タイトル:HW☆カボチャクロースマスター:中畑みとも

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/29 15:24

●オープニング本文


『ラスト・ホープ』
 人の手で作られたこの都市でも、昔と変わらぬ人々暮らしが日々営まれている。
 その為か、いつもどこかしらで人々の心を和ませる色々なイベントが行われている。

 今日も街角の小さな窓を飾るオレンジ色のカボチャ。
 壁に蝙蝠やファンシーなお化けが描かれたポスターが貼り出されている。
 そこに書かれた「Trick or Treat!」の文字。
 ──『ハロウィン』である。

 ‥‥から、一週間以上経ったある日。
 街角からはオレンジ色は消え、いつも通りの風景へと変わっていた。気の早い店などは、もうクリスマスツリーを出す用意をしているところさえある。あれだけ騒いでいたハロウィンも、過ぎてしまえば振り返る者も少ない。
 そんな街中に、ひょこんっと顔を出したのはオレンジ・ジャックとブラック・ランタンだった。2体のキメラは、1つの店のショーウィンドウに張り付き、ジーッと中を見つめている。そこには、白い髭を蓄えた赤い服のお爺さんが、大きな袋からプレゼントを取り出して子供に渡している姿を模したオルゴールがあった。
 それを見た2体のキメラはお互い顔を見合わると、楽しそうにスキップしながら去って行った。

 暫くして、街中にドーンッ! という爆発音が響いた。人々が何事かと騒ぎ始める。
 爆発音は街から少し離れた場所にある、小学校から聞こえてきた。教師に連れられた子供達が、泣きながら逃げてくる。
 その向こう側に見える小学校の校庭には、オレンジ・ジャックとブラック・ランタンが、巨大な白い袋を携えて立っていた。
 オレンジ・ジャックとブラック・ランタンは、楽しそうに鳴き声を上げ、白い袋から何かを取り出した。それは、白い箱にオレンジと黒のリボンがかかった、見た目は可愛らしいプレゼントだった。
 2体のキメラが、それをぽーいっと、まるで子供達に渡すように投げ飛ばす。しかし、それを受け取る者はおらず、箱は地面にボトリと落ちた、瞬間。
 ドーンッ! と地面を揺るがす振動と音がして、校庭に直径1メートル・深さ30センチ程の穴が開いた。

 傭兵達が駆けつける中、2体のキメラは穴だらけの校庭で楽しそうに踊っていた。

●参加者一覧

篠森 あすか(ga0126
26歳・♀・SN
鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
シェリル・シンクレア(ga0749
12歳・♀・ST
神徳 奏音(ga1473
24歳・♂・SN
角田 彩弥子(ga1774
27歳・♀・FT
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
モエギ・マーブル(ga3445
18歳・♀・GP
内藤新(ga3460
20歳・♂・ST

●リプレイ本文

●何時まで出てくるカボチャキメラ
「敵は‥‥かぼちゃのお化けですか。それはいいんですが、やはり爆弾というのが厄介ですね〜」
 モエギ・マーブル(ga3445)が金の髪を触りつつ、うん。と、ひとつ頷く。メイド服姿が可愛らしい。
 悪質なフライング・サンタさんですね〜♪ と、可愛らしく笑うシェリル・シンクレア(ga0749)だが、当然、見過ごすことも、容赦するつもりも無い。
「まだ残ってましたか〜オレンジ・ジャックちゃんとブラック・ランタンちゃん♪」
「ハロウィンは終わったというのに、迷惑な話ですね‥」
 これ以上の被害を出す前にと、鳴神 伊織(ga0421)は視線を踊るオレンジ・ジャックとブラック・ランタンに向ける。シェリルが、小首を傾げて、緩い癖のある長い銀髪を揺らす。
「白い袋にプレゼントを入れて子供に渡そうとするなんて、サンタのつもりなんでしょうか?」
「カボチャの癖に、クリスマスに煙突から不法侵入してくるじいさんの真似かよ」
 やれやれと、内藤新(ga3460)は仲間達の後から付いていく。不法侵入は困るが、置いて行くのがプレゼントならば、多少は目をつぶってもかまわない。ドリームなのだから。けれども、災害を置いていかれるのは困る。
「‥子供心を傷つけるキメラは、まさに小さな魔物」
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)は、溜息を吐く。ハロウィンのイベントへ参加するつもりだったのだが、任務で行きはぐれば、ハロウィンの象徴のような顔をしたキメラが、子供達の心をえぐる。嫌な話だと、ひとり呟く。
「俺様のトコじゃないっつってもな」
 禁煙パイポを器用に咥えたまま上下させつつ、角田 彩弥子(ga1774)はその長い髪をかきあげる。教員免許を持つ彼女は、学生が学校で危ない目に会うのが許せない。
「見過ごせねえな」
 場所は小学校だ。トラウマになってしまっては可愛そうだ。
「避難は終わっているみたいだよ」
 万が一を考えて、篠森 あすか(ga0126)は、学校周辺の避難状況を確認してきていた。幸い、迅速に避難誘導され、残るは学校のみになっている。よし。と、彩弥子が頷く。
「賞味期限切れのカボチャキメラ‥さっさと片付けてやらねぇとな」
「そうですわね。早急にご退場願います♪」
 シェリルは、落ちそうな眼鏡を、両手で、くいっと直すと、はい。と、笑みを浮かべた。

●カボチャ退治
「爆弾に関する情報は無しですか‥」
 どんな爆弾かを聞き込んでいた伊織は、あくまでも予想の範囲だがという話しか聞けなかった。思いついた事を口にしてみるが、言っているうちに、やっぱりまずいかしらと、あすかはがっくり来る。
「投げられた爆弾をキャッチして投げ返す‥‥って考えが頭をよぎったんだけど、これじゃ袋の爆弾に誘爆しちゃうよね」
「一応、作戦通りに‥な?」
 ホアキンは新から練成強化を受けながら、穏やかに声をかける。熱くなった左手に目を落とせば、そこには磔刑の釘痕のような痣が赤く光って浮かび上がって来る。覚醒だ。
「そうだよね、がんばろう」
 うん。と、あすかはすぐに頭を切り替えて、力を発動させる。
「練成強化完了です。これであなたの武器の切れ味は新品以上」
 にっと笑う新の両手首から先は、オレンジの光をぼうっと放ち。
「行くよっ!」
 オレンジと黒のリボンの付いた爆弾を手にした、オレンジ・ジャックとブラック・ランタンは、キキキッ。ゲゲゲッ。と、愉快そうに校庭で踊っている。ドーン。ドーン。と、次々に音がする。校舎に投げられていないのが救いか。
「やめろクソカボチャ!そんなプレゼント、地面だって喜ばないぜ」
 新の声に、踊りまくっていた二体のキメラは、ぴたりと動くのを止めた。そうして、二体そろって、くるりとこちらを向いたのだ。何やら、話すかのように顔を寄せ合うオレンジ・ジャックとブラック・ランタンは、能力者に向かってプレゼントを持って走って来る。
「うっそ!」
 その手にしたプレゼントを、ポーン、ポーンと投げる。
「当たれっ!」
 あすかのアサルトライフルから放たれた弾丸は、ひとつのプレゼントに当たり、空中で派手な音を立てる。しかし。もう一つのプレゼントは、そのまま、能力者達の近くに落ちて、ドーンと音を立てた。
「仕方ない。行くぞっ!」
 スナイパーがあすか一人なので、どうしても投げられるプレゼント──爆弾を撃つ時間が足らない。爆発の衝撃を受けながらも、彩弥子が声をかける。狙いはオレンジ・ジャック。こちらに走りこんで来たのが幸いする。囲む為に能力者達が走り込む距離が短い。爆風を受けながら、近付けば、怒ったようなオレンジ・ジャックへとホアキンのソードが唸りを上げてオレンジ・ジャックを襲う。狙いは白い袋を持った手だったが、流石に爆風を避け、デコボコの校庭を走りながら当てるのは無理があった。しかし、ソードは確実にオレンジ・ジャックに深手を与える。何所か子供っぽかったモエギの頬が紅潮し、妖艶な表情を作る。その双眸は黄金に輝き、ファングがオレンジ・ジャックを襲う。よろけたオレンジ・ジャックへ伊織が近付き、白い袋から、手を離させようとする。足場に注意していたおかげで、安定して近づけたのだ。
「!」
 だがしかし。袋の近くにいるのは、オレンジ・ジャックだけでは無い。むんずと、伊織を捕まえたのは、ブラック・ランタンである。
「くっ!」
 ブラック・ランタンの、特殊能力は、怪力である。捕まれた腕が、みしみしと音がしそうだ。
「させないよっ!」
 赤白のサンタカラーに塗りわけられた装備の彩弥子が、縦長になって、蛇の瞳孔に似た瞳を固定する。その双眸が捉えたのはブラック・ランタン。アーミーナイフが閃いた。僅かに緩んだブラック・ランタンの手から抜け出た伊織も、一歩下がるとゆらりと揺れる蛍火を、傷を負ってたたらを踏んだブラック・ランタンへと叩き込む。伊織は、その身体から、青白い淡い光を溢れさせ、髪と瞳に蒼い輝きを宿し。
「この一撃‥貴方達に耐えられますか‥?」
 オレンジ・ジャックの方も、南瓜頭がホアキンのソードで貫かれて居た。
「‥シチューにできないのが残念だ」
 穴だらけの校庭の中、オレンジ・ジャックとブラック・ランタンは自ら作った穴へと落ちていった。

●そろそろ年越しの気配がするし
 小型爆弾を解体していたシェリルは、途中でUPCの解体班に取り上げられる。そう複雑な爆弾では無かったが、いくら安全を確認してと言っても、何の施設も無い場所で一人で行うのは、危険だ。何所から入手したのかも、誰が作ったのかもわからなかったが、とりあえず、小型爆弾の大量爆発事件は沈静化に向かっている。これ以上この町に居る必要も無い。
「弄んでみたかったのに〜」
「輸送機の中で爆発したら、大変だし」
 あすかが、純粋な好奇心ですのにと、残念そうなシェリルをなだめる。
「持って帰るのも駄目か‥」
 彩弥子も、サンプルとして持ち帰るつもりだったようだが、怒涛のように現れたUPCの爆発物解体班が、破片一つも見逃さず、綺麗に持ち去ったのでは仕方ない。しょうがない。埋め戻しを手伝うかと、腕まくりする赤白のサンタカラーの彩弥子は、働くサンタさんとして、子供達に受けていた。
「さよならトリックオアトリート&こんちはメリークリスマス」
 ホアキンの持って来た白い袋から出てくるのは、色とりどりのお菓子。
 また、爆弾のような怖いものだったらどうしようと、息を詰めて手元を見ていた子供達は、みるみるうちに笑顔になって。
「いらはいハッピーニューイヤー」
 ‥かな? と、子供達に穏やかな笑みを浮かべて。
 能力者達のおかげで、何とか、オレンジ・ジャックとブラック・ランタンは退治される事となったのだった。

代筆:いずみ風花