タイトル:【埼玉】魔弾軍曹劇場版マスター:凪池 シリル

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/12/01 06:00

●オープニング本文


 はいどーも、天の声です。
 そんでもって、今埼玉がえらいことになってます。
 詳しくは同時募集のもう一つの依頼のほう見て欲しいんすけどね? 端的に纏めると本隊やられて取り残されてやけっぱち起こしたバグアがやけくそ起こしてとりあえず埼玉県民に八つ当たりに来てます。
 あーいや、はしょりすぎて随分アレげなことになりましたが、実際シリアスかつシビアな状況っすよ? マジでマジで。
 んで、そのやばい状況にあっしなんかがどうして顔出したかって言うとっすね。
「さて、この状況。かの者は来るのかな‥‥?」
 えー。そんなことおっしゃるのはどっかで見た白スーツです。そうです、埼玉にはこいつが残ってるんです。
 こいつもまー、これまでにないキメラの軍勢ぞろぞろ率いて進んでやがるんですけどね。
 なんか、何かを探しながらっつーか、待ち構えるような様子が見受けられます。
 と、そこに。
「私ならここだ!」
 ばばーんと応える声がありました。あれは一体誰だ!
「ははははは! やはり現れたか、フレイム・バレット! だがやはり、いつもより声に覇気がないな! どうしたのかね?」
 ほい、和歌山 茜(gz0402)さんです。‥‥んでまあ、確かに、いつもより声のトーンが大人しいな、と思うわけですが。
(うるさい‥‥恥ずかしい! やめたいっ‥‥!)
 そうなんです。実は応えたのは紛れもなく茜さん。覚醒状態の魔弾軍曹じゃなくて。
 いや、なんか、バグアの別働部隊が避難所に向かってる、そのリーダーがどうやらこの因縁の白スーツであると判明してですね? そんで自分が出れば少しでも避難の時間稼ぎになるかもしれんってことで、こうしていろんな意味で捨て身の話し合いに来たわけですよ。
「くっくっく‥‥流石にさしもの魔弾軍曹もこの状況は理解しているようですね! 本気で『暴走』をはじめたバグアに対し、人類の多くは抗うすべを持たない。この地が血に染まるのは易々とは止められない‥‥そうではないかね?」
 恥ずかしくて台詞が出ない茜さん、に気付いてる風はなく、白スーツさんは調子こいてなんか言ってます。
「傭兵達の増援がくれば何とかなる‥‥ですがそれも、分の悪い賭けだと認識しているはずです。まだ多くの地域が問題を残す中、バグアに協力していた街の住民が助けられるのか? のうのうとそれを許したUPC軍の尻拭いをして、逆恨みを受ける覚悟のものなんているんですかねえ?」
 にじり寄るように前に出ての演説。いやあ、実に「ラスボスの片腕的大幹部」ムーブっすね。中々様になってきてやがりますこの白スーツさんも。
「犠牲を減らすための選択としては、ここは住民達の命は諦めて軍は撤退すべきでしょう。一度ここを放棄して、戦力を整えなおして再出撃が正解です。
 どうぞお逃げなさい。貴女に助けなど来ません。この街に住民の血が流れるのは、とめられるはずがないとそう思っているのでしょう?」
 調子こきまくりの白スーツの言葉ですが‥‥茜さんの反論は、今のところなし、っす。これはもう恥ずかしいとかじゃなくって、本気で思いつかねえんすね‥‥。
 実際相手の言葉が、それから、埼玉全域でのバグアのやり口が痛いところ突かれてるのは事実で‥‥そんでも、茜さんは逃げずにバグアを睨みつけてました。
「ふむ‥‥それでもまだ、貴様はやはりそんな目をするか‥‥」
 白スーツさん自体は気に入ったみたいなのですが。
「諦めない。ふむ。私が人類を見てきて最も疑問に思ったのはそこだ。明らかに勝ち目のない状況で、何故最後まで絶望せず抗うものが必ずいるのか。多くのものが、それによってただ無駄死にを重ねてきたと思えば‥‥しかし、その執念が最後は本星を追い返した‥‥そう、それこそが私の研究する脅威!」
 え? ああ、こいつ以外と真面目な理由で悪人コスプレやってたの?
「アニメという手法により『最後は必ず勝つ』という洗脳を幼少期より植え付け、状況を打破するものが現れるのを待つ‥‥それがあなた達のやり方か? ならばそこに描かれる悪を模倣すれば、その性質を色濃く持つものが現れると思いましたよ‥‥。その精神構造、それが種の保存にとって有効的な手段か‥‥ヨリシロとしてじっくりと研究させていただきましょう!」
 それにしても最終回だからってひどい説明セリフっぷりっすね。まあそれも悪の研究成果、なんだろうなあ。ご苦労様です。そして目の付け所もやることもポイントズレまくりっすね。
 で――‥‥。
「洗脳、なんかじゃ、ない」
 でー、茜さんは、一体どうしたんでしょうか。なんつーか、あっしと一緒で呆れ気味ではあるっすけど、それはそれとして何かに気づいちゃったような顔ですが。
「確かにあたしは、子供のときにアニメに夢中になってた。でも、‥‥やっぱり多くの子と同じように、途中は一回、離れてったわよ」
 ですよねえ。覚醒特徴についてははじめは嫌がる一方でしたし。
「でも‥‥ああ、そうね。そういわれて見れば‥‥。何でこの年になって、こんな覚醒なのか、やっと分かった気がするわよ」
 お?
「洗脳なんかじゃないわ。あたしは確かに一度、アニメの臭いセリフや甘っちょろいご都合主義なんかくだらないと思うようになった。世の中そんな、頑張ったくらいで思い通りに行くわけない。そんなこと、いやって言うほどわかってて‥‥――でもね。これくらいの年になってまた。なんかのきっかけで、アニメ見て‥‥『ああ、結構いいこと言ってるんだな、これ』、って、思うようになってたから。あきらめないのは、洗脳なんかじゃない。人類が本来持ってる力よ」
 おや。どうやら長い間の葛藤に、どうやら茜さんはここで完全決着が付いたみてえっすね。
「あたしは諦めない。全部を救うのは無理かもしれない。でも、一人来てくれればきっと一人助かる。あたしが諦めたら、その一人が来てくれなくなるかも知れないじゃない! だからあたしは諦めない!」
 うわお。茜さん、なんかマジで魔法少女にありそうなセリフになってるっすよ。いいんすかね。いいんすか。いいならいいです。ならばあっしもこれまで付き合ってきた未としてお付き合いしましょう。行くとこまで行っちまって下さい。あっしもあっしらしく、全力で突っ込みはいれるっすから。
「だから――!」
 空を振り仰ぎ、やがて援軍が来るだろう方向に向けて、茜さんが叫びます。

「お願い! 皆の力を貸して!」

 ああ‥‥うん。劇場版とかだと絶対にあるんすよね。この手のシーン。
 ちなみに、『皆の力』が必要なのはどっちかっつーとこっちより向こうの戦場っす。悪しからず。

「いいだろう、ここで決着を付けようじゃないかフレイム・バレット!」

 で、バグアさんも最後まで付き合い良いみたいで。
 じゃあそんなわけで、最終決戦、の、割とどうでもいい隅っこの一幕、開始〜。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
潮彩 ろまん(ga3425
14歳・♀・GP
キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
アルジェ(gb4812
12歳・♀・FC
クレミア・ストレイカー(gb7450
27歳・♀・JG
神楽 菖蒲(gb8448
26歳・♀・AA
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN

●リプレイ本文

 さいたま市の市街地に、キメラの軍勢が迫ります。相対するは魔弾軍曹・フレイムバレットとその他モブ軍人さんたち。ああうん、軍人さん一応いますよそりゃ。
 さておき。
 これまで散々猛進トリガーハッピーなだけだった魔弾軍曹っすけど、この多勢に無勢にはさすがになのか、それとも茜さんの変化の影響なのか、覚醒後もしばらくにらみ合ったままっす。
 ノリノリでジワリ、と前に出るバグアと、ジリ‥‥と間合いを取る魔弾軍曹。
 おっと、先頭のキメラがここで一匹飛びかかるっ‥‥が、彼方から飛来した銃弾がその眉間をぶち抜き、ひっくり返すっ!

「情けないな魔弾。私がおらんとその程度も裁けぬか」
 だ、誰だっ! 一体どこからっ!? あ、あそこです。そこの一軒家の屋根の上。そこに立っているのは、神楽 菖蒲(gb8448)さん。いやさ。
「仕方がない。今回だけだ。今回だけ付き合ってやろう」
 ばさぁとコートを翻す、劇場版調停者菖蒲〜アラフォー突入! 付き合いのいいお姉さん〜
 ‥‥いや、あっしじゃねえっすよ。どこからともなくそのように申告があったんでそのまま紹介しただけっすよ。
 続けざま、ガッと何かを撃ちつける音が地面に響きます。そこにあるのは一刀の竹刀。そして。
「悪い白服宇宙人、これ以上の悪さはボクが許さない‥‥2つの刀が希望の翼、魔剣少女マジカルろまんA、ここに参上!」
 アパートくらいの建物から、逆光で登場し名乗りを上げたのは潮彩 ろまん(ga3425)さん。
 Q:いつの間にどうやってこんなところ上ったんですか。コレ夢オチシナリオじゃないですよね。
 A:このぐらいの高さなら、瞬天足で駆けあがったんでしょう。ぎりぎりセーフです。
 というわけで続々と現れる傭兵さんたち。なんか明らかにテンションおかしいですが。
「諦める必要はない。貴女の願い、俺たちが確かに受け取った」
 いや、白鐘剣一郎(ga0184)さんはとりあえず、普通に歩いて登場しましたんですけどね?
「義によって助太刀させて貰おう。天都神影流、白鐘剣一郎‥‥推して参る!」
 名乗りもまあ、普通に本名名乗っただけなんすけどね? 何故でしょう、この空気。
「そうさ、誰が諦めてなんかやるものかよ!」
 やっぱり高いところから登場してる、龍深城・我斬(ga8283)が続いても全く流れが自然のままです。
「お前らはいつもそうだ、むやみに人々を蹂躙して悦に入る屑どもが、見せてやるよ、貴様が悠長に研究したがったものが自身を滅ぼすさまを‥‥この 絶闘! ガ・ザーン がな!」
 というわけで、流れが完全にヒーローノリ。爆風の中を駆けるバイクの音が高らかに響きます。現れたのはクレミア・ストレイカー(gb7450)さん。
「闇を払うもの、クレミア・ストレイカーとは私の事よっ!」
 名乗った後、バイクからは降ります。まあ、そうっすよね。想定されてるのがキメラとの乱戦っすからね。もう使われませんバイク。
 続いて姿を現すのは小柄な影。ファリス(gb9339)さん。
「‥‥茜姉様がファリスの助けを必要としているのなら、それに応えるのが【正義の味方】の務めなの! ファリスは最後まで自分が成すべき事をするの!」
 アルジェさんがそのまま無言でたたずむ中、ファリスさんは元気良く宣言っす。
「闇に覆われしこの世界を貫く、正義の光の一閃! 光に導かれ、新たな力を得た正義の味方がここに爆誕! 
 真魔槍少女ファリス・ノイエ、ここに参上なの! 立ち塞がる敵はこの槍で一撃必滅なの!」
 あ、なんかちょっと進化してるっすね。
 そして、ファリスさんの名乗りに合わせるようにして現れたのがアルジェ(gb4812)さんです。
「‥‥魔爪少女 アルジェ、参上」
 ファリスさんの影からぬるりと現れるようにして少女が二人並ぶと、ぽつりと、しかし何故かはっきり通る声で名乗ります。
「魔槍と魔爪 今ひと時のコラボレーション」
 ああ、それがやりたかったんすか。あんた『ここは、あわせるのが‥‥様式美か?』みたいな顔して実は結構ノリノリっすね?
 そして最後に、もう一人。
「助けを求める声を見捨てちゃ、メイド・ゴールドの名が廃るってね!」
 この名はキョーコ・クルック(ga4770)さん。おなじみの彼女の、何故名乗りが最後になったか。彼女が電柱の上に立つには地道に登るしかねえからです。まあ、そこの部分は皆さんの心のカメラのアングルを外しておいてあげてください。
「正義の戦士メイド・ゴールド推参! フレイムバレット、助太刀するっ」
 そんなわけで、ハイ、これで集まった傭兵さんたちは全員名乗り上げ終了っすかね。
「ノリノリね、アンタ‥‥」
 菖蒲さん、今更人事のようにいいますがあんたが口火切ったんです。
 そして、皆さんに突っ込む前にこの場で一番ノリがいいのは、皆さんの名乗りに合わせてキメラの進軍止めてるバグアさんだってこと重要なんで明記しておきます。これが他の依頼だったら悠長に名乗ったり準備してる間にぼっこぼこにされて文句いえません。真似してひどい目にあったりしても当方は責任を負いかねます。まして、全員が名乗ったおかげで本来は乱戦から始まるはずなのにらみ合いの位置から始められますとか、逆に有利に働くガジェットになってるなんざ絶対今回以外ありえません。
「ふ‥‥この軍勢相手に、たかだか数名増えたくらいでどうにかなるとでも?」
 というわけで、仕切りなおしのバグアさん。
「ふっ‥‥数名だけ? 分かってないな、この数名が‥‥何倍の力になるのか!」
 そして皆の呼びかけに、茜さんは完全復活のご様子。
「行くぞ、戦場ヶ原の戦天使達‥‥魔弾軍曹の名において――全軍突撃!」
 勝手におかしなもんに混ぜんな。そして仕切るな。

 まあ、これに合わせてキメラも動き出したんで、戦闘開始っす。




 えー。そんな感じでモブ戦闘。開始はやはり菖蒲さんから。戦闘きって突撃してくるキメラに対してまずは拳銃手にして制圧するように数度射撃。
「‥‥有罪(ギルティ)」
 菖蒲さんの宣告とともに、立て続けに鉛玉を喰らったキメラの体がどーんと爆発。火柱が上がります‥‥って、え。
「なりふり構ってねえな、みっともねえ」
「ちっ、厄介な‥‥」
 同時に呟く我斬さんとキョーコさん。うん、爆発はノリでも演出でも菖蒲さんの技でもなくってキメラの自爆能力です。念のため。
 乱戦中の自爆能力は結構しゃれにならねえんすけど、菖蒲さんのおかげで予め自爆能力持ち、それも瀕死時に自動発動っぽいことまで見極められてます。
 そのまま、菖蒲さんは射撃とともに前に出ます。流し斬りの体捌きで群れの隙間に滑り込むと、側面からキメラの脚に抉るように手にした刃を食い込ませ。
 剣一郎さんも菖蒲さんと同じく片手に銃、片手に刀のスタイル。こちらは遠間おいて銃で撃ち、近づいてきた敵に対して強烈な斬撃をお見舞いする、というスタイル。
 ろまんさんは名乗り上げたとおり二刀の直刀による戦闘スタイル。左右から襲い掛かるキメラの爪と、彼女の刀がしばし火花を散らします。
 クレミアさんはひとまず、キメラ手足を狙っての援護射撃。倒すことより機動力と攻撃力を削いでいく役割でしょうか。
 キョーコさんも脚狙い。キメラの動きを鈍らせつつ。
「‥‥はっ!」
 弱ったキメラに対し、豪力発現。吹っ飛ばして、爆風から身を守ります。
 そして――
「フレイム・バレット! いつも通りフォローはファリスに任せて、思う存分に戦って欲しいの!」
「うむ! 後ろは任せた!」
 茜さんは相変らず、前に出てとにかく目の前の敵に二丁拳銃を叩き込み。その後ろをファリスさんが槍先で弧を描きながら周囲のキメラをなぎ払っていきます。
「魔弾のどうやら、吹っ切れたようだな‥‥」
 アルジェさんが、茜さんの様子にポツリと呟けば。
「ん。どうやら自分なりの答えを見つけたらしいな」
 我斬さんも何か納得したようで。後はひと暴れするだけと、明鏡止水を振りかざします。
「護る‥‥それがアルの本領‥‥だ」
 アルジェさん、きらっ☆と手首を翻してポーズを決めた後、ファリスさんとともにキメラからの攻撃の防衛に。
 倒されていくキメラが、そこかしこで汚い花火になっていきます。たまに手傷を負わされながらも、キョーコさんの練成治療で持ちこたえつつ、敵の数を減らしていきます。
 やがて敵の層が減ってきたところで‥‥皆さんの目が、余裕で構える白スーツへと向けられます。
 キメラの後方、支持を出した後は悠然と構えていた彼に、迫るところまであと少し。じわじわと近寄る一行を、興味深そうに、楽しむようにバグアさんは待ち構えてます。悪の罠に、正義の刃は届くのかー。ゆけゆけ魔弾軍曹ずー。
「届いたぁっ!」
 キメラの隙間を割り込んで、茜さんがやっととばかりに狙い撃ち。その『成果』にバグアさんは満足そうに頷いて‥‥その姿が、消えました!
「いやぁー。頑張りましたねえ? ここまで届くのに何秒かかりましたか?」
 そして嫌味たっぷりな声で、茜さんの背後に現れます。射撃直後の完全無防備、至近に瞬間移動されては仲間のフォローも難しい、か!? 白スーツが、悠然とステッキを振り上げ、その切っ先の凶刃を、茜さんの背中に‥‥
「――!?」
 振り上げたステッキのその先端に衝撃が走りました。
 生み出したのは‥‥クレミアさんの弾丸!
 実はキメラが大分減った辺りから、瞬間移動に備えて民家の屋根に移動、狙撃体勢を整えてたんですねー。相変らず周囲はキメラとの乱戦状態、とはいえ、この状態で目を見張らせていれば流石にすぐに捕捉出来るわけです。
「その瞬間が来たら狙い目になる唯一のチャンスね」
 とは彼女の弁。見事狙い通り、瞬間移動のタイミングを掴んで逆に奇襲に成功。
「白スーツは‥‥そこだっ!」
 クレミアさんの功績に対し、同じくバグアの移動に目を光らせていたキョーコさんが、仲間に状況を把握させるべく声をあげ。
 そして剣一郎さんが、待っていたとばかりにバグアに向かって距離を詰めていきます。
「貴様を討てる時が来たならば、その場に立つと決めていた」
 そうして、すぐそばにまで追い詰めて、静かに告げます。
 ‥‥ああ、この人、結構前からご存知なんすね。埼玉のバグアが、ここで、主に大宮で何やってきたか、ってのは。
 みなぎる殺気にこめられるのは、外道許すまじ、の唯一つの意思。
「これまでの行いのツケ、ここで払って貰うぞ」
 踏み込んで斬り付ける、だがそこは流石にバグア、キメラのように単純には行きません。強烈な威力に対し、ステッキで器用に力を受け流しつつ、互角に切り結んでいきます。
「ボクも相手になるもん!」
 そこにろまんさんが加勢。剣一郎さんとバグアの動きを見極めつつ、瞬天足を使って先回りするように攻撃を加えていきます。
「ちっ‥‥キメラたち!」
 バグアさん、ここでキメラを操り、ろまんさんの動きを阻害。取り囲みつつ、他の仲間とも分断させようとしますが‥‥かっと発せられたキョーコさんの気迫が、そのキメラの動きを止める!
「雑魚の相手は引き受けたっ、白スーツは任せたよっ!」
 仁王咆哮で動きを止めたキメラたちに肉薄し、己へと注意を向けさせ露払いを引き受けます。
 ファリスさんもまた、キメラの群れに向かって刹那で切り込み、バグアを狙う仲間が集中できるよう、キメラの相手に専念しています。
「魔弾の、終わったら、甘い物をの所望する‥‥生きるぞ」
 まだどこか呆然とする茜さんの背中にアルジェさんが立ち。『約束』を生還への祈りに、行け、と促しました。
「ぬ‥‥」
 少し苦しげな声を出し、ステッキを構えなおすバグアさん。またちょっと妙な動きを見せて‥‥。
「くらえ、波斬剣−×の字切り!」
 また瞬間移動かと、その隙を与えまいとろまんさん。瞬即撃を乗せた、二刀を交差させる一撃をお見舞いします。高速の剣閃が、スーツの胸元を切り裂く、が。
「浅いっ!」
 深手とするには威力が足んなかった模様です。反撃に振り回されたステッキが、ろまんさんを一度吹き飛ばす!
「マジカルろまん!」
「まだまだだっ‥‥行くよフレイム・バレット、その弾丸とボクの刀、2つの力を今一つに!」
 立ち上がり構えるろまんさんに、合わせる茜さん。いや、重なる力は二つじゃない!
「こいつで決める‥‥多段狼我咆哮撃!!」
 ろまんさんと茜さんの連続攻撃が追い詰めたその先で、我斬さんが必殺の連撃を狙えば。
「‥‥天都神影流『秘奥義』紅叉薙」
 剣一郎さんもここで、持てる技術を全て駆使した大技を構えます。
 で、そこに。
「ところで、そこの白いの。悪役の真実って知ってる?」
 静かに、拳銃に貫通弾を詰め換え終えた菖蒲さんが語りかけます。
「自分で悪だとか言った時点で、どれだけ模倣者が出ようが、全員、やられて終わるの。それだけ。シンプルでしょ?」
 行動阻害狙いの、肩とステッキを狙った銃撃。エースアサルト三人の夢の同時攻撃、って所なんだけどさ。姐さん、エースアサルトなのに注目すべきは攻撃力よりその命中精度ってどうなんだ。
「の、あ、あ‥‥!?」
 まあそこはやっぱりエースアサルト、重たい銃撃が肩に、武器にとのしかかったところで、左右からの連続攻撃。‥‥って、ハイレベルのエースアサルトが同時に剣劇繰り出すとか、普通に考えても無理ゲーっすよ。
 ‥‥はい、ご愁傷様です。
「ふ‥‥見事だ。貴様の勝ちだ、フレイム・バレットっ‥‥!」
 あー。最後までお約束は守るんだ。いや、茜さん、大して活躍してねえんですけどね。今回も。
 ま、つことで白スーツ、どさっと倒れましたよ、と。



 そんなわけで、ボスが潰れたら後は有象無象のキメラです。軍の皆さんも手伝って、地道に掃討戦が行われていきます。それもやっと終わりが見えたころ。
「和歌山〜きょうもカッコよかったよ〜♪」
 キョーコさんが、茜さんをハグしながらねぎらいます。
「フレイム・バレットはやれば出来る子なのよ」
 クレミアさんも、うんうんと満足げに頷いています。
「いや別に‥‥皆のおかげだと思うけど‥‥」
 とりあえず着替えに行かせて、と、キョーコさんの腕の中で赤くなりながら、茜さんはもごもごと応えました。
「‥‥でも、本当にありがとう。来てくれて」
 そうして、ポツリと呟く、その声は決して明るいだけじゃねえんです。
 伏し目がちな視線を向けた先。さいたま市ではあちこちで、戦火のあとだろうもうもうとした煙が立ち上がっていました。
 勝ちはしたものの、爪あとはどうやら相当深そうです。
「‥‥うん。これから大変だし、復興には時間もかかるだろうけど‥‥皆で力を合わせれば、何とかなるよね?」
 信じていいよね、と、不安げに茜さんが視線を向けた、皆さんの表情は‥‥――



 ま、突っ込みてーところは多々ある戦いでしたが、ひとまずこっちは、奇麗なエンドでいいんじゃねっすかね?