タイトル:───パンにはパンを4マスター:成瀬丈二

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/01/23 00:29

●オープニング本文


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 遠雷の如き音が響く───。
 それは、もっとも原始的な質量兵器。腕力に任せて手近なものを投げつけるだけの全高10メートルのバグアキメラの巨人達、いつしかバグアキメラ達はこの千歳基地の防衛ラインに既に4体にまで増えていたそれは確実な破滅を北海道に展開する千歳防衛の自衛隊の一部隊に与えようとしていた。
 UPCに対して、傭兵達を派遣しようとここの指揮官ボリスは試みようとしていたが、有線のネット網は分断され、ついに年内に連絡を取る事は適わなかった。
「ボリス特務曹長! ついに千歳と連絡が取れました───ラストホープからの傭兵を呼びました!」
 バイクに乗って伝令役を務めた下士官にボリスはねぎらいの言葉をかける。
「良くやった! それまでここを死守するぞ」
 ロシア戦線から来たこの質実剛健な男はようやくに笑みを浮かべた。
「しかし───」
 下士官は口ごもる。
「どうした? 悪いニュースか」
「千歳はこの戦線維持を事実上、いえ完全に放棄しました。これらの傭兵はバグアキメラを牽制して、戦力の再編成の為、後方に帰る為のバックアップ要員として、招集したと───」
「そうか、千歳は‥‥落ちるのを前提として動いているのか───構わん、皆、戦力再編成の為、後方に傭兵達の支援の為、移動しろ。ここの防衛拠点は俺ひとりでも保たせる、いや保たせなければならないのだ───それがユダを兄に持って、軍務を放棄してロシアから逃げてきた、俺に出来る唯一の償いだからな。皆、俺の意地に付き合う必要はない───二度は言わない、戦力を再編成して、捲土重来を目指せ───」
‥‥ミッション8スタート。

●参加者一覧

鳳 湊(ga0109
20歳・♀・SN
リリアーナ・ウォレス(ga0350
15歳・♀・SN
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
比留間・トナリノ(ga1355
17歳・♀・SN
沢村 五郎(ga1749
27歳・♂・FT
ヴァルター・ネヴァン(ga2634
20歳・♂・FT
クリストフ・ミュンツァ(ga2636
13歳・♂・SN
醐醍 与一(ga2916
45歳・♂・SN
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
三田 好子(ga4192
24歳・♀・ST

●リプレイ本文

 鳳 湊(ga0109)は愛機から降り立つと、ボリス特務曹長には、まずは着任の挨拶を。
「やはり戦線の撤退ですか。戦っていて思っていたのですが、この周辺の敵の戦力も段々とアップしてきた感があります。これだけの戦力を揃え始めているという事は敵に何らかの動きがあるようですね‥‥」
「残念だが、横の動きが判るほど、前線は甘くない。判っていたらもう少し早く手を打っていたのだが‥‥」
 と、湊が暗にこの戦線の状況を聞こうとしたのを察し、後の先を取るボリス。
「特務曹長は撤退の指揮をとって下さい。統率が取れている状態で無いと、もし敵の奇襲にあった場合に最悪の状態になるかもしれません───死ぬ事は簡単です。ですが生きてこれから戦場に出る仲間達を統率して守り抜く事も必要ではないでしょうか? ‥‥貴方にはその力があるはずです」
 と未来を見越して言葉を渡した。
「はいはい命は大事だよ〜
 特務曹長さんも格好つけてないで、さっさと逃げる。
 皆が逃げる時間はコッチで何とかするからさ」
 と、リリアーナ・ウォレス(ga0350)が言葉を挟むと、ボリスの生きる意欲が失せていくようであった。
 時任 絃也(ga0983)はボリスに───。
「此処に拘った理由聞けてなかったな、後で聞かせてもらう」
 ボリスは懐から取り出したスマートメディアを絃也に放る。
「時間があったら、読んでおけ。当事者以外にはたいしたことはない事件だ」
「つまり、自分に取ってだけ大事という事か?」
「ああ」
 その会話に比留間・トナリノ(ga1355)は───。
(なんだか激しく死亡フラグですが、一緒に退却してくれないと困ります!
 うっうー、説得を試みます)
「一番いけない事は‥‥悲劇のヒーロー気取りで死に急ぐ事ですっ!! うっうー!
 人が死んだらその分、バグアがほくそ笑むんですよ!? 私はそんなの我慢できないですっ!!
 ボリスさん、私達と一緒に生き残りましょうっ‥‥泣いてなんかいないです。気持ちが高ぶると涙腺が緩むだけなんです、うっうー‥‥」
「残念だが、悲劇のヒーロー気取りなどしていたら、この北海道では生きていけない。単なる悲劇の関係者というだけだ」
 と、ボリスはトナリノの目の下に指を滑らせて濡れたものをぬぐう。
 一言だけ呟いた沢村 五郎(ga1749)。
「あんたも間抜けのひとりなら、おめおめ生き永らえて最後まで戦えよ」
 続けて、戦死者から回収され、束ねたドッグタグを放り投げる。
 これがボリスの分の命の重みという意事だろう。
 ヴァルター・ネヴァン(ga2634)も主である美少年のクリストフ・ミュンツァ(ga2636)の言葉を引用して───。
「死ぬだけならサルでも出来るでおざります」
 主である温厚そうな美少年のクリストフが、その外見とはウラハラに───。
「死ぬ気、というのはあまり感心できた事ではないというか、生き残る事ができるなら、わざわざ死のうとするのは人的資源の無駄じゃないかと思うんですけど。この先も生きてやれる事をやって頂かなければ、ね」
───言葉を放てば。
「はじめまして。わしは醐醍与一。ULTの傭兵だ。ここはわしらが引き受ける。貴方は早く仲間と合流しな。皆待ってるぜ」
 釘を刺す醐醍 与一(ga2916)がさらりとざらついた空気を薄める。
 熊谷真帆(ga3826)は脳天気に───。
「パンより、ラーメンを。この戦いが終わったら五郎さんと食べに行くんだ」
 死亡フラグ立ちそうな台詞を放つが、三田 好子(ga4192)はシリアスに───。
「前回『誰ひとり欠けることなく無事に帰ってきます』って言ったのには貴方も入ってるんですよ。
 それに適性率1/1000の能力者が死に場所を選ぶなんて贅沢な事が許されると思ってるんですか?
 戦争はまだまだ続いていくんですよ!?
 最後まで‥‥そう、『終わりの始まり』ではなく『終わりの終わり』まで戦い抜いて、それでも自分が許せないなら‥‥その時は止めはしません。
だから今は生きて下さい」
「いや、別に俺は能力者という訳ではないが」
「でも、命の重さには変わり在りません。どんなに苦しくとも耐えて下さい、どんなに悲しくとも生きて下さい」
 
 各員は己のナイトフォーゲルに乗り、真帆(TACネーム:ガーベラ)の指示を受ける。
「ガーベラより各機へ。戦闘配置に就いて下さい」
 その絃也が腐心した部隊編成は以下の通りである。
 そして戦闘方針は───。
●敵が分散的でも一方向に動いているなら、図のように位置し射撃主体で時間を稼ぐ。
●敵が迂回行動を取れば左、右翼がそれぞれの方向に対応頭を抑える。
●敵の頭を射撃で抑えられるならその状態を維持する。
●迂回を射撃で押さえられば、反対側は定位置で射撃続行。
●押さえられなければ格闘戦へ移行、事の時反対側は挟撃する形で格闘戦へ。
●撤退の時間を稼げれば煙幕弾を使用して離脱。
●可能なら敵殲滅、主目的は撤退の時間稼ぎ。
───となる。

▲=敵(バグアキメラ)
◎=R−01(中距離、近接仕様)
●=S−01(中距離、近接仕様)
○=S−01(遠距離仕様)
△=鳳機(空戦仕様)
    ▲ ▲ ▲ ▲


 ◎           ◎
  ◎         ○   
   ●       ●

     ○ ○ ○        △


 沢村機右翼に就き援護。
「いきなり実戦に新兵器投入。わくわくするよ」
 右翼の真帆は最初にG01ホーミングを一連射!
 一点集中で右翼の腕を吹き飛ばす威力に感動し。
「わぉ♪ 神降臨」
 とハイテンションになる。
「こちら、湊。ただいまの一斉砲火見事なり」
 あくまで上空哨戒に徹していた湊から真帆に向かい戦果報告が送られる。
 リリアーナはナイトフォーゲルに乗っている時は自分の特殊能力が使えず、ナイトフォーゲルの機体以前の能力しか使えない無い事に口には出せない様な思いを抱きつつ。
 遠距離から狙撃にはいる。
「常に流れを掌握し、主導権を握り、敵に動かされることなく敵を動かすことによって、攻め手を持ち続ける。ま、それが出来ればサルでも勝てるけどね。
 正々堂々なんて知ったことじゃないね。狙撃手には狙撃手の戦い方ってのがあるのさ───、キメラども、人間を甘く見ないほうがいいよ」
 トリガーが引かれ、右翼の既にダメージを受けていた相手に一発必中で止めを刺す。
「巨人相手じゃ体力や腕力では到底敵わないけど、こと戦い方という点では人間に優る生物はいないんだからね。──―と言うワケで、私に出会った不幸を呪うんだね」
 絃也は左翼から、物理攻撃と光学攻撃の二択から相手のフィールドの強さを確かめようとするが、多分通常兵器は完全無効化。SES兵器でもかなりのダメージが殺がれるという事以上には判らなかった。
「湊、撤退が完了後連絡をくれ、撤退のタイミングを取りたいのでな」
 と、確認を入れた上で、巨人に対して、
「先回の借りぐらいは返させてもらう」
 トナリノは───。
 敵の進軍コースに対して正面を陣取り、遠距離から狙撃を行っていた。
「うっうー! 前回のようにはいかないですよ!」
 薬莢が雪の上にはじけ飛び。
 巨人達の回復速度より早く、絃也が一撃を決めた巨人に直撃を浴びせていく。
「むううぅ」
 五郎の役割は敵の迂回阻止及び正面への拘束であった。
 弾幕よる阻止で十分なら接近戦は挑まないつもりだったが。
 ガドリングを撃ちつつデフェンダーで味方への投擲物を払い落とそうとするが、軌道があまりにも離れすぎて両立は無理。
 という事で、敵のタフネスがそれを上回っており迂回、正面突破を阻止できないと見て白兵戦に入る。
「熊谷、援護頼む」
 敵が縦一線になる角度からキメラが腰を屈め石等を拾うタイミングに合わせて突っ込をかける。ソニックブームで吹き飛ぶ巨人達。
 クリストフはスティックを握りながら、
(部隊撤退の為の時間稼ぎと足止め、という事で。遠距離からの狙撃による足止めと誘導を。なるべく、囲い込むような形でまとめる様に牽制をかけるとするか。足止めというなら水際作戦よりはゲリラ戦の方が有効だったかなあ)
 今頃になって思い至りひそかに冷や汗を流す。
 最初は前衛は姿を出さず、狙撃の方向におびき寄せる感じで包囲の中に誘い込む感じ。上空担当から敵の進行の様子を聞きながら、位置を変えて狙撃。最初は当ててみて、貫通するかどうかで、相手の防御力の様子見をしてその後の攻撃の参考に。接近戦になったら、前衛の援護に切り替えなどと色々と腹積もりはあったのだが――
 と、遠距離から確実にダメージを与え、肺を貫通した一撃が口から血塊を吐かせる。 
 五郎が通り過ぎた所で、ヴァルターのガドリングが唸る。
 僅かだが、しかし確実にダメージを蓄積していく。
 与一は武者震いを押さえきれず、
「さあて、名古屋以来のKV戦だ。腕慣らしも兼ねて、一暴れするぜぇ! 今日が『雷電』としての初陣だ。わしらの強さを敵に見せ付けてやろうぜ!」
 と、S−01ナイトフォーゲル『雷電』。戦装束に纏うはガンメタルにイエローののラインであった。
 突撃仕様ガドリングとP−115mm高初速滑腔砲で相手の下半身を狙い、相手の進攻をできるだけ遅める。
 実にしぶとい攻撃であった。真帆は遠距離攻撃の策が尽きると煙幕を巻くだけ巻いて撤退。
 戦いはそこで終わった、パニックに陥った巨人達は算を乱し、戦線を崩壊させる。
 好子が戦力回収に来ていた、千歳自衛隊基地の面々の傷を癒し、ボリスはイタリア方面に転戦する事を一同に告げる。
「また、生き残ってしまった───だが、出来る事はまだあるのだと判っただけ、少しはマシ二なれた様な気がする」
 雪が降りつのっていく中、ナイトフォーゲルのコクピット内で真帆は───。
「レーザーひと筋に想いを寄せて
貴方の眼差しバグアを貫いて
よりそい、すれ違い時針は巡る
ああ札幌大通り〜貴男についていく♪」
 操縦席に飾った五郎の写真に微笑む
 これが後に千歳撤退戦へと続いていく一幕であった。