タイトル:魔弾軍曹と新兵訓練マスター:凪池 シリル

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/07 15:43

●オープニング本文


 どうも天の声っす。そろそろ、タイトルで分かるような依頼では挨拶省略していいっすかね。
 さてと。ここで一度設定の確認ですが。茜さんは知っての通りアレなんで、人類とバグアがしょっちゅう競合しているような前線基地ではなく、比較的安定してる場所にある後方基地の所属です。まーそんなわけで、ほぼ毎日毎日戦闘に明け暮れてるわけでもなく、通常業務なんかもあったりなんかして。
「整列!」
 新兵訓練なんかもしちゃったりするわけです。そう言えばこの人軍曹です。
 こうやってみてる時はなんだかまともな軍人に見えるっすね。
 いや、真面目なんですよ? 茜さんは真面目なんですよ? うん。
 でもまあ、世の中残酷なもんで。
 突如響き渡る、キメラ発生のお知らせを告げる警報。
 繰り返すーこれは訓練ではないー的な感じで鳴り続けます。
 どよめく新兵たち。嫌な予感にひきつる茜さん。
 基地から連絡が入って、連絡をくれたのは例のいつものおっさんですが、その話を要約するとつまり。
『ごめん、そっち向かってるみたいだからとりあえず和歌山君対応しといて? ああうん、ULTには連絡した』
 とのことでした。
 和歌山さん出動です。知り合ったばかりの新兵の前で。まあいいじゃん、どうせ時間の問題だよ、とも思うのですが。一度軍帽を脱いで頭をかきむしり、髪を整えるとかぶり直す茜さん。 そんで。
「とりあえず、浮足立たない!」
 とはいえここでおたおたしてるわけにもいきません。
 担当する新兵たちに声をかけます。
「まず。あんたたちは訓練中の新米よ。いきなりこの場で戦えなんて言わないから避難しなさい。でも軍人としての気概は忘れない! シャキっと行くわよシャキっと!」
 そう言って今度は茜さんは、首を、連絡を受けた、キメラたちが確認されたという方向へと向けていきます。
「私は、あのキメラの対応をしなきゃいけないから‥‥他班と合流するまで、そうね、代理のリーダーは」
 茜さん、再び視線を新兵たちに巡らせます。そして目があった一人が。
「わ、和歌山軍曹っ!」
 何か意を決した様子で一歩前に出ます。
「私のことは二曹と呼べっ!?」
「は、はっ! 和歌山二曹っ!」
 咄嗟に怒鳴り返す茜さん。迫力にビビる新兵さん。
 ‥‥だからうん、いい加減割り切るか諦めるかしようよ、そこ。っていうかそのもの言いじゃ軍曹の方が似合ってるよ。あと規律的にいのかなーそれ。
「え、えと、二曹殿っ! 自分も戦うでありますっ! 自分も能力者でありますから! 闘うべきかと思うであります!」
「‥‥‥‥え”」
 じーっと真剣なお目目で見つめられる茜さん。
「し、失礼ながらっ! ぐ‥‥二曹殿の元に配属された能力者としてっ、二曹殿の覚醒についても伺ってるであります! が、気にしないでありますからっ!」
「あーうん、そうなの‥‥」
 聞いてどよーんとする茜さん。他の新兵の皆さんはどうしたもんかとおろおろしてます。説得したり迷ったりしてる時間、あんまないです。
「あーもう! あんた! えーと。福島 梢二等兵だっけ、あんたはこの付近で待機! まずは私が出るから下がってて、手が出せそうだったら出す、でも無理はしない! あと傭兵が来たら邪魔しない! 後は避難! とりあえずもーこれでいいわよ!?」
「いえっさーであります、ぐん‥‥二曹殿っ!」

 てなわけで傭兵の皆さーん、この期に及んであざとく女の子とか増えたらしいんで、色々とフォローしてあげて下さーい。

●参加者一覧

比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA
猫屋敷 猫(gb4526
13歳・♀・PN
アルジェ(gb4812
12歳・♀・FC
神楽 菖蒲(gb8448
26歳・♀・AA
橘 銀(gc2529
27歳・♂・HG
セラ(gc2672
10歳・♀・GD

●リプレイ本文

「初の実戦は人命救助か。俺の初陣もそうだったな」
 オペレーターさんから聞いた情報をもとに、夜十字・信人(ga8235)さんが呟きます。
「もちろん助けますよ、相手がなんであろうとも」
 ご自身の過去もあってか、決意を表明するように比良坂 和泉(ga6549)さんが言いました。
 まずは同行する軍の方々としっかりご挨拶せねば、と現場に向かうわけですが。
「宜しく戦士! 天上軍のサージェント☆フレイム・バレットだよっ!」
 居るのはこんなです。
 合流した後で着替えに行かれるよりは、と、茜さんすでに覚醒済みです。
 和泉さん、女性相手には緊張するとのことですが、絶対別の理由で固まってます。
 ほっといて、一同をぐるりと見渡す茜さん。
「通りすがりのSPだ」
 アルジェ(gb4812)さんが、顔の横に親指と小指を持ってきてキラッ☆とポーズをとりながらそう名乗りました。ちなみにこんなポーズですが、恐ろしく声に抑揚はなく無表情です。
「よし、そろってるようだし突撃だ!」
 何がよしなのか分かりませんが茜さんがそう言うと踵を返してかけ出しました。
 慌てて追いかける羽目になる皆さん。
「ついてらっしゃい梢。茜一人じゃ無理よ」
 そんな中一人いろんな意味でどうしようと固まってる梢さんに、神楽 菖蒲(gb8448)さんが絶妙にフォローを入れる感じで声をかけました。
「は、はっ!」
 金縛りが解けたように駆け出す梢さん。ぎこちないその様子には、前線に出ることが許されたことへの期待と不安が見て取れるっすね。
(新人の能力者か‥‥私にもそんなときがあったな。初めて剣を握ったあの高揚感、そして恐怖‥‥だけどそれにも勝る達成感‥‥勝利の美酒、今回も味わえれば良いけど)
 アセット・アナスタシア(gb0694)さんをはじめ何名かの傭兵が、そんな梢さんの様子を微笑ましく見ております。
「後退せずに、良く前線に来た。根性があるな。ほら、持っておけ」
 信人さんが緊張をほぐすように、ぽいっとスポーツドリンクを投げてよこします。
 橘 銀(gc2529)さんが、こんな物でも無いよりましか、と、盾を貸してくれました。
 相変わらず、なんだかんだでいい人が集まりますよね。意外と人徳あるんでしょうか茜さん。いやんなこたぁねえか。
(茜さんの覚醒後がとても面白そうですが‥‥救助優先! 集中集中! ‥‥うずうず)
 猫屋敷 猫(gb4526)はそんな状態でしたし。
「魂に響かせろ! 黄金の旋律を!」
 光の旋律身に纏い、勇気の鼓動を世界に奏でる! 魔奏少女マジカル☆リリック参上!
 セラ(gc2672)さんは、いい加減このノリに馴染んだ感じで混ざってます。

 まあそんな感じで、いつも通りぐだぐだな感じで戦闘開始です。

「この覚醒、この姿‥‥嫌な予感が」
 茜さんに近づくにつれて、菖蒲さんがそんなこと呟きますが、もう遅いと思われます。まあ彼女がどうなるかはもう少しあとで。



 さて真面目に戦闘状況を見ましては、一番問題なのは蜘蛛Aが引きずってる人間でしょうと言うのが全体の共通認識。となれば救助を優先として動きたいところですが、そのままでは敵の数が許してくれません。
 そこでぐわっと発せられる気迫か何か。和泉さんと信人さんが、仁王咆哮にて敵6体、C1体とB5体ですね、を引き付けます。アセットさんと銀さんがそのフォローに入ります。
「そろそろ良いか、‥‥では、やるか。兄弟。アセット君は弾に当たるなよ!」
 十分な距離を引き離したところで、信人さんが皆に宣告。銃撃を開始します。
「外装の色を統一するべきだったな。個体の分断が容易になった」
 ごもっともですね。そう言えばなんでわざわざ特徴が分かるようになってるんでしょう。ありがちだけど不思議です。
 和泉さんと銀さんは、まだ慣れないながら、だからこそ慎重に弾幕を張って動きを牽制する中、アセットさんが前に出ます。まずはソニックブームで戦闘の一匹に牽制打撃、そのまま接近して衝撃を食らった一体を、下から斬り上げるように宙に撃ちあげてバランスを崩し、叩き伏せます。振るうは雷剣「エクレール」。打撃は普通に通っている模様。どうやらこいつには知覚攻撃が有効っぽいっすね。
 とはいえ、まず順調に一体屠ったものの、残る5体に対して前に出るのが一人ってのは結構厳しいです。そんでもって、忘れちゃいけない麻痺攻撃。抵抗できる可能性が高いとはいえ、集中攻撃を受けて何回も通ればそりゃ一回くらいは貰っちゃいます。高い防御力もこうなると半減、ちょっと手傷を負わされますね。
 それでも何とか麻痺から立ち直りつつ斬り払って、後ろからの銃撃もあって敵の数が減ってくると、信人さんが前に出ます。
「斬り込む。ガトリングはお好きにどうぞ」
 後ろの二人にそういって、ガトリングはおいたまま、あらかじめ突き立てておいたクルシフィクスを地面から抜刀。
 援護射撃に徹していた銀さんが、ここでちょっと動きます。弾丸の嵐がまとめて敵をなぎ払っていきました。ブリットストリーム、まだ彼には乱用はできないとっときです。
 だからこそ、陽動から殲滅モードに入ったその初撃としてふさわしいってわけですね。
「いくよエクレール、私達は絶対に負けないってこと教えてあげよう!」
 アセットさんが剣を掲げて言い放ちます。そうまるで魔法少女の必殺技前の決め台詞のように。
 こっちがあれだったなら、誰も悲しまなくてすんだだろうに‥‥ほろり。
「雷光一閃‥‥! チェェェストッ!」
 ま、そんなあっしの涙はさておいて、一刀両断の勢いで剣が振り下ろされます。まあ知覚剣なんで、せっかくの錬力込めた勢いもダメージには乗せられないんですが‥‥それでも十分な威力ではあります。
 どうにか敵を減らしつつありますね。

 一方救助に向かった組。
 先に向かった茜さんに、早速糸が吹き付けられたのを、菖蒲さんが豪力発現で増した筋力を使って無理やり引きちぎります。
「貴女は‥‥?」
 振り向いた茜さんが問うと、
「調停者(メディエイター)」
 ぽろりと菖蒲さんからこぼれるのはそんな言葉。
 ‥‥おや、そちらは夢の話だったのでは? 慌ててちょっと待て、今のなし、という顔をする菖蒲さん。
「天界の法執行官殿かっ!? それほどのものが出てくる相手とはね。本気出さなきゃ!」
 よどみなく応じる茜さん。
「‥‥そうきたか」
 結果的に茜さんの暴走を少し抑えたんですが、やっちまった顔の菖蒲さん。そんな29歳と34歳。
 これ以上色々言うのはさすがに怖いので自重しておいて。梢さんを交えてまあ結果的には何とかキメラたちを牽制しつつしつつ、他の皆さんは人質救助。
「今は眠るといい、来世で輝くために!」
 声と友にセラさんから響く歌声。これがマジカル☆リリックの技、子守唄だ!
 ぱたりと眠る数匹の蜘蛛。その隙に、袋を抱えた二体に猫さんとアルジェさんが近づきます。
 まず蛍火を突き立てる猫さん、ですが袋状になるまで束ねられた糸ってのは頑丈です。柔軟さもあって、刃が通りにくいと見るや、機械剣で焼ききる作戦に変更します。
 アルジェさんも天剣で、一閃、一気に蜘蛛と人質を引き離し、と行きたいですがさすがにスパッと切れるほど簡単なもんじゃねっす。結構地味にじりじり切ってく作業になります。
 切り離したところで、アルジェさんが剣をあらためて一閃、ですがこれだけ横で作業してりゃさすがに蜘蛛も起きてます。知覚剣から帰ってくる手ごたえは装甲で止められてあまり通った様子がありません。こっちは知覚に強い模様。糸は物理じゃ切りにくいってのに微妙な嫌がらせ性能ですね。
「魔弾の‥‥そっち、任せた」
 茜さんに呼びかけて、対象を大型の一体に切り替えます。呼びかけに応じるように、数発の銃弾が叩き込まれひるませます。振り向いた茜さんの死角は、菖蒲さんがすばやくフォロー。
「梢、一般人の保護と護衛」
 菖蒲さんが梢さんに指示を出します。
「ほえ? う、うわわ、え、あ」
 とにかく目の前の敵を殴るのでいっぱいいっぱいな梢さん、それでも、どうにか内容を飲み込んだのか、しばらくすると袋から出た人を一人抱えて離脱します。猫さんも、状況を見て同じように救助活動。
 菖蒲さん、アルジェさん、セラさん、茜さんが残って、こちらも敵殲滅に入ります。
「騎士の仕事は、化物退治と弱者の保護よ」
 菖蒲さんが、淡々と仕事をこなしますが。
「さすが調停者! 噂にたがわぬ実力だねっ!」
 横にいる茜さんが台無しにします。一度足を踏み込んだ悪ノリ時空からそう簡単に抜け出せると思ってはいけない。
「バレット! 君の力が必要だ!」
 セラさんがここで呼びかけ。まあ実際、今回エネガンが主武器のセラさんに、今目の前にいるキメラはきつかったりするわけですが。
「おっけー、皆の勇気を力に変えて! マジカル☆リボルバーが、悪い子を地獄の反省室に送っちゃうぞ☆」
 ちなみにアルジェさんは無表情のままスルー。この手のは結構慣れているようです。役に立つんならそれでよし、な感じですね。
 まあ最近茜さん、てかフレイムバレット、だいぶ周囲の声も聞こえてる感じですよねー。

 まあそんなわけで、
「来世はいい子になれるといーねっ☆」
 今回も無事に退治完了です。
 ちなみに何も気にせず決め台詞言ってますが、最後の一匹にとどめさしたのはアルジェさん。



「よかったです。もう大丈夫ですよ」
 救助された人が意識を取り戻すと、猫さんがほっとしたように声をかけます。
 まあ、無理やり引きずられて端でひどい打撲やらムチウチやらあるわけで、あまり無事とは言えずむしろめっちゃ辛そうですが、命に別状はない模様。
 病院に搬送されるのを見届けて、これで完璧に、お仕事完了。
 帰りの高速艇を待つ間、のんびりお茶会などが始まります。
「お疲れ様であります‥‥」
 後半は救助者のそばで見ているだけだった梢さん、自分は役に立ったのだろうかとちょっと不安そうにしながら猫さんからお茶を受け取ります。
「戦闘で味わったその感触、空気、気持ち‥‥忘れないで自分を保つことが大事だよ。じゃないと戦いの中で自分を忘れちゃうかもしれない」
 アセットさんがそうアドバイスします。神妙な顔で頷く梢さん。戦いの中で自分を忘れるかも、という言葉に、少しは思い当たるところがあるのかも知れません。
「強くなりたいか? なら、アルと契約する。責任もって、鍛えてやる‥‥ただし厳しいから覚悟はしろ」
 アルジェさんの言葉には、梢さん、え、と一瞬固まります。僕と契約して系統は無駄に警戒心が働いてしまう今日この頃ですね。いや別にそういうわけでもないでしょうが。
「じ、自分はまだ、軍の基礎訓練も完了していない身でありますから」
 まだそちらに集中したい、とかうまく言い訳をつけて逃げる梢さんでした。そうしてちろりと、本来の訓練担当官、つまり茜さんを思い出してそちらを見ます。
 遠慮がちにではありますが、その視線は軽蔑はなく、戸惑いながらも受け入れているような様子が見て取れます。皆さんのフォローもあって無事にキメラたちの殲滅を果たした先輩を、ちょっと言動がアレだからって見限るようなことはなかったようです。幸い、無理矢理ノリに巻き込まれるようなこともなかったし。今回はひとまず丸く収まってるようです。
「キメラは片付けたし、人も助けた。新兵も無事。ほら、問題ない」
 その茜さんですが、絶賛、菖蒲さんに慰められてる最中でした。優しい言葉に、うつむいたまま自分を納得させるように「うん‥‥うん‥‥」と頷いてる茜さんです。
「そうそう、和歌山君にはいつぞやご馳走になったね」
 そこに近づいていったのは銀さん。
 今頃だがちょっとしたお礼に、と、【Steishia】の包装がされた箱を差し出します。
「え‥‥あ‥‥別にあれはそんな、いいのに」
 元手はそんなかかってない手作り品に、ブランド物のたぶんアクセサリー? を渡されて、ちょっと困惑の茜さん。
 軽く辞退しますが、苦笑して気にすることない、と、これまた軽く押し戻されると、じゃあ、ととりあえず受け取ることにした模様。
 男性からアクセサリのプレゼントとか、どう受け止めたらいいのかとちょっと複雑な心境ですが、その辺に関してはあきらめのほうが勝ってる29歳、今は純粋にお礼の気持ちと受け取ることにしたようです。
「まあ、その‥‥お疲れ様」
 なんだかんだでプレゼントで気がそれて、気分を持ち直した茜さん。顔を上げて一同に挨拶すると、皆も口々にお疲れ様、と言葉を交し合って。

 今回もちょっぴり成長したフレイムバレット、新しい仲間も増えて、どうなる次回!



 まあ皆さんご存知のとおり、どうなるもなにも次回の話、もう出てますけど。