●リプレイ本文
『作戦空域に到達。全電子戦機は支援開始、では、主のご加護を』
後方に位置どったハンナ・ルーベンス(
ga5138)は、短い祈りを捧げるとともに全機体に戦闘開始を告げる。
ハンナのウーフー2の横に付くのは風見 遥(
gc6866)のサヴァーだ。
「‥‥さて、索敵装備をアクティブに切り替えましょう。隠れて悪戯をする悪い子は何処でしょうか?」
遥がアクティブセンサーを駆使して敵味方の配置を常時把握。それによりハンナが味方の連携や敵作戦を予測。【コスモス】と名付けられたチームの、この二機の電子戦機が空戦全体の管理をする。
アルヴァイム(
ga5051)は、最も情報の集まるこの二機の傍に付いて常に全体の状況を把握。 状況の変化があれば先手を取って即応できる体勢で構えていた。
この一隊が戦術の要になることは、しばらくすれば当然有人機は見抜いてくるだろう。周辺をしっかり守る位置に居るのがジャック・ジェリア(
gc0672)の機体。
「さて、新しいものは使ってみようか」
狙う敵があればすぐ狙撃しようと、ファルコンスナイプBを準備して待ち構える。
「いつも指揮を任されてる人数の倍か、気合入れますかね」
傭兵たちが作るKVの隊列の、比較的前方で呟いたのは長谷川京一(
gb5804)だ。【露払】と名付けたユニット、その名の通り周域の有人機、無人機を問わず周辺のHWを撃ち払うことを目的としたチームだ。
交戦を開始して即座に、京一は基地に近いHWの群れから掃討に当たる。共に動くのは普段から京一と同じ小隊に属し、彼が信頼する戦友と見ているヨハン・クルーゲ(
gc3635)だ。
「やっと手に入れた新しい宇宙(ソラ)への掛け橋を壊させはしません」
ヨハンはそう言うとHBフォルムを起動。上昇した機動力を生かして敵陣に突っ込むと、相手の連携をかき乱すようにフィロソフィーを撃ちこんでいく。敵の体勢を崩したところに、京一をはじめとする周辺の味方が攻撃を重ねていくと、HWの群れはほどなくして落ちていく。
『【コスモス】とのリンクはどうなってる? どこが窮地だとかは入ってるかい?』
一通り、基地に近づいていたHWたちの掃討を終えると、京一は主にユニット内の電子戦機に向けて語りかけた。
『ん、これだけいると、管制のやりがいがある』
答えたのは夢守 ルキア(
gb9436)だ。特殊な機体アクセサリー「アルゴシステム」を利用した機体ディスプレイには、味方の情報が統合されて表示されていた。
『お前と一緒に飛ぶのは久しぶりだな、ルキア。ボクと音桐が護衛をする。敵は一機たりとも近づけさせない。だからお前の仕事に専念しなぁ』
『ご一緒させてもらいますよ、ルキアさん。実戦での貴女のお手並み、拝見させてもらいます』
そんなルキアの機体に護衛する位置に付き、声をかけるのはレインウォーカー(
gc2524)と音桐 奏(
gc6293)だ。
基本はレインが前衛、奏が後衛の形をとり、ルキア機に近づく敵を、奏が牽制しレインが叩き落とす。
戦いの合間、ほんの僅かな命のやり取りの空白を縫って、奏は想いを口に乗せる。
「人が築く可能性。未知の世界への扉。見てみたいですね、宇宙を」
彼がそう言うと同時に、レインもまた言葉を発していた。
「地上と宇宙を結ぶ架け橋、なんて言うとロマンがあるかなぁ。ま、どうでもいい話だなぁ。壊されたら全部無駄になるんだしねぇ」
まあ、壊されなければいいだけの話かぁ。最後に、こともなげにそう言って、次の敵へと向かう。
あえてユニットを組まずに動く者もいる。
「協調性皆無の狙撃屋さんは、一撃にすべてを賭けて、おいしいところをもらっていくのさ♪」
アルテミス(
gc6467)のガンスリンガーからレーザーライフルが放たれる。【蜂】という認識記号の示す通り、側面や後方から一刺ししては退避する。単騎故の身軽さだった。
「‥‥というか友達いないよ!」
‥‥人が多すぎて、相談苦手な子はユニット分けの会議に参加できなかった、という事情もあるようだが。
「がーってとつげきしてしゅぱーっとたすけだすのじゃ」
受け飛び出していくのは正木・らいむ(
gb6252)だ。その斜め後方で支援し、味方司令塔機と連携を取るのは里見・さやか(
ga0153)。らいむ機の左側に付いて援護するのはカークウッド・五月雨(
gc4556)。【直掩】、昔ながらの3機編隊を採る部隊。らいむ機が前衛、時にはフェニックスの空中変形を駆使して戦うのを、さやかとカークがフォローする形だ。
さやかは【コスモス】から入る連絡から、チームに連携するものを「突破・迂回」してきた敵に絞り、センターに近づこうとする敵に限定して落とそうとするが、正規軍を突破してくる敵、しかも有人機を含むチームにまで、3機で立ち向かうというのは苦しかった。
有人機の指揮する敵機は、無人機にさやかとカークの射撃に応射させる形で援護射撃の効果を抑え込む。らいむ機に敵を近づけさせないよう射撃するカークだったが、相手が数で勝る。機体性能なら有人機と互角のらいむ機だったが、援護が受けられない、逆に時折無人機のちょっかいをかけられる状態での真正面からの戦いでは、ジワリと押され始める。やがてらいむ機が危険域まで被弾すると、カーク機と前衛を入れ変えつつ交代。以降は無人機の対処に集中することとなる。
傭兵たちの布陣の中で、後方に展開するのは【FI】ユニットだ。【直掩】もそうだったが、傭兵たちは「センターへ抜けさせない」ことを主眼に置いて【露払】や正規軍が零した敵を拾う方向だ。
たどたどしく言葉を紡ぐのは菱美 雫(
ga7479)。彼女がこのユニットでの、【コスモス】とのデータリンク担当となる。
「こ、この施設は‥‥文字通り、私たち人類が、宇宙に出るための‥‥架け橋に、なる場所‥‥。必ず‥‥ま、守り抜いてみせます‥‥!」
途切れがちな言葉。だが今そこに見えるのは臆病で引っ込み思案な性格ではなく、それを抑え困難に立ち向かう芯の強い一面だった。
『プリースト01より防空指揮所、迎撃目標の位置知らせ』
同ユニットの伊藤 毅(
ga2610)からの連絡に、雫は即座にデータを整理し、答える。
『ラジャ、マスターアーム点火、FCS起動、レーダー対空モード、プリースト、エンゲイジ』
要請の通りに、毅、三枝 雄二(
ga9107)、ジェームス・ハーグマン(
gb2077)の三機が編成を組んで飛ぶ。
『プリースト02交戦、数が多い、そんなに空に上がられるのが嫌なんすかね、バグアの連中は?』
眼前に広がる敵影を見据え、雄二が言う。
『プリースト03、エンゲイジ、中国中の敵稼働戦力が集まってるって言われても、僕は信じますよ?』
ジェームスが応じる。ビビっているのではない、緊張をほぐすための軽口の類だろう。三機はひるむことなく迫りくる敵影に向かっていく。
防衛網を抜けてきた敵を、毅と雄二が前衛に位置して叩き、二機が抜かれた時の用心としてジェームス機が位置する格好だ。
そのジェームス機が交戦に入ったのを雫から聞くと、錦織・長郎(
ga8268)の機体が積極的にフォローに入った。正規軍、そして毅と雄二の二機をすらすり抜けてくる相手だ。難敵と見なすのが妥当だろう。そしてここまで抜けられる敵機はそうない。数的優位を持って確実に撃破したいと彼は考える。ジェームス機が回避しながら誘導した敵を、正確に狙撃する。
多くの機体が防空迎撃の体制をとる中、前進を狙う一団もいた。【大漁】と名付けられたそのユニットが狙うものは、大物BF。
『そっちは大丈夫?』
ユニットを指揮する赤崎羽矢子(
gb2140)が、若干苦しそうな立花 零次(
gc6227)機へ向けて通信する。
『まだ行けます。ココは今後の要となる場所。手出しはさせませんよ』
零次は無理せず、仲間との連携を意識しながら敵護衛機への攻撃に注力していた。僚機の後方から、小型ミサイルをばらまき牽制に専念する。
が、それでも声には若干の苦戦がにじみ出ていた。先に進もうとするほど厳しくなっていくのが感じ取れる。
(チャンスがつかめない‥‥)
羽矢子は歯噛みする。奇襲で勝負するしかないと思っていたが、母艦周囲の敵の布陣を侮っていた。
敵母艦を攻めるにあたり、ユニット全体で7機と言うのはあまりにも少なすぎたのだ。強引に突っ込むのは、自殺行為にしかならないだろう。
だが、囲まれかけた味方の機体に、後方から援護の攻撃が来る。【露払】所属のカルマ・シュタット(
ga6302)、それから彼とロッテを組んだラサ・ジェネシス(
gc2273)からの援護の狙撃。
「ターゲットマルチロックオン‥‥最大火力で行くヨ‥‥」
ラサ機からK−02ミサイルが放たれる。カルマ機が傷ついた敵を着実に叩き落とす。
後方のメンバーも、完全に守りには入らずジワリとライン上げを狙っている。
チャンスはきっと来る。それまで、今は耐える時だと羽矢子は判断する。
空の戦いは、互いに決定的な攻め手に欠けるという、膠着した状況が続いていた。
●
一方、地上。
「遂に総攻撃が来ましたか‥‥ですが負ける訳にはいきません。皆さんと力を一つに、何としても守り抜きます!」
決意を述べるのは夏 炎西(
ga4178)。
「井の中の蛙大海を知らず」
その横で、静かに、楽しそうに告げるのは張央(
ga8054)。空と大地に押し寄せる敵を見据える。人類を『井の中』に押し込めようとする者たち。にやりと笑って、この言葉には続きがありますからね、と言う。
「されど空の高きを知る」
と。
「監獄から宇宙へ。面白い人生じゃありませんか。実現させなければ、ねぇ?」
楽しげに言う張央。その横では八尾師 命(
gb9785)が、
「出来れば全員無事に帰ってきてほしいですね〜‥‥」
と、いつものマイペースさを感じさせる語尾を伸ばした口調で、しかしこの場においては達成困難な目標を口にして見せる。
それぞれの、思いを胸に。
「‥‥行こう」
地上戦を行う彼らのユニット、【応龍】で陣頭指揮を執るヘイル(
gc4085)が告げるとともに走り出す。
彼らが道を切り開く後ろから、更に二組のユニットが進軍していた。
これらのチームが目指すのはまず――孫小隊のいるところ、である。
「‥‥ま、見上げる事は悪かないわね。問題はその下、ちゃんと地に足つけて空飛びなさいな? ふふ」
アタシの言うこっちゃないけど。ミシェル・オーリオ(
gc6415)は一人戦地を駆け、弾をばらまいては移動する。倒すためではない、危機が迫るものに対して、守るための遊撃。対象をキメラに限定するのは、一人で行動する彼女なりの『地に足付けた』行動だろうか。
「待望のドリームユニット結成、ってな!」
「あぁ、成り行きにしちゃあ出来過ぎたメンツだ。たらふく暴れてやろうじゃねぇか、なぁ?」
言葉を交し合うのは、アレックス(
gb3735)と宗太郎=シルエイト(
ga4261)だ。識別名に【炎帝】と名づけたユニットの先鋒たち。
「‥‥イキ、マショウ。アレ、ハ、誰かノ、夢、デス、カラ‥‥壊す、ワケニハ、イキマセン‥‥」
前を行く青年たちを追うように、ムーグ・リード(
gc0402)が共に行く仲間たちに声をかける。
前衛を若手が固め、大人たちがサポートに回る。このチームが主に狙うのは突破を目指す脅威度の高い――強化人間の率いる、敵。
その働きをするに足る、実力もバランスも連携も申し分ないチームだった。
キメラを、強化人間を撃破し、情報統制をする【後方支援】ユニットに流しながら、大泰司 慈海(
ga0173)はこれまでの中国の戦いに想いを馳せる。
(親バグア兵と戦って、初めて人の命を奪った場所が、中国だった)
幾つか浮かぶほとんどが苦い思い出。だからこそ、守り、戦いを終わらせる為に戦うと決意した場所でもある。
彼とゼンラー(
gb8572)は、エレクトロリンカーとして治療を担当する。
「‥‥ふむん、見せてやるのだよぅ、皆の衆!」
瞬間的な火力が必要な場面では、魂の共有。背面で見守りながら、ゼンラーは、この面々ならやれるだろうと、呵々と笑ってチームを見回す。
「‥‥彼は最近、変わったかねぃ」
ふと、杠葉 凛生(
gb6638)が目に入ったとき、つぶやいていた。
聞こえたのだろう。ムーグが口元に穏やかな笑みを浮かべる。ムーグにとって凛生は、凛生はアフリカで長きに渡って闘って来た「大事な」戦友だった。
一方傭兵たちの一部には、上空と同様、【施設防衛】を第一として後方に陣を敷くものたちもいる。主導するのは砕牙 九郎(
ga7366)だ。
突破してきた敵に対し第一防衛線となるのは狙撃班のチーム。
「‥‥バグアも傭兵も皆ゴミのようである」
コラ、と怒られそうな事を言っているのは美紅・ラング(
gb9880)である。彼女自身は狙撃を行うのではなく、その補佐として、標的を司令部から受け取り、結果を確認し次の指示を出すというサポート役。彼女の指揮の元、攻撃を行うのは高坂 永斗(
gc7801)だ。施設防衛を主眼とし、倒すことよりも動きを阻害することを狙って四肢を狙っての狙撃。その様は冷静に見えたが、こう見えてお人よしの永斗である。うまく美紅に使われているという場面もあった。
とはいえ、敵とて狙撃に対しまったく無策というわけでもない。時に強化人間の指示の元、砲撃能力を持つキメラや、飛行してくる敵の襲撃がある。が、そのとき立ちはだかるのが荊信(
gc3542)だ。
「まさか、この皆遮盾・荊信を前にして素通りできるたぁ思っちゃいねぇだろうな?」
誇りを胸に、近寄る敵は叩き落し、射撃攻撃はその身をもって防ぐ。
(しかし‥‥)
守りながら、荊信はもう一人の狙撃主である茅野・ヘルカディア(
gc7810)を見る。
敵が接近しても直接銃口に狙われても、顔色一つ変えずに彼女は狙撃を続けていた。胆力とは違う。己が、そして己を庇う味方が犠牲になることに何も感じていない様子。
(復讐心なのかな? 敵を倒すごとに心がほんの少し、軽くなる気がする)
ただ淡々と敵を撃つ。今の彼女にはそれだけだった。
危なっかしさを理解しつつ、それでも己の誓いにかけて、荊信は盾を掲げ続ける。
荊信を中心として、【施設防衛】メンバーで傷つく仲間を治療するのは柳凪 蓮夢(
gb8883)の役割だ。と、共に、常時探査の目を発動。建物に近づくものに怪しい動きをする者はいないか常に確認する。
「『目標』を護り切れば『勝ち』、か‥‥こういう戦いは、向いてるね。悪いね、ココから先は、通行止めだよ」
味方の継戦能力を保つ蓮夢の働き。呟きを証明するように、狙撃を潜り抜けてきたキメラを次に歓迎したのは弾幕の嵐だった。
「先は絶対に突破させやせんぞ、挽肉にしてやる」
「我が筋肉愛に勝る者無し 全て撃ち砕いてくれる」
佐賀繁紀(
gc0126)とイオグ=ソトト(
gc4997)、ヘヴィガンナー二人によるガトリング砲の攻撃。滝のような弾丸が、繁紀の言葉通り、狙撃で動きの鈍ったキメラを挽肉にしていく。
二人が積極的に軍と連携しようとしているのもあって、最終防衛ラインに到達するキメラは当分現れそうになかった。
そうするうちに、孫小隊の元に向かう一団が最前線に向け切り込んでいく。小鳥遊神楽(
ga3319)は、【孫小隊援護】を目的としたユニットの中で、行きがけの駄賃とばかりに弾丸をばら撒きながらひっそりとつぶやいていた。
「‥‥大丈夫。あの人は簡単にやられるような、柔な人じゃないから」
言い聞かせる声は、意図的に銃声に紛れさせている。平常心を亡くしかけていることを仲間に悟られれば作戦進行の妨げになることは理解していた。
「落ち着きなさい、神楽。あの人のことを信じなさい」
祈りの言葉と共に、前を行く炎西から目標を発見したとの声が上がる。
先陣を切ったのは強化人間の排除を目的としたユニット【麒麟】より霧島 和哉(
gb1893)。孫小隊に立ちはだかる少女に、射撃を加えながら前進。己へと気を向けさせる。彼が己に課した役割は敵の攻撃を引き受けること――絶望を、滅すること。そんな彼にとって、遠くに聞こえた少女の言葉はまさに薙ぎ倒す対象だった。
この時点で【応龍】は別のキメラへと向かうべく離脱。孫小隊のフォローへは【孫小隊援護】のメンバーが向かう。
「よう、孫少尉。騎兵隊の到着だ」
クラーク・エアハルト(
ga4961)の声掛けに、孫少尉は今はただ短く礼をする。
「生き残ったら、美味い中華料理の店でも教えてくださいよ」
笑ってクラークは言った。
「‥‥私は、そういうのは詳しくないですね。部下に聞いたほうが」
孫少尉の答えに、クラークはなるほど頑張ろうか、と機関銃を構える。
「牛伍長! 援護に来たよ‥‥この前奢ってもらったご飯の分はがんばる!」
別所ではイスネグ・サエレ(
gc4810)がそう声を上げると同時に、傷ついたものに練成治療を施す。
そして強化人間の少女の下には、【麒麟】のメンバーが迫る。
「な、なによ馬鹿じゃないの!? こんなよわっちいののために雁首そろえて!」
集った能力者の人数に、さすがに焦りをにじませて少女が言う。
「やけに、弱者という言葉に拘るのね。見捨てられた過去でもあるのかしら?」
答えたのは鹿島 綾(
gb4549)だ。
「確かに、私達は弱いわ。でも‥‥弱さを自覚できるからこそ、強くなる事が出来る。――こんな風に!」
前に出る綾に、その言葉を証明するように何も言わずにルノア・アラバスター(
gb5133)が射撃をあわせた。己の実力不足は理解しつつ、それでも何かの役には立って見せると、時には前衛を盾にする位置も取りながら集中して援護射撃に徹する。
「何言ってんだ? ‥‥ここには、弱者なんて居ないだろ」
逆に、ヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)はそう言った。
「人は真には負けない生き物だと――人は挑み続ける限り挑戦者だ、勝てると思う限り、倒そうと思う限り、不敗なのだと言った学者を知ってるかい?」
合間に言葉を継ぐのはヴァレスの心からのパートナーである流叶・デュノフガリオ(
gb6275)。
だからここにいるものは負けていないのだと流叶は言い、それは強いじゃないか、とヴァレスが笑う。空を見続ける限り、空は見えると。
「くだらない! それこそ弱者の屁理屈よ! 認めてやるもんですかっ‥‥!」
少女の叫びに。
「認めない? それはこっちの台詞」
叫び返したのは美崎 瑠璃(
gb0339)。
「全てを捨てて強くなった奴が最後は生き延びるなんてそんなくだらないエンディング、あたしは絶対に認めないんだからねっ!」
言って瑠璃は練成弱体を飛ばす。
(‥‥孫少尉、小隊の皆。センターの研究員さんたち。皆の頑張りを間近で見てきた者としては、守れませんでした、って訳には行かないよね‥‥!)
いつもの明るさは封印。シリアスモードで、代わりにやる気は全開だ。
じわり。傭兵たちは少女への包囲網を狭める。手練の強化人間とはいえ、この人数が相手では勝負にならなかった。
「これが仲良しこよしの結果だなんて認めないっ‥‥あたしは結局、あんたらの『暴力』に負けたんじゃないっ――!」
涙目で、最後まで傭兵たちをにらみつけて。それが少女の最後の言葉だった。
下がって共にセンター防衛に回ってくれないかと要請した傭兵たちに、孫少尉は首を振った。友軍が善戦する中、一小隊長の判断で勝手に下がるわけには行かないと。そもそも、傭兵たちの初動は孫少尉の周囲に集まりすぎている状況だ。これで無理に下がらせたら、かえって中国軍の間に不和を招きかねない懸念があった。代わり、センターへの自爆特攻などの懸念は孫少尉から司令部に伝えられる。
そこからは各自遊撃的に敵の撃破へと向かう働きになった。
「私たち親友3人揃ったら無敵なんですよ!」
【麒麟】の一角でそう声を上げるのはエイミ・シーン(
gb9420)。
「あたしなら簡単に仕留められそうだってか? いいぜ、やってみやがれ!」
エイミのそばで、ウェイケル・クスペリア(
gb9006)はそういって強化人間を挑発する。前進しながら見せた隙は囮。急所は狙われないよう庇いつつ、ウェイケルの元に寄った敵をエイミの援護を受けて流叶が迎撃。親友三人組だからできる息のそろった連携だった。
「さぁ、ガンガンいきますよー!」
エイミの言葉のとおり、集まった人員の多さもあって地上戦はどちらかといえば押せ押せモードだった。
だがその状況に変化が起きる。
最初に気づいたのは、【応龍】にて探査の目を用いて罠や伏兵の警戒に努めていた館山 西土朗(
gb8573)。
「‥‥そのキメラ、妙だ! 下がれ!」
西土朗の言葉に炎西が下がると、止めを刺される直前だったキメラの体が四散する。自爆。直後、あちこちで爆発が起こり始めた。
混乱は少ない。傭兵たちの間で自爆キメラを懸念するものは多かったし、情報は即座に連携された。
だが、多くの傭兵たちは自爆キメラが来るとすれば施設への特攻だと思っていた。途中からただ単に自爆キメラを混ぜてきたのは何なのか。混乱させ、連携を崩すのが目的ならこのタイミングで何が起きる?
――一つの可能性にたどり着いたのは、傭兵たちでは【炎帝】の凛生ただ一人。
「ぎゃあぁあああっ!?」
兵士の異常な悲鳴。反射的に凛生は己の予想に従って走る。
(タロスに指揮官がいると見せかけて、囮‥‥?)
だとすればここで突破を図りにくる部隊を率いるのは。
たどり着いた先。見たのは馮 済龍の姿をしたヨリシロ。そして、同時に同じ可能性に気づいたのだろう、孫少尉がせめて皆が気づくまでの足止めにと一人対峙する場面。
‥‥ヨリシロを目にして凛生の目に宿るのは、かつてのバグアへの復讐の意思ではなかった。
(人は、変わる)
彼は過去を乗り越え、復讐ではなくバグアからの解放のために戦うことを決めた。
(孫少尉もまた、自身の道を定めたのだろう)
だから彼は、迷うことなくその身を済龍へと向けていく。ヨリシロへの嫌悪ではない、互いを信じて戦うために。
済龍のトリックに気づいた凛生の慧眼は優れたものだが、一つ難を言うならばそれを仲間へと連携していなかったことだ。倒れた孫少尉への止めの一撃を食い止めるには、己の身をさらすしかなかった。
だがそれでも、身を挺して時間を稼いだ意味はあった。孫少尉の、凛生の動きにひきづられた【孫小隊援護】【炎帝】の面々が集ってくるのが気配でわかる。
榊 兵衛(
ga0388)が、槍を手に必殺の一撃、榊流古槍術奥義:絶・真狼牙を繰り出す。しかしいかに速くとも真正面からの一撃は上位のバグアには簡単には通じない。
「人間にしてはやるな」
紙一重で避けた済龍が涼しげに言う。
「先人が編み出した秘技だ」
名に恥じぬよう、引かぬ構えで兵衛は答えた。一人では通じずとも、仲間がいる。
「くだらねえな。お前らが積み重ねた時間、俺らは一瞬で殺して奪える」
嗤い手を翻す済龍。反撃に対し湊 獅子鷹(
gc0233)がフォローに入る。
「無駄だ‥‥っ! これ以上は、通させねえっ‥‥!」
義肢で受け止めた相手の拳の、重い一撃に体が軋みを挙げる。
そのまま追撃を加えようとする済龍の気を逸らすように射撃が襲った。
「獅子くん‥‥!」
銃を構えるLetia Bar(
ga6313)。獅子鷹が自分への借りを返すためにこの作戦に参加したことを知っている。だが彼女としてはそんなことよりもっと自分自身を大事にしてほしかった。
泣きそうな声に獅子鷹はやりにくさを覚える。こんな状況でさえなければ、無茶は控えただろうに。
だがLetiaも泣いている場合ではないと理解する。せめて、失わないためにと今はしっかりと銃を握り直す。
忌々しそうに済龍は目の前の傭兵たちを見る。だが手駒の強化人間、キメラを使えば目の前の面々はまだ蹴散らせる算段はあった。が。
再び、Letiaとは別方面から済龍を銃弾が襲う。
「我々は、一歩も後退しない! 降伏も行わない! 宇宙へ! 未来へ! 夜明けへ!」
狙い撃ったのはキリル・シューキン(
gb2765)の狙撃。
「ようやく掴んだ希望なんだ、そう簡単に潰されちゃかなわんぜ」
狙撃体勢をとるキリルを守るのは巳沢 涼(
gc3648)。【応龍】もまた、気づいてこちらに向かおうとしている。
何故だ?
傭兵たちの動きが予測を超えて速いことを済龍は認識する。もう一度戦況を見渡し、原因を探る。
――中国軍?
兵士たちの消耗が、少ない。
「デシプル1よりHQ、孤立している部隊の情報を知らせ」
クライブ=ハーグマン(
ga8022)は己の役割を【ピックアップ】と名づけ、孤立部隊の救援にその任を当てた。強化人間やキメラを倒すことではない、孤立した中国軍へ、合流した道を切り開くこと。
「デシプル1了解、当該部隊と合流、後退を支援する」
淡々と目的をこなす、それはやはり一人では過酷な任務だった。持ち込んだ閃光手榴弾の数も少ない。やがて傷つきながら、それでも体の動く限り目的をこなす。
「‥‥ここで休め」
ウラキ(
gb4922)は専任でこそなかったが、【麒麟】としての活動中動けぬ兵士に気づけば、付近の遮蔽物まで移動させていた。
【施設防衛】として後方を守っていた魔津度 狂津輝(
gc0914)とラーン=テゴス(
gc4981)も、近くの部隊の危機と聞けば、狂津輝は掛矢を手にヒャッハーと、ラーンはチェーンソードを不敵な笑みで構えながら救援に向かう。
空においても。
M2(
ga8024)は【露払】の電子戦機の一翼として役割をこなしていたが、中国軍とも積極的に情報連携を行っていた。守るだけじゃない、共に闘う仲間として時にはこちらからも要請を飛ばす。
その後方。
「折角連れて来てあげたんだから少しは役に立ってよね?」
【FI】の片隅で、エヴァ・アグレル(
gc7155)は共に戦う鐘依 透(
ga6282)を叱咤する。
(‥‥絶対守るんだから)
此処で過ごした僅かな時間を思い、誰も死なないようにと願う気持ちがある。
「ぜ、善処します‥‥」
透の声は頼りなかった。だけど。
(頼って来た子の気持ち一つ守れず何が保護者か‥‥とか、ね‥‥)
彼もまた想いと共に操縦桿をしっかり握りなおす。
(頑張ろう。エヴァを守る)
その気持ちには偽りはない。そのために、中国軍を守る。
こうした風に、傭兵たちに中国軍を守り、連携を図ろうとする動きはいくつも見られた。
やがて。
「敵精鋭への対応は個の能力に優れる貴殿らに分がある。ここのキメラは我らが払う、行け!」
『深追いはするな! 背後の傭兵を信じろ! 己が生き延びることで事で守るやり方もある!』
中国軍も、傭兵たちの動きを意識した作戦を取り始める。
信じられなかった。
この事態を想定し、中国軍と傭兵を分断する工作はしてきたはずなのに。
軍は傭兵に不信があるのではないか。誇張された悪評に、傭兵たちは軍を不快に思わなかったのか。
「『信じて待つ』って言ってくれたんだ。全力で応えなきゃ嘘だよな」
マスドライバーの前で待ち構えて、那月 ケイ(
gc4469)が吼える。
「少尉達の他にも、僅か数日の付き合いだったとは言え、あそこには顔見知りもいる。人類の希望云々以前に――『仲間』をやらせるわけにはいかないな」
ヘイルはただ、静かに決意を込めて言った。
認めるしかないのだろう。ここの防御は、当初の己の計算よりもはるかに鉄壁だと。済龍は改めて戦略を立て直す。
まともにやっても攻めきれない? ならばどうなるか。
BFにまで手を出そうとした人類に何もせずに撤退すれば己も上の指揮官も粛清は免れないだろう。それでも。ヨリシロにした人間の残滓が、無駄に戦力を散らすなと。そのためにどうするべきかを、導き出す。
「いいだろう‥‥人類ども」
静かに済龍は宣言する。
「健闘を称えて、褒美に‥‥BF一機と、俺の命はくれてやるよ!」
空の敵後衛に変化が起きる。タロスとBF一機は撤退の動きを見せ‥‥もう一機は、逆に動力を全開にして突っ込んでくる!
そして‥‥変化は済龍にも。
勝負の形は決まった。
地においては限界突破を果たした高位のヨリシロ。
空においては全力で突っ込んでくるBF。
落とせれば人類の勝ち。
落とせなければ‥‥その破壊力が、マスドライバーを蹂躙する。
――――――――激突!!!!
●
兵衛と獅子鷹が決死で食いとめた済龍に、【炎帝】の面々が突撃する。
(人類が手に入れた、宇宙への足がかり。此処で負けるわけにはいかない‥‥ですよね)
御鑑 藍(
gc1485)は、まさに捨て身とも言える突撃で済龍に食ってかかる。
(今はまだ、遠くても、宇宙への始まりとなるこの場所は‥‥絶対に必要だから。守って見せる。見上げるだけで‥‥終わりはしません!)
弧を描く一撃から、二連撃。敵の動きも早い、かすめる程度にしか当たらない。だけど、済龍がこちらを見る。それでいい、それで己の役目は果たした。
「人間の未来、人間の夢、ここに詰ってるんだから。簡単に奪わせて、たまるかぁっ!!」
エスター・ウルフスタン(
gc3050)が気迫と共にソニックブーム。敵がそれを受けたところで、ついで発動するのは不敗の黄金竜。そこから――宗太郎、アレックスとの連携攻撃!
(正義のヒーローになりたいと、ずっと思っていた)
目の前に、強大な敵。臆せず突っ込んでいく己を省みて、アレックスの胸にあるのは。
(なりたい、と思っている内はなれないんだろうな‥‥)
やや自嘲気味に認める。今の自分はエース、英雄なんかじゃない。立ち向かっていけるのは、ただ。
(でも、今ここを護る為に皆で集まって。こいつらと一緒なら出来ない事はない、って思える。まったく、これっぽっちも、負ける気がしない)
「宗太郎センパイ、いもーと! 『アレ』をやるぜ!」
「SES‥‥オーバードライブ!!」
「TRIDENT!!」
「「「トリプル・イグニッション!!!」」」
三方向からの同時攻撃。
エスターの一撃は頬を掠めて避けられ、宗太郎の攻撃は火花を撒き散らしながらアーミーナイフで捌かれる。そして‥‥アレックスの槍が、肩に突き立てられる!
「こ、の!」
怒りの反撃。致命傷にはまだ遠い。順に三人をなぎ倒すと、済龍は突き進んでいく。
『こちら傭兵部隊、後方支援担当の諌山です。傭兵部隊の情報を逐一報告しますので、常に回線を開いて下さい。また、軍と傭兵が連携を取りやすいよう、そちら側の動向も都度報告して頂けると助かります』
【後方支援】の諌山美雲(
gb5758)は、依頼の最初にそう呼びかけていた。はじめはポツリポツリとだったが、今は急速に彼女の元へ兵士たちの動きが集められていく。可能な限り整理してから、それを秋月 祐介(
ga6378)へ回す。
『今の地上の状況だよ。使えるかい』
上空からも連絡があった。レティ・クリムゾン(
ga8679)だ。送られてきたのは上から撮影された地上の様子。【片翼】として一人で飛ぶ彼女は、常に仲間のフォローを考えて立ち回っていた。単純に戦闘だけでない、その目の付けどころは多岐にわたり味方を支え続けていた。
祐介の元に集まる情報は膨大だ。それを一瞬で取捨選択し、答えを導かなければならない。
(状況から出た予測に奴の思考を加味して考えろ‥‥もし、自分が奴の立場なら何を狙うか‥‥)
電子魔術師でダイブするのは己の操るワイズマン。未来視を己のものとし、決める。
「理論上は出来る筈‥‥いや、やってみせるさ」
軍の動き、敵の予測進路。それにより、今いる味方をどう動かすか。
「馮済龍‥‥聞こえているか? どんな手を用いても貴様を消さなければならないと思っていた。だが、今はその逆だ、その意味が解るか?」
己の中に馮済龍の思考を生み出す。
チェスのように、味方の駒を‥‥指す。
祐介の誘導で、近くから遠くから、少しでもと済龍に攻撃を加えていく。重ね合わされたそれがアレックスがえぐった傷を深めていく。
施設手前。ケイが、渾身の力を込めてその身で済龍を止める。九郎も、派手に撃ちまくって済龍へと仕掛ける。己を無視できない攻撃で、敵を引きつけ、味方への攻撃につなげるために。実際それは、エースアサルトの九郎の攻撃力でもって出来ることであった。そうして、施設前に集中した傭兵たちが、総攻撃をかける!
そして‥‥済龍の身体は、マスドライバーにたどりつくことなく崩れ落ちた。
●
空の戦いは地上より絶望的だったかもしれない。これまでに傭兵たちは、BFに決定的な一撃を決められずにいた。
迫るBFに作戦を練っている余裕などない。傭兵たちに残された道は二つ。退避するか、なりふり構わず攻撃を撃ちまくって落とすか。
最前線で傷つきながら戦ってきた【大漁】メンバーを、巨体の影が覆う。
「ふふ、わかりやすい戦場というのはいいものですわね。敵を喰らいつくしますわ」
その状況で‥‥ミリハナク(
gc4008)はどこか妖艶に笑みを浮かべた。この時点でここに居る彼らに、撤退の文字などあるわけがない。
ブーストと、DCを使用してエナジーウィングでBFへ吶喊していく!
「さあスレイヤーよ〜、お前の力を見せてくれ〜!」
ドクター・ウェスト(
ga0241)は買ったばかりのスレイヤーで出撃。ミリハナクの後に続く形で突撃、負わせた傷に重ねるように空中変形して攻撃。
「バ〜ニシング、ナッコォー!!」
本来は仲間の援護の元一撃離脱戦法の予定だったが、仲間にも自分にも余裕はない。ならばいっそ復讐に、研究者の業の駆り立てるままに。
最後の瞬間まで、彼の視線は目の前で弾けるBFのFFを見つめ続けていた。
『BF落せば、追加報酬は期待しても良いのかね?』
リック・オルコット(
gc4548)はあくまで冷静に、不敵に笑ってロケット弾を撃ち込んでいく。敵護衛機の放火に揺らぐ機体に、もう少し働けと斜め45度に叩きつける。一度だけ応えてくれた機体に報いるように、全てのミサイル、ロケット弾を放つまでは耐え忍んだ。
「人をいつまでもお前達の手の上だと思ってんじゃないよ。宇宙への道に手を出すなら、その思い上がりごと撃ち落としてやる!」
ここまで我慢してきた羽矢子が、もはや遠慮は無用とばかりに吠える!
当然、周辺の敵は特攻をかけるKVを叩き落とそうとあちらもなりふり構わず撃ちまくってくる。
羽矢子機はPRMシステムをフル稼働してそれに耐え、接敵すると最大火力を叩き込んでいく。
(人は‥‥押さえつけられると‥‥反感を覚えるもの‥‥ですね‥‥)
BEATRICE(
gc6758)も前進に迷いはなかった。ミリハナクがエナジーウィングで付けた傷に向けて、二十四式螺旋弾頭ミサイルを放つ。耐久力に難のあるロングボウは特攻には不向きだ。だがそれでも、落とされるまでに持ち込んだ全てのミサイルはちゃんと撃ち尽くした。
ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)は敵の注意をひくような軌道を取りながらBFへと接近。回避して味方の道を切り開きつつの突撃だが、いかんせん狙ってくる銃口の数が多すぎる。剣翼を翻し狙うは仲間が重ねた傷口だが、到達するまでの被弾が多い。ユーリ機をBFまで到達させたのは、ここまで追い続けてサポートしてくれた僚機、零次の機体だった。ユーリ機を庇って被弾。それが止めとなって落ちていく。そしてユーリ機も、剣翼で更に傷痕をえぐるその瞬間を狙った集中砲火に撃沈した。
【大漁】ユニットの奮闘により、BFのあちこちから火花が散る。
‥‥だが、全機撃墜されてなお、敵母艦、健在。
無駄にしてたまるかと、次に向かうは【露払】の面々。粘り前線を押し上げ続けてきた前衛メンバー。
「全ブースター起動。オーバードライブ!」
仮染 勇輝(
gb1239)が飛び出す。接敵しプレッシャーを与え、仲間の攻撃につなげる考えだ。
「守り抜いてみせる‥‥絶対に!」
続くのはグリフィス(
gc5609)。もはや無我夢中で、ただひたすらにガトリングとショットガンをばらまく。
もはや意地と意地のぶつかり合い。あちこちで敵味方入り乱れながら落ちていく。だが、BFの動きを止めるには中々至らない。
ジャック機が、危険域と判断して電子機二機に移動を促し、護衛する。その前に、ファルコンスナイプAを起動、BFの一番傷ついた位置に狙撃をお見舞いしておく。
BFも、体当たりまで持たない可能性を考えてだろう、マスドライバーのドームに向けて、主砲に光がともる。もはや空戦ではかなりの近距離だ。直撃すれば損壊は免れない。
そこへ向けてアルヴァイム機が突撃する。電磁加速砲がBFに向かって伸びる。
――だが届く直前、BFの主砲が、マスドライバードームの屋根を撃ち抜いた。
直後、加速砲命中。巨体が鳴動する。
ビッグフィッシュ、爆散。空が揺れた。
●
激しい攻防の結果、施設には一部被害が出た。マスドライバー自体に損害はない。だが、よほどの緊急時でない限り、修復が済むまで使用は控えたい状態だ。
「貴殿らの協力に、深く感謝する」
だがそれでも、基地司令の言葉は真実の響きを含んでいた。
兵士の被害が予想以上に低かったことを、大いに評価した結果だ。
修復は、それほど時間のかかるものではない。空への道は、そこに至る人類の意思は、まだ崩されていない。