクピットの中で芹架は爆弾が迫ってくるのを目撃した。爆弾と機体の距離はすでに間近で爆弾の飛翔がよく視認できた。爆弾は各所に設置されたスラスターをこつこつと噴射する。右に1回、左に2回噴いて爆弾が芹架に対して正面を向いた。
(「着弾する」)
 危険が迫っているせいか感覚が間延びする。ゆっくりと流れているかのように感じられる時間の中で芹架はおもった。
(「間に合わない」)
 その瞬間、芹架機と爆弾の間にミカガミが割って入った。蒼河機だ。蒼河機の翼が輝いた。翼には近接兵器ソードウイングが装備されている。
 爆弾と蒼河機が交錯、空が爆発した。芹架は目を閉ざしたが、爆発の光はまぶたを透過する。白む視界の中央は暗い。機体は大揺れするも被害表示がわずかなことから芹架は蒼河が盾になってくれたのを知った。
「一発も落とさせないし‥‥仲間を傷つけさせもしない」
 爆音が木霊する耳で芹架は蒼河の呟きを聞いた。
 一方、榊は焦っていた。僚機の里見のナビゲートを聞きながらトリガーを絞る。だが、爆弾は伸びてきた火線から逃げてしまう。「ちょっとした格闘戦戦闘機のような機動です」という里見の解説に相づちをうつ余裕がない。
 榊はミサイルを放つ。が、爆弾がミサイルを振り切るところをみることになった。
 爆弾は刻々と落下していく。付近には救難施設があった。
「たとえ一発といえどもこのロシアの大地に落とすわけにはいきません!」
 榊は遠距離攻撃を捨てた。予測射撃では当たらない。爆弾を追うようにロジーナを降下させる。墜落するような榊機の機動はロジーナ機体依存特殊能力ストームブリンガーの発動によって流星のような降下となる。
 所詮ミサイルはミサイル、人間より頭は悪い。人間が自分で目標まで誘導したほうがよく当たる。榊は変則的な機動をする爆弾に格闘戦を挑み、追いすがり、追い詰め、ソードウイングで斬り裂いた。
 次の標的に向かいながら榊は、これはいささかハードですねともらした。

○視線の交錯、火線の交錯

 旭は自分を襲う爆弾を撃破した。安堵の息を吐く間もなくレーダーを見る。電子戦装備KV同士のデータリンクは継続しているので、乱舞する爆弾と高空からさらに降下してくる爆弾を確認できた。
 レーダーを睨みながら旭は、爆弾は誘導されていると確信する。僚機が対処中の爆弾の機動はまるで人間が乗っているかのようだ。何らかの回避プログラムが走らせてあるとしても随時切り替えているに違いない。
(「敵の視線を感じる。これは幻感じゃない。としたら誘導者はどこに‥‥‥‥?」)
 空を旭は探さない。広大過ぎるから見つけられても手が届かないからだ。旭は機体をロール、背面飛行して地上を肉眼で観察する。眼下の空でラブラドール機が苦戦しながらも高機動と化した爆弾を撃破した。その破片が廃墟の都市に落下していく。
 この都市は救難施設などないただの廃墟だったが、旭の目は引きつけられた。破片が人間の生活の名残を吹き散らそうとする。が、落下する寸前、破片が弾けた。
 いまの偶然じゃない、なにか潜んでいる。旭は都市へ8式螺旋弾頭ミサイルを放った。 8式螺旋弾頭ミサイルは都市上空に到達する。その刹那、レーザーが走って8式螺旋弾頭ミサイルを撫で斬った。
 同時に旭に爆弾のひとつが襲いかかる。まるで潜伏者の怒りに触れたかのように。
 旭は爆弾に対処しながら僚機に都市の座標を送信した。紅とカンスは即座に意図を理解して機体を都市へダイブさせる。シュテルンは翼を鳥のように変形させて、雷電は4連バーニアの噴射炎を盛大に残して降下する。
 旭の放ったミサイルは迎撃されたものの、爆風で廃墟をなぎ倒していた。都市が埃や噴煙で包まれる。そこにKVからのレーザーや機関砲弾が雨あられと撃ち込まれる。たまらず隠れていた小型ヘルメットワームが上空に飛び上がった。
「余裕はないからね。手早く落とすわよ」とカンス。
「‥‥わかっている。時間はかけない」と返す紅。
 大気をすり抜けるように飛翔する紅のシュテルンと空を押し割るように飛翔するカンスの雷電が小型ヘルメットワームの左右から迫る。
 爆弾の一部が機動を変更、この2機を追うように飛び始める。
(「簡単にやらせてくれるわけないわよね」)
 カンスは自機に迫る爆弾を視認した。
 紅機がドンッと加速する。すでにでなぎ倒されている建物が衝撃波でさらに崩れる。対してカンスはKV特有の機動力を持ってその場で反転、爆弾と対峙した。
 カンスの雷電が爆弾に振り返った瞬間、ファランクス・アテナイが反射運動じみた鋭敏さで作動した。爆弾が粉砕される。
 後方の戦闘光を意識しながら紅は加速を続ける。小型ヘルメットワームはすでに視界に入っている。確実に仕留めるためにさらに距離を詰める。
 小型ヘルメットワームは悪あがきとして迷彩を使用する。カメレオンのように色を変えるが、ファームライドの不可視かと違って所詮、迷彩に過ぎず、紅の目を誤魔化すことはできない。
 紅はディスプレイに表示されている使用可能兵器群からソードウイングを選択する。
「‥‥私の刃から逃げられない、なんてね。墜ちてもらうわよ」
 シュテルンが小型ヘルメットワームを追い越した。紅はソードウイングから斬撃の感触を得る。後方からの機体を包むように迫ってくる爆発で敵の撃破を確認した。

○守護の星

「対応しきれない‥‥‥‥? お願い、間に合って!」
 里見は機体をほぼ垂直降下させて爆弾に追いすがる。けれども爆弾はあざ笑うかのように高機動をとり、里見の射線から逃れる。だが、爆弾は突然、踊り回るのを止めて大人しい垂直降下に戻った。
 いぶかる里見の耳に、爆弾を誘導していたと思われる小型ヘルメットワームを撃破したという紅からの報告が入る。
 里見は照準に爆弾を入れる。トリガーを引いた。放たれたレーザーが爆弾を見事、四散させる。同時に里見は機体を上昇させる。里見機を僚機が追い抜いていく。
 ラブラドールはコクピットから空を仰いだ。見上げた空には無数の輝点が浮いている。誘導こそもうないが、まだ撃破できていない爆弾は存在する。
「救難施設はひとつも破壊させません。‥‥‥‥予測完了、確実に当てる」
 砕け、ガルム。できるだけ細かくな、と。そうラブラドールは自身を叱咤すると爆弾を目指してブーストを噴かした。
 これに追従するようにKV編隊は急上昇する。各機のスラスターが瞬いた。高空から降る星を地上からの星が迎え撃つ。