タイトル:JafFaustNeinSES03マスター:成瀬丈二

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/03/28 23:38

●オープニング本文


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 メルジーネ・モーゼル士官候補生がアイゼン・ファウスト傭兵団に戻って、些かの時が過ぎた。
 市長は即刻、市街地から50Km以内にある80cm列車砲『アルベリッヒ』移動の為の複々線撤去を求めた。
 現在『アルベリッヒ』は市街まで約100Kmに位置している。
 しかし、グスタフ・モーゼル傭兵団長の名に於いて、これはメルジーネ士官候補生を保護した事による、その見返りとしての対バグアの用心として、『好意』で行っている事だと主張する。
 その為、外交上、撤去の為の落とし所を見つけられない市長はラストホープに泣きついてきた。
「向こうがバグアより、言葉が通じない事が判った。だから、バグアのユダに偽装して、線路を破壊してくれ。勿論、帰る路線は残した上で。言うまでもないが、万が一にも私が手配した事がばれない様に」
 市長はナイトフォーゲルを出して欲しい様であったが、ラストホープの将官達はそれに異を唱え、市長は土木工事用のプラスチック爆弾を提供して、それで破壊してくれという事になった。
「くれぐれも───くれぐれも、私が差し向けた事を証さないで下さい、作戦の失敗はアルベリッヒの撤退ではなく、私が当事者である事がばれない事ですから」
 保身の為の戦いが始まる。
 ミッション14スタート。

●参加者一覧

斑鳩・眩(ga1433
30歳・♀・PN
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
忌咲(ga3867
14歳・♀・ER
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN

●リプレイ本文

 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)は『アルベリッヒ』の複々線上に『アイゼンファウスト』の関係者が出入りしている酒場がないかを確認した。
 しかし、その間に酒場はらんちき騒ぎを防ぐ為の憲兵がかならず居り、自分の考えていた、バグア関係者に襲われた、という情報を流し、そのまま立ち去る事が不可能である事を悟る。
「酒代を得した思えばいいのか? せっかく張り込んだのに」
 その一方で、漸 王零(ga2930)は情報をばらまいていた。
 顔が割れていない王零が、前もって旅人もしくは放浪者を思わせる恰好で訪れ、人の集まりそうな場所で、住民に話しかけるついでに『バクアの隠密活動を主眼とした特殊部隊がここら辺に潜んでいるみたい』などのバクア側の勢力の存在を思わせるような噂を流したのだが、その話を聞きつけた『アイゼンファウスト』の憲兵達が───。
「‥‥その話を詳しく聞かせてもらおう」
「さて、何から───話したものかな? 隙有り!」
 王零はそう言って連行される所を、己の武術『聖闇倒神浄影滅魔流』で、有無を言わさず突破した。しかし、身長が210cmというのはあまりに目立ちすぎるだろう。仮面をつけてごまかせる範囲ではない。
「手を誤ったか───」
 さすがは鍛え抜かれた肉体の『闇影の狂鬼神』の名は伊達ではない。であるが、エミタを活性化させずに闘うには限度がある。
「‥‥馴れない事をしてしまったな」

「これ、もし捕まったりなんかしたら大変な事になるよね」
 ふたりの首尾を聞いた忌咲(ga3867)はおもむろに頷く。
「今回は下準備が重要だよね。で、それが両方ともアウト───な訳か?」
 喋りながら、プラスティック爆弾の改造を進める忌咲。
 やるべきステップはみっつ。爆弾の設置場所の検討と、必要なら爆弾の改造。情報操作。この情報操作の段階で躓いているのは忌咲にとって、正直痛かった。
 ともあれ、忌咲は爆弾の改造の手を休めない。
 提供された工事用の爆弾は、彼女の予想通り有線式であり。結局、時限式に改良せざるを得なかった。
 本来望むべきは、無線式の方であり、そちらが安全であったが、道具とかパーツとかを自分の懐から出さなければならないのはきつかった。
 時限式に改造する場合時間合わせのタイマーなど、そういったパーツはなるべく量産品のありふれた物を使う事にする。
 爆弾はどうしても遺留品が残る事を嫌っての事であった。
 足のつく可能性があるものは、なるべく使わない。
(爆弾に管理コードとかが刻印してあったら、削り取るとかしておかないと)
 などと、思いつつ、調べてみると案の定、刻印はある。
 外見とバランスが取れた胸を痛めつつ、忌咲は作業に没頭していた。
 絶望する辰巳 空(ga4698)。
(私は、向こうに顔を知られてますし、向こうも軍隊ですから‥‥徹底的に調べると思われますので、最早、因果だの事実関係を捻じ曲げる事は容易ではないのですが、頑張ってポイントを稼ぐ事にします)
 と、市の病院で、メルジーネ少年の血液サンプルに対し、遺伝子レベルでの性別の判定、人種の策定及、遺伝子の不自然な改編やエミタに対する適性があるかどうかをチェックしてもらった。
 これは、今後の対応を決める手掛かりになると思うので、データを抑えておくという名目である。
 結果‥‥性別、男性。人種、ゲルマン=フランク型という事が判ったものの、メルジーネのエミタ適正は血液サンプルでは判らなかった。
 単に資材不足である。
 本気でやりたければ、当人を検査器具にかけてもらうしかない。
 との、覚え書きに。空は。
「アイゼンファウストの構成員相手に‥‥それが簡単に出来れば苦労はしませんが」
 とりあえず、UPCに居る間に準備していた現地の『バグア襲来以前の衛星写真』や『現地周辺の地形図』を揃えたまでは良かった。しかし、肝心の空の求める“最小限の爆破でレールを敷けなくなり”“かつ偵察兵を寄こした時にこっちが偽装工作を施す時間がある場所”をUPCの専門家にもアドバイスを貰おうとした所、こう斬り返された。
「幾ら出す?」
 専門知識はタダではない。
 空は傭兵はどこまで行っても傭兵で、UPCの下請けである事を思い知らされた。
 爆弾は、忌咲に任せて。無線機はUPCの中古品に自壊装置を施した物を用意。それに声紋から特定されるのを防ぐ為、音声合成ソフトと、それを使ったそれらしい通信文を無線機に仕込んで、バグアかUPCがやったと見える様にワザとらしく爆破の準備を施す。
 
 決行の夜である。
 忌咲は爆破実行の前に、あらかじめ段取りを確認する。
 何か勘違いが有ったら大変だという事だ。
 爆破場所は、空が集めた資料やアドバイスなどで決めたい所であったが、肝心の情報が十年以上前、更にはレールを敷く為に整地されているであろう事を鑑みるに良好な情報ではなかった。
 忌咲は、資材置き場の方を志願した。
 線路爆破で見張りが手薄になったら、こっそり近付いて、時限式に改造した爆弾を設置してくる旨、伝える。
 追加の爆弾は資材の影とかに隠して、見つけ難い様に。
 複数箇所で爆破を起こして、警備を混乱させて逃げやすくするのが目的。
 ついでに可能なら、資材を強奪したい所。しかし、それは厳しいと自分でも思っている。
「目的はあくまで線路破壊だし、資材置き場はついでだから、警備の様子を見て、危険なら盗むのはやめた方が良いかな」
 場合によっては資材置き場の爆破その物も止めるしかない。
 一同は必死になって止めた。
 傭兵である事、能力者である事を隠すには忌咲の運動神経はあまりにもキレている。そんな彼女が捕まってはこっそりもへったくれもない。
 空としては、別の無線機を使い味方と連絡を取りながらタイミングを見て爆破してどさくさにまぎれて隠れ、偵察兵に無線機を見つけさせて『バグアの通信』を、ひと通り聞かせたら偽装用の無線機を自爆させ、見つかる前に撤退して任務完了と洒落込みたかった――過去形である。
 ホアキンも爆弾を仕掛けるのに良好そうな条件、地盤が軟弱で、退避に時間の取れる場所を線路の爆破地点に選定しようとしたが、基礎情報が欠如している。
 暗視スコープを使用したい所だが、UPCから貸与は受けられず、生身で行くしかなかった。
 懐にあるのは拳銃一丁のみ。
 一方、王零も線路爆破時は外見的特徴がわからないような格好で行い。指紋を残さない様、手袋をして隠密行動を重視し見つからない様に作業をこなす積もりである。
 しかし、その巨体というインパクトのある外見では隠密行動には不向きかもしれなかった。
 ともあれ、“万が一”発見された時は適当に相手をした後に連絡を受け、撤退しその際の足止めとなるように線路を爆破したと思わせるような言動をとる予定である。
「時計合わせ、マルフタサンマル」
 空の声に合わせた各員のデジタル時計の時刻が合わされる。

 夜明けを待っての作戦行動であった。
 近くの林の中から、陰に隠った声が聞こえる。
 空の準備した爆弾つき無線機だ。王零の声が聞こえる。
「なに? 作戦中止? ここまでさせておいて中止だと? ‥‥まったく、これだからブライトンの爺さんの考えることはわからん。
 そもそも、ここの列車砲が我ら側の脅威となるのか? まぁ、いい。撤退方法は各自の判断でいいんだな。了解したよ」
 そちらに向かって銃声が放たれると同時に、爆発音が上がり、ホアキンの仕掛けていた本命の爆弾が爆発する。
 これでしばらくは前進できないだろう。80cm列車砲は解体して輸送する事も出来るが、それは市長の意図した所とは微妙に違うし、そこまで指摘するものは居なかった。
 一同は無事に帰ると、市長が朝から準備していた祝宴の主賓となるのであった。