タイトル:【FC】ミウミ、討つべしマスター:村井朋靖

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/11/22 12:03

●オープニング本文


●愛媛県伊予市・バグア軍基地
 通信から響く3姉妹の声。そのトーンは誰が聞いてもわかるくらいには沈んでいた。
 それもそうだろう。四国バグアの首領たるミスターSが敗死し、最早この地に残る有力なバグアは自分たちを残すのみとなっていたのだから。
「言いたくはないけど、これ以上の抗戦は難しいわね。とにかく四国からは撤退するより他ないわ」
「そうね‥‥それじゃ一度合流して‥‥」
「駄目、それは駄目だよカッキー。四国がほぼ敵に落ちた以上、今集まっても一網打尽にされる可能性があるから‥‥そこで、うちが考えた作戦なんだけど‥‥」
 そう言ってミウミが提示した作戦はこうだ。
 ミスターSの旗下にいた兵士、それらはまだ残存している為、それらをまとめて大規模な攻勢に出る。
「そいつらを合わせれば、多分うちが一番多くの戦力を持ってるはずだから、ふたりはその間に脱出して」
 ミスターの最期を見届けたミウミの愛機・カスタムティターンは健在。その手元には、大騒ぎするだけの兵力もある。四国のバグアは物分りがよくて助かった、といったところか。ミウミと共に戦ったバグア、フィリス・フォルクードも同時に失ったせいもあり、四国の残党が頼りにできるのは3姉妹しかいないという状況も幸いした。
 彼女にしてみれば、フィリスの撃破は痛い。かなりヨリシロの影響を受けた風変わりな人物だと聞いていたが、長く四国で活動していたバグアで、それなりの影響力を持っていた。この局面で彼も使えたなら、この状況はもっと好転していたかもしれない。
「理想を言い出してもしょうがないしね‥‥ま、なんくるないさ〜」
 ミウミが明るく笑うと、妹たちも表情を柔らかくした。
「‥‥わかったわ。任せる」
「そうね。ミウミ姉さん自身も離脱成功できる算段があるなら、乗るわ」
「その点については安心して、ちゃんと考えてあるから!」
 殊更明るく言ったミウミ。
 こうして、2人との通信は終わった。

「お姉ちゃんの意地、見せてあげんとね‥‥」
 言うまでもなく、ミウミの決意は悲壮なものだ。負け戦が続き、士気も低いバグア軍を率いての大暴れなど、どのみち長くは持たない。ならば、少しでも時間稼ぎをしなくては。
 彼女は「説得とか苦手なんやけどねー」と頭を掻きながら、四国の幹部が集う作戦室へと向かった。無謀な攻めに付き合わせるには、それなりの苦労が伴う。

●窮鼠に挑む
 説得を終えたミウミは、さっそく愛媛県伊予市から南東に進み、UPC四国軍を相手に戦闘を開始。キメラやワームが中心の戦力だが、うまく敵を蹴散らして前進を続ける。
「こら、第2部隊のタロスっ! すぐにキメラをまとめて、次の攻撃に備えるんよ!」
 指揮官の数が足らないせいもあり、ミウミは奥に引っ込んで全体の指揮に専念する。
「大規模な進軍があると思ってなかった敵を倒せるのは当たり前! 本番はここから! 油断は禁物よ!」
 彼女は陣形を崩さぬよう徹底させ、じりじりと進軍。街があれば破壊を命じるも、統率の取れた動きで攻めさせる。部下たちは最初こそやりにくさを感じていたが、段取りを覚えた後はスムーズに動き出した。
 その頃にUPCの偵察部隊が到着するが、意外にも苦戦を強いられる。貴重な戦力であるヘルメットワームで足止めさせ、タートルワームなどの遠距離砲で狙い撃ちにするなど、効果的な立ち回りで数機を撃墜した。
「調子出てきたね〜! HW部隊の隊長、プロトン砲の射線は塞いだらアカンよ!」
 この通信を傍受したパイロットは、即座に指揮官へと報告する。敵の指揮官は3姉妹の長女・照屋ミウミであると。

 この報を聞いたUPC四国軍の指揮官・日向 柊は「油断してちゃダメだよ」と一喝。まずは、勝ち戦で緩んだ気持ちを引き締めた。
「ミウミは3姉妹の中でも、もっとも軍の指揮に優れた人物と聞いてる。性格から察するに、切り替えが早いんだろうな」
 ミスターはカリスマ性で軍を統率していたが、ミウミは違う。いつ瓦解してもおかしくない軍で打って出て、戦場で先手を取り、それを手放さない。これこそ、非凡なる指揮官の才能の証明だ。こんな相手と真正面から戦えば、尋常ではない被害が出てしまう。それに彼女の目的は、明らかに「時間稼ぎ」だ。そんなものに付き合う義理はない。
「今から援軍を送るけど、君たちはミウミへの道を作るだけね。バグア残党はミウミで持ってるだけだから、後発の傭兵部隊に彼女を討伐してもらう」
 道を開いた後、キメラたちが傭兵の背後を突かぬように必死で食い止めろ‥‥日向はそう続けた。
「ウィリアムには、山城カケルと榊原アサキの動きを注視するよう指示してくれ。何か裏があるはずだ」
 用兵においてミウミが上でも、策略においては日向が上か。
「これで落ち着いてくれると、俺は助かるんだがな」
 3姉妹を倒せば、バグアの主だった将はいなくなる。四国の解放はこれで達せられるはずだ。彼は「ふーっ」と長く息をついた。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
美海(ga7630
13歳・♀・HD
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD
オルカ・スパイホップ(gc1882
11歳・♂・AA
音桐 奏(gc6293
26歳・♂・JG

●リプレイ本文

●決戦の前に
 ミウミは直属の部下から「傭兵、迫る」の報を聞くと、カスタムティターンに搭載された新たなる機能を作動させるボタンにそっと手をやる。これは次女・カケルにも知らせず、内密に作らせたものだ。
「備えあれば、憂いなし‥‥やね」
 顔はいつものように笑っているが、声は低く、どこか悲しげにも聞こえた。その声はいったい、誰に向けられたものだったのか。

●分断作戦
 バグア残党の動きは統率が取れており、UPC四国軍が組織した突入部隊は、やや接近に手間取った。
 しかし敵軍に「突入部隊の狙いがミウミ」と知れると、徐々に迎撃を控え、ワームやキメラはUPC軍との戦闘に備える。これを見たKV運搬トレーラーの運転手は、大きな溜息を吐いた。
「行きはよいよい‥‥ってだけなんだが、俺たちにはそれが重要なんだ」
 その言葉をコクピットで聞いたオルカ・スパイホップ(gc1882)は「お帰りもバッチリ援護しちゃうよ〜!」と元気いっぱいに答える。後続車に載せられているビーストソウル搭乗の美海(ga7630)もまた、「心配無用であります」と胸を張った。
「美海と同じ名前のバグアがいるなんて、世の中狭いのであります」
「海が大好きなミウミさんが、なんで陸に‥‥そっか! 海だと負けるってわかったからだ!」
 本人が聞いたら苦笑いしそうな結論で締めたオルカの視界に、ミウミ専用のカスタムティターンが見えた。少年はすぐさまリヴァイアサンで、戦場に降り立つ。
 飛行で移動のチームも続々と到着。前の戦いでは痛い目に遭わされたシーヴ・王(ga5638)、思い通りの結果が出せなかった宗太郎=シルエイト(ga4261)も顔を揃えた。
「お、前の機体っぽいのがいるね〜。今日はやれるん?」
「借りは返さねぇとですから‥‥遠慮しやがるな、です」
 ミウミ機は宗太郎にも目をやり、「お友達に無茶させん方がええよ〜」と忠告するも、相手はこれを無視。
「悪いが、俺も気が収まってねぇんだ。今度こそ、誰にも不満を言わせねぇさ」
 そう言うが早いか、ストライダー・ゼロはいきなりプロトディメントレーザーを発射。護衛のタロスを飛び退かせた後、片方に向けてグレネードランチャーで足止めし、その装甲を徹底的に穿つ。
「ちっとばかし、つまみ食いしとくか。後は任せたぜ」
 その声を合図に、傭兵たちが動き出す。美海のケモッタマークIIは、本隊とミウミを分断するために動く。姉妹から借りたという陸戦兵器を装着しているが、今回はなんと格闘戦仕様。迫り来る脅威に対しては、釈迦掌を振りかざして、これを退ける。
「動きは遅いですが、とにかく確実に撃破であります」
 一撃必殺ともいえる釈迦掌の威力を見れば、だいたいのキメラは恐れてしまう。これが功を奏し、美海機はしばし敵とにらみ合う状況を作り出すことに成功した。
 これまでの残党なら、この程度で怯むことはない。勢いで押すか、策を弄するか‥‥とにかく動くことを選んだはずだ。ところが、今は違う。肝心要のミウミが、すでに傭兵の猛攻で手一杯。指示を下すほどの余裕はなかった。
 シーヴ搭乗の鋼龍は、常にミウミの前。ブースとを駆使し、機槍「アテナ」を振りかざす。一方、ミウミの獲物も槍。うまく穂先をずらし、反撃に出る。
「つまらん戦いはナシやで!」
 シーヴがスピードなら、ミウミはパワーで応戦。まるで銛のように操り、まずは足元を狙う。鋼龍は膝下の装甲を抉られるが、まだまだ動ける。両者の戦いは激しさを増すばかりだ。
 そこへオルカのレプンカムイが援護射撃。遮蔽物を利用するあざとい動きから、マルコキアスで弾丸をばら撒く。
「海でも陸でもボコボコとか、ミウミさんってホント、いいとこないよね〜!」
 ミウミは「オルカん〜!」と怒りつつも、少年の位置は把握しているようで、これをうまく回避。被害を最小限に食い止める。
「カッキー特製の広域ソナー、この状況ならうちが使っても、不利にはならんよ!」
「へー、すごいね! でも、それって海で使うもんでしょ? なんで陸で使うの? なんでなんで?」
 オルカは陽気な性格も相まって、とにかく挑発を止めない。そのおかげで、ミウミは残党に指示を下さず、さっさと傭兵を片付ける方向に舵を切った。

●仲間たちの挽歌
 ミウミを狙うのは、彼らだけではない。
 負傷しながらも流星皇を操る白鐘剣一郎(ga0184)は、今回の作戦参謀とも言うべきリヴァル・クロウ(gb2337)と協力して戦う。シーヴ、オルカの目くらましを利用しつつ、チェーンガンで牽制。そこで同調するかのように、リヴァル機「電影・改」がマルコキアスで弾幕を張る。
「なかなか隙を見せないとは、やるな」
 剣一郎とリヴァルの息は合っており、隙を突こうと思えばいつでもいける。ただ、1機のタロスがフリーで、これが連携を切る動きで邪魔してきた。タロスは護衛としての本分を理解しており、撃破やむなしの覚悟で邪魔してくる。これが厄介だった。
「ミスターSにジョーカーと呼ばれた俺だが、今は奴の方がそれっぽいか」
 かなり距離を置いたところに、ガンスリンガー改に搭乗の音桐 奏(gc6293)がスナイパーライフルを構え、ミウミの行動を阻害すべく絶妙のタイミングで狙撃するが、これもまたタロスが察知して阻む。
「かなでん、早くこっちおいで〜」
「いえいえ。私はここで、あなたとの因縁に決着をつけさせてもらいます」
 そんな会話に割って入るのは、漆黒のスレイヤーを駆るゲシュペンスト(ga5579)。彼もまた、この戦いを「リベンジマッチ」と位置づける者のひとりである。
「さっきからチョロチョロしとるねー」
 ミウミが槍で亡霊を刺し貫かんとするが、この機体はひどく硬い。生半可な薙ぎでは、逆に弾かれかねない強さを秘めている。
「俺を止めるには、もっと力強くなくては」
 そのお返しとばかりに、ゲシュペンストは機杭「白龍」を左肩に振り下ろす。それが刺さるや、いきなり爆発音が響いた。装甲が派手に吹っ飛ぶほどの威力を秘めた一撃に、さすがのミウミも「これはアカンよ!」と警戒する。
 この頃から、タロスの動きはますます活発化。とにかく傭兵の邪魔に徹する。しかし、それを継続できるほどの機体性能は有しておらず、最終的には爆発四散する運命となった。

 もう1機のタロスは、宗太郎の連続ブーストに惑わされ、本来の動きでは戦えない。機槍「ロンゴミニアト」によるランスチャージを耐え切っても、相手は反撃をたやすく回避。それも残像回避を使用し、死角へ回られるのだからたまったものではない。そして最後は、必殺の輝きが零距離で放たれた。
「敵も少なくねぇ‥‥悪いが、一気に行かせてもらう! フィーニクス・レイ、オーバードライヴ!!」
 残るタロスは残骸をも焼かれ、あっという間に地上から姿を消した。
「むむっ! 美海も負けていられないのであります」
 爆破を察知した少女は、ボコボコになった甲羅を持つタートルワームに拳を振り下ろして止めを刺し、また本隊に睨みを利かせる。
「美海たちがミウミを倒して、バグアどもの恐怖となるのであります。かつての貴様らのように」
 この勢い、恐竜にも止められぬ‥‥海より出でし獣の魂は、キメラに恐怖を振り撒く。

●練翼発動
 この時点で、ミウミは包囲された。障害となるタロスがいなくなったのだから、無理もない。各自の持つ武器の都合もあり、その距離はまちまちだが、ここをカスタムティターンが突破するのは難しいだろう。
「ミウミさん、そろそろ本気出してよ〜!」
 挑発を繰り返すオルカに対し、ミウミは「はは〜ん、さてはバカにしとるね?」と怒った後、恐ろしいスピードで突進してきた。
 これを狙っての反撃を披露すべく、少年は全力で回避。アクティブアーマーに掠らせながら胸元へブーストで反撃‥‥を試みたが、さすがはミウミ機、一撃が重い。目立つ傷を負ったが、次の行動には支障はなく、そのままシステム・インヴィディアを起動。練剣「雪村」を振りかざし、青い流星はミウミ機の胸を切り裂いた。
「くっ、なかなかやるね‥‥!」
「ミウミさんの技、真似できるのなさそうだなぁ〜。なんだかつまんない〜」
 ミウミは突き出した槍を振り回すが、オルカは身を捻って回転。まるで槍と平行になるかのように避ける。そこへ奏の狙撃が胸の傷をさらに抉り、シーヴもブーストを駆使した緩急のある攻めで翻弄。各自がそれぞれの役割を果たしている。

 実はこの時、ミウミは派手な立ち回りで傭兵たちの包囲を狭めようと画策していた。そう、このカスタムティターンにも、あの悪名高い兵器が搭載されている。その名は「プロトンウィング」。彼女はこれで一網打尽にするタイミングを探していた。
「もうちょっと黒いのが来てくれたら‥‥やりやすいけどね〜」
 自分の左に張り付くゲシュペンストの火力はバカにできない。これを潰せれば最高‥‥と彼女は考えていた。
 無論、相手もそれをわかっている。今回の勝負の肝は「プロトンウィングをどう料理するか」の一言に尽きる。先に仕掛けるか、後に仕掛けるか‥‥彼らもまた、その時を狙っていた。

 ここで、剣一郎とリヴァルが動く。近接攻撃をフェイント気味に繰り出し、槍で防御体勢を取らせ、さらに反撃を誘導。それを回避する‥‥と思いきや、ブーストを駆使して大きくジャンプし、VTOLで頭上を通り越す。
「これ、上‥‥違う、後ろか!」
 この隙を見逃さず、オルカは「今だ!」と練剣で切り上げ。その後は宗太郎や奏の妨害も加わり、2機のシュテルンは再びVTOLで離陸。カスタムティターンの背後を取った。
「凡人の一撃を食らうのは、さぞ楽しくないだろうな」
 リヴァルはハイ・ディフェンダーを振りかざし、練翼の発生装置らしき箇所をPRMオフェンスコンボを駆使した剣撃で攻め立てる。さらに剣一郎もまた機刀と練剣の二刀流で逆側の破壊を目指す。
「その物騒な光の翼、獲らせてもらうぞ」
 ただでさえ強力な2機に背後を取られ、正面には足止めの数機‥‥これには、さすがのミウミも音を上げた。
「アカン、狙ってる場合じゃないね! プロトンウィング、発動準備!!」
 こうなれば、もはや乗りかかった船だ。引くわけにはいかない。リヴァルはオルカに合図を出し、剣一郎の側から練翼の押さえ込みを依頼。鍔迫り合いで抑え込んで、味方に確実な破壊を託した。
「オルカん、やっぱりお芝居やったんやね‥‥!」
「まさか、わかってたの? やだなぁ、ミウミさん。人が悪い〜」
 そう言いながらも、オルカ機の動きは止まらない。発生を止めるべく、攻撃を繰り返す。
 そこにTFハイサイトを駆使した「かなでん」こと、奏の弾丸が飛んでくる。彼はさらにDFスナイプシュートも使い、万全の体制で妨害を続けた。
「味方を撃つような無様な真似はできませんので。持てる技、すべて使わせてもらいます」
「チャージ完了、したんかな? なんか計器がおかしいけど‥‥ええい、なんくるないさ〜! プロトンウィング発動!!」
 根競べの様相を呈したが、カスタムティターンは半端な状況で発動された。事前に集中攻撃を食らわせたおかげか、威力は本来ほどのものではない。
 しかしそれを差し引いても、さすがの威力だ。オルカは剣一郎をかばうが甚大なダメージを食らい、後方へと吹き飛ばされる。
「うわあーーーっ! これ、キツいっ!!」
「これが噂に聞いた切り札か」
 両機は大破こそ免れたが、すぐの行動は難しい。リヴァル機は破壊が進行していたのか、それとも出力の問題か、ともかく被害は半壊で済んだ。

 だが、彼はしっかりと状況を見ていた。練翼発動後、装置からは黒煙が上がっている‥‥カスタムティターンを始末するのは、今しかない。
「切り札は、何も自分だけが担う必要はない‥‥!」
 その言葉と同時に、ゲシュペンストが後方へ移動。装置の破壊を目指し、いざ空中へと飛び上がる。
「究極ゥゥゥゥゥッ! ゲェェシュペンストォォォォォッッ! キィィィィィィィッック!!」
 渾身の力を秘めたドリルキックは、まずリヴァルが狙った側を確実に破壊。さらに機杭を剣一郎、オルカ側へと突き立てる。
「アンドォッッ! ゲェシュペンストォォォォ! ストライーーーーークッ!!」
 二大必殺技によって、プロトンウィングは確実に破壊。いや、これはカスタムティターンの崩壊の序曲でもあった。さらに宗太郎が側面からPDレーザーで追撃。
「今だ、シーヴ!!」
 残光が消えた直後、呼びかけに応じてシーヴが正面から登場。ミウミ本人を狙い、機槍「アテナ」でブースト突撃を敢行する。
「渾身の一撃、喰らうが良し」
 ミウミはこの瞬間、いつものようにニッと笑った。そして彼女の右手はあるボタンを押した。
「カッキー、アサキん‥‥うちの作ったこの時間で、なんとか逃げるんよ‥‥」
 その刹那、カスタムティターンは爆発。ミウミはそれに巻き込まれ、外へと投げ出された。彼女のいた場所からは、なぜか大量の水が吹き出していた。

●最後の時
 傭兵たちがバグア残党を攻め出した時点で、部隊を率いる隊長たちはミウミの撃破を悟った。最後まで抵抗する者、潔く降伏する者とさまざまだが、司令塔を失った残党はUPC四国軍が単独で処理できるほどのレベルにまで落ちていた。まさにその名が示す通りの軍団に成り下がったといえよう。

 そんな彼らを束ねていた照屋ミウミは、爆発の時点で死んでいたようだ。そんな彼女の顔は、なぜか笑っているようにも見える。剣一郎は敵将の顔を見て、不意に「‥‥手強かった、な」と呟いた。美海は「でも、勝利は勝利であります」と言い切る。
 シーヴ、宗太郎、ゲシュペンストは借りを返したからか、少し穏やかな表情でミウミを見ていた。
「今回は信頼できる仲間ばかり。ソレがどういう意味を持ちやがるか‥‥3姉妹を名乗る手前ぇらならわかっただろうです」
 ミウミの傍らに立っていた奏も「そうですね」と同意する。
「あなたの最後を見届け、この心に記憶しました。この命が尽きる日まで、あなたの事は忘れはしませんよ、ミウミさん」
 そこへオルカが駆け寄ってきた。どうやらコクピットを探っていたらしい。
「ミウミさんのコクピット、真新しい脱出装置がセットされてたみたい。でも、これは兵器じゃないよ。底面から海水を注入する装置があってさ。まるで海の棺を作り出すみたいな‥‥そんな感じ」
 ミウミは敗軍の将になることを悟っていたのだろう。だから最後は「大好きな海で死にたい」と思った。だから、こんな装置を作ったのか‥‥
「最後まで思い通りにはさせない」
 リヴァルは人類を脅かした敵に対し、不意にそう呟いた。