●リプレイ本文
ささやかだが、普段と違う一日をもたらす、一枚のペアチケット。
突如それをもたらされた傭兵たちは、さて、どのような一日を過ごすことになっただろうか。
●
「あの、お一人でいらっしゃったのですか?」
御闇(
gc0840)が受付に向かうと、担当する女性は戸惑いの顔を浮かべた。
「いえ、本当は研究所の上司に休んでもらおうと誘ったんですけどね? 断られてしまったので仕方なく。‥‥駄目ですか、一人じゃ」
「いえ、駄目ということはないのですが‥‥こちらペア招待券ですので、おひとり様で入られても、この場で二人分頂くことになってしまうのですが‥‥」
受付の女性は、困ったようにそう答える。なるほど、そりゃ確かにもったいないよな、と、御闇が何気なく周囲を見回したところで、目が合う一団があった。
親子連れのような三人。うち、遠慮するように離れる一人と、申し訳なさそうする二人。
クラリッサ・メディスン(
ga0853)とファリス(
gb9339)、そしてペアチケットということで今回は見送りだけのつもりできた榊 兵衛(
ga0388)だった。
御闇は即座に状況を理解して。
「あの‥‥良かったら一緒に入ります?」
そう、兵衛に声をかけた。とたんに三人の表情に喜色が浮かぶ。ご好意に甘えさせていただきます、と大人二人が頭を下げてきて、御闇もいえいえと頭を下げ返す。
兵衛たちはそのまま三人で、入口に向かっていく。
「‥‥叔父さまも一緒に入れて、ファリス、嬉しいの! 今日は三人で楽しむの!」
少女が跳ねるようにぱたぱたと駆けていく、その後ろ姿を御闇はしばらく見つめていた。
‥‥ああうん、こっちものっけから和ませてもらったなあ‥‥。
御闇の表情も思わず緩む。改めて、今日はひたすらのんびりしまくるぞと決意し直すと、御闇も上機嫌で内部へと歩きはじめた。
かくして、夫婦と姪っ子三人は、温泉リゾート施設を満喫する。
水着ゾーンでは、ファリスが、この夏水泳教室で習った泳ぎを披露すると大張りきり。クラリッサと一緒にスライダーを滑ったり、一通り遊び倒すと、バイキングレストランへ。
ゆっくり食事して、少しお腹がこなれてから、午後は男女別れて本格温泉でゆっくり過ごす。
「‥‥温泉に入ったら、湯上がりにこれを飲むのが通だとファリス、聞いたの!」
コーヒー牛乳を片手に得意げなファリスを、大人二人が微笑ましく見つめる。とにかくファリスは、賑やかな場所や初めての経験に喜び、クラリッサはそんなファリスに、はしゃぎすぎて周りに迷惑をかけないよう、優しく見守りながら付き合う。
休憩所へ向かうと、やがてファリスは遊び疲れて寝入ってしまい。
「少しはファリスも楽しんでくれたかな? ファリスを見ていると、子供を持つのも悪くないと思うな。そうは思わないか、クラリー?」
ファリスの寝顔に優しい目を向けながら、兵衛が言う。
「‥‥いつかわたしたちの子供が出来たら、こんな風に親子で過ごす事もあるのでしょうね、ヒョウエ。気が早いですけど、お母さんになった気分ですわね」
クラリッサは、ファリスをゆっくり内輪で扇いでやりながら、答える。
今日を思い出して、幸せをかみしめ。それは未来の幸せを想起させて。いつしか二人は、手を止め、互いに見つめ合う。
やがて二人は、どちらが何を言うでもなく。
‥‥連れ添ってきた夫婦として、ごく自然に。
そっと、口付けを交わした。
●
次にスポットが当たるのは守剣 京助(
gc0920)、吹雪 蒼牙(
gc0781)、フェンリス・ウールヴ(
gc4838)の小隊仲間三人組。この時も、京助のペアチケットが無駄になっているのだが、初めから三人で現れたということで受付もさほどとやかくは言わなかった。
同性だけの集まりとあって、まっすぐに温泉のほうへ。と、そこで。
「あれ?」
旭(
ga6764)と兎々(
ga7859)のコンビに遭遇する。見知った顔に、互いに軽く会釈をして。
「大規模お疲れ様でした。今回も小隊をまとめてくれてありがとう。それから彼女誘えなくて残念だったね」
旭はそう声をかけた。京助の顔が僅かに引きつる。元々京助がどのようなつもりだったのかは不明だが、どちらにせよきっちり恋人を連れてきている人間がそれを言うのは結構ひどくなかろうか。
だが、そこはそれ、なんだかんだでともに激戦をくぐりぬけた仲間同士。結局一度、五人で一緒に温泉に向かうことにする。
驚きの速さで湯船に向かう蒼牙に突っ込みを入れつつ、フェンリスは温泉を珍しそうに眺めた後、ゆっくりと入浴。
更に三人は、京助の提案で背中の流しあいなどもやってみる。
「ああ‥‥これ一度やってみたかったんだぜ。やらなくてもよかったけど」
そんな風に三人がわいわいと楽しんでいるのを、旭と兎々はまったりと浸かりながら眺めていた。
兎々と旭はここで一旦離脱。入場したとおりの三人組で今度はバイキングへ。
蒼牙は和食メインでご飯と納豆、味噌汁とよそい‥‥鮭がないことに不平を述べる。納豆が職人指定の本格的なものだっただけに、思い描く「日本の味」が完成しなかったことに落胆を覚える。LHに来てからご無沙汰だったのだ。
京助の前には料理とともに当たり前のようにコーラがある。
フェンリスは、
「‥‥糖分、糖分」
といいながら凄い速さでデザートだけを食べていた。
ふと、
「フェンリスもコーラ飲むか? 俺たちでコーラを飲み干そうぜ!」
京助がそんな提案をする。
フェンリスはちょっと考えてから飲んでみて‥‥感想は、なかった。ただ、無言で飲み干し続ける。にぃ、と京助が笑って、今度は蒼牙を見る。その後二人で酒飲み対決となるわけだが、結果を知りたい人は二人の設定を見てください。
何はともあれ、騒いで食べて。全力で遊ぶ、男の子たちの休日がそこにあった。
ちなみに途中離脱した旭と兎々は。
「あー、いいお湯だー」
「いいお湯だねー」
昼食後、再び、肩を並べて温泉を満喫していた。久しぶりに、恋人とゆっくり過ごす時間。
ちょっとどきどきして‥‥でも、やっぱり幸せで。
まったりしすぎただろうか。一息入れようと休憩室に向かうと、旭を睡魔が襲ってくる。
‥‥次に旭が気がついたとき、感じたのは暖かい柔らかさだった。
「ふふ、起きた?」
目の前に、覗き込む兎々の顔が見える。その顔近さに‥‥旭は今、自分が膝枕されているということを理解する。
「ごめん、寝ちゃってたね」
謝りながらも、旭はそのまま動かなかった。
「でも、もう少し、このまま‥‥」
言って旭はまた暫く、幸せな感触に身をゆだねた。
●
おっと、はしゃぐのは男性だけじゃありません。皆で集まって騒ぐなら、女の子だって負けてられないんです。
次なるグループはL3・ヴァサーゴ(
ga7281)、柚紀 美音(
gb8029)、伊万里 冬無(
ga8209)、大鳥居・麗華(
gb0839)の4人組。こちらも全員同性のグループだが、向かったのは水着ゾーンの変り種温泉。そこで真っ先に目指すのは日本酒風呂。美容にいいと聞けば欠かせられないんです。だって女の子だもの。
「酒風呂‥‥思ってたより、酒臭さ無くて‥‥良い感じ‥‥。寧ろ‥‥こう、身体の心から、暖まってきて‥‥何か‥‥少々、眠くなってくる‥‥かも‥‥」
ヴァサーゴはそう呟いた。確かに日本酒の独特な香りは苦手な人も多いが、彼女は気に入ったようだ。ついうとうととして、麗華に凭れ掛かる。
そして、女の子同士でお風呂といえば。
「さ〜麗華さん。その胸、どれ程になったかチェックですよ♪」
そう、スタイルチェック。わきわきと冬無の手が動く。
「ヴァサーゴさんドンマイです。胸だけではありませんよ〜」
そんな美音のフォロー(?)も入りつつ、四人はめいいっぱいはしゃぐ。麗華が冬無に、普段の礼と言って軽くマッサージなどしたと思えば、逆に美音は冬無がマッサージでとろんとしてるその顔に、普段の仕返しとばかりに水鉄砲を浴びせかける。
そんなこんなでわいわいとやった後は、お昼ごはん。
「せっかく来たんですから、やはり良い物を食べませんとです!」
そう冬無が言って、お金も彼女が出すというので、4人は和食処へ行って一番良いコースを注文。
座附・お造り・中皿・焼物・煮物・油物・酢の物といった完璧な和食のコースに、この季節の厳選素材といったらやっぱり、日本国産松茸です。土瓶蒸のよい香りに包まれながら、美音の酌で日本酒も(ちなみに彼女は未成年なので、返杯はジュースです)。
「‥‥ほら、あーん‥‥」
個室ということで大胆になって、ヴァサーゴが麗華に食べさせあいなどを試みると、
「おっとと、ありがとうございますわ♪それじゃあ私もお返しに‥‥」
麗華も受けて、それから皆でやるようになる。
「はふ〜♪ 満足満足ですよ♪ また来たいものですね〜皆さん♪」
冬無の言葉が、この四人が今日と言う日をどれほど楽しんだか、如実に語っているだろう。
●
お次はもっと大所帯。Letia Bar(
ga6313)、那月 ケイ(
gc4469)、アリス・レクシュア(
gc3163)、ジョシュア・キルストン(
gc4215)、安原 小鳥(
gc4826)、張 天莉(
gc3344)の6人グループ。そこに九道 麻姫(
gc4661)とリズレット・ベイヤール(
gc4816)が加わった系8人の大所帯。
男女混合と言うことで、まずは皆で水着着用の温泉ゾーンへ。
男性陣は女性陣の水着を讃え、かと思いきやジョシュアは他の女性のナンパをはじめ、そしてレティアに吹っ飛ばされるのを他の面子がまったり眺め、そんなこんなで騒ぎながら向かうのは変り種の風呂が並ぶエリア。
「日本酒風呂! ひゃっほーっ! ‥‥あぁ〜お酒呑みた〜ぃ」
暖められた日本酒特有の香りが立ち上る風呂に、レティアが堪能しながらもしみじみと呟く。そんな感じで散々変り種の風呂を堪能したあとは、浴衣に着替えて屋内施設へ。互いの見慣れぬ姿に新鮮味を覚えつつ辿り着く、ええ、ありますとも温泉お約束遊技場。
てなわけでっ!
ペアマッチ・エアホッケートーナメント開催っ!
対戦表は以下の通りです。
一回戦.ジョシュア&アリスvs天莉&小鳥
二回戦.ケイ&レティアvs麻姫&リズレット
そして決勝はそれぞれの勝者から。
なお、優勝者は敗者に命令が出来るという特典(というか敗者への罰ゲーム)付き。
で、結果は。
「では、男女逆転! 男装・女装! 男はこれだ! アリスに変身♪女子は執事さんですよ〜っ」
レティアが高らかに宣言する。
一同流石に戸惑うが、ノリが手伝ってやけくそ気味に承知する。
執事服になる女性陣はむしろ楽しそうだったかもしれない。天莉の女装はそこそこで、ネタにするにはやや弱い。ジョシュアはまあ‥‥いい感じに「無理矢理女装させられた男子」にしあがり、そして。
女性二人の麻姫&リズレットペアはどうするのか? これはやはり、男勝りの麻姫がアリスで、リズレットが執事だろう、と言うことになった。
女の子らしい姿に戸惑う麻姫を珍しそうに眺めるぶかぶか執事服のリズレット。ある意味このペアが一番美味しいかもしれない。
「あははは‥‥っ、無理、お腹がっ!」
なんにせよ、けしかけたレティア的には大満足だったようである。
その後は入場ペアで別れて過ごすことになり‥‥麻姫とリズレットは今、二人で歩いている。
麻姫には、今日ここに来るにあたって一つの決意があった。
バイキングで食事した後、本格温泉のほうへ向かい、露天風呂へ。寄り添って湯船に浸かっていると、夜も遅いせいか、二人きりになっていることに気付く。
‥‥今しか、ない。
「えっとな‥‥リゼ‥‥その、付き合って少し経つが改めて言わせて欲しい‥‥」
緊張しながら、だがしっかりと麻姫は言葉を紡ぐ。
「愛しているリゼ‥‥俺と付き合って欲しい‥‥」
そうして、まっすぐリズレットのほうを向いて、そう宣言した。
リズレットは息を呑み‥‥何も言わず、言えずに麻姫に抱きつく。
そのまま、そっと顔を上げて目を閉じ、唇を窄めて。
その意味など考えるまでもない。麻姫は求められるままに、顔を近づけて――
誓うように、しっかりと。唇を、重ねて。
「‥‥リゼも‥‥お姉様のこと‥‥大好きだよ‥‥」
改めて想いを確認しあった恋人達は、しっかりと抱き合った。
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次はアンジェリナ・ルヴァン(
ga6940)とエレシア・ハートネス(
gc3040)の女友達コンビ。
まずは本格露天風呂のほうへ。勢いよく服を脱ぎ、何も隠さず突き進むエレシアにアンジェリナが少し戸惑いの表情を浮かべる。
「ん‥‥タオルつけて‥‥入っちゃだめなんじゃないの‥‥?」
間違ってはいないがすっとぼけた調子のエレシアに、アンジェリナは困惑気味だ。そんな調子だが、今日はエレシアに付き合おうと決めている。本当は、温泉が大好きで、できれば広い浴場一箇所にゆっくり浸かっていたいアンジェリナだが、エレシアが他に行きたいといわれれば後ろ髪引かれつつも付いていく。
淡々とした口調で、だがはしゃぎまわるエレシア。スライダーで二人ですべると、なんとビキニの上が外れるというハプニングまで起きて。
「ん‥‥水着‥‥取れた‥‥」
それでもエレシアはそんな調子で。
リフレッシュに来たはずなのに、これではかえって疲れるのではないか。アンジェリナはそんな風にすら思った。
‥‥それでも。
「LHへ来て初めてこういう娯楽というものに触れて来たわけだが‥‥正直疲れる。が‥‥悪くは無い。たまには‥‥な」
それでも、そんな時間を、心地よく思うのをアンジェリナは確かに感じていた。
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時枝・悠(
ga8810)と紫藤 望(
gb2057)も女友達同士でやってきたペアだ。
サヴィーネ=シュルツ(
ga7445)とルノア・アラバスター(
gb5133)と合流すると、卓球対決をすることに。
何故って? 温泉だからさ!
と言うわけで入場同士のペアで卓球対決。
能力者が大人気無く本気出したら非覚醒でもヤバい威力になるんじゃないか、とか悠が思いつつ必殺の音速スマッシュなどを決めてみると、ルノアがありえないほど速い速度で反応する。というか瞬天速使いましたね今。非覚醒でも、どころか相手さんはきっちり覚醒してきているようです。一瞬考えてから悠はしかし。
「まあ良いか。子供だしな、私」
気にしないで続行することにした。
ら、
「こうなったら‥‥必殺、ツイストサーブ!!」
覚醒したサヴィーネの一撃で、ピンポン弾が割れた。ちなみに、今更どうでもいいですが、卓球ラケットにSESは入ってないので射撃スキルは使えません。
そのあとは別れて行動、ルノアは明らかにはしゃいでサヴィーネを連れまわしていた。スライダーやプールで遊び倒したあとは温泉に浸かり、遊びつかれて休憩室へ。
お喋りしたりお茶をのんだり、お昼寝したりとのんびりしつつ、抱きつき擦りよってキスをねだったり、隙を見て指や耳元に甘噛みしたり思い切り甘えてイチャイチャする。
‥‥だって本当に、こんな風に恋人とすごせる時間なんて貴重なのだ。傭兵にとっては。
それが分かるからこそ、サヴィーネも黙って付き合って。
「う、む‥‥ノア、あのな、これは、相当、恥ずかしい」
でも、ふとした瞬間我に返ったりして。そんな時間がお互い、可笑しくて愛しくて。
ルノアの奢りで、和食の一番高いコースを頼めば、
「こら、慌てちゃだめだぞ。ほら、零してる‥‥」
サヴィーネは、ルノアに何かと世話を焼く。
そんなサヴィーネには、普段の冷静かつ皮肉屋という姿はなかった。
常に相手を気遣いつつ、でもそれは相手の気持ちをこちらに向けたい、甘えたがりの表れだ。
普段が嘘と言うわけじゃない。どちらも本当の自分。でも、恋人の前では甘えたがりな自分しか出てこない。
果たしてルノアはそれが分かっているのだろうか? 自然に彼女はサヴィーネに、思い切り甘えて、甘えさせて。
‥‥そんな二人だから、一緒にいられるのかもしれない。
「よーしトッキー、うち達もラブラブしよー!」
‥‥サヴィーネたちとは別れて遊んでいるはずだが、このリゾート全体に漂うオーラを感じ取って、望は急にそう宣言した。
ちなみの彼女に別に百合属性はない。ただのノリである。が、もうノリだけに勢いあまり過ぎて。悠にがばーっと抱きついたり冗談で愛を囁いたり耳をあむあむしたりしようと敢行する。
基本的には遊びには淡白に反応しつつも付き合っていた悠だったが、流石に鬱陶しくなったのか。
「あいじょーひょーげんだから仕方ないな?」
肉体言語に訴えて止めることにする。
暫くめげずにじゃれじゃれしていた望だったが、
「ろ、ロープ、ロープっ」
最後はそんなんだった。
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リック・オルコット(
gc4548)は、呑み友達の綾河 零音(
gb9784)を誘っての参加。
いつだって、物おじせずに陽気で明るいラテン娘の零音は、こうした場に連れてきて一緒に遊ぶにはうってつけだろう。
‥‥男女のペアだけれども、この二人に妙な空気は一切ない。
だってお互い、本当に想う相手は別にいるから。
でもだからこそ。意識も遠慮もせずに思いっきり楽しめる。そんな関係も、いいじゃない?
「御先祖のカラカラさんも、ネロさんも大好き温泉♪もちろん私も大好きだーっ!!」
零音はバッシャーンと、思い切り水しぶきをあげて水着温泉を楽しんで。
リックは対照的に、ハーブ風呂でレモネードを飲みつつまったりして。
そうしてリックがマッサージに行くというので、零音はその間、せっかくだからと女風呂へ。
男所帯で育った零音は、女だらけのお風呂というのにちょっと戸惑ったりも、して。
でもその新鮮さを、やっぱり持ち前の陽気さで楽しんで。
気兼ねせず、好きなように、いつもの調子で、のんびり、まったり。
一番正しく、ここを楽しんだ二人かもしれない。
●
夢守 ルキア(
gb9436)はキリル・シューキン(
gb2765)を誘ってやってきた。入場の際、のっけから
「晴れのちルキア日和! 驚いた?」
木の上に隠れて強襲、キリルを驚かせる。
そんな二人が目的とするのは。
「日本酒、日本酒、日本酒ッ! ハラショーだ、ブルジョワめッ!」
「泳いで溺れて飲んだってコトにすれば!」
水着に着替えると、全力で日本酒風呂に突撃。
‥‥ところで、普通はご存知だろうが、日本酒風呂と言うのはあくまで「美容効果を求めて、温泉に日本酒を足したもの」であり、当たり前だが日本酒そのものを沸かすわけではない。暖かいので香りこそ強いが、味としては薄い‥‥どころかほとんどしないだろう。
入って二人、無言で顔を見合わせて。
「沈みたいんでしょ?」
腹いせ交じりにルキアがそう言ってキリルの首根っこをつかんで沈めようとした。
キリルが淡々としながらも全力で抵抗しているところに表れたのが、リュドレイク(
ga8720)と、ともに来たユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)だ。ユーリが当選し、友人とは都合が付かなかったので兄とともに来た、と言うことらしい。
リュドレイクが何を騒いでいるのですか、とたしなめると、日本酒風呂が期待はずれに終わったことを聞かされる。じゃ、これ食べる? とユーリがボンボンを差し出すと、根こそぎ奪われることになった。
「この二人が居ると知ってたら、もっとたくさん持って来るんだった!」
ユーリが叫ぶが、そもそもウィスキー・ブランデー・日本酒・焼酎等各種ボンボンをポーチ一杯に持ってきていたのだが。
そんなこともありつつ、とにかくルキアは終始ハイテンションではしゃぎまわっていた。
男湯に入ろうとして止められたり、チェアで昼寝する御闇をブブゼラで強襲したり(なお、この行為には後で御闇からのお仕置きとして全力のデコピンが待っている)、バイキングでは全品目平らげて店員の目を丸くさせていた。
それでも。
撒き散らされる楽しい、嬉しい、大好き! の気持ちが、自然に周囲を笑顔にさせる。
そんなルキアだけど、でも、心の隅では、いつも銃の存在が離せない。今このひと時は平和でも、何があるか分からない、そんな時代だから。
だからこそ。笑ってくれるかなぁ、ソレダケ願う。強く。
そんなルキアに、キリルは最後まで淡々と、だけど求められることは全て応じて、付き合っていた。
●
「お茶風呂ってものいいわね」
「緑茶だけじゃなくて焙じ茶のお風呂まであるとは‥‥」
クレミア・ストレイカー(
gb7450)と辻宮 奏乃(
gb7453)はそんな感じでまったりと変り種の風呂を楽しんでいた。
だが、何かイベントの気配を感じて向かったところで、妙な流れになる。
舞台で披露される各国の踊りを楽しんでいた二人だが、やがてステージではなく別の方向から現れたのは阿波踊りの一団。観客の数人が手を引かれ招かれ、そこにクレミアが巻き込まれる。
「いってらっしゃ〜い」
のんびり見送る奏乃。やがてノリノリになるクレミア。
完全他人事で傍観していた奏乃だったが、次に現れたのは台車に乗った大木を曳航する氏子達の面々。
「えっ? 私が? あ、あのちょっと!?」
そしてなぜか奏乃が指名されてステージで唄うことに。
喝采を受け、照れつつ席に戻るとクレミアの姿があった。
奏乃は、不思議そうなクレミアに、「建御柱」のセレモニーを見ながら「御柱祭」が7年目(寅と申の年)に行われる事などを説明する。
縦御柱を完了した直後に「グランリゾートスパ フォレスト 開園三周年おめでとう」の垂れ幕が下がった。
まあそのなんだ、楽しめればそれでいいとおもう。そんな二人のリゾートだった。
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蒼河 拓人(
gb2873)は、セシル シルメリア(
gb4275)に誘われてきた。
プールに行き、ウォータースライダーを楽しんだり、泳ぎが苦手なセシルが浮き輪を揺らされて慌てたりと、良く知る友達同士仲良くはしゃぐ。
そんな中で、ふと、
「あっ、そうそう。セシルちゃん‥‥水着、可愛いよ」
拓人が、そんなことを言って。
「あぅ、うれしいのですー」
セシルはそう言って俯く。下を向けて見えるのは自分自身のスタイルだ。‥‥正直、自信はない。姉や妹のことを思い出すと、比べるべくもなくて。
だからこそ不意打ちの拓人の言葉が、本当に嬉しかった。
さて、そんな風に暫く楽しんでいた二人だったが、途中、セシルが帽子にサングラススタイルで変装らしきものを開始する。
「安心してください、お姉さんに妹よー、ばっちりお祝いのための情報を持って帰るですー」
恋人同士で来ている友人の出歯亀。それが彼女の真の目的だという。
拓人はちょっとわからないという顔で、付き合うことにして。
かくして二人の大作戦が始まった。
邪魔しないように幸せそうな恋人達をすトーキングする、その最中。
(「いつかあんな風になるときがくるのでしょうかー?」)
セシルはふとそんなことを想って、時折そっと拓人を見ていた。
●
そんなわけで、こっから先は完全二人っきりの恋人同士のターンです。覚悟はいいか。
●
ではせっかくなので、セシルの標的ティリア=シルフィード(
gb4903)と、ノエル・アレノア(
ga0237)からいこう。
広い温泉でゆっくりした後、二人でバイキングへ。まったりしながらも、ノエルはティリアのことをずっと見ていた。何を選ぶのだろう、何が好きなのだろう。些細なことでいい、相手のことが知りたくて。
そうやって、相手のことばかり気にしていたら。
「ノエルさん、よく食べるんですね」
逆にそう言われて、ノエルは赤面した。ぼうっとして、ついいつもの勢いで食事していたらしい。そんな様子が微笑ましくて、ティリアはくすっと笑った。
食事の後は、腹ごなしに散歩へ。中庭に出て、木々が立ち並ぶ爽やかな遊歩道を歩く。
「‥‥ティリアさん」
その最中。どこか張り詰めた声でノエルが切り出した。自然、足を止め、向かい合う二人。
「僕は‥‥貴女が好きです。ティリアさんは僕のこと、どう思ってます?」
告白。対しティリアは、
「前にも‥‥お話しましたよね? ボクは、本来は裏の世界の人間だった。それが嫌で、逃げ出してきましたけど‥‥それでも、ボクの体には、人には言えない家業の血統が流れています」
声を詰まらせ、弱弱しくそう返して。
「――そんなボクで、本当に‥‥いいんですか? ノエルさんの一番近くに‥‥居ても、いいんですか?」
それでも、想いは止められなくて。すがりたい気持ちを、相手にぶつける。
「人には言えない家業の生まれだったなど‥‥気にしないでください。ティリアさんはティリアさんです。全て含めて‥‥貴女を支えたい。だから、貴女のことを想っても‥‥良いですか?」
だからノエルは、迷わずに答えた。
「ありがとう、ございます‥‥。ボクも‥‥ノエルさんのこと、好きです‥‥」
耐えきれずに、泣きながらティリアはノエルにすがりつく。
濡れる頬をそっと手で包み込むと、ノエルはそのままティリアの顔を引き寄せていた。
そうして。支えるという決意を示すように、確かめるように。
静かに、キスを、した。
●
遠倉 雨音(
gb0338)は恋人の藤村 瑠亥(
ga3862)の手を引いて、変わり種の温泉も含め一通り楽しもうと引きずりまわす。瑠亥は苦笑しながらも、恋人相手ならそれも悪くないかと思い始めていた。
雨音との関係が変わってから初めて誘った、いわゆるデート。知らない仕草ひとつ、ふと目に入った時にその度に戸惑いを覚えて。
「いいこと、ではあるのだろうが‥‥やはり慣れてないというか、どうすればいいのだろう‥‥な」
休憩所で一息ついたときに、知らず、何気なく口にしていた。
「正式にお付き合いをするようになったからと言って‥‥特別に何かをしなければならないと言うことはないと思います。今まで通り、私のお店でお話をして、時々こうして二人でどこかに出かけて‥‥それに、急に何か変えられるほど、私も瑠亥さんも器用ではないでしょう?」
聞きとめた雨音は、そう答えた。そして苦笑すると‥‥次の瞬間、瑠亥の唇に柔らかい感触。
「――ただ一つ、必要以上に無茶をすることだけは変えて下さい。以前のように、貴方が無事に戻ってくるかどうか気を揉みながら待つのは――辛いですから」
不意打ちで唇を奪った後、雨音が零すのは‥‥そんな言葉。
「む‥‥今回ばかりは俺もマズイと思ったしな‥‥雨音に辛い思いをさせるわけにもいかんし‥‥善処する」
はっきりと約束は出来ない。傭兵だから。それでも努力することは誓って。
瑠亥は雨音を抱き寄せて、お返しのキスをしっかりと返した。
●
「前に豪華客船にいった時は、ボクが重傷で泳ぐ事が出来なかったしね。今回はそんな事は無いよー」
クリア・サーレク(
ga4864)は鬱憤を晴らすようにそう言うと、水着ゾーンで全力ではしゃぎまわる。水鉄砲やビーチボールを持ち込んで、楽しむ気満々だ。
同行するのはもちろん、恋人の守原有希(
ga8582)。
色々回って遊んで、疲れ気味の有希をマッサージして。
「みんなで写真? うん、撮る撮る♪」
どこからか途中、そんな話を聞いてクリアが答えると。
‥‥その前に、二人だけで撮らないか、と有希が提案する。
クリアが頷くと、景色のいい、そして二人っきりになれる場所に移動して。
「世界最愛の人の一番そばにおりたかし、おって欲しかとです。背中を隣を預かり共に在ると決めたうちの我侭ですけど」
少し抱き寄せて、有希が告げた。
寄り添う二人の姿を、レンズがしっかりと記録する。
クリアは売店でアルバムを購入した。二人の写真と、これからの集合写真を残すために。
「このアルバムが、二冊三冊と続いていくと、いいよねっ♪」
にっこり笑ってクリアはアルバムを掲げた。
大切な人との、大切な思い出が、たくさんたくさん作れるように。
‥‥今日は二人は、一時も離れることはなかった。
●
Cerberus(
ga8178)は、恋人の白藤(
gb7879)と共に。
白藤のビキニ姿に、「よく似合うぞ。だが、他の男に見せるのは惜しいのでパーカーでの行動を基本としようか」と独占欲を隠さない褒め言葉から始まって。
ウォータースライダーでは抱き寄せて。バイキングでは「はい、あーん」と恥ずかしげもなく食べさせたりして。とにかくひたすら、甘い二人の世界を作り上げていた。
はしゃぎ疲れた白藤を連れて、休憩所へ。寒がりの彼女が、一緒に毛布にくるまりたいと要求すれば、ケルベロスは照れも迷いもなく応じる。
「付き合ってもう半年か‥‥あっちゅーまやなぁ」
それでも、呟く白藤の声は、不安げだった。
「けーちゃん、これからも白藤は‥‥ココにおってえぇんやろか‥‥?」
おずおずと伺うように見上げて問いかける。
「これからもここは白藤の居場所だぞ。誰にも入れない白藤だけの場所だ」
ケルベロスはぎゅっと抱きしめて、ふわりと白藤の頬にキスを落とした。
それは、これまで見せてきた甘さからすれば、ごく、軽いキスだった。
だけど、包み込むような優しさを見せるそれに、白藤の体が寒さでなく、震える。
想いを受け止めてくれたのが分かって、自分もそれに応じたくて。
白藤はしなやかに体を伸ばすと、悪戯っぽくケルベロスの唇を舐めた。
●
御崎 緋音(
ga8646)はドキドキしていた。ブロンズ(
gb9972)からの、彼からのお誘い。
すなわち‥‥デート?
ちゃんとしたデートは恋人同士になってから初めて‥‥かもしれない。
うきうきして、ゆっくり過ごしたくて。
人が多そうなアクティブ系やドームのお風呂は避け、ハーブ風呂と日本酒風呂を目指そうとしてみるが。
これまでの描写でおわかりだろうが、日本酒風呂、人気であった。
「あーあ‥‥美容と健康にいいっていうから‥‥」
しょんぼりと緋音が言うと。
「俺としては美容とかはあんまり興味なかったり」
どうでもよさそうにブロンズが言って、緋音はぷう、と顔をむくれさせる。
女の子なんだから、綺麗でいたいってのは大事なことなのだ。
‥‥好きな人がいるなら、特に。
食事どころは和食を選択。
「誘ってくれたお礼も兼ねて、ここは任せてくださいな♪」
緋音がそう言って、最高級コースを二人でゆっくりと楽しんだ。
「はい、あーん♪」
と食べさせあったり、仲良くじゃれあいつつ。
(「次はちゃんと金用意しておこう‥‥」)
ブロンズは内心、胸に秘めるのだった。
相手の方が傭兵としては先輩だけど、なんかやっぱり格好つかない。
男の子なんだから、格好つけたいってのは大事なことなのだ。
‥‥好きな人に対しては、特に。
●
緑(
gc0562)とラナ・ヴェクサー(
gc1748)も、久しぶりの二人の休日を満喫する。
水泳で勝負して、温泉でくつろいで、バイキングで食事して。
そうして、少し疲れを感じて、それでも緑そよぐ空気が気持ちよくて、どこか外で寝転がれる場所はないか探そう、と歩きはじめて。
‥‥手をつなげないか、と、ラナが不安そうに問いかけた。
緑は驚いて、それから、自らを恥じ入るような表情を見せた後、そっと手を繋ぐ。
「ほんとはこういうの‥‥俺の方から誘うべきでしたね」
そもそも、ここに来ようと言い出したのはラナの方だった。そのことから、緑は詫びる。
「最近は戦闘ばっかりで、恋人らしいこともあまりしてあげられなかった‥‥だから、ラナが誘ってくれた時すごく嬉しかったですよ」
言って、繋ぐ手をぎゅ、と、しっかりとつかみ直す。
「誘う事に男女の差はないでしょう‥‥次は期待させて頂きますよ?」
感じる掌の温かさに安堵しながら、ラナは穏やかに答えた。
「私だって、普段は依頼で色んな所を回って…そんなに気を使わなくても、大丈夫ですから」
続く言葉は‥‥うん、強がりじゃない。大丈夫。
だって、繋ぐ手は今、こんなに確かだから。
中庭に、木陰に設置された昼寝用のチェアを発見して、二人はそこに横になる。
はしゃぎすぎて思ったよりも疲れていたのだろうか。ラナはあっさりと寝入ってしまい。
ふわふわと触れる感覚とともに目を覚ました。
「あ。‥‥すみません。涼しくなってきたので、外のままだと」
起きた気配を感じたのだろう。緑がそう言うと、ラナは自分がおぶわれていることに気づく。
また、寝ててもいいですよ。そう言われてラナは‥‥甘えることにした。
降りたく、ない。もう少しこうしていたかった。
●
皆で記念写真を撮ろう、とルキアが呼びかけて、賛同した何人かの傭兵が集まった。
一枚は普通に、一枚は悪戯で覚醒して心霊写真風にして。
普通に取った方を、宣伝に使っていいから費用負担して、と、ルキアがちゃっかり支配人に申し出る。
支配人はデータを確認すると、これは勝手に使うのはまずいんじゃないですか? と苦笑した。
何せ、何組かのペアは、キスをしたり抱き合ったりと、明らかに『大切な、身内だけの記念』とばかりの姿を残している。
だが支配人は、いいですよ、宣伝に使わずとも、こちらで現像いたしましょう、必要枚数を申し出ていただければ、LHにお届けします、と微笑んで言った。
どうして? とルキアが顔で問いかけると。
支配人は恭しく頭を下げた。
「皆さま、本日は楽しんでいただけたようで、従業員一同心より喜ばしく思います。ですから。‥‥またのお越しをお待ちしております。心より」