タイトル:和歌山隊員の秘密マスター:凪池 シリル

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/07/15 16:36

●オープニング本文


 さて。ここをご覧になってる皆さんならばもうご存知でしょうが、能力者が『覚醒』状態になると、外面的内面的に様々な変化が起こります。この『覚醒』時の変化は能力者の資質なのかエミタのの性質なのか、人によって千差万別。時には、当人にとって不本意な変化もあるみたいです。中には、不本意どころにと止まれない、かなーり深刻にこの『覚醒状態』に頭を抱える方もいらっしゃるようで‥‥。
 今回は、そんな能力者さんを一人紹介しましょう。
 え? お前は誰かって? 野暮なこと聞かないで下さい。あっしは所謂天の声、ナレーションって奴ですよ。深く気にしないで下さいな。

●九州UPC軍某基地

 所変わってこちら九州某所UPC軍基地の一室。まー九州も色々大変みたいですが、ここはまだ激戦区って程でもなさそうです。ここにいる皆さんも、情報収集やら後方支援やらを主任務とした方々がそろっているみたいです。が。
「‥‥付近山地にてキメラの姿が複数、確認された」
 今この部屋にいるお二人のうち片方、なんか明らかに偉そうなおっさんがしぶーいお顔でおっしゃいます。まあそりゃ、激戦区じゃないからってイコール脅威が皆無ってわけじゃないですよねこのご時勢。しょうがないこってす。
「‥‥存じております」
 もう一人、呼び出されたほうの姐さんはそれだけ答えます。余計なことは言わないって言うか、迂闊なことは言いたくないみたいな空気ですね。
「無論、付近のUPC軍およびラスト・ホープには至急連絡した。が、問題は‥‥キメラの進路を予測するに、このままでは民間人の居住する区域に突入しかねない、と言うことだ。つまり、我々は可能な限り速く動き、足止めをする必要があるということだ。分かるな?」
 分かるなといわれても姐さん無言です。
 おっさん溜息。
「‥‥今一番現場の近くにいる、『すぐに動ける』能力者は君だけだ」
「‥‥ですがっ!」
「君の『覚醒』状態の扱いにくさについては私も報告を受けている。だからこそこんな場所にいることも。だが、軍内の能力者の存在は稀有だ。必要なときに、その力を有効活用しないわけにいかない。そして‥‥民間人の安全は、それ以上に貴重なことだとは思わないかね?」
 ごもっともなお言葉です。姐さん押し黙ります。そりゃ姐さんだってこんな時代に軍人になったからには相応の理由と理想がありますよね。
「今なら人目にはつかない。目的はあくまで時間稼ぎ。援軍の到着しだい、撤退してもかまわない」
「‥‥私が『アレ』になったら、そうおとなしく撤退するとも思えないんですけどね‥‥」
 俯き、息を吐くお姐さん。
「時間がない。返答は」
「‥‥了解、です。和歌山茜、すぐに出撃、します」
 諦めと、なんか哀愁すら漂わせながら姐さんが答えると、おっさんも重々しく頷くのでした。

●九州山中某所

 そんなわけでキメラが確認された某所です。
 いますいます。もぞもぞと群れて動くキメラたち。虫型でしょうか。でっけえですね。
 うぞうぞと虫どもが群れて移動する音に、時折銃声が加わります。一度進軍をやめて散る虫たち。
 散り散りになった虫の一体に時折、どこからか弾丸が襲い掛かり動きを止めます。ヒット&アウェイ。なかなか上手な陽動ですが、しかしだんだん効果はなくなっていくみたいです。そりゃあ、『覚醒』してない一撃なんてキメラには何てことありませんからね。そのうち無視すりゃいいって気付かれちゃいます。
「‥‥っ!」
 あ、キメラの一部が姐さんに気付いたようです。迫り来るキメラ。迎え撃つ銃弾。しかし当然通じません。姐さんピーンチ。
 ‥‥おっと? 次の銃撃でキメラ、吹っ飛ばされましたよ? 明らかに能力者の力が加わった一撃です。とするとお姐さんは?
 あ、ちょっと外見変わってます。『覚醒』ですね。見たところ少し若返っている模様。しかしこれなら女性には嬉しい変化では?
 と、そこで朗々と響く声。

「世界を覆う闇のヴェールを、光の弾丸が穿つ!」

 ‥‥あの? 姐さん? なんか妙なこと言いだしましたよ?

「魔弾少女隊、マジカル☆リボルバー!」

 隊って。どう見ても姐さん一人っすけどね。あと、姐さん元年齢29っすよね。多少若返ってますけどやっぱり少女と言うには大分ぎりぎり感漂いますが。

「血煙を上げる赤い弾丸、フレイム・バレット!」

 ここでびしっと決めポーズ。なんかこう、日曜朝にやってる少女アニメのノリでしょうか。

「悪いキメラは、どてっぱらに風穴開けちゃうゾ?」

 ごめんなさい前言撤回します。こんな殺伐とした魔法少女がいるか。
 困ったことにお姐さん、冗談でも悪乗りでもなく、大真面目な顔でやってらっしゃいますこれ。つまりはそういうことみたいですね。彼女の覚醒、それは自分が『魔弾少女なんちゃら、だと完璧に思い込む』ということのようです。厄介な。そして中の人の年齢考えると本当に気の毒に。
 あ、ちなみに当然ですが覚醒で服装まで変わったりしません。UPC軍服のまんまです。偉そうなおっさんがにがーいお顔してた理由もこれでわかろうもんですね。
 ところで、今は目の前にいるのが一体だからいいですがそんな堂々と突っ込んでって大丈夫なんでしょうか。キメラ、集まってきちゃいますよ?

 援軍が間に合うといいですねー。

●参加者一覧

潮彩 ろまん(ga3425
14歳・♀・GP
キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
ホキュウ・カーン(gc1547
22歳・♀・DF
和泉譜琶(gc1967
14歳・♀・JG
赤槻 空也(gc2336
18歳・♂・AA
火神楽 恭也(gc3561
27歳・♂・HG
ネイ・ジュピター(gc4209
17歳・♀・GP

●リプレイ本文

 そんなわけで、引き続き現況はあっし、天の声がリポートします。

●出発前

「‥‥と言う状況だ。すまないが傭兵の諸君には、至急応援に向かってもらいたい」
 呼び出された傭兵の皆さんに、UPC側の責任者のおっさんはそう、手短に状況を伝えます。
「罪のない人を危険に曝す訳にはいかないの。一刻も早くキメラは退治するの!」
「一人で戦ってる能力者さんは大丈夫ですかね!? 急ぎましょう!」
 ファリス(gb9339)と和泉譜琶(gc1967)さんがそう言うと、集まった皆さん思い思いに頷きます。皆、傭兵として、人類の敵を放置してはおけないという思いは一緒のようです。
 と、そんな中。
「マスクさえ、つけなきゃ普通? のメイド服としていけるよね?」
 キョーコ・クルック(ga4770)さんはなぜかそんなことを呟いていました。
 なんでも、コスプレ衣装合わせの帰りだったところに、緊急の依頼ということではせ参じたそうです。‥‥えーと、うん。職務熱心ですよね。そういうことにしておきましょう。
「なお、先に現場に向かった和歌山隊員だが‥‥その、彼女自身は非常に勤勉な兵士だが、覚醒時の性格はやや扱いにくいところがあるので‥‥まあ、上手くやって欲しい」
 最後におっさんがぽそっと伝えましたが、何人聞こえましたかねー。


●現場到着!

 さてそんなわけで、まず現場の茜さんの様子から見てみましょう。
 あーはい。案の定、派手にやるもんだからキメラがどんどん集まってきてますね。
「うっ‥‥こんなにいるなんて‥‥このままじゃあ‥‥でも諦めない! 私が諦めたら、誰がキメラたちを血祭りに上げるって言うの!?」
 ‥‥いやだから。せめて台詞回しをもう少し可憐に出来ませんか。
 まあしかし存在はふざけてますがここまで持ちこたえるだけあって腕前はそこそこのようです。数が増えるや否や精度よりも速度を重視した射撃に変更、弾幕をはってキメラの接近を少しでも抑えます。
「想う心があれば、勇気だってフルオートで出てくるんだから!」
 ‥‥分かるような分からんような決め台詞だなあ。少なくとも、リボルバーにフルオート射撃はできないと思いますが。
 と、このあたりで傭兵の皆さん、ぼちぼち到着です。
 はい、すみません。そんなわけで現場はこんなことになっています。
 こちらに向かう御一行の足が、一度ぴたりと止まりました。
 それでは皆さんの反応をタイプ別に見てみましょう。
「本物の魔法少女がいる!」
「見て見て、あそこに格好良い姉様が居るの! ファリスも頑張って格好良く活躍するの!」
 まず、完璧に勘違いする少女二名。順に潮彩 ろまん(ga3425)さんとファリスさん。
「‥‥こんな所にコスプレ仲間が‥‥あたしもがんばらないと」
 次に、やや現実的な想像ではあるものの別の感違いをする人。キョーコさん。
「ふーん、面白いですね。私と同じような覚醒時性格変化の傾向の持ち主とは。もっとも魔弾少女ですか。日曜朝の魔法少女物ではなく、土曜深夜枠の魔法バトルアクション物でしょうか?」
「(‥‥恥ずかしくないのかなぁ? まぁ、楽しそうだから悪乗りしちゃおうかなー?)」
 その三。大体状況を把握しつつ楽しむ気な方々。ホキュウ・カーン(gc1547)さんと譜琶さん。
「ありえねェ」
「どんな任務でも普段通りにするだけだ‥‥」
「依頼は一生懸命勤めるが、少々居心地が悪い」
 で、最後に、完全にノリについてこれない真面目な方々。赤槻 空也(gc2336)さん、火神楽 恭也(gc3561)さん、ネイ・ジュピター(gc4209)さん。

 ‥‥まあその、なんだ。要するに、誰も積極的にこのカオスを収拾する気はないようです。
 それどころか事態はますます悪化の一途をたどってる気がします。
 かくして、いろんな意味でかつてなさそうな戦いが開始されました。


●戦闘開始ですよー。

「助けに来たよ、フレイム・バレット!」
 傭兵たちの中で先陣を切ったのはろまんさん。
 お目目キラキラ。本気で、本物の魔法少女がいる、と張り切りまくり。ボクも力にならなくっちゃ、と、真っ先に先陣へと駆けつけます。
 同時に覚醒。短い髪がするりと伸びて三つ編みに編み上がり、黄色いリボンがしゅるん、と留まり。
「悲しみに包まれた世を、希望の剣が切り開く‥‥魔剣少女マジカルろまん。悪い宇宙怪獣は、真っ二つだっ!」
 気合いとともに、手にした刀でキメラを一閃!
 さすが剣道少女だけあって、見事な剣閃。またたく間に目の前のキメラを沈黙させました。
 だが敵はまだまだいるぞ! 戦え、マジカルろまん! ‥‥本当にいいのかそれで。

「謎の仮面戦士、メイド・ゴールド推参。フレイム・バレット、援護するっ」
 どこからか、別の声が上がりました。後ろ? いや、上だ! いつの間にか木の上に誰か立っている!
 ‥‥いやまあ、キョーコさんですけど。さっき、わざわざエミタで筋力増強してまでジャンプで登ってましたけど。仮面戦士の言葉通り、その顔には黄金の仮面が装着されています。
 そのままソニックブームで前線にふわりと着地すると仁王立ち。
 あの、いくらなんでも敵の目の前で仁王立ちすると危ないと‥‥ってエェエー?
 今、中型キメラの、それも結構凶暴そうな奴の一撃が、メイド服に仁王立ちのまま弾かれましたよ? 硬っ。メイド服のくせに硬っ。一体何でできてんですかそれー!?
 さすがのキメラも驚きなのか、思わず動きを硬直させます。
 キョーコさんはにやりと笑みを浮かべ、言いました。
「我が魂の刃、止められるかな?」
 反撃の双剣が、哀れなキメラに叩きこまれました。

「あれも格好いいですの‥‥」
 そんなキョーコさんを見て、呟いたのはファリスさんでした。
 メイド・ゴールドと名乗る姿を見て何かしきりに納得した後、自分も同じような黄金のマスクを取り出し‥‥ってちょっと待て。コスプレ衣装合わせの帰りだったキョーコさんはともかく、なぜファリスさんまで似たようなゴールドマスクを所持していたのか。
「魔槍少女ファリス、ここに参上なの! 悪いキメラはこの槍で一撃必滅なの!」
 そんな疑問もさておいて、ファリスさんも叫ぶや否や槍を手に大立ち回りです。
「断罪の雷(ブリッツ・デア・リュヒテン)!」
 目にもとまらぬ突きが繰り出されたと思えば、
「断罪の嵐(シュトゥルム・デア・リュヒテン)!」
 豪快に槍を振り回して、キメラをなぎ倒していきます。
 まあ、依頼はあくまでキメラ退治ですからね。それさえ真面目にやってくれりゃなんでもいいんですが。何故仮面‥‥。

「え‥‥エターナルフォオオォォス‥‥かかと落としッッ!」
 エターナルフォースかかと落とし。かかと落としと叫びながらアフェランドラで殴るフェイント技。相手は死ぬ。いやまあ、さすがに甲虫型キメラ、硬さはあるんで一撃で死ぬとはいきませんでしたけど。そのまま数発殴り続けたら沈黙したんで良しとしましょう。
 そんな、微妙に恥ずかしさを隠しきれない雄たけびとともに一撃を繰り出したのは空也さんです。
「きゃー、赤槻さんかっこいー!」
 その横で弓での援護射撃に徹していた譜琶さんが笑いをこらえながら讃えました。
「わっ‥‥笑うなっ! な‥‥何で‥‥俺がこんなこと‥‥ッッ!」
 まだ開き直りきれないのか震える空也さん。どうやら、茜さんのあれが覚醒の影響によるものと踏んで、あえて合わせてあげることにしたようです。いい話ですね。でもあっしが思うに、その半端な優しさが女難の一因です。
 おっと、そんなことしてる場合じゃありませんでしたね。虫キメラ、まだまだ沢山いますよ? 後衛とはいえ油断できません。気付いた空也さん、エミタで脚力の強化を図ります。
「な‥‥なんとかなんとかパワーッッ!」
 うん、恥ずかしいとか慣れないとかいう話があってもこれは酷い。譜琶さんとうとう戦闘中にもかかわらずこらえきれずに吹き出しました。
「わ‥‥笑うな‥‥ッつっただろォがああァアアッ!!」
 空也さん、顔を真っ赤にして譜琶さんを睨みつけますが‥‥いやー、彼女だけが悪いかなー。これ。

「さあって‥‥派手に暴れるか! 撃破数を競うっていうのもいいギャンブルだしな!」
 ホキュウさんはマジシャンズロッドを片手に絶好調で暴れまわっています。その声や様子から、先ほどまでの冷静さは消えています。ご自身で述べたとおり、彼女も覚醒によって性格が変化するようです。
 甲殻が自慢のキメラも、非物理攻撃には弱い模様。ばったばったとなぎ倒されていきます。
「うざったいねえ‥‥とっとと消えてしまいな! ギャンブル‥‥シューット!!」
 叫びながら放つのはその名の通り賭けに出た一撃。AIに命じマジシャンズロッドの出力を上げたようですが、その分反動で命中はぶれやすくなります。
 結果‥‥どうやらホキュウさんの勝ちなようで。威力の高い雷撃を受け、一体のキメラが消し炭になっておっこっていきます。
「やっぱりこのマジシャンズロッドはいいぜ。射程は長いし、威力もあるし。もっとも物理攻撃じゃないからダークファイターには向かない武器だけどな」
 そう呟くホキュウさんはちょっとアブない顔にも見えますが、少なくともこの場において、傭兵としては比較的まともに見えなくもないような。

 そんな中、まともにキメラ撃破に精を出していたのが恭也さんとネイさんです。
 恭也さんの小銃が、比較的小型のキメラや、他の人がうち漏らしたキメラを正確に撃ち倒していき、ネイさんはそのスピードを生かして相手の動きを撹乱します。
「数の多い敵を倒すのに、速さは至上の武器」
 ネイさんの止まらぬ連撃に足元をふらつかせたキメラが、恭也さんに撃ち抜かれるのを見て、ネイさんは淡々と言い捨てます。
 いいですね。キメラ退治って本来こういうものですよね。
 おっと、そうはいきませんか。さらなるキメラが森の奥から姿を現して‥‥
「マジカルろまん! メイド・ゴールド! 下がってくれ!」
 恭也さんが叫びました。その手には今先ほどまでの小銃ではなくSMGが握りしめられています。
 射線が通ると同時に、そこから大量に吐き出される弾丸の嵐!
 はーい、先ほど意味が分からなかったみなさーん、こちらが正しいフルオート射撃になりまーす。正確には「トリガーが引かれている限り弾丸が発射される」機構のことですね。ここ試験に出ません。
「くっ‥‥」
 しかし、効果的な一撃をお見舞いしながら恭也さんの口から洩れるのはなぜか悔恨の呻き。
 ‥‥まあそうですねー。さっき割と素で、恥ずかしいほうの名前で呼びかけましたよねー。うん、だんだんこの兄さんも場の空気に飲まれつつあります。しっかりして! あなたたちだけが頼りだから!
 
「あなたたちは一体‥‥」
 茜さんは、援護に来た傭兵たちの様子に、驚愕の声を漏らしました。信じられないというような眼で、自分と同じように戦う方たちを見まわしています。
 を? もしかしてショック療法で逆に自分のおかしさに気がついたとか?
「もしかして私たちと同じ、天界の戦場ヶ原から来た戦天使たち?」
 ねえよ。そもそも天界にそんな場所はねえよ。どんなだよ。
 期待するだけ無駄でした。

 まあ、そんなわけで。それぞれに一生懸命(?)戦ってらっしゃる皆さんですが。字数制限もありますんでこのへんで中略。
 結果から言いますと、歴戦の傭兵である皆さんに、数だけが頼りの雑魚キメラなんて大した相手ではなかったわけで。

「やるよ、みんな、フレイム・バレット。マジカルエナジーフルスロットル‥‥波斬剣、ロマンティックエクスプロージョン!」
「おっけーマジカルろまん! フレイム・バレット、斉射三連‥‥脳天ぶち抜きシューーート!」

 そんな決め台詞らしきものが上がりつつ、即興の連携攻撃(とりあえず取り囲んでフルボッコにしたとも言う)にて、最後の一体がぶちのめされましたとさ。


●戦い終わって

「マジカルろまん‥‥メイド・ゴールド‥‥魔槍少女ファリス‥‥それに一緒に戦ってくれたみんな、ありがとう! みんなの戦う勇気、確かに戦場ヶ原に届いたよ!」
 茜さんは、そうやってにっこり笑って振りむいて‥‥
「‥‥ってアホかぁあああああ!」
 同時に覚醒が解除、天を仰いで絶叫するのでした。
 が、茜さんが皆から視線を逸らしても、皆が茜さんを見る目はがっちり離れません。
「えー‥‥こほん。この度の任務、お疲れ様でした。おかげでキメラは殲滅され、民間区域に被害が出ることもないでしょう。UPCを代表して礼を言わせていただきます」
 涙ぐましい精神力で、ぴしっと姿勢を正して言い直しますが‥‥茜さん、いまさら遅いと思いますよ?
「凄く格好良かった、魔法少女のお姉さん、サイン頂戴頂戴!」
「おねえさん、すごい役になりきってたよね? 何か役の元ネタあるの?」
「姉様、とっても、とっても格好良かったの! でも、その格好は魔弾少女としては減点なの。だから、ファリスと一緒に格好いいお洋服選ぶの!」
 ほら、皆さん聞いちゃいないし。
「やめてそんな目で見ないで! そう言うのじゃないわよ! 私は夢を壊す側の悪い大人だわよ! ごめんなさいねこんなおばさんが正体であぁあああ」
 ‥‥あ、真っ赤になってしゃがみこんじゃいました。ちょっと涙目です。こういう反応は初めてでどうしたらいいか分からないみたいですね。
「衣装はやっぱり手作りが一番だよね〜? あたしは実用性も重視して戦闘に耐えれるようにしたかったから作るの大変でさ〜」
「いや違う! あんたはとりあえずなんか違う!」
 それでも、相変わらず別な勘違いしっぱなしのキョーコさんにはとりあえず反応する茜さん。ああ、ねえさん本来は突っ込み気質なのね。
「そんなに気にすること無いと思いますよ。似合ってますし」
「あぁ、可愛かったよ?」
「うむ。まだまだ若くてかわいいから、大丈夫だ」
「そうそう。そんなに恥ずかしがらなくてもいいんじゃないですか?」
 ホキュウさん、恭也さん、ネイさん、譜琶さんが順に慰めますが、
「似合う似合わないとかじゃなあぁあああい!」
 叫ぶと、とうとう泣きながら走り出してしまいました。
「と、とにかく、この件はちゃんと上に報告しておきますからねぇええっ!?」
 姉さんそれじゃあ悪役のセリフだよ。いや、悪い報告する気は全くないですよ彼女。念のため。本当に「迅速に解決しましたありがとうございます」の意味なんですよ、あれで。

 まあそんなわけで、ひとまずこの事件は終了、ということで。

 あ、ところで先ほどからセリフがない空也さんですが、いまさら我に返ったのか一人、恥ずかしいセリフ連発を思い出して超凹んでいるだけですのでご心配なく。
「‥‥叫ぶ意味、あったんかコレ‥‥?」
 ないんじゃないかなー☆

 皆さん、お疲れ様でしたー。