タイトル:Ja Faust Nein SES06マスター:成瀬丈二

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/05 02:50

●オープニング本文


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 マドーナ市のレンネンカンプ市長は、なし崩しに『ファフナー』と認定呼称される事になった(多分)キメラの処置に腐心していた。もっぱら、秘書に愚痴を垂れるだけであるが。
「全長500メートルのドラゴンだと!? これではナイトフォーゲルに出撃を依頼するしかないではないか!?」
 先日の80センチ列車砲『アルベリッヒ』の射撃の際、(緊急用のヘリを運用する必要上)設置してあった消防署のレーダーにはアンノウンのおそらく、アイゼンファウストのヘリコプターが2機映っていたにも関わらず、その情報を傭兵側に伝えていなかった不首尾を棚に上げて、しつこいほどくどくどと言葉を垂れ流す。
「それでしたら、UPCの傭兵も、アイゼンファウストの傭兵も両方とも取り込んでしまえばいいのに?」
「何をナンセンスな。アイゼンファウストの列車砲だって、ファフナーに傷を負わせられなかったんだぞ? そんな連中に金を払ってどうする───税金の無駄使いだと、議会で叩かれるのがオチだぞ」
「でも、傭兵達はあの士官候補生とチャンネルは維持しているんでしょう? 公式にアイゼンファウストにメルジーネ士官候補生へのマドーナ市による『医療行為』は不要と突っぱねられただけで」
 非公式なつながりとしては、アイゼンファウストの長の曾孫であるメルジーネ・モーゼルが入院当時使っていた、医療コンピュータのメールアドレスに不定期なメールが繋がっているだけで、マドーナ市としては公式なネット環境による連絡は途絶えている。
「まあ、ファフナーとUPCの傭兵が交戦時に列車砲を打ち込まれるよりは───」
「傭兵同士で不干渉協定を結ばせるか‥‥」
「後は市長の腹三寸でしょう」
「そうだな、アイゼンファウストが蓄えている、ファフナーの情報をはき出せるか───穏便に」
 ナイトフォーゲルを円滑に運用する為の交渉が始まった。
 誰も安全を保証せぬ旅路に。

●参加者一覧

斑鳩・眩(ga1433
30歳・♀・PN
忌咲(ga3867
14歳・♀・ER
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN

●リプレイ本文

「すまないが、完全な特秘事項なので、ヘルメットワームの回収に赴いた事以外の情報を伝える事は、ほのめかす事もできない」
 斑鳩・眩(ga1433)と辰巳 空(ga4698)、南雲 莞爾(ga4272)はラストホープで、あるいは電話で、先日居合わせた、UPCの傭兵からつっけんどんな返事を返される。
「私は策謀は苦手でして‥‥。だから探すしか無いでしょ。二本の脚でね」
 気分を切り替えた眩が背筋を伸ばして、自分の任務に取りかかる。
 残念な事にファフナーの写真は誰も撮影していない。 
 レンネンカンプ市長から、矢も盾もたまらない催促が続く。
「はいはい了解‥‥さって───と。コーヒーブレイクも許されないと」
 残るは直接、アイゼンファウストに乗り込む事か。
「にしても、肩書きがないと動くのは辛いわね〜、只の兵士であってくれるかどうか?」
 ひとり語りしながらも、眩は周囲の民間施設の聞き込みは余念がない。
「ふむふむ、所属不明の傭兵と同数のゲルマン系のヒトを泊めた───でも、これ露骨に偽名よね。宿の中でオープンな会話はしていない、と。向こうもプロという事ね。同じ人種とは厄介な事」

「前回は高速艇の、集合時間に遅れて置いて行かれちゃったから、今回挽回しなきゃね」
 と、忌咲(ga3867)はアンティークドールを想わせる白磁の肌を、晩春のラストホープの残光に閃かせる。
「なんだかすっごく堅物みたいだし、引っ張り出すのは骨が折れそうだね」
 忌咲は今回、ラストホープに残って事前交渉や、アポイントメントの確保に走り回る事を己の務めと任じた。
(各メガコーポとかに協力要請しないといけないかもしれないし。
 こういう話は、UPCを通すのかな?)
「ともあれ、一傭兵じゃ門前払いだろうし、レンネンカンプ市長さんからも何か要請とか、一言言って貰った方が良いかな?
 UPC以外でも、ラストホープでコンタクト可能な人に当たってみないとだね。
 いつになく面倒な仕事だね〜」
 一応、レンネンカンプ市長からは、時限付きで市所属の渉外員という立場を無理矢理引きずり出した。
「さて、これで針は出来たという事にして、付けるエサの準備かな───?」
 アイゼンファウストが食いついて来そうな物と言えば、SES搭載の中長距離弾頭と忌咲は踏んでいた。
 しかし、限度も見えていた。大型列車砲を使った大口径SES兵器のプラン自体にはどこかのメガコーポレーションが興味を持ってくれる可能性は高いかもしれない。とはいえ、UPCが許可を出すか否かである。
(UPCもこれの応用で『地中貫入砲弾』とか作れれば、対アースクェイクにも有用だと思うんだけど。もともと列車砲って地下施設破壊用だし)
 とはいえ、神出鬼没のアースクェイク相手に、機動性に欠ける80cm列車砲では、対処療法とはいえ無理がありすぎるだろう。
 極論すれば80cm列車砲の真下から、アースクェイクが現れて、THE・ENDという可能性もあるのだ。
 忌咲はラストホープにある様々なメガコーポレーションの支部を回ってきたが上記の点を指摘された。銀縁眼鏡のクリメタル社では担当が苦笑混じりに───。
「改装の費用や、運営上の難点は別に考えるとして───能力者‥‥エミタ能力者が居なければハナシにならないのでは? しかも、アイゼンファウストの意志通りになるエミタ能力者が。対パグアに関する技術、エミタ関係は未来科学研究所が独占していますから、その点をクリアーできなければ、アイゼンファウストも動かないでしょう」
 エミタ能力者は、通常ひとミッションこなす度に未来科学研究所で、コンディションの管理を行っている、これを怠ると最悪生死に関わる事態になる(らしい)。
 つまり、エミタ能力者は未来科学研究所の管理下に置かれているのだ。
(改めて言われないと自覚ないわね)

 空は迷いつつも、メルジーネの事は、前回までの調査で手詰まりなので、もっと情報が集まるまで置いておいて‥‥どうやってアルベリッヒでファフナーに砲弾当てたのかも含めて謎は深まるばかりだが、謎の集団の方が急を要すると感じて‥‥眩、莞爾と一緒に調べに行っていた。
 結果は周知の通りであり、アイゼンファウストと疑う要素は大きかった。
「正直言って手掛りゼロ‥‥従って、足を使って探す事になります。
 次は、前回のミッションで‥‥決死の覚悟でヘルメットワームの回収に来ていた人達に話を聞いて何か怪しい‥‥手掛かりになりそうな事はないか聞き込みをしようかと、試みたが、彼らから何の情報も得る事は出来なかったのは同じであった。
 更に、交戦した現場を調べて、銃弾や投棄された武器・足跡といった物証を集めて連中がどこへ向かって退却していったかを丁寧に調べようとしたものの、痕跡はアルベリッヒの衝撃波で跡形もなくなっていた。
 ここまで来ると、空も莞爾も半ばヤケになっていたが‥‥連中が下がっていった方向の市街地‥‥街道沿いで聞き込みを行う事になる。
これで‥‥恐らく、連中の大体の正体と本拠地が分かると考えていたが‥‥効率を考えて同様の行動を取る者と連携して当たることにする。莞爾はペシミストな空気を漂わせていた。
 一泊した後、トラックに分散して搭乗。暁の事もあり、ナンバーを覚えている様な奇特な者は居なかった。
 そんな空の元に、メルジーネ・モーゼル士官候補生のアドレスで送られたメールが、市立病院の公共用メールアドレスから、転送されてきた。
 今まで交わしたメールのやりとりは、とりあえず基本は(かつて精神面のケアをしていた関係で)健康相談で、後は他愛のない噂のやり取りではあったが、こちらからは街にやって来た傭兵達からの話として、UPC内部で『大型弾道弾の開発』が始まったという噂をそれとなく入れてみたものであった。
(まあ、アースクエイクや地下要塞で痛い目を見ているUPCですから、根も葉も無い訳じゃないですが、基本的に空は医者であり、軍事機密とは分からない事になっているので、あくまでも傭兵の噂としてである)
『本当にそんな兵器造るんですか? UPCもヒマですね』
 当人は信憑性にかけるという噂は、より遠距離から見られるメルジーネ少年にとっては、更に信憑性に欠けるものであった。
 
 そして、眩は渉外要員として、秘密会談をアイゼンファウストに持ちかける。
 巨砲を中心として、整然と陣の敷かれたアイゼンファウストに通される一同。 
「‥‥メルジーネ。直接話に来たわ。兵としてね」
 眩は堂々と言ってのける。
 相変わらずのメルジーネ少年を傍らに置いた、車イスに乗った筋骨逞しい老人が居た、この男がグスタフ・モーゼルであろう。
「レンネンカンプ市長の使い走りか? ラストホープではイロイロとクルメタル社に吹き込んでいたと聞き及ぶが───なーに、クルメタル社の営業からの茶飲み話だ」
 堂々とかつ馴れ親しく。グスタフ・モーゼルが言葉を切りだす。
「だが、その返答は『NEIN』としれ、UPCの使い走りになる気はない」
 そこで息を一呼吸切って───。
「エミタとSES、AIの全フォーマット公開が前提と知れ」
 獅子吼するグスタフ。
「もっとも、そこまでを『市長の使いっ走り』に求めるのは酷だろう───」
 空はそこで交渉が停滞したのを悟って、グスタフに尋ねる。
「ひとつだけ質問が───よろしいでしょうか? どうやってファフナーにアルベリッヒを命中させたのでしょうか?」
「最初にファフナーを発見したのが、我が曾孫だったからだ。後は動いていない事を定時に跳ばしたヘリコプターで三角測量しただけの事」
 莞爾はアイゼンファウストの陣から退きながら───。
「おっかない爺さんか───」
 厄介事だが、ラストホープにしてみれば、些末事に過ぎないだろう。後はファフナーをどこで発見するかにかかっていた。
 これがアイゼンファウストとの接触の顛末である。