タイトル:【三度】百鬼夜行。マスター:鳴神焔

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/20 07:14

●オープニング本文


 とある午後の昼下がり。
 いつもなら何人かの患者を診療した後に今日の晩御飯は何にしようかな、などとどうでもいいことを考えながらただ日が落ちるのを今か今かと待ち望んでいる時間である。
「‥‥なぁ」
 果てしなく陰鬱な声で診療所の主―――三度源成は呻いた。
 一方声を掛けられた方―――診療所の受付である猿渡典子は、言葉で答えるでもなくただビクリと肩を震わせた。
 普段からやる気のない源成ではあるが、ここまで陰鬱な雰囲気を出すことは珍しい。それには勿論原因がある。典子からの反応がないので、源成は仕方なく首をのそりと動かした。
 視界に飛び込んできたのはピンク色のナース服に身を包んだ典子。そしてその周りをふよふよと浮かぶ人魂。足元で座り込む少女。更にしゃべる鏡にせっせと手元の籠で豆のような物を洗う小人。そして我が物顔で院内をうろつく―――天狗。
「確か‥‥前に言ってたよな、大体の騒ぎの原因は俺にあるんだーって」
 呪詛のように暗く、しかしはっきりと呟いた源成の声は典子の胸を無意味に締め付ける。
「そ、そうだったかしら‥‥」
 無理矢理にでも笑おうと口角を動かした典子だが、頬がピクピクと引き攣るのが自分でも手に取るようにわかる。自分に正直であることはこの場においてはマイナス要素でしかないようだ。
「あーそーだ。ついでに言えば俺がトラブルを引き寄せてるなんつーことも言ってたよな?」
「そ、それに関して言えばあながち間違ってないと思うんだけど‥‥」
「ほーぅ?」
 典子の言葉に聞き捨てならぬとばかりに半眼で睨みつける源成。
「では聞こう。今日ここにあの子供を連れて来たのは誰だったかな?」
 高らかに声を張り上げた源成がびしっと指差した場所には、典子にもらったであろうパンをはむはむと齧る一人の少女の姿。
「そ、それはだって‥‥道端でお腹すいたって泣いてる子供がいれば誰だって救いの手を差し伸べるでしょう!?」
「あぁ、そうだな。それが普通の、一般的な、人間の子供であるならな」
 うっ、と呻き声を漏らして言葉に詰まる典子。
「そそそそれは‥‥ほら、見た目は普通の子供だったし―――」
「普通の子供が自分の名前を『座敷童子です♪』なんて言うわけないだろぉがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 珍しく源成の絶叫が診療所内に木霊した。


 なんていうかな。いつもは確かに俺が巻き込んでしまっているというか、自分が引き寄せてんのかなーみたいな気持ちは確かにあったわけよ。だからまぁ向こうの言い分も聞いてきたわけなんだけどさ。
 でも今回のは明らかに俺関係ないと思うんだよな、うん。
 だってさ、普通座敷童子名乗る子供とか怪しさ100%で拾ってこねーだろ、常識的に考えて。JKだJK。
 しかもその子供と一緒に何か訳のわからん気持ち悪い生物やら何やらいっぱいついてきてさ。
 もう診療所はいっぱいなんだよ。パンパンだZE☆
 (中略)
 いや、まぁ何が言いたいかというとだね、うん。

 タスケテ。

 〜三度カイロプラクティックよりULTオペレーターに送られたメールより抜粋〜

●参加者一覧

旭(ga6764
26歳・♂・AA
水無月 春奈(gb4000
15歳・♀・HD
ホゥラリア(gb6032
21歳・♀・SN
エイミ・シーン(gb9420
18歳・♀・SF
相賀琥珀(gc3214
21歳・♂・PN
南 星華(gc4044
29歳・♀・FC
麻姫・B・九道(gc4661
21歳・♀・FT
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

●妖怪だらけ。
 山の麓にあるみたびカイロプラクティックの周りには、三度 源成(gz0274)のメールどおり妖怪がわらわら状態だった。
「病院に妖怪って、お似合いなのか、ちょっとずれてるのか‥‥」
 どっちかと言うと病院にはお化けだよなぁと思う旭(ga6764)は無害なキメラを倒したくない、野放しにできないとキメラ関係の研究施設に連絡を取り「依頼終了後にキメラを収容するケージを調達してください」と要請したが「急に言われても用意できません」と却下されたのでどうしましょうと悩んでいる。
「妖怪ですか‥‥。いろいろと有名なものもいるんでしょうねぇ‥‥」
「妖怪とはどんなものでしょう? 見たことないんですよね」
 妖怪図鑑のデータを取り込んだ端末を操りながら、水無月 春奈(gb4000)が妖怪を観察し、相賀琥珀(gc3214)は、困っている旭と対照的に暢気に妖怪のことを考えている。
「弱点まで再現されてたら楽しいのですが‥‥竜とか雷神、風神が出てくると面倒ですよねぇ‥‥」
 キメラとはいえ、妖怪との戦闘はなかなか経験できないことだと九道 麻姫(gc4661)が飛び出そうとするが「妖怪が襲いかかってからにしてくださいね?」と琥珀に制止される。
「ん〜‥‥妖怪‥‥妖怪ねぇ‥‥。まぁ、叩き斬れるなら問題ねぇか‥‥! 売られた喧嘩は、妖怪だろうが悪霊だろうが手加減しねぇぜ‥‥!」
 指をポキポキ鳴らし、戦闘が始まらねぇかと渋々待機。
「久し振りに依頼に入ったら‥‥三度先生ですか。珍しいことに、今回の一件は、三度先生が引き起こしたことではないみたいです。とはいえ、先生がいるところ結局トラブル発生するんですね」
 久し振りに三度と典子に会うということで、ホゥラリア(gb6032)は手土産を持参。手提げカバンに入っているのは、座敷童子ということで和菓子の詰め合わせ。
「まずは、三度先生と典子さんの保護が優先ね。とりあえず、外にいる襲い掛かってくる妖怪と戦う班と診療所内にいる2人を保護する班に分かれましょう」
 南 星華(gc4044)の案に頷き、全員集まって誰がどの行動に出るか話し合う。
「私は戦闘班で。雪女がいるなら、止めさせていただきましょうか‥‥」
 エイミ・シーン(gb9420)は覚醒し、雪女がいたら前線に出てでも対決する気でいる。
 彼女と共に外にいる妖怪と戦う(無害なのを除く)のは旭、春奈、麻姫、ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)。
 診療所に向かい三度と典子を救出し、保護するは琥珀、ホゥラリア、星華が行うことに。
「さてと、人助けといきますか‥‥。とりあえず、かかってくる奴は遠慮なく叩かせてもらうぜ‥!」
 煙草を銜え、凶悪そうな妖怪と戦えるかと嬉しいと思う麻姫が動き出す。

●診療所へ。
 戦闘班が妖怪を食い止めている間、琥珀と星華は裏口から潜入することにしたが、ホゥラリアは堂々と正面玄関から入ることに。
「ホゥラリアさん、三度先生と典子さんのいる場所に急いでちょうだい」
「わかりました」
 診療所に辿り着くまで、無害なのはもちろん、襲いかかろうとする素振りの妖怪に対しても「妖怪さん、お邪魔しますね♪」と笑顔で挨拶を。
「キメラとコミュニケーションを取れるかもしれない珍しいチャンスだけど‥‥戦闘だと、そうはいかないなぁ」
 旭は無害な妖怪は無視し、襲いかかるもののみ駆除するが、どちらかというと駆除優先で行動することに。無駄かもしれないが、行動中、妖怪に声をかけることを忘れないように。
「こちらに寄って来ると言うことは‥‥多少は敵対の意思がある‥‥ということでしょうか‥‥。まぁ、初撃が来るまでは様子を見ましょうか‥」
 端末を操作し、春奈は攻撃を加えられない限り反撃せず妖怪を観察中。集中して観察しているのか、側を通りかかった狐火に気づいていないようで。
「雪女のいる場所付近を教えてもらう‥‥かな!」
 エイミは戦闘前に『拡張練成強化』をかけ、皆の状態を気にしつつ雪女を探す。
 中に入ると、予想以上に至るところ妖怪がワラワラと動いていた。
「中も妖怪だらけですね。典子さーん、三度先生ー、来ましたよー」
 扉を開けると、出迎えてくれたのはちょこまかと動き回る大勢の妖怪達。小豆洗い、狐火といった特に害の無い妖怪とわかっていても、数が多いと三度でなくともげんなりする。
 上がりこんで診療所の奥の部屋に向かうと、そこには座敷童子を膝に乗せ椅子に座っている典子とうんざり気味の三度が。
「むっ、キメラの気配っ!」
 と振り向くと、そこにいたのは妖怪ではなく三度。
「誰が妖怪だ、誰が」
「すみません。これ、お土産です。皆さんで召し上がってください」
 皆さん、というのは座敷童子も含まれている。
「この子が座敷童子さんですね。食べますか?」
 差し出された和菓子をひったくり。
 キメラとわかっていても、はむはむと食べる様子を見て「可愛いです♪」とうっとり。

●座敷童子さんお願い。
 その間、琥珀と星華が裏口からの潜入に成功。
「あら、本当に妖怪だらけね。中の人達、本当に大丈夫かしら?」
「荒らされていないようなので大丈夫でしょう」
 先に入ったホゥラリアを探そうと動き出したところを、診療所にあるすべてのお菓子を紙袋に詰め、それを抱えている典子とばったり。
「典子さん、無事だったのね」
 安否確認ができてほっとする星華を見て、典子は「大丈夫です」と安心させた。
「随分と食糧を持っていますが何故ですか?」
 琥珀の問いに「これがないと大変なんです‥」と困った顔で答える。その理由がわかるのはもう少し後になるが。
 典子の案内で、2人は座敷童子がいる診察室へ。
「三度先生も無事ね。部屋は無事じゃないようだけど」
 辺りが散乱しているのは、悪戯好きな妖怪の仕業だろう。
 後片付けは後で皆でやればいいわね、と早速、座敷童子の説得を始めることに。
「無理かもしれませんが、やれるだけやってみます」
 琥珀は屈むと座敷童子と目を合わせ、顔を見ながら説得してみることに。
「座敷童子さん、どうかお願いです。人に危害を加えるつもりが無いのであれば、私達に手を貸してください。犠牲を増やさぬよう、他の方を一緒に説得してほしいんです。害の無い方まで斬りたくはありません」
「私からもお願いするわ。座敷童子ちゃん、皆を説得してくれないかしら」
「お願い、座敷童子さん」
 3人が説得するが、座敷童子は無視して和菓子を食べている。
「説得は無理でしたか」
「そうね。でも、座敷童子ちゃん可愛いわね。お菓子食べる?」
 説得は無理でも手懐けることはできるかも、と星華は持参したマシュマロとミックスジュースを渡す。和菓子を全部平らげてもまだ足りないのか、差し出されたマシュマロとジュースにも口をつけた。

●いざ妖怪祓い。
 妖怪達が診療所の外に出てきたのを確認した麻姫は、好戦的なものがいるかどうか品定め。
「良さそうな奴見つけた‥‥さて、始めるか‥‥!」
「戦う気なら、しょうがないね」
『Maximum Charge』
 妖怪襲撃に備え、槍の間合いを活かした戦闘態勢に入った旭は【OR】OCTAVESを発動させた。
「見つけました‥!」
 雪女を見つけたエイミは前線に出て勝負を挑むが「氷と刃の会話になりそうだがとりあえず話し合いを」というドゥが待ったを。
「雪女さん? さ、さしあたっては僕と話をしませんか‥‥?」
 聞く耳持たず、と雪女は威嚇する。
「本物ではないとはいえ‥‥その力、私が貰います! と言いますが、何も取れないんですけど」
 覚醒すると黒髪になり、顔と腿が少し氷結し雪のような光が舞う姿になるエイミは自分と同じと思える雪女が許せないとロケットパンチβで応戦しつつ、全力で殴り飛ばす。
 ドゥは全力攻撃、『迅雷』『円閃』の後に懐の背後でしゃがみ込み、そこから切り上げるように回転した『円閃』を。
「あなたは、人や世界を守る側だったろうがぁ!? 何を思って戦ってるんだ!!」
 彼がいたあるところでは、本来、雪女は世界を守る存在だったようで。
「隙あり!」
 懐に入ったエイミは超機械「シャドウオーブ」で前転からしゃがんで叩きつけ、雪女が吹雪発動時に両腕をかざすと腕を掴んで合気道の要領で投げる。
「私の覚醒は雪女バージョンの黒髪覚醒なので、雪女には絶対負けられません‥‥!」
「破壊すること自体が目的のような奴らに、絶対負けはしない!」
 投げ飛ばされた雪女をドゥが突きで追撃。逃げようとよろよろと歩き出そうとしたが、ダメージが深かったのかその場に倒れこんだ。
「雪女を倒しました! 凶暴な妖怪は、なるべく抑えないといけないですね」
 春奈は観察中だったが、妖怪に攻撃されたのでレイヴバックルで受け止めた。
「‥‥仕方がありません。手を出してこられた以上、黙って見過ごすわけには行かないですね‥‥。覚悟してもらいましょう」
 ため息をつきながら『猛火の赤龍』を発動し、剣を振り回しながら寄ってくる大ムカデを見る。これにムカデ退治伝説での倒し方が通用するかどうか、一か八か試すことに。
 ムカデ退治で有名な俵藤太は最後の1本の矢に唾をつけ、八幡神に祈念して射るとようやく退治することができたというがキメラに伝承上の弱点が通用するのだろうか。
 余裕があれば再現性を実験してみたいところだが、なかなか難しいので見送り普通に退治することに。自分だけでは苦戦しそうだと思ったところ、タイミング良く旭が加勢に。
「悪いけれど、妖怪退治と行かせてもらうよ。いくよ、必殺技‥‥!」
『Grint Chaser!!』
 身体を屈ませ、地面を這うような低い姿勢から『刹那』による目にも留まらぬ一撃を繰り出し、『急所突き』でとどめをさす防御を掻い潜る閃光の突きの必殺技『グリントチェイサー』で大ムカデは倒された。
「実験をしてみたかったのですが、仕方ないですね‥‥」
「春奈さん、何か来ます!」
 旭の声にはっとなり前方を見ると、頭が鬼、胴体は牛の妖怪の牛鬼が突進してきたので『竜の翼』を使って下に潜り込み、天剣「ラジエル」を突き上げエネルギーガンでとどめ。上空には空を飛ぶ妖怪がいたが、射撃が苦手、襲ってこない、無害ということもあり放置。
 診療所内にいた3人は戦闘班に合流すべく動こうとしたが、外の騒ぎで気性が荒くなった妖怪数匹が三度と典子に襲い掛かってきた。
「危ない! キメラがっ!」
 それに気づいたホゥラリアが妖怪を攻撃するが、外れてしまいあやうく三度を攻撃してしまいそうに。
「三度先生、大丈夫ですか!? わ、わざとじゃないですからね!」
 本当か‥‥? と疑う三度。お菓子を食べ続けている座敷童子は、典子が抱えて外に連れ出すことに。
 彼らの前で生々しい戦いは避けたいと、琥珀はホゥラリアと星華に護衛を任せて危害を加えようとする妖怪は『抜刀・瞬』で夜刀神を抜き『迅雷』で懐に入り勢いのまま斬りつけて『刹那』を使い畳みかけるが無害な妖怪は攻撃せず、押し出したりして外へ追いやる。
「三度先生と典子さん、大丈夫そうね。私は琥珀さんを手伝うから、2人と座敷童子さんの護衛、よろしくね」
 琥珀だけでは大変だと、星華はホゥラリアに後を任せて駆けつける。迫る妖怪はエンジェルシールドで受け流し、襲い来るもののみ跳ね返してから妖刀「天魔」で反撃。
「おとなしくしていれば、死なないですんだかもしれないのにね」
 倒した妖怪にそう呟いた時、足元を猫又が擦り寄ってきたので「きゃっ!」と驚いてしまった。
 外では炎剣「ゼフォン」を担いだ麻姫が、目の前にいる大型の酒呑童子を見て闘志を燃やす。
「へぇ‥‥なかなかごっついのもいるんだな‥‥。悪いけどよ‥‥こっちも伊達にこんなもんもって格好つけてる訳じゃねぇんだよ‥‥」
 酒呑童子に剣を振るい熱気の軌跡が辿らせる麻姫の身体全体は、『紅蓮衝撃』を使用したことで炎を纏う鬼の姿を彷彿させる。
「凶悪そうな奴との戦闘は嬉しいねぇ‥‥」
 へへ、俺を楽しませろよ‥‥と麻姫の斬撃が続く。
「‥‥皆、無事に戻りたい。それは自分も同じ、かな‥‥?」
 妖怪を払い除けながら、帰りを待っている人がいるからまだ死ねないと頑張るドゥ達が頑張った甲斐あり、時間はかかったが診療所内外に蠢く妖怪を退治することができた。

●座敷童子の行く末。
「‥‥ふぅ、やっと片付いたか‥‥。まったく‥‥妖怪退治も楽じゃねぇな‥‥」
 全部倒せなかったたけどねぇ‥‥と煙草に火をつけながらぼやくが、満更でもない様子の麻姫。
「逃げ出した妖怪達、どうなっているのですかね‥‥」
 エイミは辺りを見渡し心配する。
「逃げ出した妖怪はともかく、座敷童子は研究施設に保護してもらいたいですね。急には困ると言われましたが、改めて申請すれば大丈夫でしょう」
 旭は診療所に行き再度「捕獲したキメラを保護してください」と頼んだが、またしても断られてしまった。
「駄目でした‥‥」
 肩を落として報告する旭をよそに、座敷童子は典子に抱かれながらお菓子を食べていたが、無くなったことに腹が立ったのか凶暴な顔つきで暴れ始めた。
「はい、お菓子よ」
 星華がマシュマロを差し出すと座敷童子はおとなしく。
「この子、お菓子を食べている時だけはおとなしいんです。だから、ずっと食べさせていたんです‥‥」
 食べ物、特にお菓子に関しては貪欲なキメラなようだ。
 それでお菓子を‥‥と納得した琥珀は無害であれ、キメラは人間にとって恐怖な存在だと自分に言い聞かせた。
「保護してもらえないのであれば、可哀想ですがこの子がいたところに置いてくるしかないでしょう」
「それって‥‥捨ててくるってことですか‥‥?」
 無言で頷く琥珀。研究施設で保護してもらえないのであれば、座敷童子がいた場所に戻すしか方法はない。
「わかってください、典子さん。今はお菓子を食べていておとなしいですがこの子はキメラなんです。襲ってくるようなら退治しなれればならないんです」
「残念ですが、琥珀さんの言うとおりです」
 わかりあえなくて残念です、とがっかりする旭も、倒せないなら捨てるしかないと説得。
 典子の説得に時間はかかったが、座敷童子を拾ってきた場所に戻すことに。
「これが座敷童子さんにとって良いことかは分かりません。どうか無害な方々に絶望を与えませんよう‥‥願います」
 ホゥラリアと星華、典子が置いた大量のお菓子をはむはむ食べている座敷童子を見て呟く琥珀。
「別れる前にじっくりと‥‥」
 物陰で春奈は改めて観察を。
 典子は別れが辛いのか見送ろうとしなかったが、琥珀の説得により目に涙を溜めながらも三度、能力者達と別れることに。
「座敷童子ちゃん、元気でね」
「無理をしないよう頑張ってくださいっ」
 星華は頭を撫で、ホゥラリアは抱きついて別れを惜しんだ。
 皆が去ってもお菓子に夢中な座敷童子だが、食べ尽くしたらどうなるのだろう? それだけが心配だ。


代筆:竹科真史