タイトル:【MN】勇気の魔法(突)マスター:凪池 シリル

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/16 21:30

●オープニング本文


 えー皆さんはじめましてorこんにちわ。ナレーション役の天の声っす。
 今回、とある傭兵たちさんを観察してたらなんか変なところにきてます。
 いっぱいに広がる平原に、奥には緑豊かな森。
 ところどころに、陽光を受けてキラキラと輝く水晶のような柱が立ってます。
 なんか楽園か天国みたいっすね。
『思い出して‥‥思い出して‥‥』
 あ、なんか妖精みたいなの出てきました。ここどこでしょう。
『思い出して‥‥ここは天界の戦場ヶ原‥‥勇気ある戦士の魂が集う場所‥‥』
 うわ。本気であったのか天界の戦場ヶ原。
『思い出して‥‥皆でここで幸せに‥‥切り結び、撃ちあい‥‥血塗れになりながら友情をはぐくんでいた日々のことを‥‥』
 しかも思ってた以上にろくでもねえ場所だし。
『だけど‥‥』
 そんなあっしの内心はほっといて寂しげに呟く妖精さん。いいタイミングで冷たい風も吹きました。
 あー‥‥なんかよく見てみたらこの場所、一見きれいだけどいまいちなんか活気がねえっすね。
『そう、この地には今、かつてほどのエネルギーはありません。本気で戦いあっても疲労することなく、殺し殺されても翌日には復活していたほどのあのエネルギーが。‥‥地上の人々が、長く続く戦争の果てに、勇気を失ってしまったから』
 とりあえず、それほどのエネルギーはもっとましなことに使うべきだったんじゃないかとあっし思うんですが。どうなんでしょう。
『このままでは、天界から戦士が失われ、地上のみならず天界までもバグアに蹂躙されてしまう! だから‥‥!』
 無視ですかそうですか。まあどうせあっしは誰にも気づいてもらえない存在っすけどね。
『思い出して! あなたたちが地上に降りた理由。今こそあなたたちの真の名前、真の力を見せて‥‥地上のみんなから、勇気を取り戻して!』

 叫ぶとともに妖精の体からまばゆい光が放たれました。
 傭兵さんたちが包み込まれていくんですけど‥‥いいんですかー? あんたらそのまま茫然と包まれてて本当にいいんですかー?
 思い出した! 私の名は! とか言ってる場合なんですかー。
 ‥‥いや、いいならいいんですけど。


 一方その時‥‥

「くくく‥‥地上のものたち‥‥そして天界の戦士たちよ、恐怖し、絶望するがいい‥‥」
 半分に割れた髑髏の仮面に、漆黒の闇にごときマントをまとった青年が、どこかの町が見える丘で呟いていました。
「今日! 地上から! 全ての勇気のかけらを根こそぎ奪いとってくれよう! そして地上も天界も我らバグアのものとなるのだ!」
 偉そうに叫ぶ割にはやることは片田舎を数に任せて襲撃しようとしてるっていう、悪役としてはやけにちっささを感じる所業ですけどね。
 まあ変な格好した兄さんはともかく、後ろでひしめく山ほどのキメラはしゃれになんなそうです。
 この分だと確かにそこの町は一瞬で廃墟ですねー。
 さすがに傭兵たちが急いで集まっても、この数はきつそうっすけど‥‥


 いやまあ。確かにね?
 どうにかできるとしたら、ほら、皆さんに真の力とやらがあるんならそれ使ってみるしかないかなーとは思うんですが。
 どんなもんなんでしょう皆さんとしては。
 やるんですか?
 やるんですか。

※このシナリオはミッドナイトサマーシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません

●参加者一覧

矢神小雪(gb3650
10歳・♀・HD
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN
神楽 菖蒲(gb8448
26歳・♀・AA
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
音無 音夢(gc0637
19歳・♀・PN
長瀬 怜奈(gc0691
22歳・♀・SF
ネオ・グランデ(gc2626
24歳・♂・PN
ハーモニー(gc3384
17歳・♀・ER

●リプレイ本文

 さー、半分髑髏仮面の変な兄さんと、人や動物をベースにしたゾンビやら骸骨やら、ファンタジー的に言うなら不死生物の群れって奴ですかね、がぞろぞろと町に迫ってまいりますよー。と。ああっこの世に正義はないのか? いや! あの光はなんだ!

「クイックシフト‥‥フリルエプロンだけの速さについて来れるかな?」
 光とともにまず現れたのは矢神小雪(gb3650)さん。フリルエプロンだけ‥‥て、その格好は漆黒のロングコートに漆黒のスーツにあと「すかうたー」とやらと‥‥あとなんかフライパン。なんか武器みたいに構えてらっしゃいますけどフライパン。色々と掴めません。

「あれ‥‥私は、‥‥そうだよ、戦わなきゃ!」
 なんか思い出したかのような叫びとともに変身したのは流叶・デュノフガリオ(gb6275)さんです。バニーガールの服には勿論兎の尻尾。そして頭には‥‥パーカー? ええ。かわいらしい兎の耳がついたパーカーですね。バニー服に。
「さあ、いらっしゃい‥‥おともだち!」
 流叶さんはそう言って、パン、と両手を打ち鳴らします。まるでどこかの錬金じゅ(自粛)で、手を開くと、兎人形が召喚されました。

「貴様達は調停者(メディエイター)の私が裁く!」
 コートを翻し。そのままコートをぽいしつつ決め台詞を叫んだのが神楽 菖蒲(gb8448)さん。なんと彼女の正体は、天界の法執行官として活動する調停者だったのだ! 一度は悪に洗脳され「闇の調停者」として猛威をふるうものの、激闘の末地上へ流刑に。そして今、本来の自分を取戻した姿があそこに。そんな驚きの秘密があったんですねー。ここで菖蒲さんを知る人にインタビューしてみましょう。
「え? 別に普段とあんまり違くなくね?」
「いつも通りの菖蒲さんですよ」
「あの姿を見て? 一言で言うなら『違和感仕事しろ』かな」
 以上、町の声でした。彼女の普段が偲ばれます。

「【断罪の魔槍】! ファリスの元で再び来るの!」
 ファリス(gb9339)さんの言葉とともに、手にした槍が、そして彼女自身が本来の姿を取戻していきます。薄い青色のエプロンドレス、背中から二対の白い羽根が生え、そして槍は毒々しい朱い色に。おーい? かわいらしい少女ですよ? エプロンドレス、色は目にさわやかな薄青ですよ。その手に毒々しい朱。なんといいますか、ギャップ萌えも新時代に突入しているようです。あっしは過去に取り残されてる存在でいいや‥‥。そんで、取り出されるは目元を隠す【ナイト・ゴールドマスク】。これもやっぱり、譲れないところみたいです。

 音無 音夢(gc0637)は特に決め台詞も、己の正体を思い出したという感慨も特にないという風に、クールに静かに立っていらっしゃいます。真紅のドレス着用、髪と目も同じ色、手にした2m程の大きい剣は、やっぱり何か赤黒い光を放ってはいますが、こちらはご本人の服装と雰囲気もあいまってファリスさんほど違和感はないですネ(あくまで比較)。

 長瀬 怜奈(gc0691)は黒いローブと金の杖を装備して登場。どう見ても怪しい小人です。っていうか黒だの赤だの、なんか禍々しい色が多くないかあんたら。
 そんな恰好で低い声でぼそぼそと呪文となえてる様は正直怖いです。やってることは実は防御魔法で町の皆さんを守ってるんですが、気づいてる人多分いないんじゃないでしょうか。
「ホルスよ、千里を見渡す力を与え給え。我に力を、ゴーストアイ!」
 同時に隼の霊の霊を召喚。上空からの目となって敵の配置を味方に伝達。太古の霊を乗せたそれは味方に合わせ様々なBGMを奏でて仲間を鼓舞します。

「諦めない悪あがきがどれ程の力を持つか、存分に見せてやる」
 目の前にはキメラの大群、背後には諦めムードの住人。そんな状況で、苦しい時こそニヤリと笑えとばかりにおっしゃるのはネオ・グランデ(gc2626)さん。
「神鳴、第一解放」
 ばばーんと現れますのは強靭な手甲を装備した武者風の青年。
 その髪は白く、その瞳は赤く、その闘気は尽きることなく。
「近接魔術師、ネオ・グランデ、推して参る」
 言うが早いか彼もまた敵に向かって突っ込んでいきます。
「遠くから撃つだけが魔法じゃない、昨今の流行は格闘型魔法使いだ!」
 ‥‥それは、近接攻撃に対する魔法のアドバンテージをかなぐり捨ててる気がするのは気のせいでしょうか。

「ははははは。私の前に立ちはだかる相手を無限の弾丸で打ち砕く」
 上機嫌な声はハーモニー(gc3384)さんのもの。白の派手めなゴシックワンピースにシンプルな足下まで覆う黒のコート。右手には魔法の弾丸を放つ銃。そして左手には一升瓶。‥‥一升瓶!? ええ、間違いなく日本酒の一升瓶。ハーモニーさん、右手で銃を撃ちながら、左手でそれをぐいーっとあおります。
 またたく間に一升瓶が空になります。次の瞬間左手に現れるのはビールの缶。いつの間に持ち替えた。まさかそれも魔法で出してるんじゃなかろうな。むしろそっちが魔法のメインじゃないですよね?

 え、えーと‥‥光の中からこんな八人が!
 彼らが地上の最後の希望だ!
 だ、大丈夫‥‥だよね?



 えー、不安になってももう遅い。キメラの大群はもう町の門をぶち破り、街路へとなだれ込んできています。悲鳴を上げて逃げ惑う人々。立ちはだかる魔法少女(一部?)ズ。
 小雪さんは手にしたフライパンで並み居るキメラをどんどんと料理していきます。ええ、料理です文字通り。これが彼女の「夢幻のフライパン空間」。フライパンからほとばしる光にゾンビやら骸骨やらが触れたかと思うと、またたく間にフライパンの上で料理に変えられていきます。完成品を見るとうまそうなのですが材料を知ってると絶対に食べたくありませんね。これ後でどうするんでしょうか。
 続いてネオさんも動きます。
「まずは身体強化、『風祭』」
 術式を発動させました。効果は動作が素早く力強くなっていくというもの。そのあとは「拳で殴って相手を吹っ飛ばす魔法」やら「かかと落としで相手を撃ちたおす魔法」とかでキメラの動きを止めていきます。‥‥魔法ですよ? 魔法だからこれほどの威力になるんじゃないですか。ねえ?
 ハーモニーさんは右手にマシンガンをもって敵をまとめて薙ぎ払っていきます。発射されるのは魔法の弾丸。焔やら氷やら、いろんな色の弾丸がまとめて発射されていきます。左手のはまた、チューハイの大ジョッキに変わってます。
「お酒を飲めば飲むほど私は強くなるんですよ」
 酔拳? どんだけ飲んでも酔ってる様子、ないですけどね。
「成仏できないクソッタレ共よ、黄泉帰り敵をなぎ払え!」
 続く声は怜奈さんのもの。戦場ヶ原の英霊たちを召喚。一見何もしないですり抜けていったかのように見えますが、そうして霊たちに触れたキメラたちが悶えてうずくまります。この霊たちには、激しい腹痛を起こす能力があるみたいですね。
 そんな、皆の大活躍で築かれていくキメラの死体――あれ、死体の死体? まあ他に言いようないんで、はい――の山から突如盛大な血柱が上がります。
「舞いなさい」
 剣を地面に突き刺した音夢さんが告げました。すると血柱が竜巻のようにぐるぐると周囲に展開。巻き込まれたゾンビたちをバラバラにしていきます。
「これを喰らうの! 今、必殺の、【断罪の雷!(ブリッツ・デア・リュヒテン)】」
 ファリスさんは雷をまとわせた槍を振るい続けます。いつか見た技名ですが、あんときゃ実際雷が出たりはしてませんでしたね。これが目覚めた戦場ヶ原の力! やー、なんかやっとまっとうに魔法少女っぽいのが。‥‥いや、朱色の血がキメラの血でますます真っ赤に染まってくのを見ると、そうでもないかも‥‥。

 ですがキメラたちはかなりの多数。もうもうと上がる土煙りの中、黒こげた死体を乗り越えてさらなるゾンビが襲ってきます。
 ああっ! 魔法少女たちが! 逃げ遅れた町の人があぶないー。
「守って! おともだち!」
 まず叫んだのは流叶さん。かばうように皆の前に出て、ぼっこぼこに殴られる兎人形たち。
 それでもさらにゾンビたちが乗り越えてこようとすると、
「ごめん‥‥負けられないの!」
 と、言った瞬間、兎人形が自爆!
 ‥‥お友達‥‥ねえ。
「私たちが頑張るからっ、大丈夫だよ!」
 あっしの感想はさておいて、振り向いて町の人に笑顔で手を振る流叶さん。
 まあそのなんだ。確かにこれで時間は稼げました。皆さんが逃げ遅れた町の人のカバーに入ります。
 菖蒲さんは風を起こして舞い上がると、転んだ少女に襲いかかろうとした蝙蝠骸骨に、上空から背後を取ります。
「判決‥‥有罪(ギルティ)!」
 言って手に狐火を浮かび上がらせて攻撃! 一瞬で蝙蝠骸骨を燃え上がらせると、転んだまま立ち上がれない少女に語りかけます。
「お前の勇気を、私に貸してくれ」
 涙目で、首をかしげる少女。
「あんな物に私が負けるわけがないと信じてくれ」
 少女は震える足で立ち上がると、頷いて駆け出します。うん、いいシーンですね。
 問題は、BGMがメタルなところですけど。怜奈さんの隼の霊によるものです。菖蒲さんの好みに合わせたためで、怜奈さんはそれほど悪くありません。
 その怜奈さん、霊に命じて街人たちを勇気づけようとしています。
『勇気づけるって、どうすりゃいいんだ?』
『さあ。俺らのやり方でいいんじゃね?』
 というわけで、戦場ヶ原の作法に則って拳を振り上げる霊たち。町民の何名かは逃げました。うーん、大事なとこなんでもうちょっと具体的なセリフとか指示が欲しかったですねー。



「ふふん‥‥地上に降りた戦天使たちか‥‥なかなかやるじゃないか」
 だいぶキメラが減ったところで、半分髑髏仮面の兄さん(通称・髑髏の変態)が言いました。そう言えばいましたねこんな人。
「骸骨の兄ちゃん先月分の家賃振り込まれて無いけど? ドウシタノカナ?」
 いや忘れてない人がいました。小雪さんです。
「ひぃっ! 大家さん!? いや、幹部って各種手当が出ないもんだからなかなか大変でしてね? ‥‥あ、そうだ、この町滅ぼしたら多分特別ボーナス出るんでそれで‥‥」
 急に弱気になる髑髏さん。あの、小雪さん、ちょっと迷ってませんよね?
「多分じゃ、駄目」
 やがて無情に告げました。てか駄目なとこはそこですか。
「くっ‥‥あー、そうだ、倒せば踏み倒せるじゃん‥‥天界のものと我はしょせん相容れない! 貴様らはこのバグア72将軍が一人、最強死霊リッチデュラハン・ウィザードナイトがここで倒してくれる!」
 いまさら格好つけなおそうとしても無駄な努力ですけどね。あと今さら名称判明しましたね。まあ長いんで今まで通り髑髏の変態でいいか。
「言葉だけじゃ伝わらないってんなら、直接身体に叩き込んでくれる!!」
 ネオさんが出て言います。これまでにあまり説得らしい説得を試みようとした方はいませんが。
「あなたがボスですわね‥‥特に恨みはありませんが、死んでもらいますわ」
 音夢さんが言うが早いか突っ込んでいきます。髑髏の変態、何かそれっぽい闇の球体を出して迎え討ち。
 ‥‥あ、音夢さん、吹っ飛ばされました。カウンターがいいとこ入ったのか、綺麗な放物線を描いて落ちていきます。
 そのまま気絶。
 えーと‥‥変態、意外と強い?
「よくもやったですの!」
 その様を見て、怒りに満ちた様子でファリスさんが前に出ます。‥‥いや半分自業自得じゃねえかな‥‥と思いつつも、ここはお約束。仲間がやられた怒りを力に変えて、皆それぞれ武器を構えます。
「『戦場ヶ原』にいた時を思い出すの! 【強敵(とも)】との戦いがファリス達を強くしたの! ここでファリス達の本当の強さを見せるの!」
 ファリスさん、断罪の魔槍を掲げます。そこに空から一条の光がさしました。
 同時に、皆さんに力がわきあがっていきます。
「ファイナル‥‥フルドライブ‥‥起動時間は10秒だけどクイックシフトと会わせれば‥‥全力全壊‥‥この一撃に全てを込める!!」
 小雪さんがフライパンを掲げました。
「おーきくなーれ!」
 流叶さんは巨体化した兎人形にまたがります。
「神鳴、第二解放」
 ネオさんが呟くと、右腕に巨大なくい打ち機が現れます。
「これは‥‥まさか戦場ヶ原が復活したというのか!?」
 驚きの声を上げる髑髏の変態。
 隙をついて菖蒲さんが動きました。怜奈さんに目配せします。
「光を求めし兵よ、彼を仰ぎ求めよ。さすれば与えられん、来たれガルム!」
 怜奈さんが腕を掲げると、右翼が赤い鷲を召喚します。護衛するようにつき従うそれを連れて、菖蒲さんが先陣を切り、真っ向から攻撃‥‥と、見せかけて直前で進路変更、風と狐火を叩きつけて目潰し。おい。
「ぐぉっ!?」
 ひるんだところで皆一斉に動きます。小雪さんのフライパンが、流叶さんの兎人形が、ネオさんのくい打ち機が、髑髏の変態に向かって撃ちこまれます。
 しかし、一応幹部の髑髏の変態。多分これもお約束で72人の中では一番の下っ端でしょうがただではやられません。やっぱり闇の球体を生み出してそれらを押し返そうとします。
「仕方ありませんね。少々、本気を出させていただきましょう」
 ハーモニーさんが、なんと! 左手からウイスキーの瓶を放り出して! 両手に銃を構えて射撃、さらに魔法の貫通力を上げていきます。
「ここで決めるの! 【断罪の嵐!(シュトゥルム・デア・リュヒテン)】」
 皆の支援を受け、ファリスさんの槍が闇に向かって突きこまれていき。
「くっ‥‥ふふふ‥‥だが甘い! 戦場ヶ原の力はまだ完全ではないようだな!」
 髑髏の変態が言います。そうなんですよねー。どうにも、全力が出るには町の皆さんの気持ちがいまいち届かなかったようでして。じり、とファリスさんの槍が押し返されていきます。
 あと、ひと押しなんですけどねー。音夢さんさえ死んでなければ。
「人を勝手に殺さないで下さいます?」
 おわ、復活した!?
 立ち上がると、自分から流れた血を指ですくって、大剣の刀身に塗りつけます。
「千倍返しですわ!」
 ファリスさんの横に並んで、赤く輝く二つの武器が重なり合い。

 ばーん、と、闇がはじけました。

「くっ‥‥たった一部が復活しただけで、これほどとは‥‥」
 荒い息を吐きながら変態が呟きます。
「今日のところは引き分けとしてやろう。だが、私の後ろにもさらなる絶望が控えていることを忘れるな!」
 負け惜しみになってない負け惜しみを言って退却していく変態。まあでも、痛み分けなのは確かなんですよね。やっぱり復活した力は中途半端で、皆さんの力ももう空っぽです。

 だがそれでも、どうにか町は守れました。
 これがまた、次の勇気につながるかもしれません。
 負けるな! がんばれ! 天界の戦天使たち!


 ‥‥で、いいのかな。本当に‥‥