●リプレイ本文
・道中
「失敗したら、空爆で吹き飛ばすって、怖いなあ」
「空爆は、ご遠慮ねがいたいですねぇ」
野良 希雪(
ga4401)と斑鳩・八雲(
ga8672)が、出発前に艦長が言った一言を思い出し、つぶやく。
それを聞いた、ヘリのパイロットは、ふっ、と笑って返した。
「そりゃ、あの人なりの、優しさってやつだよ、死んだ後に、やつらの餌にするよりはって、な、見てみな」
ヘリパイロットが言い終わると同時に、機体の近くを、F/A−18改ホーネットが2機、飛び去っていった。
その翼下に対空装備を満載して。
そのホーネットのパイロットから無線が入った。
「レッドブル1より、シーオーク、先に行って、ちょっと掃除しておく」
「了解レッドブル、傭兵さんたちに、何か言っておくか?」
「ああ、落っこちたのは俺の部下なんだ、全員無事に拾ってきてくれ、頼む!」
「まかせろ、必ず助ける」
「大丈夫です、気合120%〜120%で行きますよ〜!」
部下を心配するパイロットに、ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)は淡々と、野良 希雪(
ga4401)は力強く答えた。
・到着
「一キロほどといえども、実際に目にすると広いものだ、これだけ茂っていれば更にな」
水円・一(
gb0495)が、感慨深げに言った。
「孤島か‥‥、コレが依頼じゃなかったら水着持ってきて海水浴と行きたい所なんだけどね」
「あたしがもう50歳若ければ、ビーチではしゃいだりした物を‥‥」
ヒューイ・焔(
ga8434)とジーン・ロスヴァイセ(
ga4903)は、降り立った砂浜を見て、そんなことをいっていた。
「ビーコンの反応があったのはこの辺りらしい」
水円が、ヘリパイロットから、要救助者の大まかな位置が書かれた地図を借りてきて、その場にいる全員に配る。
「今は拙速を尊ぶべきでしょう、もたもたしていると手遅れになる可能性がありますからね」
全員に地図がいきわたったのを確認すると、鳴神 伊織(
ga0421)が言う。
ほかの面々はそれにうなずくと、事前に決められた班に別れ、森の中に消えていった。
「‥‥‥さて、では私も行って来るよ」
「‥‥あの男、ほんと何考えてるか、わっからねーよなあ‥まあいいや、シーオーク、後退する」
なぜか、今までコ・パイロットに化けていたUNKNOWN(
ga4276)にあきれながら、ヘリコプターは空母まで下がっていった。
・捜索(A班)
あらかじめ布で印をつけた木を基点に、ホアキン、ジーン、焔、水円のA班は島の西側の捜索を始めた。
「ビーコンの反応は、この辺から出ているらしいのだが‥‥」
方位磁石と略地図を照らし合わせながら進む一行だが、探し物は向こうからやってきた。
「あ、あんたら、さっきヘリから降りてきた連中だな?」
「そうだ、あなた方を助けに来た」
木陰から出てきて、おっかなびっくりたずねたパイロットに、ホアキンは淡々とそう答えた。
「ところで、ほかのパイロットはいないのかい? 確かあんたを入れて4人いるはずなんだけど?」
「ああ、俺の後席が向こうにいる、もう一機のコンビは、ちょうど反対側の海岸に下りているはずだ、パラシュートが見えたからな」
「じゃあ、別の連中が向かってるはずだ、とりあえずあんたの相棒のところまで案内してくれよ」
「わかった、ついてきてくれ」
A班の面々は、B班に連絡を入れると、出会ったパイロットに案内されて、もう一人の救助目標のところに向かった。
・捜索(B班)
「今A班から連絡がありました〜要救助者2名確保したそうです〜」
あまりの暑さに、辛うじて生ける屍状態は回避している野良が、ほかの二人にA班からの連絡を伝えた。
「それと、残る2名はそちらの近くに、一緒にいる可能性が高い、ということです〜」
「そうですか‥‥わかりました、早く見つけてあげたほうがいいようですね」
しばらく周辺を捜索していると、無線機に再び連絡が入る。
ただ、それはA班からのものではなかった。
「ああ、つながった、こちらレッドブル4、そこから西に行った、木の近くにいます、青い布が縛り付けてあるので、すぐわかると思います、どうぞ」
「こちら捜索班です、わかりました、そちらは問題ありませんか? どうぞ」
「問題ありません、自分も後席も、ぴんぴんしてます、どうぞ」
「わかりました、すぐ向かいますから、しばらく待っていてください、どうぞ」
「了解、お願いします、オーバー」
八雲が通信を終えると、一行は指定された方角へ歩いていく。
そこには確かに、青い布が縛り付けてある木があって、その近くにUPC軍のパイロットスーツを着た男性が2人立っていた。
「あなたたちが救助班の方ですか? 助かりました」
「ご無事で何よりです、ほかのお二方も私たちの仲間がすでに保護してます」
「そうですか、それなら安心です」
「ところで、何で私たちの無線機の周波数がわかったんですか?」
安心したのか、ほっとした表情のパイロットに、野良がそうたずねた。
「ああ、この木の根元に、その周波数に設定した無線機が落ちていたのです、罠かとも思いましたが、わが軍の正規品でしたので、思い切って使ってみて正解でした」
「いったい誰がそんなことを? まあ、それはさておき、A班に連絡して合流地点にいきます、お二人とも、ついてきてください」
「道中、お願いします」
合流地点まで向かう一行を、満足そうに見つめる黒衣の紳士がいたことは、その場の誰も木がついていなかった。
・好事魔多し
「救出部隊へ、こちらレッドブル1、すまねえ、取りこぼしたクソッタレが4匹、そっちに行きやがった! シーオークの野郎より、そっちに早くついちまう、悪いがぶっ飛ばしておいてくれねえか? ヘリが降りられねえ!」
回収ヘリに連絡をいれ、いざ海岸に出ようとしたとき、ハーピーと戦闘していたホーネットから、通信が入った。
「こちらジーン、了解したよ」
代表して、ジーンが無線に応じる。
しばらくすると、回収地点のあたりに向かって、飛んでくるハーピーの群れが見えた。
「俺たちは森の中に退避する、存分にやってくれ!」
「私が護衛につきます〜」
救助したパイロットたちが、野良とともにいったん森の中に逃げ込む。
ほかの面々は、ここぞとばかりに、飛来したハーピーと距離をつめる。
敵もこちらに気がついたのか、距離をつめてくる。
向かって一番手前にいたハーピーが、どこからか銃撃を受けて、砂浜に墜ちてくる。
どうやらUNKNOWNが森の中から狙撃したらしい。
そこに、伊織が止めを刺すべく切りかかる。
「あまり手間取る訳にもいきませんし、手早く済ませましょうか」
銃弾に耐えたハーピーだが、追撃には対応できず、あっさりと斬撃を受け、断末魔をあげた。
2匹目のハーピーに対して、ホアキンのエネルギーガンが火を吹いた。
「こっちのほうが性に会ってる、か」
「すばしっこいが、追えない訳ではない」
深手を負って墜ちてくるハーピーは、水円とジーンが張った弾幕の中に突っ込んで、ひき肉と化す。
3匹目は伊織に体当たりを仕掛けたところをかわされ、そこに八雲のショットガンが命中、
「止めだ」
更そこに、ホアキンに追い討ちを食らい、事切れる。
「ふむ、ショットガンも中々良いものですね‥‥拳銃とは火力が段違いです」
最後の1匹に、焔がスコーピオンで銃撃、翼を撃たれたハーピーが低空で体勢を崩す。
「いおりん、いまだ!」
「相手をする程、暇でもありませんし‥もう逝きなさい」
ここぞとばかりに、伊織の太刀筋がきらめき、敵を一刀の元に切り伏せた。
「これで終わりですね、全員無事で何よりでした」
「こちらシーオーク、どうやら終わったようだな、今降りるから、少し待ってくれ」
最後の1匹を倒すのとほぼ同時に、回収のヘリが到着する。
野良とともに森から出てきたパイロットたちに、再びコ・パイロットに化けたUNKNOWNが手を貸してヘリに乗り込ませている。
乗り込んだパイロットたちに、乗ってきたメディックが問題ないか聞いている。
傭兵たちにも、けが人はいないか聞いてきたが、問題ないことを伝えると、それならいいと下がっていった。
そして、全員を乗せて飛び立ったヘリの上を、武器を空にしたホーネットが2機、空母のほうに飛び去っていった。