タイトル:南紀白浜仮装大会。マスター:鳴神焔

シナリオ形態: イベント
難易度: 不明
参加人数: 25 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/01/02 23:33

●オープニング本文


「ハロウィンだ」
 唐突に告げられた言葉に、UPC和歌山軍オペレーター蒼井理瑠は僅かに眉を顰める。
「‥‥まぁ確かに時期ですけど。それがどうしたというんです?」
 冷ややかな視線を送る先にはUPC和歌山軍最高司令官、平野源三の姿。何故か黒いマントに身を包み、一昔前にあった蓄光素材でできたビニール製の牙を口に加えていたが、そこはあえて無視した。
「ハロウィンといえば仮装だろう」
 自信満々に胸を張る平野。
「そーですね。楽しんでくださいね」
 棒読みでそう告げると理瑠は再び手元の端末の操作へと没頭していく。
 何だか視界の隅っこですすり泣く声とどんよりとしたオーラが見えなくもないが、きっと気のせいだと自分に言い聞かせる。
 と、そこで一通のメールが届く。
 どうやらUPC和歌山軍宛に送られた救援要請のようだ。
「? 珍しいですね。こういうのはULTに行きそうなものですが‥‥」
 怪訝な表情を浮かべながらメールを開く理瑠。
「町で行われてるイベント中にキメラが入り込んでしまったので、捜索して退治してほしい‥‥ですか。場所は―――白浜、と。イベント名は‥‥」
 そこで理瑠の表情が僅かに曇る。
「ふ‥‥ふふふ‥‥これだ、これを待ち望んでいた!!」
 突然聞こえた声に慌てて振り向くと、いつの間にか復活していた平野が理瑠の端末を覗き込んで笑みを浮かべていた。
「さぁ! キメラを放っておくわけにはいかん! 理瑠くん、早速ULTに要請を―――あ、勿論イベントに参加ということも付け加えておいてくれ!」
 意気揚々とマントを翻して部屋を後にする平野をただ呆然と見送った理瑠は、彼の姿が見えなくなると同時に深い、とても深い溜息をついた。
「‥‥男の人はこーゆーの、好きですよね‥‥」
 呟きながら再び端末に目を落とす。そこにはイベントの詳細を記したページがでかでかと載せられている。

 南紀白浜仮装大会、と―――

●参加者一覧

/ 鏑木 硯(ga0280) / セシリア・D・篠畑(ga0475) / ケイ・リヒャルト(ga0598) / シャロン・エイヴァリー(ga1843) / UNKNOWN(ga4276) / Letia Bar(ga6313) / サヴィーネ=シュルツ(ga7445) / Cerberus(ga8178) / ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280) / 白虎(ga9191) / アーク・ウイング(gb4432) / ルノア・アラバスター(gb5133) / 流叶・デュノフガリオ(gb6275) / 白藤(gb7879) / ソウマ(gc0505) / Kody(gc3498) / Clis(gc3913) / フランエール(gc3949) / 和泉 恭也(gc3978) / ヘイル(gc4085) / 國盛(gc4513) / 麻姫・B・九道(gc4661) / 九条 裕也(gc4785) / リズレット・B・九道(gc4816) / 朔月 ライ(gc4889

●リプレイ本文

「‥‥キメラ退治、ただし要仮装」
 依頼内容を聞いてソウマ(gc0505)はしばし考え、そして頷いた。
「なるほど、仮装大会が開かれている中、物々しい傭兵の格好では人々を不安にさせてしまう‥‥仮装することによってソレを防ぎ、キメラ退治を可能させるとは‥‥」
 なかなか面白いことを考えますね、と依頼主に対してちょっと尊敬の念を抱くソウマであった。
 ソウマの予想が事実だとしたら平野源三、伊達でUPC和歌山軍の最高司令官まで登り詰めた訳ではないらしい。
 どちらかというと手段が目的というか渡りに船、といった印象だったが、真実はさて。
「ハロウィンか‥‥縁の無いものと思っていたが、なかなかにして興味深いな」
 國盛(gc4513)もまた依頼文を見た時にそう呟いていた。少し考えた後に、
(フランケンシュタインの格好をしていくか‥‥)
 頭にボルトやネジを付けて、後は額に傷でもつけておけば良いだろう、と男は思った。それなら普段着で出来るし、特別な格好は必要ない。
 そんな訳で依頼を引き受けた傭兵達は仮装して本部に集合した。その数二十五名。
「九条裕也だ。これが初めてのミッションとなるが、よろしく頼む」
 非常に硬い表情と声音で青年が言った。九条裕也(gc4785)、傭兵になったばかりであるらしい。仮装の上からでも緊張している様子がよく解る。
「あ、僕も初めてなんですよ。よろしくお願いします」
 と挨拶するのは朔月 ライ(gc4889)だ。
「いや〜、ハロウィンとか仮装って初めてです。ちょっと照れますね」
 とフランエール(gc3949)だ。愛嬌のあるカボチャの被りものをかぶって体を黒いマントで包んでいる。
「いやはや温泉に行くのも久しぶりですねー。向こうではなかなか入る機会もありませんしこれは楽しまないと損ですね」
 というのは和泉 恭也(gc3978)だ。頭からつま先まで全身を黒い布で覆い、顔にはデフォルメされた骸骨の面をつけ【L&P】デスサイズを手に持っている。死神風の仮装のようだ。
「こうゆうイベントは結構好きですね」
 朔月が言う。白い仮面に防寒ポンチョを着てベレー帽をかぶり弓を携帯している模様。
「ハロウィンってお化けが子供にお菓子をあげるんでしたっけ?」
 フランエールが首を傾げた。
「それは‥‥違うと思うが」
 答えて九条。傭兵達はわいわいと言葉をかわしている。
 皆、イベント柄、高速艇乗り場の前は一風変わった空間となっていた。
「白って着ないけど‥‥大丈夫かしら? セシリア、似合う?」
 ケイ・リヒャルト(ga0598)は全身白のゴシック服、アシンメトリーなスカート、フリルが華やかなブラウス、総レースのボレロに身を包み漆黒の悪魔の羽と尻尾をつけている。白い服に黒い翼が浮き上がる感じだ。
「ケイさんの白い服姿‥‥何だか新鮮ですけど、とても良く似合ってます‥‥」
 セシリア・ディールス(ga0475)はそう答えた。こちらも全身黒のゴシック服である。編み上げとレース、切りっぱなしのスカートで退廃的な服装。しかし背には真白い天使の翼。
 天使の服に悪魔の翼、悪魔の服に天使の羽。相反する黒と白を一人が纏い、真逆に、しかしやはり黒と白を纏う二人で一対にしているようだ。
「ハロウィン‥‥大好きな行事だわ」
 ケイは言った。大好きな親友、セシリアと一緒なら尚更、である。
「今日は目一杯楽しみましょう?」
「はい‥‥」
 頷いてセリシア。
「まぁまずはキメラ退治になりそうだけど、早々にやっちゃいましょう」
 とケイはそんな事をセシリアと話している。
 仮装に溢れる空間、皆ハロウィンの衣装らしき物に身を包んでいる。
 うち一人、Letia Bar(ga6313)などはレースがあしらわれた魔女っ子ハットに黒猫のマスコットを乗せ、フリルがふんだんに使用された胸開きのミニスカワンピースに身を包み、白いロングブーツを履いている。右足のレッグホルスターに拳銃を差して、巨大なペロキャンの作り物を杖代わりにしていた。
「久しぶりだな、Letia。魔女の扮装か?」
 黒騎士の装束に身を包んだ男がやって来て言った。
「久しぶりさね、ヘイルは騎士かい?」
「ああ、ちょっと黒いがね」
 ヘイル(gc4085)はすらっと剣を抜き、立てて礼を取って見せて笑う。魔女と暗黒騎士で一対のようである。
 男はLetiaを見詰めて言う、
「‥‥Letia、可愛いな。似合ってるよ」
「ふふ、有難うさね。ヘイルも格好良いよ」
 Letiaは微笑して答えた。
 そしてそんな光景を見ている者が一人。
(空間が‥‥空間が甘いにゃー!)
 歳の頃は十歳程度だろうか、すらりと白い手足をチャイナドレスのスリットから覗かせつつ銀髪ネコミミな少女(?)が柱の陰から目を光らせている。「リア充爆発しろ」を合言葉に日夜爆破活動(しっと的な意味で)に励むしっと団総帥白虎(ga9191)その人である。
 なお、しっと団とは、桃色とリア充に嫉妬し【カップル撲滅】をかかげる、モテない傭兵達によって結成されたお騒がせカオス集団であり、白虎がテロを行う理由は「こんなに可愛いのに(自称)誰も萌えてくれないから」であるらしい。ちなみに白虎は男の子、もとい男の娘である。
「ふふふ、ボクに萌えない奴は爆破にゃ♪」
 が、判断基準だが本日は狙うべき獲物は沢山いるようである。ここにも、そこにも、あそこにも。悪魔でも召喚できそうな勢いだ。熱いしっとが僕等の魔法だぜ。いろんな方面に怒られそうなので以下略。
「サヴィと、お出掛け、楽しみ、です‥‥」
 カップルの一組、ルノア・アラバスター(gb5133)はグリーンを基調としたシンプルなシャツとパンツ、同じく緑系色の帽子を被り、ちょこんと昔話の小人か狩人か、といったいでたちで、そわそわとしている。
「か、可愛い‥‥」
 サヴィこと、サヴィーネ=シュルツ(ga7445)はルノアを見て鼻血でも吹き出しそうに仰け反っている。サヴィーネは素朴な色使いのシャツにふわっと広がったスカートを履き、腰の部分にはふさふさした尻尾と頭に犬耳をつけていた。ルノアが来るまではガムを膨らませて爆ぜさせつつ「がおぉ。狼女だ」などと言っていたが現在では形無しである。
 ルノア曰く、本日の格好の心意気的には『サヴィの心を狩るのは私だけ』であるらしいが、その目論見は成功しているといえよう。
「サヴィも‥‥仮装、可愛い、です」
「が、がぉ」
 顔を赤らめさせてサヴィーネ。甘い空気がさらに広がってゆく。柱の陰で白虎が痙攣しているのは風景なのだろう、多分。
 他方、
(本当に変わったな。彼女ができたとはいえ、こういうイベントに参加するようになったのだから‥‥)
 胸中で独白しているのは白藤(gb7879)と揃いの狼耳と尻尾をつけたCerberus(ga8178)だ。自らを評しての言なら、確かにそうかもしれない。
「けーちゃん、狼さん似合う‥‥♪」
 同じく犬に近い黒い尻尾と耳を付けている白藤が恋人を見上げて言った。
「似合うといわれても複雑だな‥‥違和感を感じる」
 Cerberusは少し戸惑ったようにして己の頭部についている狼耳を片手で触った。ふわもこである。白虎が痙攣しているのは以下略。
 他方、
「リゼ‥‥愛してるぜ‥‥」
 ホットパンツにブラ、ブーツ、コート、そして狼の耳に首輪といったいでたちの九道 麻姫(gc4661)は、恋人のリズレット・ベイヤール(gc4816)を熱く見詰めて言った。
「御姉様‥‥」
 黒のドレスに身を包み、頭部に蝙蝠の羽を模したカチューシャ、背に悪魔の羽と尻尾を装着し、小悪魔チックな仮装をしているリズレットは、潤んだ瞳で九道を見上げて呟いた。視線と視線が交わる。甘く、そして熱い。
 先日、交際を始め、ついに一線を越えてしまったばかりであり『とにかくリゼと一緒に居たい!!』という半ば盲目的状態と理由でこの依頼に参加した九道であり、そして『リゼはお姉様とずっと一緒です‥‥片時も離れません‥‥』と「お姉様との初デート‥‥絶対に成功させなくちゃ‥‥」と心を燃やすリズレットの二人である。この二人が視線を絡ませる周囲は、熱波でも巻き起こっているかの如き熱さであった。白虎が死にかけて略。
 他方、
「オマエ‥‥いい歳こいてアリスとか‥‥」
 Kody(gc3498)が音楽仲間のClisへと言った。音楽仲間だが、普段は中々会えないから息抜きを兼ねて一緒にイベントに参加したらしい。
「う、うるさいわねー」
 と答えてClis(gc3913)。良い歳とは言うが、まだ二十歳前半で140cmと小柄なのでさほど違和感はない。
 恋人達や仲の良い者達はお互いに言葉をかわし、鏑木 硯(ga0280)などはセシリアへと「おめでとうございます」と祝いの言葉をかけている。セシリア、今度某軍のパイロットと結婚するらしい。
「記念撮影しますね〜」
 にこにことアーク・ウイング(gb4432)は笑い持参したカメラで撮影して回っている。記念写真は希望者には配布されるらしい。
 傭兵達は撮影を終えると数名を除き全体的に「イベント楽しみだな」的な雰囲気でぞろぞろと高速艇へと乗り込んでゆく。
「絶対‥‥絶対、爆破してやるにゃ!」
 一方、白虎はロビーに一人残りだむだむと床を手で叩いて決意を固めていた。
 そう、幸せとは脆く儚いモノ。天より無条件で与えられる訳ではなく誰かが犠牲を払い努力しその末に得られる硝子の塔。多くの場合、恋人達は大小はあれ不安を抱えている。愛を強く確認し合うのはその為と言う者も居る。唯一無二であり、失えないからこそ、それを傷つける者は絶対に許せない。全霊を賭して守らんとする、その掛け替えのない物を、その美しくも脆く綺麗なモノを、横合いから羨望に拠って破壊せんとするならば、それは正に外道の所業。しかし――
「しかし! この熱く黒く燃え盛り渦巻く劫火の鼓動の前には外道にもなろうにゃーっ!!」
 だばーっと涙を流して白虎。嗚呼、古代の国の覇王は言った。何故私に愛は手に入れられぬのだと! 故にこそ覇王は国を広げ天地を焼き尽くす。手に入れようとしなければ手に入らないのに。されどそれも人だと誰かは言った。
 シの団の統帥、恋人達の絆を本当に爆破粉砕すればまさに外道だが、彼等しっと団はギャグパートでありあくまで最終的に幸せを与えるのが目的なので大丈夫である。一応そういう事になっている。ホントダヨ。ほんとか?
 キメラよりある意味こっちのが物騒なんじゃないかしらと思うのだが、どうなのだらう。
「白虎さん、高速艇でちゃいますよー」
 白虎がいないのに気づいたか、和泉が通路よりロビーを覗き手でメガホンを作って声をかける。
「解ってるにゃ! 今いくにゃっ!!」
 はたして若き統帥は恋人達を無事爆破出来るのであろうか――もとい、キメラは無事退治され白浜に平和が取り戻されるのであろうか。
 巨大な高速艇は多くの男女の夢と希望と色々なモノを乗せて、白浜へと飛び立っていったのであった。


「ハロウィンと温泉街‥‥ものすごい光景ねー」
 イベント開催中な街についた時、シャロン・エイヴァリー(ga1843)は溢れる仮装した人々を見てそう感嘆の声を洩らした。
(温泉街でシャロンさんとデート‥‥ではなくキメラ探し)
 ぶんぶんと首を振って鏑木。狼男の仮装をしているが、なんとなく迫力に欠けてわんこに見える。
 なおシャロンは青色三角帽子に同色のマントを纏った魔女姿である。マントの下には対キメラ用装備を各種隠し持って備えていた。
「キメラって食べ物に釣られるんでしたっけ? なら多分、美味しいとこですね」
 と鏑木。
「うん、そうね。じゃあ硯、あっちから行ってみましょう!」
 とシャロン。青い魔女と犬、もとい狼男がてててと街を駆けてゆく。
「まずはキメラ狩りだな!」
 同じく街にやって来たヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)は愛妻にそう言っていた。
「そうだね。まずは街の脅威を取り除かないと」
 と答えて流叶・デュノフガリオ(gb6275)。
「うん、それじゃ俺、キメラが出たら迅雷で突っ込むから後ろを任せたよ流叶」
「解った。支援は任せて」
 こくりと頷いて流叶。新婚ペアもまたキメラを狩る為に街を回り始める。
「さて、魔女とその一味、出撃だ。さっさとキメラを倒して、祭りを楽しむとしようか」
「おー!」
 ヘイルが言って、Letia、九条、朔月、フランエール、和泉が応える。こちらは結構な大所帯だ。六人パーティである。迷宮あたりでも突撃できそうだ。
「いい子にしてないと夜中にでるぞー」
 和泉は可愛くデフォルメされたお面で子供たちを軽く脅かしつつ移動する。黒猫の魔女一行が街へと入ってゆく。目撃情報があった辺りや、路地裏等を重点的に捜索予定だ。
「さて、と。温泉街に入り込んだキメラ‥‥か。放って置く訳にも行くまい」
 同様に街に降り立った國盛もまた呟いていた。男は自身の傭兵としての戦闘経験は浅いが、なんとかして見つけ出し、時間稼ぎと仲間への連絡位はこなそうと思う。
 GooDLuck、探査の眼を発動させ、街の宿泊施設や飲食店のゴミ溜めを中心に怪しい影が無いか調査せんとする。フランケンシュタインが路地裏を徘徊――もとい、調査してゆく。
 ケイとセシリアもまた共に生ゴミ置き場等を重点的に捜索する。
 他方、
「追跡する人達が居るようなので、他の方法でキメラを捕まえてみようかな」
 と考えているのはソウマだ。黒色のネコミミとシッポと爪付の手袋をつけている。衣装は露出の高い肌にピチッとしたもので、黒を基調とし銀色のラインが引いて有る。猫男の仮装のようだ。曰く、
「通り名が『キョウ運の招き猫』なもので。ちなみに黒い招き猫は魔除け厄除けの意味が有るんですよ。知ってましたか?」
 ソウマ君の豆知識その一である。そーなのかーと知らなかった者は感心していた。招き猫にも色々あるらしい。
 ソウマはキメラが何を食べていたかを調べた後、人気が余り無く高い木が場所に落とし穴を掘り、好物らしき物を置いて、木上より監視せんとする。さて、上手くかかるかどうか。
 白虎は着ぐるみに当たりをつけて調査中。キメラを発見次第調教の予定だが、それはちょっと無謀ではなかろうか。
「んん、どうも考えんのは白藤苦手でな‥‥」
 白藤はキメラ退治は真面目に討伐に挑む模様だが、推理や頭を使うのは苦手なのでCerberusにお任せしてついて行っている。
「温泉街、か」
 他方、ロイヤルブラックの古き時代の正装に身を包む吸血鬼が街にやってきていた。UNKNOWN(ga4276)である。男は咥え煙草でふらりと街を歩いていった。

●キメラの発見
 シャロンと鏑木は土産屋を巡回中。
「ねえ硯、これは何?」
 シャロンは割と好奇心が旺盛らしい。他国には無い日本物やご当地の珍しい物を掴まえてはあれこれ鏑木に尋ねている。
「ああ、それは反対たまごですね」
「何に反対してるの?」
「えぇっと、賛成反対ではなくて、外側から固まらず中心の黄身の方が最初に固まるので反対たまごって言うそうですよ」
「へー」
 鏑木の解説に90へぇ辺りを出しつつ購入して食べてみたりする。
「ちょっと一口いいですか?」
 と鏑木。
「うん、いいわよ」
 と差し出してシャロン。二人は分けて食べあい名物の味に舌鼓を打っている。土産物屋さん曰く初恋のキスの味がするらしいが実際どうなのだろう。
「あ、あっちのも美味しそうですね」
 卵を平らげた鏑木が言った。
「そうね。やっぱり食べ物がたくさんある場所の方が‥‥」
 何か目的が微妙にズレて来ているような気もするが一応捜査続行中の鏑木・シャロンペアである。
 ソウマはイベントの喧騒をBGMに木の枝の上で腕を組み転寝中。暖かい木漏れ日と頬を撫でてゆく風が心地良い。
 KodyとClisは既に海辺でのんびりとしている。
「少し見ない間に、随分強くなったみたいね」
 とClis。
「まぁ、踏んだ場数の分くらいはな」
 答えてKody。
 青い海と白い波は押し引きを繰り返している。
 他方、
「カボチャマンがお菓子上げますよ〜!」
 フランエールは街の子供達にキャンディーを渡して回っている。子供達は「ありがと〜」と笑顔をで御礼を言うと飴を手に風の如く散ってゆく。時勢はこんなものだが、元気なものだ。
「お姉様、次はあちらのお店に行ってみませんか?」
 リズレットは九道に抱きつき見上げる。
「な、なぁリゼ、人前でそんなくっついたら‥‥」
「お嫌ですか‥‥?」
 しゅんとしてリズレット。
「そ、そんな訳ねーだろ、行こうぜ!」
 赤面しつつもがしっと肩を抱いて九道。
「はい〜」
 きゃっきゃうふふと二人は店を回ってゆく。カップル達に敵はいない。否、敵は存在するが、
「こんな所でもリア充達が桃色をしているのか‥‥! 粛清だ!」
「ダメですよー。お祭りとはいえ空気を読みませんとー!」
 ハンマーを振り上げている白虎の腕をがっしと掴んで和泉。
「離せー離すにゃー! 武士の情けにゃー!」
「ここで突っ込むと本気で殺られちゃいますよっ!」
 などとじたばたと攻防を繰り広げているので愉快? なハプニングの発生は未然に防がれていた。
 そんなこんながありつつも調査は続けられてゆく。
 調査開始から小一時間程経った時、スキル等を活用し良く調べていた國盛は路地裏で毛むくじゃらの巨大な狼が二本足で立ち、ゴミを漁っている姿を発見した。小石を手に取り投擲。石が炸裂した瞬間に赤光が発生した。仮装ではない、キメラだ。男はトランシーバーを取り出すと、
『こちら國盛だ。件のキメラを発見した。場所は――』
 と仲間達へと連絡を入れる。
 小石を受けた狼男は振り返ると通信中の國盛へと爪を振りかざし猛然と襲いかかった。國盛は咄嗟にマーシナリーナイフを取り出し受け止めんとする。爪がナイフと激突し、ナイフが弾き飛ばされて腕が切り裂かれ血飛沫が吹き上がる。猛烈に重い。國盛はトランシーバーを捨てガンズトンファーを抜き放ち連射。一発の弾丸が狼人の脇腹をかすめ、残りの一発が虚空を抜けてゆく。速い。
「‥‥ちっ!」
 振り下ろされる爪を今度はトンファーでがっしりと受け止める。なかなか手強い。先に弾き飛ばされた刃がくるくると回転しながら路地裏の大地に音を立てて突き立った。
 狼男が爪牙を嵐の如く振るい、國盛はトンファーでガードしながら耐える。
 激しい攻防が続く中、Letia等の魔女の一団がやって来た。
「國盛、援護する!」
 ヘイルが槍のカバーを外し真っ直ぐに突っ込んでゆく。フランエールもまた太刀を抜刀しながらそれに続く。
「九条、朔月! 動きを止める。その隙に一気に攻撃を叩き込め!」
「了解、そのように動く」
「支援ぐらいなら僕だって!」
 九条と朔月は挟みこむように弧を描いて両サイドから接近してゆく。
「祭の平和を乱す悪い子は、この悪魔女アリスのLetiaさんが、おーしーおーきーさーねーっ!」
 Letiaは國盛が飛び退いて射線が空いた瞬間にフォルトゥナ・マヨールーを構え連射。和泉もまたそれに合わせて拳銃を構え猛射した。銃口が焔を吹き轟音と共に弾丸が飛び出してゆく。狼男は素早く家の壁へと跳躍して回避し、三角飛びで跳ね飛んで追撃の銃弾も回避。ヘイルは竜の紋章を蒼く輝かせて即応すると狼男の着地点へと詰め、その足を狙って槍を繰り出した。切っ先が狼の足を射抜き反撃の爪が繰り出される。ヘイルはもう一本の槍で払って狼男の爪を弾き飛ばし、フランエールが入って太刀を最上段から落雷の如くに振り降ろす。狼男の爪と太刀が激突し、朔月がサイドから矢を放ち、國盛がガンズトンファーから弾丸を連射する。
(これが傭兵‥‥か)
 胴に矢と弾丸が炸裂して血飛沫をあげる狼男へと九条は傭兵刀を青眼に構えて踏み込み、振り上げ、裂帛の気合と共に頭部を狙って振り下ろす。刃が閃いて狼男が頭部を振り、肩部に炸裂して切り裂き血飛沫を吹き上げた。狼男は斜め後ろへと倒れるように転がりつつ、身を反転させて起き上がり逃走に移る。
「あ、逃げた! お待ちっ」
 銃弾をリロードしつつLetiaが叫ぶ。
 と、その時、狼男の行く手の通路の彼方より二人の女が姿を現した。
「ふふ、ギリギリ間に合ったかしら」
 ケイとセシリアである。強いのが来た。ケイは左右の手にリボルバーと小銃を構えて狼男へと向け練力を全開にする。セシリアは超機械を翳し練成超強化をケイへと発動。その銃に輝きを宿した。
「遊びましょう?」
 ケイ、微笑しつつ猛連射。マズルフラッシュと十二連発の弾丸が唸りをあげて飛び出した。凶悪な破壊力を秘めた弾丸の嵐が次々に狼の両足に炸裂し吹き飛ばしてゆく。狼男が為す術もなく転倒する。
「とどめっ!」
 そこへさらにLetiaと和泉の射撃が飛び、避けられる訳もなく蜂の巣にされた狼男は、ついに路地裏に沈んだのだった。


 かくてキメラは退治され、脅威は取り除かれた事が仲間達や街や軍に知らされていった。
「任務完了だ。さて、魔女殿。この騎士にエスコートを許してくれないかな? ‥‥祭り、一緒に行こうか」
「‥‥あいさね! さぁて、どこ行く? 何する? 何食べるっ? 美味しいものーっ! ひゃっほ〜♪ 付き合いきれない何て言わせないゾ〜?」
 黒騎士と魔女はハイテンションで街へと繰り出していった。
 他の傭兵達も各々完全にバカンスモードへと移行する。
「折角だから温泉入ってゆく?」
 とヴァレス。
「そういえばここ温泉街、なのだっけ? ヴァレスと一緒に色んな温泉を巡るのも良さそうだね」
 と流叶。デュノフガリオ夫妻は片っ端から温泉を入り倒すらしい。
「ん、それじゃ着替えてくるから、ちょっと待ってて」
 と、取っておいた宿へと向かう。
「ここのたこ焼きうめぇ!」
 KodyはClisと共に食べ歩きを敢行中である。好物のたこ焼きがあったので凄い勢いで貪っている。
「またー、どうせロクなもの食べてないんでしょ。たまには作りに行ってあげてもいいよ?」
「いや、普通にうめぇって‥‥まぁ、来て貰えると助かるけど」
「ん、本当だ。美味しい」
 そんな事を言いつつ、他にも名物を食べ歩いてゆく。
「ねえ硯、これは何? 見たこと無いんだけど‥‥」
 先に購入した温泉饅頭の紙袋を抱えつつ道の端に流れるお湯とそれに足をつけている人々を見やってシャロン。
「ああ、これは足湯ですね」
 と答えて鏑木。
「アシユ‥‥? 足だけ入れるの‥‥?」
「はい、服を脱がなくて良いのでこうして街角に設置される事も多いんですよ。日本独特の文化なんですかね?」
「へー‥‥少なくとも私は見た事なかったわ」
「折角ですし、入ってみます?」
「うん、そうね。折角だし入ってみるわ」
 という訳で鏑木とシャロンは靴等を脱いで足湯を体験する事とする。足には太い血管があるので、足が温まれば全身が暖まるのだそうだ。
「あー、ぽかぽかするわねー‥‥」
 饅頭を食べつつぐてっとシャロン。すっかりくつろぎモードに入ってしまったようだった。
 他方、ソウマは無線からキメラが退治された連絡を受けると、欠伸を一つ洩らし、またぽかぽかとした陽気を受けつつ眠りについた。
「たまにはこんな日も有りですよね‥‥」
 ぐっすりである。


 UNKNOWNはぶらりと街を回っている。
「やっぱり温泉饅頭は外せないさねぇ〜♪」
 Letiaは饅頭に齧りつきつつヘイルと共にハロウィンイベントに沸く街を回っている。
「良く食べるなうちの魔女様は」
「あはは、美味しいもの食べてる時が至福の時さぁっ――ヘイルっ」
「なんだ?」
「楽しいね!」
 笑ってLetia。それにヘイルはふっと笑みを浮かべると言った。
「そうだな」
 一方、Cerberusと白藤のペアは温泉へと入っていた。
「懐かしいな、こういう場所でゆったりしていると思い出す。あれからもう半年近いとは思えないな」
 白藤を抱きかかえて湯に浸かりつつCerberusはそんな感慨を洩らす。頭を撫でてやる。
「そやね‥‥ちょっと懐かしいやも‥‥」
 Cerberusの肩に後頭部を預けつつ笑って白藤。告白された時も温泉だったらしい、少しその時を思い出していた。
 他方、ヴァレスと着替えて身軽になった流叶も温泉にやってきて入浴していた。
「ん、ここの効能?」
 バスタオルを巻いて浸かっていると成分が書いてあったのでそれに流叶はざっと目を通す。
「‥‥ふぅん」
 色々書いてあるが要約するに、主に肌等に良いらしい。
「どうしたの?」
 とヴァレス。
「ここの温泉お肌に良いのだって」
「へー、お肌かぁ」
 とヴァレス。
「私、あんまりお肌とか気にしないんだけど‥‥気にした方が良いのかな?」
「はは、流叶の肌は真っ白で綺麗だからなぁ、大丈夫だよ。でも温泉で更に綺麗になるならなおよしっ♪」
 などと夫婦は会話を交わしている。
 他方、サヴィーネとルノアのペアも別所で温泉へと入っていたが、
「‥‥って、ちょっと待ってくれ、ノア」
「サヴィ‥‥どうし、ました?」
 泡立つタオルを動かしつつかくりと小首を傾げてルノア。
「確かに一緒に入るとは言ったけど、背中まで流すって‥‥あ、やん、ど、どこを触って」
 サヴィーネは真っ赤になって身をよじっている。
 他方、
「そ、そのやっぱり洗いっこって恥ずかしいんですけど‥‥恋人同士なら別に普通ですよね‥‥?」
 やはり温泉、リズレットが九道を相手にそんな事を言っている。
「そ、そうなのか」
 と赤い顔して九道。普通かどうかは解らないがやってる者達は多そうだ? リズレットは身を寄せるとタオルで洗いにかかる。
「やっぱりお姉様の胸‥‥大きいです‥‥それに比べてリゼは‥‥」
 戦力差にずーんと落ち込むリズレット。
「そんなの、リゼは可愛いから問題ない!」
 振り向いて九道。
「そう‥‥ですか?」
「勿論だぜ」
 熱く見詰めて九道。
「お姉様‥‥」
 見上げてリズレット。
 他方、全裸写真取り放題、と黒い笑みを浮かべていたアーク・ウイングだったが、皆同じ温泉宿の同じ温泉に入った訳もなく、また見知った顔がいても、さすがにパートナーの裸体を「記念に一枚とっていいですか?」で撮らせる事をOKした者はいなかったようである。そっちの戦果は零であった。
「のぼせないように、毎回水分補給忘れずにね♪」
 温泉から出た後にヴァレスが言った。能力者だから大丈夫かもしれないが、温泉を梯子するだけにしっかり補給しないと身体に悪い。
「俺はコーヒー牛乳にしよっかな、流叶はどれにするかな?」
「んー、そうだね、それじゃ私も同じので」
 という訳で二人揃ってコーヒー牛乳を飲む事にする。ごくごくと飲んでから流叶が言う、
「ふぅ、お風呂上りだとやっぱり飲み物、美味しいね」
「そだねー」
 あはっと笑ってヴァレス。仲の良い夫婦である。
 他方、
「けーぇちゃんvトリックオアトリート♪」
 二人きりになった時、白藤は座敷に腰を降ろしているCerberusに抱きついてそんな事を言った。
「っと、今、手持ちがないんだ」
 その言葉を聞くと白藤は舌でぺろりとCerberusの唇を舐めて「にっ♪」と悪戯っ子の笑みを浮かべた。
「ごちそーさん♪」
「これはまた過激な悪戯だな」
 とCerberusは笑う。
「へへー、そだ、けぇちゃんこれなら甘すぎへんやろ」
 と白藤はビターチョコを口に咥えてCerberusに口つける。
 Cerberusはしばし唇を合わせると溶けたチョコを呑みこんだ。
「‥‥おいし?」
「美味しいには美味しいが、白藤のキスの味の方が美味しいぞ」
 Cerberusは言って白藤の頬に口付けを返すのだった。
 温泉のはしごを終えたヴァレスと流叶の二人は浜へと繰り出した。
「あれ、水着持ってきてたのか。俺もだけどさ」
 と水着姿の妻を見やってヴァレス。
「ん‥‥どうせなら、目の前の人の独り占めに‥‥されたいし、さ」
 流叶はそう、囁くように言った。
「全く、嬉しい事言ってくれるなぁ」
 ヴァレスは言って流叶の肩に手を置くと、
「勿論、流叶は俺だけのものだよっ♪」
 言ってその唇を重ねたのだった。


 國盛は秋の海を眺めつつ煙草を咥え酒を一杯やっていた。
 考えているのは今後の事だ。傭兵になった経緯、ムエタイから軍人へ、それから傭兵へ。更なる強さの高みを目指してきたが、これからどうしていくのか。
(いや、進むしか無いのだろうな‥‥)
 そんな事を思う。
 ケイとセシリアもまた浜辺へと来ていた。
「あの人は今頃、何をしてるのかしら‥‥」
 ケイは色々なカップルを目にして、自分の愛する人を思い出し、少し切なかった。
 セシリアも同じ想いかなと思う。お互い、愛する人は忙しい男達だ。
(‥‥この空も、海も、あの人に繋がっていて‥‥早く、会いたい‥‥)
 セシリアもまた水平線を眺めながらそんな事を思っていた。
 夏も終わった、夕暮れの海、少しの寂寥を纏いつつ二人の女が砂浜に足跡をつけて歩いてゆく。
 適当な場所に着くと花火を取り出して火をつけた。
「夕暮れ刻の花火も良いものね‥‥」
 などと言いつつあれこれについて談笑する。陽が落ちればケイは歌を歌う事にした。
「今年はセシリアと夏の思い出は作れなかったから‥‥せめて、ね」
 夏を惜しむような、切ないけれど秋に向けての優しい歌を歌う。
「‥‥ケイさんの歌は、何時でも心に響きます」
 終わった後に、セシリアはそう述べた。
「セシリア?」
「‥‥今日もこうして過ぎ行く事を、感謝したくて‥‥」
 セシリアにとってケイは特別な人だ。
「そう」
 ケイは微笑するとそう呟いたのだった。
 空には月が輝いている。


 辺りがすっかり暗くなった頃、九道とリズレットは月に照らされる浜を歩いた。
(ふふっ、デートの定番ですよね! きっと甘甘な展開が待っているはずです‥‥)
 そんな期待に胸をふくらませつつリズレット。こういう場所にこそしっと団とかいそうだが。
(もしも邪魔をするような不逞の輩が現れるならリゼは容赦しないです‥‥なんとしてでもお姉様とのデートを成功させるんですからっ!)
 リズレット、燃えている。愛とは守る物なのである。
「お姉様‥‥大好きです‥‥」
 ぎゅっと九道に抱きついてリズレット。切実だ。失いたくない。
「リゼ‥‥」
 抱き返して九道。ちょっと理性が危なそうである。
 空気読んだのか、はたまた誰かの活躍があったのか、不逞の輩が現れる事はなかった。


「秋、か‥‥」
 夜。UNKNOWNは湯に浸かり、酒の乗った盆を浮かべ、夜空に輝く名月を見やり一杯やっている。暖かい湯に浸かりつつ飲む辛口の清酒は格別の物があった。
「任務も無事終了、か。なんとか傭兵としてやっていけそうだな」
 湯に浸かって疲れを取りつつ九条はそんな事を呟く。
(次回以降はもう少し積極的に行ってみることにしようか‥‥)
 そんな事を検討中である。
「のんびりと温泉に浸かれるというのもなかな贅沢ですねー」
 和泉が言った。星空を見上げながらまた言う。
「いやはや、いつもこんなに平和だとよいのですがねー」


 夜、月光に照らされて陰が二つ寄り添っている。サヴィーネとルノアだ。
 サヴィーネ=シュルツ、どんなシチュエーションでもおよそ苦手なものというものが思いつけないような人間である。
 だがただ一つ、恋愛だけは苦手である。
 自分がリードしているうちはいいが、手綱を握られると途端に弱くなってしまう。結局犬的思考なのである。
(ノア。私は弱いんだよ。君の優しさにすがって、今もやっぱり甘えっぱなしだ。それでも一緒に‥‥)
 月が輝いて風が吹き花が揺れて雲が流れてゆく。
 今はそんな時代だが、それでも。
「そう言えば‥‥もう三ヶ月になるんだね」
 他方、宿の部屋に帰った流叶とヴァレスは事前に作って持参した栗金団とお茶で、まったりと月を見ながら茶会と洒落込んでいた。
「そだねー」
 とヴァレス。
 結婚して気付けば随分と共に居る、ものだと流叶は思った。
(願わくばこれからも、ずっと、共に居れます様に‥‥)
 空には秋の月が輝いている。



 了
(代筆 ; 望月誠司)