タイトル:【協奏】夜想曲1.剥マスター:村井朋靖

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/04 23:28

●オープニング本文



 沖縄本島、最南端。
 ここにはバグア軍の前線基地が置かれていた。規模としてもそれなりのもので、前線基地としては申し分ない。
 と言っても、現在沖縄に存在するバグア。ゼオン・ジハイドの11、風祭・鈴音(gz0344)はトリイ基地。その部下である沖縄3姉妹も同様にそれぞれの拠点を所持している。この前線基地はバグアにとって戦略的価値がそれほど高くない基地となっているわけだ。
「‥‥ですが、我々にとっては違います」
 作戦会議でそう言うのはUPC沖縄軍中尉、ソウジ・グンベ(gz0017)だ。
 人類側には沖縄本島において、この規模の地上拠点は存在していない。今後本島の3姉妹やジハイドと戦っていくために安定した拠点の存在は必要不可欠であった。
「だが、この規模だ。それなりの防御戦力は敵も置いているのでは?」
「その疑問はもっともです。ただ、それに関してはこちらの資料を参照して頂きたく」
 それは、基地に送り込んだ工作員からの報告書。これによると、基地内に存在しているバグアは、強化人間を含めてもそれほど多くないということだ。ならばこの規模の基地をどうやって円滑に機能させているのか疑問が生まれるが、それに関しても報告書に記載されている。
「‥‥なるほど。基地の運用は民間人を使っているわけか」
 バグアは、民間人の親類などを多数人質として、その身の保証と引き換えに労働を強いているという事だ。だが、これはある意味こちらがつけ入れる強みでもある。
「つまり、です。この基地に存在している少数のバグアを排除すれば、基地機能をそのままいただくことも不可能ではないということです」
 今回の作戦では、基地内に数名の能力者を送り込み、基地指揮官始めバグア軍の掃討を行う。この間人質に危害を加えられるとまずいので、別働隊が同時に人質を救助する、と。そういう流れだ。
 侵入には手漕ぎボートを使用。この際、水中戦部隊が陽動の為に戦闘を行う手はずになっている。
「そして最終的には空挺部隊を投入し、基地を完全に掌握する、と」
「よし、聞いた通りだ。各自作戦準備にかかれ!」
 作戦の決行は深夜。故に名づけられた作戦名は「ノクターン(夜想曲)」。
 オペレーション「ノクターン」はこうして静かに動き出した。


 そして作戦決行の夜を迎えた。UPC沖縄軍は、陽動部隊である水中戦部隊を送り込む。
 ソウジからの注文は「戦闘は長時間に及ぶと予想されるが、なるべく派手に演出してくれ」の一言である。これを聞いた杉森・あずさ(gz0330)はニンマリした。今回、彼女は通信役として参加する。
「相手は、照屋ミウミでしょ? 挑発には絶対に乗ってくるわよ、心配ないわ」
 その辺は三女・榊原アサキ(gz0411)よりも扱いやすいと、彼女は胸を張る。むしろネックなのは、長期戦となる点だ。
「潜入部隊の移動を察知されないよう、あえて補給艦は帯同させない。長期戦を挑む腹を読まれても困るしね」
 どのみち作戦が進行すれば、こちら側の意図は読まれてしまうが、それ以前に知られるのはマズい。あずさは「最初が肝心だね」と念を押した。
「準備が整ったら、出撃の準備をお願いするよ。作戦の状況は、私が伝えるからね」
 いよいよ夜想曲の第1楽章が、静かに奏でられようとしていた。


 ミウミの移動水中基地に、けたたましくサイレンが鳴り響く。沖縄の海を巡回中のマンタワームが、敵を発見したのだ。
 人類の反攻を伝え聞いたミウミだが、忙しく動き回る味方をいつもの口癖でなだめる。
「なんくるないさー。手の空いてる指揮官は水中ゴーレムで出て、マンタワームに指示を出すんよ。その後を亀ちゃんに追わせてー」
 それを聞いた幹部の強化人間が「わかりました」と答えた後、「ミウミ様も出られますか?」と尋ねる。彼女はあごに手をやって思案するが、短く「やめとく」と答えた。
「うちはここから指示を出すから、それに従って。そろそろ攻めてくる頃やと思ってたから、いろいろ考えてるんよ!」
 いつものように明るい笑顔で味方を鼓舞するも、ミウミはUPC軍の動きに少なからず疑問を抱いていた。
「なーんか、匂うんよね‥‥」
「はい?」
 出撃するために走りかけていた幹部はふと足を止め、ミウミの元へ戻った。
「あ、こっちの話な。ま、陰謀とか策略とかはアサキんが考えたり読んだりするの得意だし、後で相談しよ‥‥」
 この3姉妹の連携が、オペレーション「ノクターン」の達成を阻むことになるのだ。はたして夜想曲を「勝利の凱歌」にするのは、人類かバグアか。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
荒神 桜花(gb6569
24歳・♀・AA
イーリス・立花(gb6709
23歳・♀・GD
オルカ・スパイホップ(gc1882
11歳・♂・AA

●リプレイ本文

●南国の夜の海
 UPC軍が沖縄の海を泳いでいることは、すでにミウミの知るところだ。
 もちろん傭兵たちの姿もある。久しぶりの水中戦に心躍らせるのは、荒神 桜花(gb6569)だ。彼女はモニターで敵機や味方機を確認しながら、美しい色合いの沖縄の海を堪能する。
「沖縄の海は綺麗ねんなー」
 そんなロマンチックな気持ちに水を差すかのごとく、モニターには続々と赤い表示が出る。これは敵機を示していた。
「けど、無粋なモノがおるでー」
 桜花は前方に目を向けると、バグア軍の水中部隊が姿を現す。まずは偵察も兼ねた先遣隊で、足の遅いタートルワームは含まれていない。
 怪しく瞳を輝かせるドクター・ウェスト(ga0241)はアサルトライフルを構え、さっそく交戦を開始。目新しさのないサメ型キメラに、無情の弾丸を叩き込む。
「けっひゃっひゃっ、我輩はドクター・ウェストだ〜」
 この攻撃が、戦闘開始の合図となった。敵は水中で不意に鈍い音を発し、一匹、また一匹と群れから脱落する。
 これを見た先遣隊の指揮官機である大型のマンタワームは、不意に足を止めた。どうやら他のワームを中心に指示を出しているらしい。それを証拠に、敵は連携した動きを見せた。
 ドクターはキメラを掃射する一方、迫り来るマンタワームには水中用太刀「氷雨」で応戦。白兵戦に持ち込む。華奢なイメージのあるリヴァイアサンが放つ華麗な斬撃は、見る者に強烈な印象を与えた。
「ココから先は行かせないよ〜」
 強気のドクターに呼応するかのごとく、愛機「玄龍」を操る威龍(ga3859)も水中を駆ける。
「敵を張り付けておくのが今回の任務としても、敵を少しでもすり潰しておけば、友軍に貢献することになるからな。やっておいて損はない」
 ドクターとは背中合わせになるように立ち、マンタワームに対して対潜ミサイルを発射。これを命中させると接近し、水中用ガウスガンで決着を狙う。水を切り裂く咆哮に、鱗のような銃撃。序盤から「威龍ここにあり」を印象付ける立ち回りである。

 ふたりがゴーレムへの道を開けば、お次は突撃班の出番だ。
 パピルサグ搭乗のイーリス・立花(gb6709)は、拳でモニターを小突いてから前進。強固な鎧を盾に、ガウスガンで指揮官への道を切り開く。さらにアサルトフォーミュラAを駆使し、大型魚雷で行く手を阻む敵を吹き飛ばした。
「今です」
 南国の海とは対照的に、冷静な声を放つイーリス。それを受け、オルカ・スパイホップ(gc1882)が元気に突撃を敢行する。
「はーい! 指揮官機さんは退場願いますですよ〜!」
 オルカの愛機・レプンカムイがブーストで一気に間合いを詰める。襲い掛かる敵は等しく、レーザークローで叩き潰された。そして指揮官機との決戦に持ち込む。
 さすがに大型マンタワームの動きは洗練されている。流れるような動きからレーザーを繰り出し、オルカ機のエンブレムを貫かんとした。しかしレプンカムイはアクティブアーマーを活用し、その攻撃を簡単に弾いてしまう。
「そんなノックみたいな攻撃は効かないよ〜!」
 さらに勢いを増すレプンカムイは、そのまま敵の胸元に飛び込む。敵は堪らずグラリと体勢を崩した。その隙を突き、エンヴィー・クロックを発動。絶好の機会を逃さぬとばかりに必殺の水中練剣「大蛇」を抜き、決定的な一撃を与えんと輝く剣を振りかざす。
「システム・インヴィディア発動! さよーなら〜!」
 レプンカムイが流星のごとき残光を放てば、指揮官機はビッグバンのごとき爆発で応えるしかなかった。

 指揮官を失った先遣隊は算を乱すかと思われたが、絶妙のタイミングで新手が現れる。撃破を目指すゴーレムに加え、タートルワームの姿もあった。想像以上の大軍である。
「次の集団は、最後尾にタートルワームがいるねー。数が多いだけに難儀するでー」
 桜花はそう言いながらもオルカの隣まで出て、最前列に控えるマンタワームに対して多連装魚雷「エキドナ」で攻撃。合流を図るために背中を見せた先遣隊をも巻き込む。
「けっひゃっひゃっ、思い通りにはいかないもんだねぇ〜」
 この隙にドクターと威龍も最前列に到着。傷ついた敵に対し、容赦なく銃撃を浴びせる。
 序盤は注文通りに派手な立ち回りを見せ、さらに前線を押し上げることで、敵に「早期決着を狙っている」と誤認させようとした。

●ミウミの読み、傭兵の策
 先遣隊が総崩れになったと聞き、ミウミは地団駄踏んで悔しがる。
「きーっ! これ以上、うちの海で勝手なことさせんよ!!」
 怒れる長女を、いつものように腹心が諌める。そんな態度とは裏腹に、ミウミの心はなぜか冷静だった。
「うーん‥‥やっぱり引っかかるんよね。最近アサキんに似てきたんかな。なーんか落ち着かんね‥‥」
 彼女の直感は当たっているが、傭兵たちの、いやUPC軍が意図することまでは読み切れていない。
 そんな不安を払拭すべく、彼女は戦闘の指揮を執った。
「よーし、ここからはうちが指示を出すよ! とりあえずゴーレムはタートルワームの後ろに引っ込んで、今は様子見やよ!」
 このミウミの判断は、傭兵たちにとっては迷惑以外の何でもない。モニターを見た桜花が、思わず不機嫌な表情を浮かべるほどだ。
「はぁ‥‥ゴーレムが最後尾に下がったなー」
 それを聞いたドクター・ウェストは、おなじみの笑い声に加えて「なんくるないさ〜」と呟く。
「ここに来るまでと来てからで、指揮官が変わったってことさ〜」
 同じくイーリスも「なるほど」と頷き、ドクターの後に言葉を発する。
「こちらのかけたプレッシャーに耐え切れず、思わず指揮官機を下げた‥‥つまりここまでは、作戦が成功しているということですね」
 それならば同じ作戦で押せばいい。5人は再びゴーレムの首を狙う戦いを再開した。

 桜花はガウスガンでマンタワームをけしかけ、リロードの合間に多連装魚雷「エキドナ」を発射。徹底した攻めで敵を圧倒する。
 そんな傍若無人な振る舞いを続ける桜花機「海人」にお灸を据えようと、水棲キメラの群れが牙を剥いた。比較的後方に位置するドクターと威龍は、それぞれに応戦。威龍は小型魚雷ポッドで敵の足止めを行い、ドクターは分断された集団の前方に向かって丁寧な狙撃を仕掛ける。
「ええ〜い、鬱陶しいね〜」
 ドクターの言葉は本音でもあり、芝居でもある。できれば敵の誰かに聞いてほしいが‥‥と思っていたら、モニタにダイバースーツ姿の女性が映し出された。なんとも嬉しそうな顔をしているではないか。
「ダラダラすると困るん? そりゃ、いいこと聞いた!」
 傭兵の誰もが、このオバサ‥‥いや、彼女がミウミだと確信した。大魚が餌にかかったと知るや、ドクターは表情を曇らせる。
「よくもゴーレムを後ろに下げてく‥‥あ、ま、待ちたまえ〜! すまない、ソッチ行ったね〜!」
 今もキメラの群れは、傭兵たちの死角を狙っての攻撃を続けていた。満足に会話もできない状況を見たミウミは、腹を抱えて笑い出す。
「はははっ! そんなに余裕ないん? なら、こうされたらどうするんかな?!」
 ミウミの指示で、中盤に出てきたタートルワームが、海底から水面に向けて角度のある砲撃を一斉に開始。味方戦力であるキメラを犠牲にしてしまうが、それを補って余りある効果があるとミウミは踏んだ。リヴァイアサン搭乗の3人はエンヴィー・クロックを、桜花とイーリスはブーストを駆使して難を逃れるも、すべてを避けるには至らず。各々がダメージを受けてしまう。
 しかし突然の一斉射にキメラたちも驚き、さっきほど足並みが揃わなくなった。今がチャンスとばかりに、威龍は小型魚雷とガウスガンを併用してキメラの撃破に挑む。ドクターは接近するマンタワームを食い止めるべく、システム・インヴィディアを発動させて氷雨で一刀両断。そこへオルカとイーリスが突っ込む。
「まだまだ〜! これからだよ〜」
 沖の神がレーザークローを振るえば、敵は切り刻まれるしかない。前線を押し上げるオルカをサポートするイーリスは、取り囲もうとする連中にはブラストシザースで束縛を許さない。
「タートルワームの一斉射で怯む私たちではありません」
 クールなイーリスを見たミウミが、なんとも悔しそうな表情で「くーっ!」と叫ぶ。ご自慢の兵器をコケにされたミウミは、タートルワームに乱射を指示。ゴーレムには白兵戦の準備をさせる。
「亀ちゃんの布陣は変えにくいから、ゴーレムは自分で考えて立ち位置を変えるんよ〜」
 ミウミはすっかり傭兵の思惑通りに動かされていたが、もしこれが消耗戦ならば、この判断は間違っていない。威龍は口には出さずに「どこまで俺たちに付き合ってもらえるかな」と、この先の展開を案じていた。

●後の祭り
 この後の展開は、言うまでもなくダラダラした。
 エース機であるオルカを先頭にガンガン敵戦力を削るも、イーリスが何かにつけて隊列を整えようとする。後衛にはドクターと威龍、そして桜花は遊軍的な動きに終始した。
「マンタワームはうちの獲物やでー!」
 桜花は多連装魚雷「エキドナ」が尽きたあたりから、単独で戦闘を仕掛け、仲間たちが慌ててそれを援護するという構図を演出する。もちろんこれは、事前に示し合わせたことだ。
 この頃にはキメラとマンタワームの数は減っており、ある程度の自由が利く状態だった。威龍も桜花同様、対潜ミサイルや小型魚雷が尽きた時点で、別のターゲットに狙いを定める。彼はタートルワームの砲撃の隙を突き、潜行形態で一気に間合いを詰め、瞬時に人型へ変形し、レーザークローで白兵戦を挑む。
「この動きこそ、俺の持ち味」
 レーザークローを巧みに操る姿は、まさしく威龍の真骨頂。その打撃を受けた者は、誰もが爆破で喝采した。
 主に先頭で戦うオルカは、水中におけるタートルワームの多角的な動きを見てお勉強。動物的な本能でのアクションに舌を巻く。
「へぇー! そんな動き方、僕たちじゃ考えられないね〜! なるほどなるほど〜」
 レプンカムイはすぐさまその動作を組み込んで、敵を翻弄する。自分が起こすアクションを他人にされると、案外と対応しにくいものだ。少年の向上心は、常に敵の隙を生み出す。
「これをマネできたら、キミも僕の一部なんだよ♪」
 だから安心して破壊されろと言うわけではないが、オルカは圧倒的な火力でそれを悟らせる。この少年、まだまだ伸び盛り。

 戦闘時間が60分を越えたあたりで、ようやくゴーレムにちょっかいを出せるところまで接近した。通信役に徹している杉森・あずさ(gz0330)は、ミウミをおちょくるがごとく「もうすぐ将の首に手が届くね」と味方を鼓舞する。
 ミウミも腹心から時間経過を確認したが、それを聞いた瞬間に首を捻った。
「あれ? あそこまで近づいたんなら、もう押せ押せにならんとおかしくない?」
 この疑問を解明する情報が、ミウミの元に届けられた。沖縄最南端のバグア基地に侵入者が現れ、激しい争奪戦が繰り広げられているという。
「あーっ! まんまと乗せられたっ! あいつらー!!」
 今さら気づいても手遅れだ。ミウミの戦力は半分以下になっており、援軍も送れない状態に陥っている。さらにゴーレムを破壊されては、撤退さえも怪しくなってしまう。ミウミは渋い顔をして、現場の指揮官に指示を出す。
「あーあー、ゴメン。うちの読みが甘かった。できるだけ亀ちゃん連れて撤退して。無理ならキメラとかを盾にして構わんよー」
 すっかり落胆したミウミは、妹たちに詫びるため、傭兵たちとの通信を切ろうとする。しかしどうにも我慢できず、捨て台詞を吐いた。
「また沖縄の海においでなー。今度はうちが直々にボコボコにしたるんよ!」
「へぇー、そんなことできるの〜? ホント? ホントぉ?」
 オルカがニンマリ笑顔で挑発すると、ミウミは超絶不機嫌になった。
「オルカんとか言うたね‥‥おぼえとき! きーっ! 今日の亀ちゃんとかマンターみたいに、絶対にボコボコにし」
 ヒステリーになったミウミの姿は、腹心によって一方的に遮断される。その一部始終を見た桜花とイーリスは「うわぁ」と嘆息し、オルカとドクターはモニタを指差しながら豪快に笑い続けた。

●陽動作戦、成功!
 敵は尻尾を巻いて逃げたが、UPC沖縄軍から基地占拠の報が入らないので、傭兵たちは迷わず追い討ちをかけた。
 背中を見せる相手を撃破することほど、簡単なことはない。無論、ゴーレムに乗る指揮官はキメラやマンタワームを盾にして、ほうほうの体で逃げた。この部分の結果を詳しく記す必要はないだろう。言うまでもなく、傭兵の圧勝である。

 ゴーレムこそ逃がしたが、水中戦での戦果は絶大だった。モニタに赤い表記が遠ざかっていくのを見て、桜花はひとつ息を吐く。
「今回は何とかなったみたいやなー」
 今度こそ沖縄の海を満喫しながら移動できる。イーリスも銀色の髪を掻き分け、戦闘終了を肌で感じた。
「威龍さんの狙い通りの展開に持ち込めてよかったです」
「いや、これはみんなで協力した結果だ。ドクターもお疲れ様だったな」
 これを聞いたドクターは「まだまだこれからだよ〜」と元気いっぱいに答える。オルカもまた「おー!」と拳を上げた。

 激化の一途をたどる沖縄戦線。基地争奪戦の前哨戦となる水中戦は、傭兵側に軍配が上がった。