●リプレイ本文
♪♪♪キメラ・簡単オヤツレシピ♪♪♪ 監修 町内会
〜美味しいキメラで冷たいピーチゼリーを作っちゃお!〜
●さあ作ろう!
簡単ピーチゼリーを使って美味しいデザートを作っちゃおう!
今回紹介するのは夏の冷たいデザート、ピーチゼリーだ♪ 作り方は簡単、まず桃缶に詰まったキメラ、ピーチゼリーを開けるよ! でもピーチゼリーはキメラだから、開けるのは能力者に任せようね! 以下! 下の説明はその時の状況だよ☆
「み、味方に殺されて、たまるかっ‥‥!」
「サルファ! 仲間を信じやがれ、です!」
「‥‥といいますか、どーしてラベル貼ったんですか! 面白くて、倒すのちょっと勿体無いじゃないですか!」
揉めている‥‥能力者達が揉めている‥‥。
サルファ(
ga9419)が顔にぶよぶよと軟体の物体を貼り付け、シーヴ・フェルセン(
ga5638)のコンユンクシオこと大剣を白羽取りしていた。その後ろで何やらズレた事を叫んでいるのが里見・さやか(
ga0153)である。
「あああぁぁ、斬り損ねた‥‥って、サルファごめんっ!」
イアリスと呼ばれる剣を構えたまま空の缶詰前にひたすら謝っているのはM2(
ga8024)だ。その後ろでは、時枝・悠(
ga8810)が手を出さず一歩引き、実に生温かい目でその光景を見守っていた。
「触らぬ神に祟りなし。別に見捨てる訳ではない、仲間の事を信用しているのだ」
が、悠然と構える悠に、顔一杯ぶるぶるとさせたままのサルファがくるりと矛先を向け近寄ってきた。
「うっ!? え!!? 来るな! こっちに来るなああ!」
全力疾走で逃げる悠に、追うサルファ。
「ピーチゼリーですか‥‥実際に食べた人がいて、大丈夫だったというのですが‥‥なにせ、ゼラチン質なのにこの季節に溶けたり分解したりせずに倒した後でおいしくいただけるので‥‥食糧難である地球人類にとっては知りたい事ですね」
さすがお医者様、辰巳 空(
ga4698)念には念を入れて安全確認の準備。彼がいれば食当たりを起こしてもきっと安心だ。落ち着いた様子でそう言う。
そして、
「‥‥スライムじゃ色気ないなぁ‥‥」
スライムに色気を求めてどうする紅月・焔(
gb1386)が頭に手をやりぼんやりとした眼で悲鳴や喧騒を上げながら走り回る能力者達を見まわしていた。
●準備だよ!
キメラ、バグアによる生物兵器にしてその姿は伝説の怪物や空想上の存在をモチーフにしたものの発見が多く報告されており、人類の恐怖を利用しようとしているとも言われるが―――
どうやら一度バグアとは人類の何たるかについて腰据えて話し合う必要があるらしい。
ゴトゴトゴトゴト‥‥‥
『‥‥‥‥‥‥』
沈黙し見守る七人の前には白地に墨の書体で桃缶とかかれ、小さな桃のイラストの付いたラベルが貼られた缶詰が木のテーブルの上で鈍い音を立てて揺れていた。
「なぜ受けたのだろう‥‥ああ、ほら、プロフェッショナルは仕事を選ばないとか、そういう。胸にこみ上げる物がある気がするが気のせいだ。そうに違いない」
悠が有り余る胸中の一端を言葉にして漏らす。
「えっと、シーヴさん、中国の依頼の時このスライムはどういう感じで‥‥?」
動きの収まった桃缶から距離をとったままさやかがシーヴに尋ねると、きっぱり返事が返ってくる。
「ピーチサンデー、美味かったでありやがるです」
大変わかりやすい返事を有難う。が、他の能力者が「他、他!!」と催促するので、やっとぽつぽつと跳ねての体当たり攻撃、一般人が窒息させられていたこと、物理耐性が高いこと等を話し始める。
「必要情報、こっち?」
話し終え、小首を傾げて呟くシーヴの隣で焔がぼうっとした表情のまま「うんうん」と頷いた。
ちなみに自称煩悩能力者こと焔は女性が大好きだ。シーヴは黙っていれば美少女だし、他の女性陣もレベルが高い。さやかは清楚で爽やか、一方悠は勝気で可愛らしい。やったぜ焔!
「‥‥‥‥‥」
だが、だからといってひたすら女性ばかり見ているといつか警察呼ばれるぜ焔!
「大丈夫、キメラ食べられなかったら空地の土持って帰る‥‥」
そして空地は甲子園じゃないぞ焔!
「以前から興味があったんだよ。スライムって、どんな味がするのか、な。ここで試させてもらおう」
その横でさらっとすごい事を言ってのけたのはサルファである。
「フルーツポンチっぽく、ソーダ掛けたら美味しいかな?」
だがしかし、M2も食う気まんまんの様だ。二人はまじまじと桃缶を見つめ、M2がつんと指で桃缶を突くと、それに呼応するように桃缶がゴトゴトと動いた。
「あ、動いた動いた」
M2が声を上げると、今度はそれを空がまじまじと見つめる。
「しかし、これが何故食べられるのか‥‥酸がないからとはいえ、そもそも食べられる、しかも美味しく食べられる必要性が全く解らないのですが‥‥」
うーむと見詰めてみるが、目の前の能天気な桃の絵と桃缶の字からは何も伝わらない。真剣な眼差しを向ける空の目の前で、再度桃缶がごとごとと揺れて見せる。そして又静かになった所で、今度はさやかがそーっと指を伸ばしチョンと突くと、また揺れ出した。
「はわぁ!?」
なにはともあれ、此処にキメラが入っている事は間違いないようである。
七人は近くの空き家を借り、握っている間微妙にぶるぶると動く桃缶をその手に持ち移動したのだった。
●開けるよ!
突き抜けるような空の下。
がらんとした空き地の真ん中にコトコトと小さく揺れる桃缶の周りを、
ぐるりと七人の能力者が取り囲んでいた。
「さて‥‥やるか‥‥」
焔が缶を見張りながら呟く。ついでに女性陣も見詰めながら呟く。桃缶見よう!
「‥‥こういう時は、期待すれば良いのだろうか?」
悠が緊張した面持ちで呟くと、一同しんと黙りこくる。そんな中、
「―――む? 誰も開けないのか?じゃあ、俺が‥‥」
サルファが一歩前へ出た。それを見てM2がイリアスを構えながら宣言した。
「じゃ、カウントダウン行くよー」
3、能力者一同構えを取る。
2、ごくりと息を呑み、開封にそなえる。
1、誰だくしゃみをしたのは。
ぱきっ ぺりぃいいいいいい
聞きなれた缶切り不要タイプの缶詰の開封される音、その音と共に空中に投げる間もなく、
しぽん
『!』
そんな間抜けな音と共に勢い良くピーチゼリーが跳ね上がる!
だが、能力者達とて行動は早かった、一瞬にして、
さやかのスパークマシンが作動し、空が朱鳳で急所突き、布斬逆刃を発動させ、シーヴはコンユンクシオでソニックブーム、M2はイアリスで急所突き、ソニックブーム、悠は月詠でソニックブームを打ち込み、サルファは血桜で両断剣、焔のシエルクラインが火を吹いた。
だがキメラはその猛攻が届く前、又はくぐり抜け、ほんの少し切り分けられた程度で、
ぴたっ
『あ』
サルファの顔にジャストフィット。
因みに当たった攻撃、M2の攻撃なのだが「ああでも今のうちにある程度スライスしとくと後で切り分け楽かなー」とか「他の人と太刀筋被ったら斬り辛いなー」とかそうした雑念がなければ恐らくもう少しいい結果になっただろう。惜しいぞ!
「はわー‥‥おいしそ‥‥じゃなかった、やっつけないと! サルファさん!?」
さやかが悲鳴じみた声を上げ、
「待って下さいね、すぐに何とかしますから!」
そしてすぐ側にいたシーヴに練成強化を掛ける。シーヴの、大剣が、コンユンクシオが強化され、
「行くでありやがるです」
「ちょっと待て!?」
顔にスライムをくっ付けたまま、声をくぐもらせ今度はサルファが悲鳴じみた声を上げた。
「ぐぅっ、こ、の‥‥ぐぉぅ‥‥!!」
「観念しやがれです、サルファ」
「すぐ済みますよ、こっちを向いて下さい」
迫るさやかとシーヴに急いで噛みちぎろうとするがフォースフィールドに阻まれ歯が立たない。
「今回も頭部目がけて飛んで行きましたね。対象の頭部を狙って飛びつく性質がある事から、生物の呼気に反応しているのかと思われますが―――」
一方空が妙に冷静に分析しながら武器を構える。もしもサルファが酸欠になって倒れたら、是非手当てをお願いいたします。その横で悠が遠い目でその光景を眺め呟いていた。
「町内会に対し思う事は無くも無いが。いやむしろ初邂逅から今までで有り余る程に膨らんだが‥‥‥言う事は無い。何も無い。無いとも。沈黙は金、良い言葉だ」
若干十四にして何とも悟りきった言葉である。夏の日差しが眩しい。
「ぐ、‥‥くぅ‥‥うゎ!?」
そこに突然乾いた発砲音が鳴り響き、ピーチゼリーと格闘していたサルファはすぐに身を引いて弾をかわした。
「スライムと共に散るカ‥‥安心しロ、お前の名は忘れなイ」
覚醒し、えらく不吉な事を言いながら撃ったのは焔だ。もうすでにキメラ威嚇してんだかサルファ威嚇してんだか解らないが、とにかく今彼の目はしっかりと、覚醒し、オーラが出たり瞳の色が変わったり文様が浮かんだりと美しく変化した女性達に釘付けだ。でも今君が使っているのは紛れもない飛び道具だ。標的見よう!
「うぐ‥‥‥ぐぐぐ」
しかしサルファとてそろそろ限界である。いい加減顔のキメラを取らないと、窒息してしまう。
「サルファ、俺達を信じて!」
M2がイアリスを構えつつにじり寄ってきた。美しい、美しいがそれでもそれは中々酷な頼みというやつだ。
「サルファさん、今は急を要します。早くしないと本当に酸欠になって大変な事になってしまいますよ」
何時の間にやら空が後ろからそっと寄ってきて羽交い絞めにする。辛い所だが、ここは彼の為、絶えて貰う他ない。
其処に再度さやかとシーヴが迫ってくる。
「サルファさん!」
「!!」
さやかがそう言い、そして、そして結局はシーヴが―――
●盛り付けです!
こうやって能力者に蓋を開けて貰って止めを刺して貰ったら、あとはピーチゼリーを可愛く盛り付けるだけ、とっても簡単だね!
ヨーグルトや生クリームと合わせてもおいしいし、もちろんそのままゼリーとして食べてもOK! 盛りつけは君のアイディアとセンス次第だから、どんどん可愛く持っちゃおう!
「死ぬかと思ったよ」
あらゆる意味が含まれているであろう一言を、サルファが呟いた。
結局あの後無事シーヴの大剣でスライムのみを落としたわけだが、顔すれすれまで大剣が来る恐怖は体験した者にしかわからない。
だが、誰がやるにせよきっと上手く行ったのだろう。そう思い人心地ついていると、
「‥‥危ねぇです。手、滑りかけやがったです」
今何と?
一瞬場が凍りつくが、直ぐに、
「で、どうやって食べる?」
悠が尋ねると、空以外の五人が声を合わせて答えた。
『生で』
「私は食べませんが、万一に備え皆さんに付いてます。レポートを作成したいので、感想は是非教えて下さい」
空はそう言うと苦笑する。
「まあ、心配するのが仕事の様な職業なので」
これで共倒れの心配はなくなった。健康に対する保険はバッチリだ!
「俺はさっき町内会の人達にソーダ貰って来たから、フルーツポンチみたいにソーダに浮かべて食べるよ。他に誰かソーダ欲しい奴いる?」
M2がそう言い、缶に入ったソーダを数本取り出した。料理に使うというより、飲みたい人が挙手しM2からソーダを受け取った。
「見よ!! 我が包丁さばき!」
ソーダがいきわたった所で、サルファが鮮やかにキメラを切り分ける。小型に属するキメラなのでそんなに量はないが、その中でもこれは割と大きめのスライムである。一人一人に行き渡ると、各々感慨深げに口をつけた。
いわく、
「プリンに醤油でウニ味とか聞きやがったですが、これにゃ醤油合わねぇ?」
マイスプーンに醤油持参のシーヴ。
「ゼリーで腹を満たせばこの虚しさも満たされるだろうか。無理だろうか。無理だろうな。嗚呼」
悠もそう言いながら生のまま感慨深くスプーンを差し込む。プルンとした弾力のある少し固めのゼリー。口に入れるとそのまんま、
「桃ゼリーだな。確かに」
ピーチゼリー初体験。それはやはり桃のゼリー、そのままだった。サルファも同意するようにふむ、と頷くと、
「ふむ‥‥うまいな。おやつにはもってこいだ」
納得したように頷いている。
「素材だって胸だって何も手を加えない自然体が一番だ。うん」
大真面目に全く関係ない事を口にしつつぷるんとしたスライムを口に運ぶ。
「うまい‥‥‥」
うむ、やはり手を加えない事が良かったらしい。自然はいいね。
「そのままも美味しいけど、ソーダともあうよ」
M2が深皿にソーダを張り、果物と共にピーチゼリーを救いあげ口に入れる。恐らくフルーツポンチを作るという事で、町内会から差し入れてもらったのだろう。
あ、果物良いな! とその場にいた全員がM2に羨望の眼差しを送ると、「まだ余ってるよ」とM2が残りの果物を差し出す。
「‥‥さしずめ、勝利の美酒ならぬ美スライムですね」
さやかが果物を受け取り、ソーダを煽りながら呟いた。そしてぱくんとスライムを口に入れた。
「本当に、普通に桃のゼリーなんですよね‥‥」
そして少し感心したようにそう漏らした。
その感想を空はメモに取り、レポートの資料集めをしている。それから体調悪そうにしている人がいないか見ているが、特にそうした兆候は見られなかった。それから少量のサンプルを採取した。
●まとめ
さて、皆はちゃんとピーチゼリーのデザート上手にできたかな? ピーチゼリーを扱う時の注意は、フォースフィールドがあるから必ず能力者と一緒にやってね♪
それからレポートと調査の結果、熱を加えるとゼリーがどんどん柔らかくなる事が解ったよ! 柔らかいゼリーを使いたい時はゆっくり暖めていってね! でもあんまり火が強すぎると焦げ付いちゃうから注意が必要だ!
それから最後に、能力者がいないからって生きたままのスライムを火にかけちゃ駄目だぞ! それじゃあ、君もレッツトライ♪