タイトル:その愛を示す為にマスター:中路 歩

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/27 01:55

●オープニング本文


 皆様、おはようございます。
 驚かなくても大丈夫です、ここは空想の世界。本来あなた方の住む世界とは全く違う場所ですから。
 無論、あなた方への危険は全く無く、心身共に元のまま元の世界にお連れしましょう。
 さて、この度あなた方をこの世界へお連れしたのは、私どもの調査しているある事について協力して欲しいのです。
 私たちが調査している事‥それは『愛』でございます。
 今この世の中には数多の愛が生じていると聞きます。

 純愛。
 清愛。
 憎愛。
 束縛愛。
 恋愛。

 多くの愛が生まれている事はとても良いことでございます。私たちは、その恋する人々が『愛』の為にどこまでするか‥を知りたいのです。

 恋愛対象への壮大なプレゼント?
 慕う人への愛情表現?
 かつて無いスケールの求婚?

 何でも構いません。
 この世界には限度と言う物がありません。何でも際限なく揃っています。
 いうなればあなた方一人一人の為に作られた『ステージ』なのです。

 さぁ、見せてください。
 あなたの『想い』を。



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 と言うシュミレーションゲームがあるゲーム会社が完成させたようなのだが、そのテストプレイを傭兵の皆に任せたいらしい。
 無論、テストプレイという仕事なので報酬は発生するので、気軽に請け負って欲しい。

●参加者一覧

春風霧亥(ga3077
24歳・♂・ER
飯塚・聖菜(gb0289
25歳・♀・DF
美環 響(gb2863
16歳・♂・ST
直江 夢理(gb3361
14歳・♀・HD
織部 ジェット(gb3834
21歳・♂・GP
宇佐美 唯梨(gb4336
20歳・♀・FC
ハート(gb4509
25歳・♂・DF

●リプレイ本文

●テスター1:春風霧亥(ga3077
 とてもいい天気だ。
 窓の隙間からカーテンを揺らす風は、気持ちよさそうに眠っている青年の頬を優しく撫でた。

「ん‥」

 気がついた拍子に、手に持っていた一冊の本がパサリと床に落ちる。どうやら心地良い環境の最中での読書は、睡魔を誘ってしまったらしい。
 質素ながらも掃除の行き届いている施設のリビングで、春風はゆったりとした椅子に腰掛け、読書に耽っていたのだ。
 起床したばかりだが、落とした本を拾い上げてもう一度読書を再開する春風。
 だが、文字の羅列は再び彼の視界から消失し、代わりにこの施設で使われているスリッパが目に入る。

「春風。あの子達が呼んでいるわよ」

 優しげな声。顔を上げると、この施設の責任者である女性が本を取り上げ、こちらを見下ろしていた。皆からは『先生』と呼ばれて慕われている。春風は頬を掻き、苦笑した。

「昨日も山へ遊びに出かけたばかりだと言うのに、あの子達は元気ですね」

「あなたも若いでしょう。ほらほら、早く行かないとまた水鉄砲で追いかけ―」

 唐突に、庭から続く扉が勢いよく開く。そこから飛び込んできたのは彼と同年代の男性だ。全身ずぶ濡れで、春風を見つけると一目散に向かってくる。

「き‥霧亥、交代だ! タッチ、タッチ!」

 その濡れた手で春風の肩を叩き、そのまま共同の浴室の方へ駆けて行った。そして次に飛び込んできたのは、十代前後の子供達。

「あ! 霧亥だ」

「わぁ、やっと起きたんだー♪」

「ねぇ霧亥。遊ぼう遊ぼう?」

 恐らく先生が居たからだろうが、水鉄砲をすかさずズボンのポケットに押し込み隠し、春風に殺到する。

「わかった、わかったから。じゃあ、今日は何して遊ぼうか?」

 それらの少年達を優しく受け止め、春風はにっこりと笑った。少年達は大喜びし、口々に遊びの提案をしゃべり始める
 鬼ごっこにかくれんぼ、お宝探しにテレビゲーム。お菓子も作ってくれとのこと。どうやら、読書の続きは夜になりそうだ。少年達に引きずられるように中庭に歩いていく彼は、外に出る手前で先生を振り向く。
 彼女は笑いながら、行ってらっしゃい、と声を掛けてくれた。

―変わることは止められない。変えないことは出来る。見守り続けた末の答えは、きっと満足するものだ―


●テスター2:織部 ジェット(gb3834

 笑顔で共に歩く男女。
 実は9歳と言う年齢差があるカップルなのだが、恋に年齢など関係ない。愛してしまえば、愛なのである。
 ゲームセンターのクレーンゲームで中々の収穫を上げ、満足げに出てくる二人。と、急に女が立ち止まり、慌てて袋の中を漁る。

「どうした? ‥あぁ、あの人形を落としてきたのか。ちょっと見てきてやるよ」

 自分が行く、と言った彼女をその場に待たせ、織部はゲームセンターに戻る
。程なく人形は見つかり、彼女の元へ戻ったときだった。あからさまに暴力慣れした男たちが、彼女を囲んでいる。

「小さい子に集るってあんまり格好良く無いぞ。行こうぜ」

 無理やり男達の間をこじ開け、彼女の腕を掴んだ。当然因縁付けて来ようとする不良たちだが、その前にダッシュでその場から走り去った。
 訝しげな表情の彼女に、少しだけ振り返って小さく笑う。

「今は、俺一人じゃないし、この対応が大人って奴だ。」

 そのまま二人は走り続け、海にまで来てしまった。だが、この場所は有名なデートスポットであり、中でも二人乗りのボートは恋愛成就率が高いことで更に有名だ。
 丁度良いので、ボートを一艘借りて海に漕ぎ出す二人。織部の力強いオール捌きで、ボートは物凄いスピードで海上を走る。彼女も嬉しそうだ。
 と、急にボートが沈み始める。船底に穴が開いていたのだ。あれよあれよと言う間に、ボートは完全に沈んでしまった。

 一時間後、なんと織部は彼女を抱いたまま浜まで泳いで到着していた。だが、女は海水を飲みすぎたらしく、おぼれている。
 織部は躊躇無く人工呼吸を開始した。
 その甲斐あってか、女は程なく目を覚ます。感謝を言いながらも照れている彼女に、織部は気まずそうに言った。

「悪いけど、後で唇の周りは消毒しとけ!」

 そっぽを向いた彼を、彼女は優しく見つめていた。
 ずぶ濡れになった互いの服を乾かしたいのだが、生憎人気の無い浜に上がってしまい、変えの服が用意できない。
 そこで、焚き火の周りに服を干し、互いは全裸のままだが、背中合わせで乾くのを待つ事にした。だが、やはり彼女は寒そうである。

「傍から見たら犯罪なんだろうな、でも、仕方が無い。」

 織部は、震える彼女を後ろから優しく抱きしめた。
 既に時は夜。満天の星空が、二人を祝福していた。


―いつか叶えたい恋。数多の時間を掛けようと実らせる。時が過ぎる前に―


●テスター3:宇佐美 唯梨(gb4336

「ねぇ、この席良いかな?」

 その女性の出現に、店内は騒然とした。
 魅惑的な肢体を持ち、妖艶な微笑を湛えるバニーガールの女。その美貌に、男達ばかりか女性まで嫉妬や敬意の眼差しで見つめてくる。
 宇佐美が真に愛しているのはギャンブル。だが、今回は恋愛の駆け引きを楽しみに来たのだ。
 そしてそのターゲットは、今声を掛けた男性。先ほど街中で男達を選定し、この人物に決めたのである。

「あぁ構わないよ」

 ターゲットの男は見立てどおり、恋愛慣れしていそうだ。宇佐美は自身も席に着き、男と同じ酒を注文する。そしてグラスが目の前に置かれたとき、隣からもう一つグラスが寄せられる。

「あたしの名前は宇佐美。きみは?」

 乾杯をしながら、じぃっと目線を合わせて聞く。男はそれは平然と受け止め、自らの名前を『ロック』と名乗る。ロックとは今飲んでいる酒の名、明らかに偽名だろう。

「洒落た名前だね。じゃあ、あたしは『グラス』とでも名乗っておこうかな」

「今、宇佐美だと言ったじゃないか」

 ほんのりと酔いが回り、互いに少しだけ打ち解けあう。

「酒はグラスに注がないと飲めないでしょ? グラスも、入れる飲み物がないとただの飾り‥満たされないと、ね」

 含みのある流し目を送る宇佐美。一瞬だけピタリと男の手が止まるも、飽くまで余裕を貫くようだ。
 そこへ、追撃するように体を寄せる。

「じゃあ、きみはどうして本名を教えてくれないの?」

「ん、それはね」

 ロックは残っていた酒を飲み干し、カウンターに置く。カラン、と言う涼しげな音が奏でられた。
 そして、二人分の代金を払い、立ち上がる。

「名前って言うのは一種の縄みたいなもの‥本名をきみに教えてしまったら、あっという間に虜になっちゃうからさ」

 そう言い残し、去っていった。
 何だか釈然としない宇佐美だったが、とりあえず残った酒を飲んでおく。

「一応、賭けはあたしの勝ち、かな。勝負に勝って試合で負けた‥か。今思ったら、先に名前を名乗った所で負けていたのかも」

 ギャンブルの用に白黒付かない結果。これもまた、ギャンブルとは違う恋愛の醍醐味なのだろう。


―駆け引き。恋愛とはそれ以上の何かがある。それに気付きし時、あなたは―


●テスター4:美環 響(gb2863

 今ではない、別の時間。
 時は中世ヨーロッパ。その時代に生きる二人の男女の話。
 手品師ヒビキと、貴族のお嬢様ティア。その身分の差は天地。到底、天からも地からも届かない。

 だが、二人は愛し合ってしまった。

 互いの想いは知っている。言葉で現すことはできないが、それでも二人が共に居る時間は、何物にも変えがたい貴重なものだった。

 しかし、神はなんと無慈悲なのだろうか。隣国で起きていた戦禍がこの国まで及び、戦争を望まぬ重役は、ティアを政略結婚の道具にしようとしているのだ。
 ヒビキは悩んだ。ティアを愛している。その想いだけが日に日に大きくなっていった。

 そして、ついに彼は決意する。

 結婚式前夜。ティアもまた、一人部屋で悩んでいる。


「今宵奇術師は魔法使いとなって参上しました。あなたの望みは何ですか?」

 その声、最愛の人の声に驚きつつもテラスに目を向ける。そこには、月光をバックに、ヒビキが微笑んでいた。
 当然、どうやって登ってきたのかをたずねるが。ただ微笑みむだけだ。
 勿論ヒビキが現れて嬉しいティア。このまま一緒に逃げ去りたいのだが、自らは国の運命を背負う身。それは出来ない。

「あなたの望みは?」

 重ねて、ヒビキは言う。

「戦争を避け、あなたと共に行くこと」

 ティアは呟く。だが、彼は聞き逃さなかった。

「魔法使いは、大切な人の夢を叶えます」

 パチン、とヒビキの指が鳴ったと思った瞬間、ティアの意識は無くなった。

 
 戦争は起きなかった。
 ティアが消えたことで和平の道が無くなり、戦でも勝ち目は無い。国そのものが全面降伏したのである。
 ヒビキの、壮大な消失マジックは大成功だ。

 数年後。ある夫婦奇術師が他国で評判をあげるのは、また別の話である。


―人は誰しも魔法が使える。愛と言う魔法を―


●テスター5:ハート(gb4509

 ここは、どこだ。
 暑い‥いや、熱い。
 火、炎‥火事か‥家が燃えている。燃えている家に居る。
 外が騒がしい?
 いや、これは悲鳴。
 揺れている、地震?
 違う、これは‥空襲だ。
 戦わねば、戦わないと。

『どうして?』

 ‥そうだ、戦う必要など無い。
 逃げよう。
 出口の扉は‥あれか。
 くそ‥鍵が掛かっている。何か壊せる物は‥なんだ、私は剣を持っているじゃないか。
 これで出られる‥っ?
 血が付いている‥私のではない、では‥?
 っ!‥死体‥女性か‥。
 空襲に巻き込まれたのだろうか‥いや、今はそんなこと考えている場合ではない。
 よし‥開いた。

『それで良いの?』

 いや‥あの女性、どこかで‥。
 どこか‥‥っ!? 敵‥

 ゲームオーバー。

 っ‥先ほどと同じ場所‥振り出しと言うことだな。
 早く脱出しないと、早く‥。

『助けないと』

 あの女性はさっきの‥まだ息がある。
 キメラ‥! この程度の敵ならば‥!
 よし、片付いた。

「大丈夫‥っ」

 ‥傷が深い。これでは、もう‥。

「‥っ‥‥っ‥」

 !?
 今、私の本当の名前を‥?
 やはりこの女性、どこかで。
 足には義足‥これは‥指輪?

『それは忘れていた宝物』

 まさか‥そんな‥。
 この女性は‥私の婚約者。

「‥こ‥っ‥て」

 なんだ、何を言いたいんだ。
 いや、そんなことより!

「喋ってはだめです、すぐに治療を‥」 

「‥私を殺して‥」

 っ!?
 今‥なんて‥。

『最後の望み』

「‥愛する人に‥殺してほしい‥」

『唯一の願い』

 もう‥もう、彼女が苦しむだけなら。
 それが彼女の望みなら。
 彼女を愛しているから。
 私は‥私は‥っ。

『戦いの理由、それは』

「‥愛なんて‥」

『取り戻せない愛の、復讐』

「人を愛するなど下らない」


―愛は人を祝福する。愛は人を苦しめる。祝福が消え、苦しみだけが残った愛など―


●テスター6:直江 夢理(gb3361

 由緒正しき忍者の家系。同時に、かつて愛を掲げた武将の末裔だと言う。
 彼女の愛は正義の愛、常に純愛を志している。
 が、愛さえあれば何でも‥とかも思っているらしい。

「はっ! 私のお友達(女)がピンチです!」

 忍者の耳は正義の耳(?)。
 彼女の大切なドラグーンの友人がなんと、変態に狙われていると言うのだ!
 これは愛と正義の忍者である自分が、助けねばなるまい!
 変態は大胆にも、そのお友達のAU−KVの至る所に(自主規制)や、(自主規制)を仕掛けたという。これでは装着することも出来ない。
 しかし! いくら最新テクノロジーだろうと、愛と正義の忍術の敵ではないのだ!

「忍法、身代わりの術!」

 ×身代わり→○変わり身。

 気付くのが遅かった。ポン、とお友達と直江の立場が逆転。しかもAU−KVの中に飛ばされる。

「ま‥間違えましたぁ! あ‥そんなっ‥だめぇ‥」

 以降、自粛。場面変更。


「私っ、お姉さまの為に一生添い遂げるって決めたんですっ!」

 愛の忍者は愛に生きる!
 心より尊敬せし『お姉さま』のためならば、たとえ火の中水の中! それに『お姉さま』は誤字が少し他のより多めで‥。

「あ、皆さん御歯用ですよ〜♪ 凶も居移転機ですね〜」

「コホンッ‥お姉さまはこう仰られています。『皆さんおはようですよ。今日も良いですね』」

 直江が付き添っていないと、他者とコミュニケーションも取れないのだとか。(※飽くまで直江の自称)
 そんな直江に、ついに運命の瞬間が訪れる!

「え‥えぇ!? 『結婚するから早く電話して』って‥嬉しいです、お姉さまぁ」

 照れながらも喜び、教会に電話しようとした‥のだが。

「『血痕があるから(警察に)電話して』‥そうですか‥そうですか」

 負けるな正義の忍者。
 負けるな愛の忍者。
 きっといつか、報われる日が来るだろう!


―‥ぁー‥えっと‥、こう言う愛もある‥頑張れ、本当に―

●テスター7:飯塚・聖菜(gb0289

「こ‥これが‥俺!?」

 女の子らしい可愛い部屋の鏡の前で、飯塚は思わず自らの髪や体に触れる。
 毛先にウェーブをかけた茶髪のロングヘア、ついでにパジャマ姿。そんな彼女の願った『女の子』に、ちゃんとなっている。
 これがゲームだと知りつつも、思わずギュッと体を抱きしめた。
 と、鏡の端に時計が写る‥時刻はまだ朝10時。約束の時間まで余裕がある。
 ん、約束‥?

「そうだ‥今日はアイツと会うんだった」

 慌ててタンスの引き出しを引っ張り、服を探す‥だが、どれも随分と地味なものだ。

「そ‥そうか、この日に備えて服も買わずに金を貯めていたんだったな‥よし、少し奮発して色々買ってやるか」

 玄関に綺麗に並べてある靴を履き、上機嫌にステップしながら店に出かける。
 そして店に到着し、迷わず婦人服コーナーへと向かった。

「これ‥俺なんかに似合うのかな‥いや、アイツと会うんだから、ちゃんとした格好じゃないとな‥綺麗って、言ってほしいし‥」

 そう、アイツのため。
 大好きで、最愛のアイツのために、今俺は頑張っているんだ。
 アクセサリーも買おうかな、香水も買ってしまおうか‥えっと、エステに行くのは‥さすがに時間がな‥。

 やっと自らのスタイルがバッチリと決まる。
 試着室の中で、くるりと一周回ってみた。全く問題ない、完璧だ。
 これで、アイツも俺のことを惚れ直すだろう。
 飯塚は彼の驚き、褒めてくれる所を思い浮かべ、嬉しそうにクスクスと笑った。

 気付けば、既に時間は迫っている。余裕を持つつもりが、逆に遅れてしまいそうだ。
 何とか到着したのは、五分前‥まだ、アイツは来ていない。

 ドキドキしながら待つ‥そして、約十分の遅れで、アイツはやって来た。

「遅い! 何やってんだ‥」

 あ‥だ、だめだ。
 もっと、もっと女の子らしく。
 
 飯塚は深呼吸し、改めて。

「もぅ、遅いよ。 待ちくたびれちゃったんだから」


―今は届かなくとも、心が純粋である限り希望が潰える事はない―